2018年度 計量標準総合センター成果発表会
ポスターセッション 2日目

【物質計測標準研究部門 無機標準研究グループ】

  • 水道水質検査のための塩素酸ナトリウムの酸化還元滴定による純度決定とその安定性

    朝海 敏昭、鈴木 俊宏

    塩素酸イオンの分析は、水質評価の観点から世界的に興味を持たれており、日本においても水道法第4条における水質基準項目として塩素酸イオンを規定している。本研究では、複数の原理に基づく滴定法によって塩素酸イオンの濃度の精確な定量を行い、安定性を含む不確かさの評価を行い標準物質開発を行ったので報告する。

  • 同位体標準液の開発における滴定法の応用

    鈴木 俊宏、野々瀬 菜穂子

    我々のグループでは、NMIJ CRM 3681-a 鉛同位体標準液をはじめとして、質量分析計による同位体比分析の基準として用いることができるCRMの開発を行っている。その開発では、異なる2種類の濃縮同位体溶液を混合して、同位体比が正確に決定された標準液を作成し、それにより質量分析計の質量差別効果を補正してCRMの値付けを行う。この標準液の作成に滴定法を利用する我々の手法の特徴について報告する。

  • 金属パラジウム中の炭素および酸素分析

    大畑 昌輝、城所 敏浩

    パラジウム標準液を開発するためには純度が評価された金属パラジウムが必要であり、そのためには不純物分析が必要である。そこで金属パラジウム中の不純物の主成分と想定される軽元素(炭素、水素、窒素、酸素など)の定量分析について、特に炭素と酸素について、燃焼/融解-非分散型赤外線吸収法を用いた検討を行ったので、その際に得られた知見について報告する。

  • 海水中のりん酸イオン分析の高度化

    チョン 千香子

    海水中のサブppmレベルのりん酸イオンを定量するために、イオンクロマトグラフィとICP-MSを用いた分析法を立ち上げた。海水塩の影響を取り除くためのバルブスイッチング法について検討し、開発した分析法と汎用法である吸光光度法による分析結果を比較したので、得られた知見について報告する。

【物質計測標準研究部門 環境標準研究グループ】

  • ICP-MSのリアクションセル内における希土類元素イオンの反応特性

    朱 彦北

    ICP-MS分析におけるスペクトル干渉対策として、リアクションセル内のイオン・分子反応を用いた技術は非常に有効である。一方、希土類元素は互いに化学性質が類似するため、様々な化学過程においてある程度の分別効果が起きながら、希土類元素全体として挙動は類似している場合が多い。本研究で、ICP-MSのリアクションセル内において、希土類元素の反応特性は溶液やマグマなどの反応系中における挙動と異なることが分かったので、その結果について報告する。

  • プラズマトーチ組み込み型直接試料導入ネブライザーの設計開発

    宮下 振一、藤井 紳一郎(バイオメディカル標準研究グループ)、稲垣 和三

    誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)に用いられる直接試料導入ネブライザーは、理論上100 %の効率でプラズマへの溶液試料導入が可能であるが、噴霧液滴のサイズ分布が広いためにプラズマが不安定化しやすいといった課題がある。本研究では、プラズマへの安定した溶液試料直接導入の実現を目的として、プラズマトーチ組み込み型直接試料導入ネブライザーを設計開発した。

  • 誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)における炭素増感効果のメカニズム解明

    有賀 智子

    誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)において、試料中の炭素マトリクスが分析対象元素の信号強度を増加させる現象(炭素増感効果)が広く知られている。炭素増感効果は精確な定量分析の妨げとなることから、抑制・補正手法の確立が必要である。本研究では、炭素マトリクスが分析対象元素の酸化物の生成過程に及ぼす影響に着目し、抑制・補正手法の確立に必要不可欠な炭素増感効果のメカニズム解明を試みた。

  • HPLC-ICP-MSによるひじき中ひ素糖類の分析法の開発

    成川 知弘

    ひじき海藻はミネラルに富む食品である一方、健康影響が懸念される無機ひ素やひ素糖類などのひ素化合物を含んでおり、これらひ素化合物の存在形態と濃度は、重要な監視項目になりうる。そこで、ひ素糖類の分析法の確立と供に、試験所間試験による妥当性確認を行ったので、その結果に付いて紹介する。

【物質計測標準研究部門 ガス・湿度標準研究グループ】

  • ヘリウム・酸素中微量水分の一次標準の開発

    天野 みなみ

    半導体製造で使用されている窒素・アルゴン・酸素・ヘリウムについて微量水分の一次標準を確立することを目指し、「多種ガス用微量水分発生装置」を開発している。既に確立した窒素・アルゴンに加え、本研究では、物質量分率10 ppb〜1 ppmのヘリウムおよび酸素中微量水分の一次標準を開発した。これらの標準の実現方法と不確かさ評価について発表する。

  • Long-term, real-time measurement of trace moisture using dual-laser cavity ring-down spectroscopy

    Hisashi Abe

    In real-time, long-term measurement of trace moisture using cavity ring-down spectroscopy (CRDS), the accuracy is limited by undesired changes in ring-down time over a period of time (background drift).In this study, we introduced a dual-diode laser system in CRDS for trace-moisture measurements to compensate for the background drift.

  • 炭化水素系標準ガスの開発

    渡邉 卓朗、高田 佳恵子、下坂 琢哉

    天然ガス組成分析を主目的とした炭化水素系標準ガスの開発を行っており、これまでに炭素数4までのものについて開発を終えている。本発表では、高純度イソペンタン及びペンタン、並びにヘキサン標準ガスの開発状況について述べる。

  • 高湿度標準発生装置の圧力・流量制御の自動化に関する研究

    石渡 尚也

    多くの分野で用いられる湿度計の性能評価において、正確な湿度を持つ気体である湿度標準が必要となる。本研究では高湿度標準に関し、発生露点の高精度化や標準供給の効率化を目指し、発生装置の自動化を行った。本装置が発生する空気の露点の精度は、大気圧変動などの外乱の影響を受ける。そこで発生露点の変動を抑制するよう、装置内圧力の動的制御システムを開発した。

  • 波長計制御型CRDS微量水分計を用いた水の吸収スペクトル測定の高感度化・高分解能化

    橋口 幸治

    半導体や有機EL・有機太陽電池をはじめとしたハイテク産業において、ガス中微量水分を精確に測定、管理する需要が高まっている。本研究では、これまで開発を進めてきた波長計制御型キャビティリングダウン分光法(CRDS)微量水分計を用いて、水の高感度吸収スペクトル測定を実現し、得られた結果を用いて検出限界について考察した結果について報告する。また、高分解能化に向けた取り組みについても紹介する。

  • SQUIDによる磁気モーメント測定値のradial offset依存性と再現性向上

    松本 信洋、Cindi L. Dennis(NIST)、Robert D. Shull(NIST)

    新規一次標準直接法の実現を目指した絶対定量分析法「有効磁気モーメント法」では、超伝導量子干渉計(SQUID)により、一定磁場下における試料の磁気モーメントの温度変化を測定する。これまで、point dipoleに近い直径1 mmの球状磁気モーメント標準物質(鉄イットリウムガーネット)を繰り返し測定すると、約1.8 %の拡張不確かさでばらつきが見られたが、測定方法の改良により、相対標準偏差約0.1 %まで測定値の再現性を向上させる事に成功した。

【物質計測標準研究部門 有機組成標準研究グループ】

  • 塩素化パラフィンの共同分析実施に向けた活動

    羽成 修康

    新規残留性有機汚染物質としてストックホルム条約の対象物質である塩素化パラフィンの分析について関心が高まっている。しかしながら、精度良い分析値を得るには多くの課題を解決しなければならず、分析事業者らは対応に苦慮している。そのため、共通試料を準備し、塩素化パラフィン分析に関する予備的な共同分析を実施した。本発表では、結果の速報を報告し、測定装置による結果の差異について紹介する。

  • 残留農薬分析用の食品標準物質を用いた迅速分析法の評価

    大竹 貴光

    食品中の残留農薬分析において、簡便かつ迅速に結果が得られる分析法が、世界的に広く普及している。その妥当性は、添加回収試験で確認されている例が多いが、抽出過程を含めた評価には不十分な場合も考えられる。そこで今回は、試料に残留農薬分析用の玄米、ネギおよびリンゴの認証標準物質を用いて、同位体希釈質量分析法 (IDMS) により、迅速分析法であるSTQ法の精確さを評価した。

  • ノンドープSi基板のラマンシフトとその不確かさ評価

    伊藤 信靖

    Si基板のラマンシフトは、ラマン分光装置の日常校正に広く用いられているものの、普遍的に評価されたSi基板のラマンシフトは存在しなかった。その理由の一つとして、不確かさの付与されたラマンシフトの評価手法が存在しなかったことも挙げられる。そこで本研究では、He-NeレーザとNe輝線を用いて、ノンドープSi基板(NMIJ CRM 5606-a)に対する信頼性の高いラマンシフト評価と不確かさ付与を行った。

  • 水分分析用標準液(0.02 mg/g)(NMIJ CRM 4229-a)の開発

    稲垣 真輔

    NMIJはこれまでに水分分析における精度管理用の認証標準物質として、水分分析用標準液(0.1 mg/g)(NMIJ CRM 4222-a)および同標準液(1 mg/g)(NMIJ CRM 4228-a)を開発し、供給してきた。しかしながら、近年では、ファインケミカルや電気電子材料をはじめとする様々な分野において、水分をさらに低い濃度で精度管理することが要求されている。そこで、本研究では、既存の認証標準物質よりも低濃度である水分分析用標準液(0.02 mg/g)(NMIJ CRM 4229-a)の開発を行った。

  • 重水素化体を内標準物質として用いたLC/MSによる食品中残留農薬の定量におけるマトリクス効果の評価

    中村 圭介

    一般に食品中残留農薬分析では、目的物質の重水素化体を内標準物質として用いることで、定量に対する食品由来の夾雑成分の影響を低減できると考えられている。ここでGC/MSによる分析では、重水素化体を内標準物質として用いたとしても定量値に偏りが生じることが報告されているが、LC/MSについては、その影響は明らかになっていない。そこで本研究では、LC/MSによる分析でも、食品中に含まれている夾雑成分の組成や種類により、定量値に10 %程度の偏りが生じることを把握したため、その詳細を報告する。

【物質計測標準研究部門 有機基準物質研究グループ】

  • フタル酸エステル類8種混合標準液の校正実用化に向けたポストカラム反応GCの検討

    北牧 祐子、斎藤 直樹、井原 俊英(物質計測標準研究部門)、沼田 雅彦

    jcssにて供給されているフタル酸エステル類8種混合標準液について、現在、ポストカラム反応GCの標準液校正への適用を目指して検討を行っているところである。今回は、ポストカラム反応GCによるフタル酸エステル類8種混合標準液の校正実用化に向けた検討内容として、GC分離条件、基準物質の選定、妥当性確認および不確かさの見積りについて報告する。

  • 定量NMR用標準物質(1,4-ビス(トリメチルシリル)-2,3,5,6-テトラフルオロベンゼン)の開発

    山 太一、清水 由隆、北牧 祐子、中村 哲枝、鮑 新努、沼田 雅彦

    qNMRは原子核を基準とし、定量対象成分と同じ標準物質を用いることなく定量できる分析法として普及してきた。一方で、qNMRに用いる標準物質には、溶解性・NMRスペクトルにおける化学シフト・純度や安定性等、求められる条件が多い。本発表では、水素およびふっ素を含む1,4-ビス(トリメチルシリル)-2,3,5,6-テトラフルオロベンゼンを選定し、qNMR用の標準物質として開発したので、その詳細を報告する。

  • フタル酸エステル認証標準物質の定量1H NMRによる純度検証

    斎藤 直樹、大手 洋子

    jcssにて供給されているフタル酸エステル類8種混合標準液の原料のうち、フタル酸ジエチルを除く7種類のフタル酸エステル認証標準物質は、開発当時に適用できる純度決定法が差数法のみであった。そのため、含有不純物の見落としの可能性が懸念された。そこで、近年実用化した定量1H NMRにより各認証値の検証を試みたので、その詳細について報告する。

  • 頑健な相対モル感度を利用した非イオン界面活性剤標準液の定量に関する研究

    黒江 美穂、斎藤 直樹、山 太一、井原 俊英(物質計測標準研究部門)、沼田 雅彦

    qNMR/クロマトグラフィーは、クロマトグラフィーにおける分析対象成分と基準物質の相対モル感度(RMS)を予め求めておき、既知量の基準物質を試料へ添加後にクロマトグラフィーで測定することで分析対象成分の濃度を求める手法である。RMSが一定であれば定量毎のRMS測定が不要となるため、水道水質検査用非イオン界面活性剤標準液への値付けにおけるRMSの頑健性について検討した。

【物質計測標準研究部門 バイオメディカル標準研究グループ】

  • アミノ酸分析およびUV吸光法によるモノクローナル抗体の定量分析

    絹見 朋也、水野 亮子、惠山 栄、加藤 愛

    モノクローナル抗体をはじめ、精製されたタンパク質溶液の定量分析に280 nmにおける吸光度測定によるタンパク質定量が頻用される。一方で、我々が開発してきた同位体希釈に基づくアミノ酸分析法により高精度のタンパク質定量を実現している。モノクローナル抗体のアミノ酸分析法の検討、およびUV吸光度法との比較検討の結果について報告する。

  • 核酸分子の吸着性評価に関する研究

    藤井 紳一郎

    DNAやRNAなどの核酸分子は、臨床検査や食品分析などの分野で遺伝子検査などの測定対象とされており、保存容器あるいは分析前処理を行う際の容器への核酸吸着は結果に大きな影響を及ぼす。本研究では、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を利用した核酸の高精度な吸着性評価技術を開発した。開発した技術を利用して、DNA、RNA分子の容器表面への吸着性について評価を行った。

  • カラムスイッチング-LC/MS/MSを用いた下痢性貝毒標準物質の開発

    川口 研

    昨年度開発したカラムスイッチング-LC/MS/MSを用いて、ホタテガイ可食部中下痢性貝毒の高精度かつ高感度な測定法を検討した。定量方法として、絶対検量線法、マトリックス検量線法、標準添加法を比較して、回収率や定量値を求めた。その結果、前処理での回収率及び質量分析部でのマトリックス効果による影響を推定することが可能であった。また、精確な定量値を求めるには標準添加法が最も適していた。

  • Accuracy validation of chip-based digital PCR by DNA certified reference material, including the evaluation of the chip volume by SEM

    柴山 祥枝、熊谷 和博(表面・ナノ分析研究グループ)、高津 章子(物質計測標準研究部門)

    近年、核酸の定量法としてデジタルPCRが注目されている。デジタルPCRは定量時に他の参照標準を必要とせずに絶対定量が可能な手法であると言われているが、その精確性についてきちんと調べられたものは少ない。本研究では、DNA認証標準物質(NMIJ CRM 6205-a)を使用して、チップ型デジタルPCRの精確性を評価した。また、デジタルPCRの精確性に影響する反応場(well)の体積評価を走査型電子顕微鏡を用いて行い、wellの体積および不確かさの評価も行った。

  • 蛍光検出法を用いた下痢性貝毒の分析

    宮本 綾乃

    下痢性貝毒のオカダ酸(OA)及びジノフィシストキシン−1(DTX1)について、ADAM誘導体化による蛍光検出法を確立した。この方法を用いてホタテガイ可食部CRMの値付けに参加した。また、ホタテガイ中腸腺(下痢性貝毒分析用)NMIJ-CRM-7520-aを用いて、LCMSと本分析法の比較を行った。

  • タンパク質標準物質を用いたトリプシン消化効率の評価

    加藤 愛

    定量的標的プロテオミクスを行う上でボトルネックとなっている、トリプシン消化効率について、計量標準センターで開発したタンパク質認証標準物質(6201-a C反応性蛋白溶液)を試料として、定量的な評価を行った。

【物質計測標準研究部門 表面・ナノ分析研究グループ】

  • 有機薄膜のTOF-SIMS法による表面分析の現状

    黒河 明

    表面に敏感で非破壊分析法として用いられているTOF-SIMS法は、有機薄膜材料の分析応用が図られているが定量精度の向上が必要である。現状の分析精度を把握するには同一試料のラウンドロビンテスト法があるがそれには同じ表面状態を提供できる有機材料の標準試料が必要である。そこで30 nm厚さの有機薄膜をSCRで試作しTOF-SIMS分析の比較試験を行ったのでその結果を報告する。

  • X線反射率法による膜厚評価における汚染層の影響

    東 康史

    複数の手法を用いたナノメータオーダーの膜厚比較を実施すると測定手法間にオフセットが生じる。X線反射率法はSIトレーサブルな計測法であるが原理上、試料表面の汚染層の影響を受ける。上記したオフセットの一つの原因として汚染層の存在が想定され、正確な膜厚評価のためには汚染層を適切に評価する必要がある。本発表では、Si酸化膜の膜厚評価における汚染層の影響について報告する。

  • X線光電子分光法による国家密度標準のSi単結晶球体の表面分析

    張 ルウルウ、倉本 直樹(工学計測標準研究部門)、黒河 明、藤井 賢一(工学計測標準研究部門)

    産総研は2001年までSi単結晶を頂点とする密度のトレーサビリティ体系を構築した。本発表では国家密度標準としてのSi単結晶球体のX線光電子分光法(XPS)による表面分析結果を報告する。XPSの角度分解分析によりSi球体の表面層構造を明らかにした上で、金属汚染層、自然酸化層、炭素汚染層の化学組成を分析し、各層の膜厚測定及び不確かさ評価を行った。

  • XPSバックグラウンド解析用プログラム

    城 昌利

    これまで開発してきたXPSスペクトルのバックグラウンド解析プログラムを公開することになったので、その概要を報告する。非線形最適化法に基づきTougaardの公式を解く本プログラムは、事前に必要な情報がごく僅かであるため、既存データや標準物質の利用ではカバーしきれない、より広い物質系のピーク形状や強度を解析できる、世界唯一のものである。なお、プログラムには、コアの解析以外に、汎用の機能も備えており、これらについても紹介する。

  • 表面分析用標準物質の開発と安定性モニタリング

    寺内 信哉、伊藤 美香

    これまでに開発した表面分析用標準物質の安定性モニタリングについて紹介する。EPMA用標準物質(CRM 1001a-1010a,1017a-1020a)、デルタBN多層膜(AsドープSi基板,CRM 5206-a)、金/ニッケル/銅金属多層膜標準物質(CRM 5208-a)についてXRFやEPMAを用いて安定性モニタリングを行っている。それらの結果を紹介する。

  • 電子顕微鏡によるナノ粒子サイズ分布計測高度化のための試料調製法開発

    熊谷 和博、黒河 明

    電子顕微鏡法によるナノ粒子粒径分布計測では、顕微鏡像を解析することで粒径を計測するため、粒子の凝集・積層を抑制した試料調製が必須である。そこで報告者らはインクジェット法と凍結乾燥法を応用した試料調製技術の開発を進めている。本講演では新たに開発した試料前処理装置と粒径分布計測の実施例について報告する。

【物質計測標準研究部門 ナノ構造化材料評価研究グループ】

  • Sub-MeV級高速イオンビームによる薄膜評価

    平田 浩一

    イオンビームは、半導体への元素ドーピング、表面改質・分析等、材料改質、材料分析の幅広い分野で用いられている。イオンビームを用いた材料分析では、入射イオンと材料との相互作用により、試料表面から放出される粒子や光子を検出・分析することにより、材料の深さ方向元素分布、材料表面の微量元素や化学構造の分析を行うことが可能である。本発表では、sub-MeV〜MeV領域の入射エネルギーを持つ高速多粒子イオン照射による2次粒子放出現象を用いた薄膜評価に関する報告を行う。

  • 同位体希釈−中性子放射化分析によるハフニウム定量 

    高塚 登志子

    先端半導体デバイスの絶縁膜として酸化ハフニウム薄膜が用いられており、デバイス作製プロセス管理のために膜の定量分析は重要である。酸化ハフニウム薄膜中のハフニウム定量方法として、同位体希釈−中性子放射化分析を用いた結果について報告する。

  • 高速表面X線回折法を用いた薄膜成長過程の原子レベル解析

    白澤 徹郎

    波長分散集束X線を利用した放射光表面X線回折法の高速化技術を開発して、従来比で約100倍の高速化を達成した。この方法を薄膜成長過程のその場追跡に適応し、膜厚変化による構造相転移や格子緩和を原子スケールで解析した結果を報告する。

  • 市販型陽電子寿命測定システムの開発

    山脇 正人、伊藤 賢志

    陽電子消滅法は、金属の原子欠陥や高分子の自由体積等に高い検出感度を持つことから、超微細欠陥の分析手法として、金属疲労研究や機能性高分子材料の開発等に利用されている。陽電子を用いた材料研究は1950年代に始まり、2008年日本陽電子科学会設立をきっかけに産業応用への期待が高まっている。そこで我々は、一般ユーザでも操作できる簡便な測定プロトコルを確立した。東洋精鋼株式会社と製品化を進め、2016年9月より市販装置の販売開始に至った。今年度はオートサンプラータイプ及びポータブルタイプの2種類のラインナップを追加した。

【物質計測標準研究部門 粒子計測研究グループ】

  • 質量校正式液中粒子数濃度計数装置を用いた標準開発と油中粒子数濃度・血球計数への展開

    坂口 孝幸

    液中粒子数濃度標準の校正下限の600 nmまでの拡張と操作性・精度向上のため、光散乱(遮蔽)式液中粒子計数装置を用いた計数と試料懸濁液質量変化を同期させた質量校正式液中粒子数濃度計数装置を開発した。現行の拡張不確かさより小さな値を実現したのでこれを報告する。また、油中粒子数濃度測定および血球計数精度向上のため提案した不確かさ評価について述べる。

  • 粉体の比表面積評価のためのカーボンブラック標準物質

    水野 耕平

    比表面積測定の精度管理のためのカーボンブラック標準物質(CRM 5714-a)を開発した。ナノ材料規制対応や多孔性評価に関するより高度なニーズに応えることを目指し、従来のような室間試験ではなくSIトレーサブルな測定に基づいて評価試験を行い、比表面積と窒素吸着量(等温線)が値付けされた標準物質として提供を行う。

  • 新規インライン粒子径計測手法の開発:流れ場粒子追跡法

    松浦 有祐、中村 文子、大内尚子、加藤 晴久

    現在インラインの異物粒子管理法として用いられている単一粒子光散乱法は校正粒子換算粒子であることから、真の粒子径評価をすることができない欠点がある。そこで、単一粒子の動的挙動観測から粒子径を算出する新規インライン計測法として、流れ場粒子追跡法を開発した。本手法は材質に関わらず精確な粒子径を評価できることから近未来のインライン異物粒子管理法として重要な役割を果たすことが期待される。

  • 粒径標準の現状と課題

    高畑 圭二

    粒径は、現在、20 nmから1 μmの粒径域の単分散粒子を対象にした粒径値づけ校正サービス(依頼試験)により標準供給を行っている。この粒径標準の現状と課題、そして単分散粒径標準CRM開発への展開について報告する。

  • 個数濃度を対象にした気中粒子粒径分布標準に関する研究

    村島 淑子

    気中粒子の粒径分布測定の精度保証に資する標準や校正技術の開発に取り組むにあたり、粒径分布測定装置の個数濃度の性能評価法として、個数濃度標準で校正した凝縮粒子計数器(CPC)を基準とし、単分散PSL粒子の総個数濃度を比較する総個数濃度比較法を提案した。総個数濃度比較法によって、市販の電気移動度式粒径分布測定装置の性能評価および不確かさ評価を行ったので、その結果を発表する。

  • 光散乱式・光遮蔽式粒子計数器による液中粒子数濃度の測定精度検証

    車 裕輝

    光散乱式粒子計数器と光遮蔽式粒子計数器による液中粒子数濃度の測定精度の検証を行った。2 μm PSL 粒子懸濁液に対して二つの測定器で得られた液中粒子数濃度は不確かさの範囲内でよく一致しており、顕微鏡法ともよく一致していた。

【物質計測標準研究部門 熱物性標準研究グループ】

  • 高温酸化物融体の熱物性測定法の開発 -多段階パルス通電加熱技術の開発-

    渡辺 博道、渡部 雅(日本原子力研究開発機構)、森本 恭一(日本原子力研究開発機構)、加藤 正人(日本原子力研究開発機構)、有田 裕二(福井大学)、小無 健司(東北大学)

    学術・工学的な重要性にもかかわらず、1500 ℃以上の超高温酸化物融体の熱物性を正確に測定する方法は、未だに確立してない。我々は、パルス通電加熱法による比熱測定の対象物質を金属から溶融酸化物に拡張するため、試料を次々に異なる温度に短時間保持する多段階パルス通電加熱技術を開発した。本報告では、この加熱技術の性能評価結果を報告すると共に、高温での放射温度計測を行うために必要なカーボンナノチューブ黒化膜の製膜法に関する成果も報告する。

  • 熱流センサの信頼性に関する実測的研究

    阿子島 めぐみ

    熱流センサは、熱流の大きさと向きを同時に計測できる便利なセンサである。産総研では、保護熱板法を用いて1次元の固体伝導下で固有感度決定のため熱流密度標準の供給を行っているが、実用使用時は、片面を物体に張り付けて、もう片面はフリーの状態となり、固体伝熱、対流伝熱、ふく射伝熱が有効な見かけ感度の条件下で使用される。本研究では、固有感度と見かけ感度の相違に関する課題の抽出を試みた。

  • 薄膜熱拡散率標準物質の概要と開発

    八木 貴志

    熱物性標準研究グループでは、薄膜材料による熱拡散率の標準物質として、現在Mo薄膜400 nm(CRM5808)と窒化チタン薄膜(RM1401)を頒布している。これらの概要および製造プロセスを示すとともに、現在開発中のRM1401の後継標準物質について紹介する。

  • ナノスケール熱物性と熱物性データベース

    山下 雄一郎

    ナノスケールにおける熱物性はサイズ効果と呼ばれるバルクと異なる性質が現れる。例えばナノワイヤにおけるフォノン熱伝導は、表面によるフォノン散乱により熱伝導率が低下する。また、厚さ100 nm程度の薄膜では平均自由行程が制限されることから、フォノン熱伝導率はバルクを下回る。本報では、そうしたナノスケールにおける熱物性データを収録する熱物性データベースの開発について報告する。

  • 界面熱抵抗評価によるFeO皮膜の熱拡散率/熱伝導率補正

    李 沐、阿子島 めぐみ

    鋼材の熱間加工において鋼材の表面に酸化鉄(FeO)皮膜が不均一に生成し、鋼材の温度制御や表面品質に大きな影響をおよぼす。熱間圧延工程における温度予測精度の向上には酸化鉄皮膜の伝熱特性評価が必要である。レーザフラッシュ法を用いて厚さが異なるFeO皮膜の熱拡散率を測定し、FeO皮膜とFe基板の界面熱抵抗を評価した。加えて、得られた界面熱抵抗により、FeO皮膜の熱拡散率/熱伝導率を補正した。

  • 固体熱膨張率計測技術の開発 -室温用レーザ干渉式熱膨張計の適用温度範囲拡張-

    山田 修史

    固体材料の熱膨張率に関する計測技術の開発および標準物質および依頼試験による標準の供給を行っている。室温付近においてはゲージブロック形状の器物を対象とした依頼試験を提供しているが、その高精度性をCTE機能材料の特性評価にも活用するため、測定温度範囲の拡張を目的としたレーザ干渉式熱膨張計測システムの新規構築を行った。

【物質計測標準研究部門 計量標準基盤研究グループ】

  • Joint Committee for Guides in Metrology WG1(GUM)についての報告

    田中 秀幸

    今後OIML代表として,BIPM主催のJCGM WG1に参加することとなった。WG1はGUMについてメンテナンスを行っているワーキンググループである。本発表では2018年12月に開催されたJCGM WG1についての内容に関して紹介する。

  • 買い手の評価を考慮した管理限界の最適化 

    城野 克広、田中 秀幸、小池 昌義

    出荷検査において、規格限界よりも小さい管理限界を定めることは多い。本研究では、そのような出荷検査において、測定の不確かさを考慮し、管理限界の経済学的な最適化について理論的な考察を行う。従来的なオンライン品質工学で考えられてきた視点に加え、検査による出荷品の品質向上に伴い、買い手からの評価が変化することを考慮した。特に、量産品の全数検査を行った場合について、買い手の評価と製造コストの経済モデルおよび出荷検査の統計モデルを構築した。

  • 機械学習と深層学習の自動定理証明への応用についての検討

    松岡 聡

    近年、様々な領域において、ものの集まりをいくつかのクラスに分類する分類問題を、機械学習あるいは深層学習を用いて解く試みがなされている。ある定理が正しいか否かを判定する自動定理証明もこのような分類問題と考えることができる。本発表では発表者が開発中のソフトウェアProof Net Calculator にこのような技法を適用できるかについての検討を報告する。

  • フタル酸エステル類分析における問題点

    松山 重倫

    フタル酸エステルはEUにおけるRoHS規制の対象物質となるなど,分析の需要が高まってきている。一方、その分析においては、前処理、コンタミネーション、分離が不十分、など解決すべき多くの問題がある。今回、フタル酸エステル類分析におけるこれらの問題点とその解決法について発表する。

【物質計測標準研究部門 精密結晶構造解析グループ】

  • 水晶振動子高圧粘性計測法のディーゼル燃料への適用

    山脇 浩

    近年のディーゼルエンジンは高圧力下に燃料を一旦蓄えて噴射するので、高圧力下での挙動や物性の評価が重要であり、ディーゼル燃料の成分であるn-ドデカンやオレイン酸メチルの高圧粘性測定に水晶振動子法の適用を検討した。高圧下でのラマン測定の結果も示す。

  • 超硬質窒化物の結晶構造モデリングとビッカース硬さ計算

    藤久 裕司

    金属窒化物は超硬材料として利用価値が高いものの、金属の種類、組成まで含めるとその新物質はまだ十分に探索されていない。発表者はTIA連携事業「かけはし」により、多数の窒化物の結晶構造モデリング、体積弾性率計算、ビッカース硬さ計算を行い、有望な新物質を実験へフィードバックすることを試みている。その結果を報告する。

  • テトラヒドロピランハイドレートの粉末X線構造解析

    竹谷 敏

    クラスレートハイドレートは、水分子によって形成される多面体かご型構造(ケージ)中に、ガスを包接する氷状の結晶である。ケージ中に包接される分子の種類によっては 273 K以上の温度でも安定なため、新たな蓄熱材料やガス貯蔵媒体としての応用が期待されている。今回の発表では、テトラヒドロピランハイドレートの粉末X線構造解析を実施、その結果に基づくケージ構造とケージ中におけるゲスト分子の分布状態について考察する。

  • 情報量規準により決定された量子スピン系酸化物単結晶の構造モデルと多次元結合原子価解析

    後藤 義人

    単結晶精密構造解析法における原子構造モデルの決定精度の向上を目的として開発された新指標である情報量規準の導入によって、量子スピン系梯子物質Sr14Cu24O41の複合結晶構造モデルを発見より30年後にしてようやく確定することが出来た。今回は更に、多次元表記のBond valence sum(結合原子価)解析を駆使することによって、電荷分布および原子変調の物理的意味を明確にする手法を紹介する。

【分析計測標準研究部門 音響超音波標準研究グループ】

  • 光波マイクロホンによる音圧測定における測定システムの振動の影響

    山田 桂輔、園田 義人、堀内 竜三

    光波マイクロホンは、音圧による空気の屈折率変化をレーザとレンズによる光学的フーリエ変換により検出する測定法である。本研究では、レンズ等の光学測定系への音の入射により生じる測定系の振動が、光波マイクロホンによる音圧測定に与える影響について実験的検討を行った。結果として、振動の影響により8 kHz以下では光波マイクロホンの出力は理論的な周波数特性からずれることが示された。

  • フィードバック型音響校正器が発生する音圧の安定性に関する検討

    高橋 弘宜、米嶌 和香子、山田 桂輔、堀内 竜三

    音響校正器のカプラ内部が一定の音圧となるようフィードバック制御された音響校正器は一定の音圧を安定に発生することができるが、その安定性を評価した報告は少ない。本報告では、当部署で音圧感度校正したLS1マイクロホン及びLS2マイクロホンを用いて、フィードバック型音響校正器が発生する音圧の安定性を評価したので報告する。

  • ハイドロホン感度の振幅及び位相の周波数特性を用いた診断用超音波の瞬時音圧計測技術の開発

    千葉 裕介、吉岡 正裕、堀内 竜三

    広帯域超音波の音圧を高めると診断画像の画質は向上するが、安全性確保のための規制値を超過できない。このため、上限に近い広帯域超音波瞬時音圧をより精密に得るための新たな計測技術と計量標準が求められている。本報告では、感度の周波数特性を考慮した瞬時音圧測定法の原理的有効性を確認した。周波数特性が異なる2つのハイドロホンに、上記手法と従来の超音波中心周波数における感度の振幅特性のみを用いた手法を適用し、測定される瞬時音圧を比較検討した。

  • 天秤法を用いたTI測定

    内田 武吉、吉岡 正裕、堀内 竜三

    超音波による熱的作用の安全性を示す指標にTI(Thermal Index)がある。TIを測定するための装置を開発したので報告する。

  • 相互校正法を用いた100 kHz - 1 MHz帯域用超音波音圧標準の供給

    吉岡 正裕

    NMIJでは広帯域超音波を用いる超音波診断装置、1 MHz以下の超音波を用いる超音波物理療法機器や超音波洗浄器の性能や安全性評価のための超音波音圧の精密計測に資する、ハイドロホン(水中用超音波マイクロホン)感度校正の低周波側への周波数範囲拡張を進めている。現在100 kHz - 1 MHzの周波数帯域で標準供給している相互校正法を用いたハイドロホン感度校正について報告する。

  • 高周波超音波音圧標準の開発 - 60 MHzへの拡張 -

    松田 洋一、吉岡 正裕、内田 武吉、堀内 竜三

    我々は、眼科や血管の診断で用いられる高周波の超音波を定量的に評価する目的で、超音波音圧標準(ハイドロホン感度校正)の周波数帯域を60 MHzに拡張するための開発を進めている。今回は、高周波の超音波を高精度に計測するために、音源の小型化、音源の位置合わせ機構の改良、信号処理回路の改良を行った結果を報告する。

【分析計測標準研究部門 放射線標準研究グループ】


  • CyberKnife高エネルギー光子線の水吸収線量の絶対線量計測

    清水 森人、齋藤 拓也、平山 憲、森下 雄一郎

    CyberKnife装置から出る非平坦化高エネルギー光子線の絶対水吸収線量をグラファイトカロリーメータで測定し、電離箱線量計の水吸収線量校正定数および線質変換係数を決定したので報告する。

  • 炭素線水吸収線量校正定数の線質依存性の検証

    清水 森人、山口 英俊、佐藤 優樹、平山 憲、田中 隆宏、森下 雄一郎、加藤 昌弘、黒澤 忠弘

    炭素線水吸収線量標準の確立に向けて、拡大ブラックピーク形状の違いが電離箱線量計の水吸収線量校正定数に与える影響を確認したので報告する。

  • 水晶体被ばく線量測定に用いるβ線照射場の設計

    加藤 昌弘、黒澤 忠弘

    β線組織吸収線量率の校正では3種のエネルギーの照射場が整備されているが、近年ニーズが高まっている水晶体被ばく線量測定においてはエネルギー点の不足が指摘されている。本研究ではフィルタによりエネルギーを弱めた照射場を校正・試験に利用するため、従来より大きい放射能を持つ線源を導入し照射場を設計した。

  • 放射線防護の為の硬X線校正場の開発

    石井 隼也、黒澤 忠弘、加藤 昌弘

    現在国内の施設を用いて光子に対するエネルギー特性を考慮した線量計の校正を行う場合、X線とγ線の中間エネルギー領域である400 keV付近のエネルギーが欠落している。300 kVを越える450 kVまでの高い管電圧のX線管とグラファイト壁空同電離箱を使用し、高エネルギーX線場における高精度な空気カーマの測定を目指す。その新しいエネルギー領域の線量標準の開発の現状について報告する。

  • 自由電子レーザ用小型常温放射計の性能評価

    田中 隆宏、Alexander Gottwald、Roman R. Klein、Udo Kroth、Hendrik Kaser、Reiner Thornagel、Janin Lubeck、Andrey A. Sorokin、Kai Tiedtke、加藤 昌弘、齋藤 則生、Mathias Richter

    自由電子レーザのレーザパワーの絶対強度測定用に開発した常温放射計の汎用性向上ならびに測定強度範囲の拡張のため、電子冷却機構を搭載した小型常温放射計を新たに開発した。この小型常温放射計の性能の評価を、EUV波長領域のシンクロトロン放射光ならびに自由電子レーザを用いて行ったので、その結果を報告する。

  • 環境放射線モニタリングポストの現地校正手法の開発

    黒澤 忠弘、加藤 昌弘

    環境放射線モニタリング機器は、測定箇所に強固に設置され容易に取り外すことが困難となっている。測定値の信頼性確保のためにも、線量計の校正は必要不可欠となっている。そこで線量計が設置されている屋外において校正が可能となる、現地校正手法の開発を行った。

  • アラニン線量計を用いた大線量ガンマ線標準の開発と医療用炭素線測定技術の開発

    山口 英俊、清水 森人、森下 雄一郎、平山 憲、田中 隆弘、石井 隼也、加藤 昌弘、黒澤 忠弘

    医療機器の滅菌や、食品照射などに用いられる大線量のガンマ線の線量標準の開発状況について報告する。本年度は、アラニン線量計に照射される線量を高精度に決定するためのカロリーメータの開発を行った。また、医療用炭素線の線量測定のために、アラニン線量計を応用した結果を紹介する。

【分析計測標準研究部門 放射能中性子標準研究グループ】

  • 産総研中性子標準の現状について

    原野 英樹、松本 哲郎、増田 明彦

    新規供給開始した1.2 MeV中性子フルエンス標準、連続スペクトル中性子フルエンス標準のJCSS整備状況、参加中の中性子放出率と周辺線量当量の国際比較、単色中性子フルエンス標準の開発状況、中性子標準に関連した医療応用研究、高エネルギー中性子核データ測定、熱外中性子絶対測定用検出器の開発等、産総研中性子標準の現状について報告する。

  • 熱外中性子絶対測定用検出器の開発

    松本 哲郎、増田 明彦、原野 英樹、堀 順一(京都大学)、佐野 忠史(京都大学)

    ホウ素中性子捕捉療法など近年利用が増加している熱外中性子を精度良く測定するために、ホウ素を含むLGBシンチレータとガンマ線測定用のBGOシンチレータで構成される検出器を開発している。10B(n,ag)反応を利用するものであるが、全吸収10B試料とα-ガンマ同時測定を利用することによって、10B(n,ag)反応断面積に依存しない測定が可能になるのが特徴である。(科研費16K09030)

  • 大強度中性子用ボナー球スペクトロメーターの開発

    増田 明彦、松本 哲郎、原野 英樹

    加速器中性子源を用いたホウ素中性子捕捉療法(BNCT)では、生成中性子ビームのエネルギー分布を実験的に評価することが必要とされている。治療レベルの大強度中性子ビームを直接測定するために、電流モード動作させた光電子増倍管に接続したシンチレーターを検出素子としたボナー球検出器を開発している。本発表ではその詳細と応答特性の実験評価結果について報告する。

  • Pm-147の放射能絶対測定

    佐藤 泰

    産総研では、β- 線を放出する核種に対する放射能絶対測定装置としてTDCR (Triple to Double Coincidence Ratio) 装置を開発している。このTDCR装置によりPm-147の放射能絶対測定を行った。その結果、従来の国家標準と整合することが確認できた。

  • ラドンモニタ校正に用いるガス循環システム

    古川 理央、柚木 彰

    自然放射性核種のラドン(Rn-222)は一般公衆の被ばくの原因として関心が高く、国家標準による標準供給が要望されている。このような背景を受けNMIJはラドン濃度の国家標準の立ち上げに向けた開発に取り組んでいる。比例計数管を標準器として用い同じガスループにワーキングスタンダードである通気式電離箱、ラドンモニタを接続し値付けされたガスを用いてラドンモニタを校正する。このような校正が可能なガス循環システムについて紹介する。

  • ガス比例計数管で生じる比例蛍光を用いた放射能測定法のフィージビリティスタディ

    柚木 彰

    放射能絶対測定法の一つである4πβーγ同時測定法では、ガス比例計数管やシンチレーション検出器を用いている。軌道電子捕獲核種のように測定エネルギーが低い場合にも高い検出効率が得られるように、従来方式に信号増幅過程をさらに追加した比例蛍光計数管を開発し、そのフィ−ジビリティスタディを行ったので報告する。

【分析計測標準研究部門 X線・陽電子計測研究グループ】

  • 小型ビーム装置の開発

    大平 俊行、高輪 正夫(フジ・インバック(株))、北村 是尊(フジ・インバック(株))、小林 洋一(フジ・インバック(株))

    実験室サイズの陽電子ビーム寿命測定装置および超小型イオン注入装置の開発を行っている。最近行った改造等による装置性能向上と測定例等を報告する。

  • 超小型X線源を用いた先進X線非破壊検査技術

    加藤 英俊、藤原 健、鈴木 良一

    針葉樹型カーボンナノ構造体冷陰極電子源を用いた小型軽量な非破壊検査用高エネルギーX線源の開発を行うとともに、産業プラント配管などの構造物の維持・管理や生産現場における効率的で信頼性の高い検査技術を実現するため、開発したX線源と検出器をバッテリー駆動ロボットに搭載した現場で安全にかつ高い信頼性で効率的に検査ができるシステムの開発を行っている。

  • 構造材料解析用中性子源のための電子線形加速器の開発

    オローク ブライアン、大島 永康、小川 博嗣、木野 幸一、黒田 隆之助、佐藤 大輔(放射線イメージング計測研究グループ)、宍戸 玉緒(新構造材料技術研究組合)、鈴木 良一、清 紀弘、田中 真人、豊川 弘之、林崎 規託(東京工業大学)、藤原 健、古坂 道弘(新構造材料技術研究組合)、満汐 孝治、室賀 岳海(新構造材料技術研究組合)、渡津 章(構造材料研究部門)

    産総研は、新構造材料技術研究組合(ISMA)に参画し、輸送機器軽量化を目指したNEDOの委託事業「革新的新構造材料等研究開発」の下、産総研つくばセンターで小型加速器ベース中性子源の構築をすすめている。本発表は中性子発生用電子加速器の構築状況について紹介する。

  • 産総研 低速陽電子ビーム利用施設の現状

    満汐 孝治、小林 慶規、オローク ブライアン、鈴木 良一、大島 永康

    産総研 低速陽電子ビーム利用施設では、電子線形加速器を用いた高強度陽電子ビーム発生技術と、それを利用した材料中の微小空隙評価技術の開発に取り組んでいる。本発表では、空隙評価技術の高性能化に向けた種々の施設改造・整備の結果と施設の現状について報告する。

  • 構造材料分析を目指した小型加速器中性子源の設計

    木野 幸一、大島 永康、小川 博嗣、豊川 弘之、O'Rourke Brian、鈴木 良一、清 紀弘、黒田 隆之助、田中 真人、藤原 健、満汐 孝治、佐藤 大輔(放射線イメージング計測研究グループ)、宍戸 玉緒(新構造材料技術研究組合)、室賀 岳海(新構造材料技術研究組合)、古坂 道弘(新構造材料技術研究組合)、渡津 章(構造材料研究部門)、林崎 規託(東京工業大学)

    構造材料分析を目指して小型加速器中性子源の設計・建設を行っている。パルス中性子透過イメージングによる構造材料のミクロ情報の分析に最適となるよう中性子源を設計しており、進捗状況について紹介する。

【分析計測標準研究部門 ナノ顕微計測研究グループ】

  • レーザーイオン化による真空度・表面測定技術の開発

    鈴木 淳

    335 nm光による非共鳴イオン化で得られたH2O及びCOのシグナルと真空装置中の真空度の関係から真空度測定について考察した。また、表面をレーザー照射して得られるイオンから表面状態の評価法について検討した。

  • 高分解能ナノプローブ赤外分光法の開発

    井藤 浩志、本田 明紀、平本 寛子

    ナノプローブ技術を利用した、フーリエ赤外分光法について、官能基領域(2500 - 4000 /cm)の測定範囲を拡張し、分解能テスト試料を作成して10 nmクラスの分解能を実現した結果について報告する。

  • サンドイッチ凍結乾燥法による基板上分散ナノ粒子の均一性検証

    重藤 知夫

    ナノ粒子懸濁液を薄膜化して凍結乾燥する「サンドイッチ凍結乾燥法」を開発し、各種粒子の良好な基板上分散が得られている。今回は、同技術の進展を紹介するとともに、シリカナノ粒子2峰試料を用いて、基板上でのナノ粒子分散の均一性を検証する。

  • イオン付着質量分析法によるガソリンのプラズマ改質過程の解析

    浅川 大樹、齋藤 直昭(分析計測標準研究部門)、高橋 栄一(省エネルギー研究部門)

    バリア放電によるガソリン燃料の改質はエンジンの燃費向上などに有効であることが報告されているが、詳細なメカニズムは不明であった。今回は改質を行った燃料を直接、イオン付着質量分析法により分析し、その結果に基づいて分子軌道法による化学反応シミュレーションを行い改質の化学反応過程を明らかにしたので報告する。

  • 二次イオン質量分析(SIMS)用の一次イオンビーム源の開発

    藤原 幸雄

    クラスターイオンビームを二次イオン質量分析(SIMS)用の一次イオンビームとして用いることで有機分子の検出効率を高めることが知られている。しかし、面分解能や感度は未だ十分なレベルにはなく、有機材料に適した高集束性かつ高感度な一次イオンビーム源の開発が大きな課題となっている。そこで我々は、プロトン性イオン液体を用いた新型クラスターイオンビーム源の研究開発を進めている。プロトン性イオン液体としては、硝酸プロピルアンモニウムが有望であることがわかった。

【分析計測標準研究部門 放射線イメージング計測研究グループ】

  • 高出力レーザーの応用研究

    三浦 永祐

    高出力レーザーを用いてエネルギーを時間的、空間的に集中して物質に照射することにより、エネルギー密度の高いプラズマを生成することができる。この様なプラズマを利用し、小型の光・量子ビーム源を目指したレーザープラズマ加速研究や金属材料の強靭化を目指したレーザーピーニング研究等、高出力レーザーの応用研究について報告する。

  • 光学素子を用いたX線イメージング法に関する研究

    安本 正人、三澤 雅樹(健康工学研究部門)、寺崎 正(製造技術研究部門)

    ラボタイプのX線源を利用して、大面積で位相情報を使ったX線検査装置について研究開発を行っている。この検査装置に用いるX線光学素子として、透過型X線回折格子を作製している。この透過型X線回折格子は、金属製で、数ミクロン周期で高さ数十ミクロンの高いアスペクト比を持った微細な構造体からできている。この回折格子からタルボ干渉光学系を構築し、位相イメージングを行った。

  • 軌道角運動量を運ぶガンマ線渦光源の開発

    平 義隆

    新規量子ビーム源である軌道角運動量を運ぶX線渦・ガンマ線渦は、原子や原子核との相互作用において新たな現象を引き起こすことが期待される。発表者が新たに提案した電子ビームと円偏光レーザーを用いた軌道角運動量ビームの発生およびX線渦の渦度測定について発表する。

  • 有機SiポリマーのX線吸収分光およびレーザー加工特性

    小川 博嗣、池浦 広美、関口 哲弘(日本原子力研究開発機構)、澁谷 達則、盛合 靖章、黒田 隆之助、田中 真人、佐藤 大輔

    有機Siポリマーの非占有電子状態の分光研究および応用研究を行っている。ポリシロキサンおよびポリシランの非占有電子状態の研究としてX線吸収分光によりSi K吸収端近傍ピークの帰属を行った。また、医療材料やマイクロ流体デバイス等に用いられているポリジメチルシロキサンの微細加工技術の高度化のため超短パルスレーザーによる加工特性評価を行った。これらについて紹介する。

  • 偏光を用いた分光・イメージング分析手法の開発と応用

    田中 真人、田中 宏、小川 博嗣、佐藤 大輔、澁谷 達則、盛合 靖章、黒田 隆之助

    近赤外〜真空紫外線領域での偏光を用いた分光装置(エリプソメトリ、円二色性など)や光電子顕微鏡によるイメージング装置の開発の現状ならびに、これら装置等を用いたレーザー加工用の実用材料(ガラス、高分子)、タンパク質などキラル分子、焼結磁石などの応用例に関する紹介を行う。

  • テラヘルツ帯コヒーレントエッジ放射を用いた電子バンチ長計測の研究

    清 紀弘、小川 博嗣、全 炳俊(京都大学)、大垣 英明(京都大学)、田中 俊成(日本大学)、 早川 恭史(日本大学)、境 武志(日本大学)、住友 洋介(日本大学)、早川 建(日本大学)、野上 杏子(日本大学)

    京都大学エネルギー理工学研究所および日本大学量子科学研究所と共同して、コヒーレントエッジ放射(CER)を利用した電子バンチ長計測技術の研究を行っている。エッジ放射は電子ビームやアンジュレータ放射を損なうこと無く観測できるため、自由電子レーザー発振中の電子バンチ長計測が可能になる。本発表では、両大学にて開発したCER光源と、バンチ長計測技術について説明する。

  • 非破壊検査用高エネルギーX線源の開発

    豊川 弘之、藤原 健、佐藤 大輔

    橋梁や道路床版などのコンクリート構造物内部の劣化や損傷を、様々な条件の現場で簡便に撮影するため、小型電子加速を用いた新たなX線イメージング手法(後方散乱X線イメージング法)について研究している。テーブルトップサイズの小型電子加速器を用いた高エネルギーX線源の開発について報告する。

  • ディジタル中性子イメージング検出器&中性子3Dスキャナー

    藤原 健

    中性子というX線に替わる放射線を用いたイメージング技術を開発している。中性子を用いることで、X線では見えなかった金属構造物内の水素含有物(水、樹脂、オイル)、リチウム電池などの軽元素を可視化することが可能になる。

  • 内殻電子励起を利用した材料計測 -フタロシアニン化合物

    池浦 広美、小川 博嗣、関口 哲弘(日本原子力研究開発機構)

    内殻電子励起をともなうX線吸収分光では内殻ホールのポテンシャルによって局在化した励起状態が生じる。バンド構造を持つ場合、完全には局在化せず、内殻束縛励起子とバンド構造に由来する二種類のピークが観測され、伝導電子の非局在性についての知見を得ることができる。フタロシアニン化合物の測定および解析結果について報告する。

  • イリジウム・セリウム化合物電子源の特性評価

    佐藤 大輔、田中 真人、小川 博嗣、池浦 広美、澁谷 達則、盛合 靖章、黒田 隆之介、菅原 仁(神戸大)、豊川 弘之

    イリジウム・セリウム(Ir-Ce)化合物の電子源利用研究を行っている。Ir-Ce化合物は、熱電子源や光電子放出電子源として優れた電子放出特性を有しており、そのメカニズム解明と材料の高品質化等の研究を行っている。また、非破壊X線検査装置等への利用を目指して、Ir-Ce化合物を用いた大電流電子銃の開発に取り組んでいる。これらについて紹介する。

【分析計測標準研究部門 非破壊計測研究グループ】

  • パルスレーザー走査法による接着接合部の超音波検査

    遠山 暢之、叶 嘉星

    レーザー超音波可視化検査手法をCFRP/金属接着接合部の欠陥検出に適用し、従来超音波法より遙かに迅速なスクリーニング検査手法を提案する。さらにレーザードップラ振動計を用いた遠隔検査手法および機械学習を用いた欠陥自動検出手法を併せて開発する。

  • 膜沸騰法による C/Cコンポジットの調製とその特徴

    岩下 哲雄、曽根田 靖(創エネルギー研究部門)、宇田 道正、添田 晴彦((株)IHIエアロアスペース)

    PAN系炭素繊維の積層させた基材をシクロヘキサンまたは灯油に浸し、沸点以上のおよそ1000 ℃で熱処理することにより、炭素繊維表面にカーボン層を積層させてC/Cコンポジットを調製した。このC/Cコンポジットを常温または2400 ℃での曲げ試験を行い、試験後の組織観察を行い、膜沸騰法によって調整したC/Cコンポジットの特徴を考察した。

  • 炭素繊維単繊維での力学特性評価手法の開発

    藤田 和宏、永井 英幹、卜部 啓、杉本 慶喜(構造材料研究部門)、岩下 哲雄

    これまで、我々は炭素繊維の単繊維での各種力学特性評価試験手法の開発を行ってきた。これら開発した試験手法について改めて報告する。また、代表的な繊維としてPAN系高強度糸とピッチ系高弾性率糸での結果を示し、繊維の異方性の観点からそれぞれの特徴を明らかにする。

  • 炭素繊維単繊維の異方性を考慮した解析

    永井 英幹、藤田 和宏、卜部 啓、杉本 慶喜(構造材料研究部門)、岩下 哲雄

    当グループでは、これまで炭素繊維単繊維の各方向力学特性試験手法を開発してきた。本発表では、FEM解析による曲げ弾性率評価を、異方性の程度の異なる複数の繊維について、我々が計測してきた各方向異方性データを用いた解析で行うことにより、解析における異方性考慮の重要性を示す。

  • 極めて近接配置された微小欠陥の映像化による分離判定評価

    山本 哲也

    レーザー走査による超音波伝搬現象映像化探傷手法について、当グループで行っている測定対象の範囲拡大の取り組み状況について紹介する。特に、極めて近接して配置された微小欠陥の映像化による分離判定評価に関して議論する。

  • 縞画像の位相解析技術の高度化と社会インフラへの応用

    李 志遠、王 慶華、夏 鵬、津田 浩

    モアレ法による高精度・高速な物体の非接触形状・変形計測を実現すべく縞画像の位相解析技術の高度化研究を行った。2次元サンプリングモアレ法と斜め格子の組み合わせでよりロバストな変位計測ができる。同手法を橋梁のたわみ計測に適用した例を報告する。

  • 汚れの影響を受けにくい微小ひずみ分布計測方法の開発

    王 慶華、李 志遠、夏 鵬、津田 浩

    モアレ法およびフーリエ変換を含むさまざまな位相解析法における、汚れの影響を受けにくいひずみ分布測定のための局部位相接続アルゴリズムを新たに開発した。このアルゴリズムとサンプリングモアレ法の融合によって構造材料の微小ひずみ分布を測定し、チタン合金のき裂進展とCFRP積層材の層間せん断挙動を評価した。

  • ナノオーダーの面外変位動的計測装置の研究開発

    夏 鵬、王 慶華、李 志遠、津田 浩

    2台のカメラを用いた位相シフトのずれ量を高精度に検出できる校正型位相シフトデジタルホログラフィ計測システムを提案した。本システムにより、電子デバイスのナノオーダーの熱変形の動画計測を実現した。本システムについて紹介するとともに、記録速度の高速化の可能性を議論する。

  • ディープラーニングを用いた超音波画像解析システムの研究開発

    叶 嘉星

    本研究では、超音波伝搬映像に対して、欠陥検出の自動化を目指す。識別手法には、機械学習法の一つである畳み込みニューラルネットワークを用い、特徴抽出部におけるフィルタ数やそのサイズ、階層数などが欠陥の識別性能に及ぼす影響について検討を行った。提案手法を用いて欠陥自動検出を行ったところ、従来手法に比べて良好な検出性能が得られた。今後データ数を増やすことで、さらに高い欠陥検出性能を実現させる。

【分析計測標準研究部門 ナノ分光計測研究グループ】

  • 波面制御を利用した深部の高分解能光断層イメージング

    白井 智宏

    波面制御技術と耐分散性をもつスペクトル強度干渉断層イメージング技術を融合すると、これまでには達成できなかった生体深部の断層像を高分解能で取得できるものと期待される。本研究では、その実現に向けた最新の取り組みと成果を報告する。

  • 赤外線カラー暗視カメラによるストロボ撮影

    永宗 靖

    高感度カメラ等による撮影では、撮影対象に光源が含まれる場合、ハレーションを引き起こし鮮明な映像を撮影することが出来ない。一方、本技術を用いれば、撮影対象に含まれる光源等からの強い逆光を大幅に削減し、より鮮明なカラー映像を撮影することが出来る。

  • 過渡吸収分光および過渡発光分光計測システムの整備状況と研究応用例

    細貝 拓也、松 弘幸

    本発表では、当グループがこれまでに開発してきたいくつかの過渡吸収および過渡発光分光装置の種類および性能を紹介する。また、それらの装置を用いてこの1年の間に行ってきた有機化合物を中心とした各種先端材料の研究成果を紹介する。

  • 材料の励起状態下にある高エネルギー電子のエネルギー決定手法の提案

    細貝 拓也、松 弘幸、中村 健

    本発表では、我々がこれまで提案してきた、材料の励起状態における電子のエネルギー準位が光電効果閾値方で調べることが可能な二光子−光電子収量分光法について、その原理と開発状況について報告する。特に実験の例として、フレキシブルエレクトロニクスの本命の一つとされる有機半導体材料の薄膜に適用した実験結果を紹介する。

  • レーザー共鳴イオン化による超高感度質量分析法の開発:ストロンチウム同位体分析への適用

    永井 秀和

    レーザー共鳴イオン化とパルスレーザー蒸発法を組み合わせた高感度質量分析装置を開発し、ストロンチウムの同位体分析に適用した。固体試料(硝酸Sr)をパルスレーザー(波長1064 nm)照射で気化し、波長293.3 nmのレーザーで共鳴2光子イオン化を行った。本装置により、海水(濃度1 ppm)の様な試料でも分離濃縮などの前処理なしに少量(0.5 μL)で十分、分析可能であることが明らかになった。

  • 先進イナート表面への挑戦:表面の極低活性・極低反応性評価に関する技術調査

    中村 健、藤原 幸雄、鈴木 淳、新井 健太(工学計測標準研究部門)、吉田 肇(工学計測標準研究部門)、武井 良憲(工学計測標準研究部門)、久保 利隆(ナノ材料研究部門)

    材料プロセス装置の内壁表面等の活性・反応性を抑制する処理を施し、以って高純度・高選択的な材料プロセスを実現することは、機能性材料の調製とこれを用いたデバイス作製に必須であり、表面処理の特性を評価する計測技術は処理条件の最適化に不可欠である。本発表では、TIA参画機関連携の調査研究「先進イナート表面への挑戦」のうち、産総研担当分の表面の極低活性・極低反応性に関する計測・評価技術の調査結果について報告する。