2018年度 計量標準総合センター成果発表会
ポスターセッション 1日目

【工学計測標準研究部門 長さ標準研究グループ】

  • Φ450 mmオプチカルフラットの絶対平面度測定

    近藤 余範、尾藤 洋一

    フィゾー干渉計は、オプチカルフラットなどの表面形状を測定する場合、高精度な測定手法であるが、参照面との比較測定であり、絶対表面形状を得ることが難しい。そこで、参照面を用いない表面の局部傾斜角度測定に基づく絶対表面形状測定装置を開発した。本報では、自重方向に設置したΦ450 mmオプチカルフラットの絶対平面度測定に関する基礎的な測定データについて報告する。

  • 基準球のランダムボール回転を利用したマイクロCMMのプローブ校正

    工藤 良太、近藤 余範、尾藤 洋一

    マイクロCMMの絶対精度向上のためには、測定プローブ球の形状偏差を高精度に校正する必要がある。一般的な基準球を用いたプローブ球校正法においては、基準球自体の形状偏差による不確かさが問題となるが、我々は基準球を回転させ、複数の形状データを平均化することにより形状偏差の高精度校正を達成した。

  • 標準尺の2015年国際比較

    寺田 聡一、鍜島 麻理子

    2015年に韓国KRISSがパイロットで開始した標準尺の国際比較(APMP L-K7)に関して、NMIJの測定値、及び他国との状況について報告する.

  • 三球面法を用いた曲率半径測定法の開発

    尾藤 洋一

    ファブリペロ共振器及び光周波数測定を用いた曲率半径測定法において、三つの曲面ミラーの組み合わせ測定を利用した曲率半径の絶対値算出手法に関して報告する。

【工学計測標準研究部門 幾何標準研究グループ】

  • X線CT計測における透過長さの影響評価

    松崎 和也、佐藤 理、藤本 弘之、阿部 誠、高辻 利之(工学計測標準研究部門)

    X線CTを用いた幾何形状計測においては、透過長さが異なる形状・大きさの測定対象には測定結果に異なる影響があることが知られている。本研究では、単純形状を組み合わせることで形状・大きさの異なる条件を実現し、要因ごとの測定結果への影響を比較・評価した。

  • 歯車型磁気式ロータリエンコーダ

    渡部 司、上山 裕理

    過酷環境下で利用される工作機械の回転主軸の角度制御の高精度化、および継続的な故障予知による寿命管理技術に資するため、ロータリエンコーダ自体が角度誤差を補正し、さらに軸振れ検出機能を持ち合わせたインテリジェントな歯車型磁気式ロータリエンコーダの研究開発を行っている。

  • 非直交光学式座標測定機の国際標準化

    阿部 誠、松崎 和也、佐藤 理、呂 明子、加藤 裕美、横田 俊(法政大学)

    パターン投影、縞投影などの方式による非直交光学式座標測定システムの性能評価法に関するISO国際標準の開発を行っている。測定対象の表面色に関する依存性について、対象物の分光反射率を色フィルタの分光透過率により近似的に検証する評価方法について実験的な取組みを行った結果について報告する。

  • 国際標準化を見据えたCMMによる幾何形状測定の不確かさ算出方法の開発

    佐藤 理、松崎 和也、阿部 誠、高辻 利之(工学計測標準研究部門)

    機械要素、電子機器部品の機能高度化に伴い、寸法公差だけでなく幾何公差の指示された部品が一般的になっている。製品の受け入れ検査では測定の不確かさを考慮して合否判定を行う必要がある一方、CMMによる機械形状測定の不確かさを実用的に行える手法は発展途上である。本研究ではISO 15530シリーズとしての国際標準化を出口として見据えた、CMMによる幾何形状測定の不確かさ算出方法の開発を行う。

  • 幾何学測定のためのX線CT装置

    藤本 弘之、松崎 和也、佐藤 理、阿部 誠、高辻 利之(工学計測標準研究部門)

    X線CT装置を製品の寸法形状を計測する幾何学測定器として利用するために、プロトタイプを用いた研究開発を行ってきた。幾何学測定の現状を紹介する。

【工学計測標準研究部門 ナノスケール標準研究グループ】

  • 低熱膨張製ブロックゲージの長さの経年変化評価 −第3報−

    平井 亜紀子、尾藤 洋一(長さ標準研究グループ)、松井 源蔵(長さ標準研究グループ)、服部 研作(黒崎播磨(株))

    加工・測定精度向上の要求など、工作機械や精密機械、計測機器において低熱膨張材料のニーズが高まっている。その中で、材料の長期寸法安定性も重要な特性で、新規材料としてセラミックスの低熱膨張材料が開発されている。我々は、低熱膨張材料の一つであるNEXCERAについて、組成を変えた材料でブロックゲージを作製し、その寸法の経年変化を評価している。9年間の経年変化評価結果について報告する。

  • 傾斜探針AFMによる半導体ラインパターンの垂直側壁形状計測

    木津 良祐、三隅 伊知子、平井 亜紀子、権太 聡(分析計測標準研究部門)

    半導体デバイス製造における計測要求として、sub-nm精度のラインパターン形状計測がある。本発表では、垂直側壁を探針走査可能な傾斜探針機構をもつ原子間力顕微鏡(傾斜探針AFM)により高分解能な側壁形状計測を行い、ラインエッジラフネス(LER)・側壁面粗さを算出した結果を報告する。側壁プロファイルの解析結果から、約0.1 nmの分解能で側壁面の凹凸を計測できていることがわかった。

  • 原子間力顕微鏡における空間寸法:計測器、エフェクト、測定

    Ronald Dixson(NIST)、Ndubuisi Orji(NIST)、三隅 伊知子、Gaoliang Dai(PTB)

    空間次元に関するAFMおよび測定の分類の枠組みを提示する。また、CD-AFM / 2D-AFMのための幾何学的および動的探針-試料相互作用のモデルも提示する。探針-試料相互作用およびサンプリングドリフトにおける走査軸アーチファクトの役割について説明する。さらに測定モデルの入力と出力に関して、AFM測定における空間次元と測定量の定義の影響について説明する。

  • サファイア両段差試料の高品質化

    菅原 健太郎、権太 聡(分析計測標準研究部門)

    サファイア基板への原子ステップを基準とした両段差構造の作成について研究を行っている。透明な基板上に作成された数原子層からなる段差のため、他の顕微鏡を用いた測定のためには、目視または低倍の光学顕微鏡観察で確認・検出できるパターン位置を示す目印の有無が重要となる。本報告では、両段差試料作成の再現性や目印・ガイドの作成について報告する。

  • 紫外線顕微鏡によるマスクエッジの検出

    土井 琢磨、菅原 健太郎

    主に紫外線顕微鏡によるマスク線幅の測定を行っている。測られた線幅は、線幅の凹凸、透過照明と反射照明、エッジ位置の決定アルゴリズム、焦点等により変化する。そこでその差を明らかにする。また、各パラメーターの最適化について考察する。

【工学計測標準研究部門 質量標準研究グループ】

  • 重力加速度計測の国際整合性確保のための絶対重力計の国際比較

    水島 茂喜、倉本 直樹、藤井 賢一(工学計測標準研究部門)

    重力加速度計測は、計測標準、資源探査、地震学、火山学、地球物理学、測地学など幅広い分野で利用されている。計量標準総合センターは、重力加速度計測の国際整合性を確保するため、自由落下を測定原理とする絶対重力計の国際比較に5回参加している。絶対重力計による重力加速度計測の相対不確かさは6×10-9に達する。本報告では、絶対重力計の国際比較の方法、不確かさの要因、国際比較の結果について紹介する。

  • 微小質量計測技術を用いた光放射圧の評価に関する研究開発

    藤田 一慧、倉本 直樹、山本 泰之(流体標準研究グループ)、藤井 賢一(工学計測標準研究部門)

    まもなく実施されるSI基本単位の定義改定を活用するアプリケーションとして、電極間の静電力をプランク定数にもとづき実現するボルトバランス装置の開発を進めている。本研究のターゲットは、このボルトバランス装置を用いた、既存の測定手法では実現困難な高精度微小質量/力測定であり、すでに出力1 W程度のレーザー光の反射に際し生じる微小力をボルトバランス装置によって評価している。装置開発の概要とその測定結果について報告する。

  • 新たなキログラムの定義に基づく質量標準に関する調査研究

    大田 由一

    質量の単位「キログラム」は国際キログラム原器によって定義されている。このキログラムを基礎物理定数によって再定義するための研究が世界各国で進められ、その結果、プランク定数に基づく新しい定義への移行が目前に迫っている。この定義改定による質量標準の供給体制の変化と、現在の産業界における質量計測技術の需要についての調査結果を報告する。

  • 新たなキログラムの定義とその実現

    倉本 直樹、水島 茂喜、藤田 一慧、大田 由一、藤井 賢一(工学計測標準研究部門)、張 ルウルウ(物質計測標準研究部門)、東 康史(物質計測標準研究部門)、黒河 明(物質計測標準研究部門)、大久保 章(物理計測標準研究部門)、稲場 肇(物理計測標準研究部門)

    2019年5月20日をもって国際キログラム原器はその役割を終え、プランク定数を基準とする新たなキログラムの定義が施行される予定である。計量標準総合センターではシリコン単結晶球体中の原子数を計測することで、新たなキログラムの定義を実現する。本発表では、実現に必要な球体体積測定および球体表面分析について概説するとともに、新たな定義に基づく質量標準供給のスキームについても紹介する。

【工学計測標準研究部門 流体標準研究グループ】

  • 絶対塩分の評価のための密度・屈折率測定

    粥川 洋平

    海洋観測において最も重要なパラメータである海水の絶対塩分は、電気伝導度に基づいた導出方法の誤差や、海水の熱力学状態方程式の不確かさが大きいといった課題を抱えている。本研究では、海水密度の絶対測定により状態方程式の信頼性評価を行うとともに、屈折率計測に基づく新しい絶対塩分センサを開発したので報告する。

  • 自己参照型格子比較器を用いたSi単結晶の結晶間格子比較

    早稲田 篤

    自己参照型格子比較器を用いてこれまで、結晶内の格子の分布・一様性評価を行ってきたが、新たに結晶間の格子定数の比較測定を行っている。モノクロメータや試料のアライメントの再検討等を行い、28Si結晶の格子定数測定を行った結果を報告する。

  • 音波・電磁波共振を利用した次世代混合冷媒の精密物性測定

    狩野 祐也

    地球温暖化対策として、冷凍・空調機器に使用されている温暖化係数の高い冷媒を代替する物質の探索が世界的に進んでいる。冷媒として使用するためには、安全性、生産コスト、サイクル性能といった多方面の評価指標を検討する必要があるが、現状では単一物質で既存冷媒に代替できる性能を有する候補冷媒は見つかっておらず、既存冷媒との混合物としての利用に注目が集まっている。本研究では、次世代混合冷媒候補として期待されているR-1123とR-32の2成分系混合冷媒について、音波・電磁波共振を利用した音速・誘電率同時計測装置を用いて、その基礎物性の精密計測を行った。

  • 新時代の微小質量計測法の開発と、MEMS技術を用いた粘度センサおよび微小質量センサの開発

    山本 泰之、松本 壮平(集積マイクロシステム研究センター)、藤田 佳孝、藤井 賢一(工学計測標準研究部門)、藤田 一慧(質量標準研究グループ)

    創薬の研究開発では微小なサンプルを取り扱うことが多くなり、微小質量の高精度計測の必要性が高まっている。しかしキログラム原器をスタート地点とするトレーサビリティ体系では、ナノグラムオーダーの微小質量領域の高精度測定は困難であった。来年度に予定されるキログラムの定義改定に伴い、質量を基礎物理定数などから決定することが可能になる。このことを利用して微小質量を静電気力の精密測定で決定できる新しい測定法としてボルトバランス法の開発を進めている。また、この原理を応用した質量・力センサーの開発も進めている。これに加え、小型の粘度センサーの研究を行っている。粘度センサはエンジンオイルやインキの性状のモニタリング用途に大きなニーズがあり、注目が集まっている。現場への適用開発を進めており、最新の開発状況を紹介する。

  • 高圧流体の粘性計測技術に関する調査研究

    村本 智也、藤田 佳孝、梶川 宏明(圧力真空標準研究グループ)、飯泉 英昭(圧力真空標準研究グループ)、井出 一徳(圧力真空標準研究グループ)

    高圧下における流体の粘性は、石油の回収率や機械の動力伝達性能を決定する重要な因子である。本調査研究では、高圧流体の粘性計測技術について、産業需要や開発事例等の調査を行い、考察する。また、高圧流体の高精度な粘性測定を可能にする、高圧流体コントロールシステムの研究開発状況について報告する。

  • 落球法による粘度絶対測定技術の開発

    藤田 佳孝

    粘度の国際基準値である水の粘度絶対値見直しや新たな中高粘度域の基準点設定を目指した落球法に基づく粘度絶対測定の開発を進めている。落球実験における高精度な落下終端速度決定に必要不可欠となる、試料槽内壁の境界条件による落下速度減速への系統効果評価のための新たな実験機構について、その基本動作を試料油中で確認した。この取り組みを含め落球実験システムの開発状況について報告する。

【工学計測標準研究部門 力トルク標準研究グループ】

  • 音叉式力計を参照標準とする50 N力比較器の性能評価

    林 敏行、上田 和永

    送りねじ機構により発生する寄生分力の影響を低減するため剛性を強化した負荷機構を有する、音叉式力計を参照標準とする50 N力比較器を開発した。倒立設置したひずみゲージ式力計を被測定器物とし、測定能力を評価した。また、ひずみゲージ式力計を用いて50 N力比較器と実荷重式力標準機との相互比較を実施した。ひずみゲージ式力計自身の不確かさ要因の影響はあるが、力比較器による最高測定能力は暫定的に約1.2×10-4と評価された。

  • 簡略化したロバーバル機構による50 N音叉式力変換器の小型化

    林 敏行、上田 和永

    簡略化したロバーバル機構を用い、直径70 mm高さ92 mmの円柱状容器に収まる音叉式力変換器を開発した。単純繰り返し性、設置方向を変更した際の再現性は、いずれも2×10-5以内となった。自由端側の質量を軽減したので、この音叉式力変換器は倒立して設置することもでき、力比較器と実荷重式力標準機を用いて正立時と倒立時との出力差を比較したところ、その差は非直線性補正後で3×10-5以内であった。

  • 小容量実荷重式力標準機の釣合い機構の開発

    朱 俊方、林 敏行、西野 敦洋、大串 浩司

    近年、半導体材料、医療、食品等多くの産業分野では、材料の力学的特性評価や品質管理のため、ニュートン未満の範囲の力計測が必要とされてきている。これらの力計測の信頼性を確保するため、産総研では小容量力標準機の開発を進めている。開発中の小容量実荷重式力標準機の構造設計、並びに負荷枠の自重を打消すための釣合い機構の感度測定経過について報告する。

  • 電磁力式トルク標準機における高精度回転位置決め制御システムの開発

    西野 敦洋

    NMIJでは、キッブルバランス法の原理に基づいた電磁力による微小トルクの計測技術に関する研究を行っている。本研究では、電磁力式トルク標準機により実現されるトルクの不確かさを低減するために、回転するヘルムホルツコイルの角速度及び角度位置を精密に測定するための自己校正型ロータリーエンコーダの原理に基づいた、高精度回転位置決め制御システムを開発した。

  • トルクレンチテスタによるデジタルトルクレンチの試験結果の評価

    大串 浩司

    手動式トルクレンチの中でもより高精度な計測が要求される指示式トルクツールのうち、電気指示式トルクレンチ(デジタルトルクレンチ)について、14年ぶりに改訂された手動式トルクツールの要求事項の国際規格であるISO 6789-1:2017に従って試験を実施した。試験対象としては、5社の異なるデジタルトルクレンチを用意し、試験結果を比較した。その結果、いくつかの特徴的な結果が得られたので報告する。

  • 参照用トルクレンチ校正時の校正結果並びに不確かさに及ぼす設置角度変更方法の影響

    大串 浩司

    参照用トルクレンチの校正においては、不確かさレベルとして0.1 %より小さい高精度の校正を考える場合、校正結果並びに不確かさに及ぼす様々な校正条件の影響を考慮しなければならない。本研究ではその校正条件のうち、測定軸に関する設置角度の変更方法を変えて校正を行い、比較的高い定格容量(1 kN・m)の参照用トルクレンチについてその影響を比較してみたので報告する。

【工学計測標準研究部門 圧力真空標準研究グループ】

  • 10-10 Pa m3/sまでのヘリウム標準リーク校正技術の開発

    新井 健太

    ヘリウムリークディテクタを用いて正確な漏れ試験を行うためには、リークディテクタの感度校正の基準となるヘリウム標準リークの正確な校正が必要である。産総研では、10-8 Pa m3/sから10-4 Pa m3/sまでの定圧式によるヘリウム基準流量発生用リーク量計を開発し、国家標準として標準リークの校正サービスを行っている。今回、リーク量計の発生下限を10-10 Pa m3/sへと拡張したので、その方法と安定性、標準リークの校正結果について報告する。

  • 有限要素法による電離真空計の比感度係数の計算

    杉沼 茂実

    電離真空計のモデルの領域をメッシュで分割し、メッシュごとに割り当てられる電位、生成イオン量を算出し、電離真空計の比感度係数を計算する。文献値との対比から、比感度係数の変動要因を検討する。

  • 四重極質量分析計の特性評価方法とアウトガス測定法の国際標準化

    吉田 肇

    今年2018年に、四重極質量分析計の特性評価方法(ISO/TS 20175)とアウトガス測定法(ISO/TS 20177)が発行されたので、その内容を紹介する。四重極質量分析計の”その場”校正法の典型的な例として、産総研で開発した標準コンダクタンスエレメント(SCE)が採用されている。

  • ファブリペロ共振器を用いた気体の屈折率計測による圧力計測装置の開発

    武井 良憲、新井 健太、吉田 肇、尾藤 洋一(長さ標準研究グループ)、寺田 聡一(長さ標準研究グループ)、小畠 時彦(計量標準普及センター)

    圧力 p と気体の屈折率 (n-1) の関係は比例式で表される。ファブリペロ共振器を用いて真空雰囲気での共振周波数と任意圧力の気体雰囲気での共振周波数を計測し、その比から屈折率 n を求める。本手法で計測した圧力値と市販装置で計測した10 kPaから100 kPaの圧力値が約300 ppm の偏差で一致した。本発表では、開発した実験系と実験結果を発表する。

  • 重錘形圧力天びんを用いた低圧力標準の開発

    小島 桃子、小畠 時彦(計量標準普及センター)

    絶対圧力 10 kPa 以下の低圧力標準は、これまで差圧標準によって校正された差圧計をワーキングスタンダードとして使用していたが、今年度、標準の高度化を目的として、自動分銅加除装置を備えた重錘形圧力天びんを標準器とする校正システムを構築した。新たな標準器について報告する。

  • 圧力媒体による圧力センサの校正値への影響と圧力媒体密度の関係評価

    飯泉 英昭、梶川 宏明、小畠 時彦(計量標準普及センター)

    気体高圧力用圧力センサの校正値は、圧力媒体の種類により影響を受けることがこれまでの研究からわかっている。本研究では、密度の異なる複数の圧力媒体を用いて校正を行うことで、密度と影響量の関係を評価した。

【工学計測標準研究部門 強度振動標準研究グループ】

  • ブリネル硬さ試験における深層学習を用いたくぼみサイズ測定

    田中 幸美

    ブリネル硬さ試験では、硬質の球圧子を材料表面に押込み、残ったくぼみのサイズを測定して硬さを算出する。顕微鏡により測定されるが、画像処理手法では試料表面の模様などの影響を受けて誤差が生じることがあり、精度が必要な場合には熟練した測定者による手動測定が一般的である。本研究では、多様な試料表面に対応できるロバストな自動測定法の構築に向けて、深層学習を用いたくぼみサイズ測定手法について検討した。

  • ロックウェル硬さ Bスケールの依頼試験開始について

    清野 豊、高木 智史、田中 幸美

    2018年度よりロックウェル硬さ Bスケール標準片の依頼試験サービスを開始した。そのトレーサビリティ体系、測定の不確かさ等について紹介する。

  • ダミーマスに依存する加速度センサの感度偏差に関する考察

    野里 英明

    加速度センサの校正では、レーザ干渉計を用いて、連続的な変位測定を行う。ISO 16063-11では、back-to-backタイプの加速度センサに対して、鏡面をもつダミーマスの上端でレーザ計測することが推奨されているが、その上端と受感面が乖離していることから、高周波領域では加速度センサの感度に偏差が生じる。本研究では、ダミーマスが与える感度偏差について検証を行い、その感度偏差がDUTの校正結果へ与える影響について考察する。

  • レーザ干渉式振動加速度校正装置の高度化

    穀山 渉、野里 英明、三森 弘美、大田 明博(工学計測標準研究部門)、服部 浩一郎

    当所の振動加速度標準は、レーザ干渉式振動加速度校正装置を用いる一次標準である。この標準の高度化のための研究開発の一環として、自動ステージやデジタル・フィルタ等の適用を進めているので、その現状について紹介する。

【工学計測標準研究部門 液体流量標準研究グループ】

  • 液体流量計測における変動流の影響について

    古市 紀之

    プロセスコントロール等において重要な流量計の応答特性について、変動流の発生装置と高応答性秤量システムを用いて評価結果および、不確かさの考え方等について検討結果を報告する。

  • オーストラリアNMIAのLPG設備との比較プロジェクトについて

    土井原 良次

    オーストラリアNMIAのLPG設備とNMIJの校正設備との比較試験を通じて取り扱いの難しいLPG等の液種における校正技術を確立するプロジェクトが進行中である。比較用の仲介器流量計の特性について調査した。プロジェクト概要および準備状況について報告する。

  • 液体マイクロ流量校正装置における密閉式秤量容器の導入と評価

    Cheong Kar-Hooi

    液体マイクロ流量を校正する秤量システムにおいて、取込量が小さいため、秤量容器からの蒸発誤差が顕著になる問題がある。そこで、蒸発誤差ゼロを目指して、密閉式秤量容器を導入した。ここで評価結果と課題を報告する。

  • 超音波パルストレインドップラー法を用いた円管内流速分布計測

    和田 守弘

    円管内の流速分布及び流量計測を目的に、超音波パルストレインドップラー法を用いた流速分布計測の適用性検討を行った。

【工学計測標準研究部門 気体流量標準研究グループ】

  • 気体流量の動的変化をとらえる計測技術の検討

    舩木 達也

    気体流量の変動流計測は、その重要性は認識されているものの、最終解決できる適応性と妥当性を獲得した手法はまだ確立されていない。本研究では、気体流量の動的変化をとらえる計測技術について、既存手法と新たに可能性のある手法について整理、言及し、基盤計測技術の確立に向けた道筋を示す。

  • 静圧孔位置の最適化を目的とした支柱無しピトー静圧管の特性評価

    岩井 彩

    支柱無しピトー静圧管は、飛行機の飛行速度測定や風洞測定部における流れ場評価等で幅広く使用されている。しかし、JIS型ピトー静圧管における静圧孔位置を支柱無しピトー静圧管に適用した場合は、支柱による静圧増加が発生しないため、正確な流速測定が困難である可能性が高い。本発表では、静圧孔の位置が異なる支柱無しピトー静圧管を複数本用いて、流速及び静圧と静圧孔位置との相関を定量評価した結果を報告する。

  • 臨界ノズルの流量低下現象とその回避方法に関する実験的研究

    竹川 尚希

    流量計測は世界的に最も重要な工業計測の1つであり、我が国では臨界ノズルを用いて高精度な流量計測を実現している。しかしながら、臨界ノズルには、理論臨界背圧比より大きい背圧比を与えても臨界状態に達しない非臨界現象と呼ばれる問題が存在する。本研究では、これまでに指摘されている非臨界現象のメカニズムについて整理を行った。また、非臨界現象に関する対策を提案し、その効果について実験的に検証した。

  • 気体中流速の風洞内におけるDUT位置依存性

    栗原 昇

    気体中流速(1.3 m/s〜40 m/s)標準では依頼された複数の校正点で試験を行い校正対象(DUT)が持つ風速への依存性が示される。昨年度、その依存性が低いはずのDUTで校正結果に傾きが見られ、校正・測定能力(CMC)の範囲内ではあったが発生原因の検討を行った。その結果、風洞試験部内でのDUT設置位置に対する依存性が定性的に明らかになった。本検討は、今後のCMC向上への手がかりとして期待される。

  • マスターメーター法による水素ディスペンサー計量性能検査の実証研究

    森岡 敏博

    水素ステーションに設置されている水素ディスペンサーの計量性能検査方法の確立を目標に、臨界ノズルによって校正されたコリオリ流量計をマスターメーターとした検査装置を開発した。本研究では、水素ステーションにおける実証試験の結果について報告する。

【工学計測標準研究部門 型式承認技術グループ】

  • OIML-CS制度の概要と取り組み

    伊藤 武、長野 智博(質量計試験技術グループ)、池上 裕雄(質量計試験技術グループ)、大谷 怜志(質量計試験技術グループ)、薊 裕彦(質量計試験技術グループ)、戸田 邦彦(流量計試験技術グループ)

    OIML(国際法定計量機関)の条約加盟国において、他の加盟国で発行されたOIML証明書を相互受入及び活用する仕組みとしてOIML基本証明書制度が提供されており、これを発展させたOIML-MAA(型式評価国際相互受入れ取決めの枠組み)を経て、2018年1月からは、OIML-CS(OIML証明書制度)が構築された。OIML-CS制度におけるOIML証明書の発行機関及び試験機関としての取り組みについて報告する。

【工学計測標準研究部門 計量器試験技術グループ】

  • タクシーメーターJIS原案作成について

    森中 泰章、原田 克彦、井上 太、堀越 努、高橋 豊、伊藤 武(型式承認技術グループ)、西川 賢二(型式承認技術グループ)、分領 信一(型式承認技術グループ)、島田 正樹(型式承認技術グループ)

    平成28年11月の計量行政審議会で取り纏められた「今後の計量行政の在り方—次なる10年に向けて—答申」に基づき、三者構成(製造者、使用者、中立者)の“タクシーメーター原案作成委員会”にて、JIS D 5609(タクシーメーター)の改正原案を作成した。その内容について紹介する。

【工学計測標準研究部門 質量計試験技術グループ】

  • 自動重量選別機の試験効率化のための取り組み

    田中 良忠、高橋 豊(計量器試験技術グループ)、長野 智博

    平成28年11月に計量行政審議会で取りまとめられた答申を踏まえて、「自動はかり」が新たに特定計量器に追加された。自動はかりの中でも先行して来年4月に検定が開始される自動重量選別機は、検定および使用中検査において、標準偏差が基準内にあることを確認しなければならず、最大60回の計量試験が必要となる。本発表ではこの標準偏差試験の効率化を目指した検討結果を主に報告する。

【工学計測標準研究部門 流量計試験技術グループ】

  • 自動車等給油メーター型式試験の不確かさ評価

    戸田 邦彦、寺尾 吉哉(工学計測標準研究部門)、神長 亘、西川 一夫、藤本 安亮、河田 達男、秋元 由貴、本多 香奈絵

    商取引に使用される規制計量器について、世界的に統一したルールの下で試験結果を国の間で相互に受入れる国際法定計量機関証明書制度(OIML-CS)に参加するには、ISO/IEC 17025 の要求事項に準拠していることを実証する必要がある。NMIJは、自動車等給油メーターの計量器カテゴリーにおける、OIML-CS制度への参加を目的とした測定の不確かさ評価の実験を行い、評価基準として求められる0.1 %以下の拡張不確かさを実現出来ることが確認できた。この解析結果について報告する。

【物理計測標準研究部門 時間標準研究グループ】

  • 原子気体量子デバイス微細化のための固気界面技術に関する研究

    安田 正美、田邊 健彦、小林 拓実、赤松 大輔

    既存技術の延長線にはない、気体量子デバイスの大幅な小型化のための技術開発に不可欠である、金属酸化物、または、金属蒸着表面に紫外レーザー光を照射することで生起する原子の解離・脱離現象の詳細な研究を行っている。その現状報告と今後の展望について説明する。

  • 光格子時計のデュアルモード運転による超精密周波数比計測

    赤松 大輔、小林 拓実、田邊 健彦、保坂 一元、安田 正美

    我々は、これまで二台の独立な光格子時計を用いて、SrおよびYb原子の時計遷移周波数の比を測定してきた。このように二台の光格子時計を用いた場合、それぞれの真空容器の温度の測定の不確かさを考慮する必要がある。そこで、測定不確かさの低減を目指し、SrおよびYb光格子時計を一つの真空容器中で運転するデュアルモード運転を行った。本発表では、光格子時計のデュアルモード運転により測定した周波数比について報告する。

  • 時刻系信号の高精度化のための畳み込みニューラルネットワークの開発

    田邊 健彦、鈴山 智也、赤松 大輔、小林 拓実、安田 正美

    本グループでは、時刻の標準である協定世界時UTCと同期した時刻系信号UTC(NMIJ)を生成・運用し、これを用いた各種機器の周波数校正サービスを提供している。我々は最近、深層学習の代表的な手法の一つである「畳み込みニューラルネットワーク」を用いて、UTCとUTC(NMIJ)の同期精度の向上を目的とした研究に取り組んでいる。本発表では研究の現状について報告する。

  • 時間周波数国家標準高度化に向けたイッテルビウム光格子時計の開発

    小林 拓実、赤松 大輔、田邊 健彦、稲場 肇(周波数計測研究グループ)、鈴山 智也、保坂 一元、安田 正美

    近い将来のSI秒定義改定を見据えて、光格子時計を用いた時間周波数国家標準UTC(NMIJ)の高度化を目指した研究を行っている。これを可能にするために、堅牢で長期運転可能なイッテルビウム光格子時計を開発している。本発表では、光格子時計の不確かさ評価および長期運転に向けた取り組みを報告する。

  • UTC(NMIJ)及び周波数遠隔校正用機器の現状

    鈴山 智也、岩佐 章夫、安田 正美

    高信頼、高安定な時間周波数の国家標準であるUTC(NMIJ)を連続的に発生させ、周波数標準器の持込及び遠隔校正を実施している。JCSS登録区分の時間・周波数に回転速度が追加となり、新規や持込校正からの移行も含めて遠隔校正の件数は年々増加しており、着実に普及している。本発表では、UTC(NMIJ)及び周波数遠隔校正用機器の現状について報告する。

【物理計測標準研究部門 周波数計測研究グループ】

  • デュアルコム分光による気体温度計測 〜RDT技術の開発〜

    清水 祐公子、大久保 章、入松川 知也(極限温度計測研究グループ)、稲場 肇

    光周波数コムを2台用いたデュアルコム分光により、気体分子の振動回転スペクトルを測定し、気体の温度を測定する新たな技術「Rotational state Distribution Thermometry: RDT」を開発し、本技術の高精度化を進めている。この技術は、高速に変化する動的な温度変化の測定や、分子種ごとの温度測定にも適用できる。本発表では、実験系および解析手法の高度化についても報告する。

  • 高速計測に向けた光コム光源の開発

    柏木 謙、稲場 肇

    光コムは光周波数測定、距離測定、分光計測、医療応用など様々な計測への応用が拡大している。光コムは光パルスの繰り返し列そのものであり、計測応用にはそれぞれの用途にあったパルス光源の開発が肝要である。堅牢性、長期安定性などの利点からファイバ型パルス光源が光コムに広く利用されているが、その構成から高速測定には不向きである。そこで本研究では、高速計測に向けた高繰り返し光コム光源を開発する。

  • 低雑音化に向けた偏波保持ファイバー型デュアルコム分光計の開発

    大久保 章、柏木 謙、稲場 肇

    2台の光コムを用いるデュアルコム分光法は、ガスの吸収スペクトルを高い周波数精度で、広い波長帯にわたり、短い測定時間で得ることができる。本年度は、S/Nの向上、スペクトルの安定化、実験室外での安定使用を目的に、偏波保持ファイバーを用いたデュアルコム分光計の開発に取り組んだ。偏波保持ファイバーアンプによるパルス圧縮、偏波保持高非線形ファイバーによるスペクトル広帯域化などについて紹介する。

  • 高安定環境によるファイバノイズの低減とその検出

    和田 雅人、大久保 章、柏木 謙、稲場 肇

    環境擾乱が光ファイバに誘起する位相雑音(ファイバノイズ)は、ファイバ型光コムを用いた精密な光周波数測定において不確かさ要因となる。本発表では、密閉化、真空化、温度安定化、防音、及び除振された高安定な環境がファイバノイズを大幅に低減したことを報告する。そして、このような微少なファイバノイズを検出するために新たに開発した改良型マッハ・ツェンダ干渉計を紹介する。

【物理計測標準研究部門 量子電気標準研究グループ】

  • 超音波半田を用いた電圧標準用素子の冷凍機実装の検討

    丸山 道隆、山森 弘毅(ナノエレクトロニクス研究部門)、島崎 毅(極限温度計測研究グループ)、天谷 康孝(応用電気標準研究グループ)

    機械式冷凍機を用いた超伝導素子の実装では、冷却ステージと素子間の良好な熱接触の確保が重要である。本研究では、ジョセフソン電圧標準用素子の冷凍機実装の最適化を図るため、超音波半田の利用について検討した。半田層中のボイド率依存性や温度依存性などの実験結果について報告する。

  • 量子ホールアレー素子の開発

    大江 武彦、小野木 有佳、福山 康弘、金子 晋久(応用電気標準研究グループ)

    高抵抗の量子化抵抗の実現に向け、10 MΩの公称値を有する量子ホールアレー素子の開発を進めている。量子ホールアレー素子は、直流抵抗標準に用いられる量子ホール素子を直並列に接続集積化したものであり、任意の量子化抵抗値が実現可能である。これにより高抵抗微小電流の測定能力の確認や向上が見込まれる。

  • 磁性人工原子を用いた回路QEDの研究

    中村 秀司、岡崎 雄馬、高田 真太郎、金子 晋久(応用電気標準研究グループ)

    近年、量子情報処理技術の進展に伴い共振器と人工原子を用いた回路QEDの研究が盛んに行われている。本研究では磁性体をもちいた人工原子を共振器中のマイクロ波フォトンによって量子的に制御、検出する試みである。本発表では、これまでの研究進捗に関して報告する。

  • 量子異常ホール効果の精密抵抗計測 超伝導電磁石不要の簡便な抵抗標準を目指して

    岡崎 雄馬、大江 武彦、中村 秀司、高田 真太郎、金子 晋久(応用電気標準研究グループ)

    近年磁性トポロジカル絶縁体と呼ばれる物質において、ゼロ磁場付近で量子ホール抵抗が観測される量子異常ホール効果が発見され注目を集めている。量子異常ホール効果を用いた抵抗の精密測定技術が実現すれば、従来の整数量子ホール効果を基準にした抵抗標準で必要となる超伝導電磁石が不要になり、装置の小型化や精度向上が期待される。本年度は、量子異常ホール効果の精密抵抗測定を行い精度の検証などを行った。

  • 表面弾性波を用いた単一飛行電子の制御

    高田 真太郎

    近年、半導体ナノ構造において電子を量子ドットに閉じ込め、その自由度を量子力学的に制御する技術が確立してきている。一方で、局所的に閉じ込められた電子が持つ情報を他の場所へ移送する技術はその確立が待たれる状況にある。本研究では、圧電効果によって表面弾性波に伴う動的なポテンシャルを用いて電子を1個単位で移送し、さらに移送中の電子状態の制御を行った。

【物理計測標準研究部門 応用電気標準研究グループ】

  • MHz帯の高精度位相計測を目指した交直差計測型の余弦定理法

    山田 達司

    MHz帯域での位相計測の高精度化は、最も計測精度の高いサンプル・アルゴリズム法でも、1 MHzでの位相精度の限界は0.1°程度である。一方、産業ニーズとして、1 MHzまで0.01°以下の位相精度が望まれる分野がある。本研究では、余弦定理法とサーマルコンバータによる交直差計測法とを融合した新たな位相計測法を提案し、上記の位相精度を達成することを目指す。

  • 電気化学インピーダンス測定器評価に適した参照インピーダンス標準器の開発

    堂前 篤志

    電気化学インピーダンス測定器を用いたバッテリ等の劣化評価において、評価結果の信頼性を確保するには、広い周波数範囲と低インピーダンスの両方に対応した参照標準器を用いて電気化学インピーダンス測定器を評価することが必要である。本発表では、電気化学インピーダンス測定器評価の基準として用いる参照インピーダンス標準器の開発について報告する。

  • 交直流電圧計測による熱電材料・デバイス評価法の開発

    大川 顕次郎、天谷 康孝、藤木 弘之(企画本部)、金子 晋久

    未利用熱を利用した熱電発電技術の普及の為、熱電変換デバイスの正確な評価手法の確立は必須の技術課題となっている。我々は、低周波交直流電圧測定により熱電材料・デバイスの性能を評価する交流ハーマン法の高精度化に取り組んでいる。本発表では、交流ハーマン法における熱損失の影響について、焼結体を用いた実証実験の結果を報告する。

【物理計測標準研究部門 電磁気計測研究グループ】

  • 次世代通信・交通を支える電磁波計測技術研究と包括的開発支援

    堀部 雅弘、昆 盛太郎、渡部 謙一、平野 育、岸川 諒子、坂巻 亮、加藤 悠人

    第5世代携帯電話、4K/8Kスーパーハイビジョン、自動走行運転や電気自動車といった新しい技術の利用が始まっている。高度化・高周波化する技術に対応するため、材料、デバイスの開発が進められているが、評価も難しく、材料からシステムに至る一貫した設計・計測も不可欠となっている。そこで、当グループでは、素材、電磁波部材、デバイス、回路の要素計測技術の高度化とそれらの技術をシームレスに利用した開発支援を行っている。

  • 電波を用いた食品混入異物の非破壊検出技術

    昆 盛太郎、渡部 謙一、堀部 雅弘

    食品に混入する異物は製造業者に多額の損失を生じるため、これをいかに検出して排除するかが食品業界において大きな課題となっている。現在は、X線による画像認識法や光を用いた色彩選別法などが主に用いられているが、これらの手法では食品に埋没した非金属異物の発見が困難な場合がある。そこで、既存の手法では検出が容易でない対象をターゲットに、電波を用いた異物検出技術の開発を進めてきた。本発表では、その成果について報告する。

  • マイクロ波による米の微量水分計測

    渡部 謙一、昆 盛太郎、堀部 雅弘

    農林水産物や食品の品質管理において、微量水分の計測は重要である。しかしながら従来の抵抗式や乾燥法の場合、破壊検査で、測定に時間を要する。そこで、電磁気計測研究グループでは農林水産物・食品の水分量を非破壊でリアルタイムに計測するために、マイクロ波によるセンシング技術の研究開発を進めている。本発表ではマイクロ波を用いた米の微量水分計測について報告する。

  • 走査型マイクロ波顕微鏡による高誘電率の定量評価研究

    平野 育、堀部 雅弘

    エレクトロニクス材料の開発委において、ナノレベルの構造や結晶構造評価は以前より行われてきている。複合材料や他元素系の材料開発が進み、微小領域での材料の電気特性評価が不可欠となってきている。そこで、原子間力顕微鏡を基本とした材料表面の電気特性を評価できる走査型マイクロ波顕微鏡の高度化と定量評価技術の開発を進めている。高誘電体材料において、定量評価の可能性について報告する。

  • ミリ波帯低損失誘電率計測技術の研究開発

    加藤 悠人、堀部 雅弘

    ミリ波自動衝突防止レーダーや第5世代携帯電話など、ミリ波帯電波の利用が進んでいる。これら機器の回路やデバイスは電子基板上に形成されるが、これらの回路の設計段階において、基板の誘電率とその損失が重要な設計パラメータとなっている。そこで産総研では、100 GHzを超える周波数まで広帯域に測定できる平衡型円板共振器法の研究開発を進めている。得られた測定結果や、その精度や妥当性について解析した結果に関して報告する。

  • 超高精度・超高周波平面回路計測技術の研究開発

    坂巻 亮、堀部 雅弘

    ミリ波自動衝突防止レーダーや第5世代携帯電話など、ミリ波帯電波の利用が進んでいる。これら機器には基板上に形成された平面回路が使われており、その性能評価には高周波プローブによるオンウェハ計測技術が用いられている。産総研ではこれまでに独自のプローブ制御技術と校正技術を研究開発し、100 GHzを超える周波数において高精度な測定を実現したので報告する。

  • マイクロ波領域におけるデバイスのハイパワー非線形測定技術

    岸川 諒子、堀部 雅弘、川崎 繁男(JAXA/ISAS)

    kHz付近が中心であったハイパワーデバイスの研究は、MHzからGHzのマイクロ波領域へ広がってきている。デバイスの非線形計測技術は研究の基礎であるが、まだ実施例は少ない。そこで、GHz帯におけるGaNデバイスのソース/ロードプル測定とバイアス印加Sパラメータ測定の例を示し、両測定結果を用いた回路設計の例を紹介する。

【物理計測標準研究部門 高周波標準研究グループ】

  • セシウム原子泉一次周波数標準器NMIJ-F2の開発の現状

    高見澤 昭文、柳町 真也、萩本 憲、平野 育(電磁気計測研究グループ)、池上 健

    10-16台の不確かさを目指してセシウム原子泉一次周波数標準器の2号器(NMIJ-F2)を開発している。国際原子時との間に1×10-15程度の差が確認されたが、マイクロ波スイッチの手法を代えることにより、10-16レベルでの整合が確認された。現在、最終的な不確かさ評価を行なっているところである。これらの現状について報告する。

  • セシウム原子による電磁波計測の任意周波数化に向けた研究

    木下 基、東島 侑矢、飯田 仁志

    原子との共鳴現象を利用した新たな電磁波測定技術が近年注目されているが、原理上本技術が適用できる電磁波の周波数は原子との共鳴周波数に制限されている。そこで、本研究では、ゼーマン効果による共鳴周波数シフトを利用することで、本技術の任意周波数化を目指す。今回、電磁石を用いて共鳴周波数を従来から1 GHz以上可変できることを示したので、その詳細について報告する。

  • 200 GHz帯導波管カロリメータと電力精密校正技術の開発

    東島 侑矢

    近年、通信トラフィックの増加などからミリ波帯以上の周波数を通信利用するための研究が盛んに行われている。電波を通信利用する際には、法規制等の要求からミリ波電力の絶対値を正確に求める計測技術が必要不可欠である。本報告では、高精度にミリ波絶対電力を測定可能な200 GHz帯導波管カロリメータを開発し、それを基準として市販のパワーメータを校正した結果について紹介する。

【物理計測標準研究部門 電磁界標準研究グループ】

  • 自動車内外における磁界強度分布の精密測定のための磁界センサ評価技術

    石居 正典

    近年、電気自動車(EV)と充電のための非接触給電システム(WPT)が普及しつつある。一方、これらの機器からの放射磁界が周囲環境に与える電磁的な影響の検証が必要であると同時に、磁界の人体暴露に関する指針(ICNIRPによるガイドライン)への適応状況の検証も、システムの設計の段階から必要不可欠になっている。以上の電磁環境(EMC)に関連する精密な磁界測定のためには、トレーサビリティの確保された磁界センサが必要であり、本研究ではこれらセンサの特性を50 Hzから100 kHzの周波数範囲で、精密に評価するために必要な技術を提供している。

  • 300 GHz帯のアンテナ利得校正システムの開発

    飴谷 充隆

    現在、60 GHz〜90 GHz帯の電磁波を利用した通信装置やレーダーの商用化が進んでいる。それらの製品が他の無線システムと干渉なく利用できることを保証するためには、使用周波数の3倍あるいは5倍の高調波成分が規定レベル以下に収まっているかどうかを試験する必要があり、その試験を行うために使用するアンテナのアンテナ利得は校正されている必要がある。本報告では当研究グループで現在実施している、220 GHz〜325 GHzのアンテナ利得校正装置の性能について説明する。

  • 近傍界計測とニューラルネットワークを組み合わせたアレーアンテナの故障診断アルゴリズムの開発

    飴谷 充隆

    近年、IoTや自動運転技術の普及に向けた5G次世代無線通信が注目を集めている。5G無線通信では28 GHz以上のミリ波帯で動作するアレーアンテナを使用することが想定されており、製造時におけるアレーアンテナ故障診断の高速化が求められている。当研究グループでは、近傍界計測の測定結果からアレーアンテナの励振係数を推定する際にニューラルネットワークを用いることで、測定時のサンプリング数を極力減らし、高速に故障診断するためのアルゴリズムを検討している。

  • 新たな線状アレーアンテナの研究開発

    She Yuanfeng、廣瀬 雅信、黒川 悟

    新たな設計法による高効率高利得線状アレーアンテナを開発した。特殊な構造を簡単に組み合わせにより、不要な放射であるグレーティンローブを抑制することと放射ビームを絞ることができて、高性能なアンテナを設計することが可能となった。本技術は、無線通信やレーダーなどのアンテナ設計への応用が可能である。

  • 1アンテナ法の不確かさ推定および1アンテナ法を用いたシールド評価法

    松川 沙弥果、黒川 悟

    従来の手法に比べて短時間で簡易的にアンテナ利得を校正できる1アンテナ法を開発した。本研究は、1アンテナ法を用いてダブルリッジドガイドホーンアンテナの利得を算出し、その不確かさ推定を行った。さらに、1アンテナ法を応用したシールド評価法も開発した。

【物理計測標準研究部門 温度標準研究グループ】

  • アルゴン中の音速測定による熱力学温度計測

    ウィディアトモ・ジャヌアリウス、三澤 哲郎(極限温度計測研究グループ)

    国際単位系における熱力学温度(T)の単位ケルビンの定義は2019年に改定される。これに続き、Tの測定が様々な温度範囲で行われている。我々は、Tの測定をするために音響気体温度計(AGT)を開発している。開発したAGTではアルゴンガスの音速をAGTの共鳴器中の音響共鳴および電磁波共振により測定する。そして、Tを水の三重点と任意温度での音速の比から相対的に決定する。今回はガリウムの融解点でのTの測定結果を報告する。

  • Ru-C共晶点(1953 ℃)を用いた熱電対評価技術の開発

    小倉 秀樹

    半導体やセラミックスなどの素材産業等の分野では、製品の品質管理やエネルギー効率の向上のため、高温用熱電対による2000 ℃付近での高精度な温度測定が重要となっている。一方で、高精度な温度測定を実現するためには、使用する高温用熱電対の安定性や不均質の評価が不可欠であるため、温度標準研究グループでは2000 ℃付近での熱電対評価技術の開発に取り組んできた。本発表では、これまで実現が困難であった大型のRu-C共晶点(1953 ℃)セルを使用し、新たに開発した熱電対評価用Ru-C共晶点実現装置の開発状況について報告する。

  • 小型セルと大型セルを用いた水銀の三重点実現の比較評価

    河村 泰樹

    国際的な温度の標準である1990年国際温度目盛に従って低温度の温度目盛を得るには、水銀の三重点を用いて白金抵抗温度計を校正する必要がある。産総研では、国家標準として2.5 kgの水銀を密封した大型セルによって水銀の三重点を実現している一方で、16 mgの水銀を用いた小型セルによる三重点実現装置も開発している。本講演では、小型セルを用いた時と、従来の大型のセルを用いた場合の水銀の三重点の実現の比較を行った結果を報告する。

  • 白金抵抗温度計の高温性能評価用システムの開発

    斉藤 郁彦

    産総研では160 ℃を超える高温域において高精度に温度計を評価するシステムの開発を行っている。開発したシステムでは、 温度の国家標準の実現に用いているヒーターを3つのゾーンに分けた温度制御技術により電気炉内の温度を安定化しており、その結果、230 ℃において1 mKオーダーで安定した温度場を実現できた。このシステムを活用して、白金抵抗温度計の230 ℃での安定性の試験を行った結果、1 mKのオーダーでの安定性の評価が可能であることが分かった。

【物理計測標準研究部門 極限温度計測研究グループ】

  • 低温用トムソン係数測定クライオスタットの開発

    島崎 毅、天谷 康孝(応用電気標準研究グループ)、藤木 弘之(企画本部)

    固体材料の熱電効果は、熱エネルギーを直接電気エネルギーに変換する技術として利用でき、機器のエネルギー利用効率を向上させる技術として期待されている。これまで我々は固体材料の熱電特性を精密に評価する基礎技術として、液体寒剤を使用して極めて安定した温度環境下でゼーベック係数を測定する装置を開発してきた。今回その技術を応用し、トムソン係数を測定する装置を開発した。その装置の概要について報告する。

  • トポロジカル絶縁体表面の磁場中輸送特性制御

    三澤 哲郎、福山 康弘(量子電気標準研究グループ)、岡崎 雄馬(量子電気標準研究グループ)、中村 秀司(量子電気標準研究グループ)、名坂 成昭(東京工業大学)、江連 大貴(東京工業大学)、笹川 崇男(東京工業大学)、金子 晋久(応用電気標準研究グループ)、浦野 千春

    トポロジカル絶縁体は、絶縁的なバルクと金属的な表面をあわせ持った物質である。本研究では高いバルク絶縁性を持つトポロジカル絶縁体Sn0.02Bi1.08Sb0.9Te2S (Sn-BSTS) の、単結晶育成・評価および素子化を行った。トポロジカル絶縁体は薄片であっても上下面がそれぞれ伝導を担うため、輸送特性を制御するためには工夫が必要である。本研究では上下面のフェルミ面を独立制御できるデュアルゲートデバイスを作製し、磁気輸送特性の制御に成功した。

  • デュアルコム分光による熱力学温度測定に関する研究

    入松川 知也、浦野 千春、清水 祐公子(周波数計測研究グループ)、稲場 肇(周波数計測研究グループ)、中野 享(温度標準研究グループ)

    近年、熱力学温度の単位ケルビンの再定義に伴い熱力学温度の精密測定の機運が高まっている。本研究では、既存の熱力学温度計測法と比較して簡単・迅速に測定が可能である、デュアルコム分光を用いた新しい熱力学温度測定手法について調査したので報告する。

  • 超低温への高効率冷却を実現するためのプラスチック多孔質体熱交換器の検討

    中川 久司

    超伝導量子デバイスを安定動作させる上で、10 mKオーダーの超低温度まで冷却することが求められている。このためには、超伝導量子デバイスの測定配線を液体ヘリウム浸漬冷却する方法が有効と考えている。これまで、この熱交換器には金属焼結体が利用されてきた。希釈冷凍機の開発から、熱交換器の熱交換表面積が有効に働いていないことが分かった。熱交換効率を増強するため、熱可塑性プラスチックに注目し、超低温熱交換器材としての可能性を検討した。

【物理計測標準研究部門 応用放射計測研究グループ】

  • レーザビームプロファイラ校正技術の開発

    沼田 孝之

    加工分野を筆頭に、レーザ光のビーム形状の精密評価に対する需要が増している。しかしこれまでビーム形状に関する直接的なトレーサビリティ体系が存在せず、標準の確立と供給が待たれていた。そこで本研究では、光学スリットを走査する手法で、長さにトレーサブルにレーザビームの直径を精密に測定する技術を開発し、不確かさを評価して、ビームプロファイラ校正サービスの供給体制を整備した。

  • 面状黒体材料の開発と応用に関する調査研究

    清水 雄平

    黒体材料は反射率が0に非常に近い(放射率・光吸収率が1に非常に近い)材料であり、熱画像装置の校正、光学系の迷光除去、赤外線検出器への応用が期待される。本発表では、開発されている黒体材料について、低い反射率を実現する原理を含め、調査研究した結果を報告する。

  • 金属材料の放射率計測技術の研究開発

    井邊 真俊

    放射温度計測や熱設計には放射率が不可欠である。しかし、放射率計測にもまた試料の温度情報が必要である。熱電対による接触温度測定では、熱放射を遮らないように熱放射部から離れた箇所しか測定できない。そこで、非接触温度計測により熱放射部の温度を計測し、熱放射の分光測定により各波長の放射率を求める計測技術の研究開発を進めている。金属材料の計測について、従来までの熱電対の場合とともに成果を報告する。

  • LEDベースの輝度計・イメージングセンサ評価用標準光源の開発

    神門 賢二

    LED等を利用したディスプレイの登場、高機能CCD素子の登場により、画像技術の高精度化が進んでおり、それに伴いディスプレイの輝度を計測する輝度計等にも高精度評価が要求されている。本研究発表では、NMIJで開発を進めている、高機能光学素子を利用したLEDベースの新しい輝度標準光源と輝度計の高精度評価が可能な測定システムについて発表を行う。

【物理計測標準研究部門 光放射標準研究グループ】

  • インコヒーレント光源に対する高精度な光生物学的安全性評価技術

    蔀 洋司

    LEDをはじめとする各種光源の高強度化・高輝度化に伴い、近年、人間の眼や皮膚に対するこれら光源の安全性(光生物学的安全性)評価が注目されている。産総研では、これまで必ずしも明確でなかった関連国際規格の要求事項や測定条件を整理すると共に、信頼性が高くかつ実用的な測定技術の開発に向けた検討を重ねてきた。本発表では、光生物学的安全性評価における測定上の課題検証の一例として、青色光網膜傷害の評価における、視野角および測定距離依存性の算出方法の検討結果を報告する。

  • UV-LED評価のための近距離放射照度計測の改善

    木下 健一、神門 賢二(応用放射計測研究グループ)

    近年、紫外LED光源の産業ニーズが、殺菌、水処理、紫外線硬化、 非破壊検査、皮膚治療等の様々な用途で増加している。それら紫外線照射工程では照射面での放射照度の正確な測定が重要となる。産総研では紫外LEDの放射照度測定の高精度化のために標準UV-LEDの開発や近距離での放射照度測定技術の開発などを行ってきた。今回、放射照度測定用受光器の改良により、近距離放射照度測定の不確かさの改善を行ったので報告を行う。

  • 光電子増倍菅を用いた広く精密な光パワー評価技術の開発

    田辺 稔、丹羽 一樹(量子光計測研究グループ)、木下 健一

    光電子増倍管(PMT)は、熱型や光電型の光検出器と比較して、フォトンレベルまで低ノイズな光検出が可能、高速動作可能な点で優れており、高エネルギー物理学、分光分析など幅広く使用されている。PMTは、様々な波長や広いダイナミックレンジでの測定が可能である一方、応答の直線的な範囲で使用されるか、あるいは直線的であるという仮定の元で使用されている。本研究では、PMTの応答 非直線性を高精度に測定し、その結果を用いてフォトンレベルから数百ピコワットの広い光パワーに対する絶対応答度を評価する技術の開発を実施した。

  • LED素子の分光測定に利用できる小型標準LEDの開発

    中澤 由莉、神門 賢二(応用放射計測研究グループ)、山路 芳紀(日亜化学工業(株))、藤木 藍(日亜化学工業(株))

    LED光源の特性評価で使用される分光式球形光束計の積分球は、試験光源の大きさや光強度により最適な大きさが異なる。我々はこれまでに、大型の積分球を使用したLED照明の分光測定に適したLEDベースの標準光源(標準LED)の開発を行っている。今回、より小型のLED素子の特性評価に適した小型の積分球で利用可能な、2π幾何条件用の新しい小型標準LEDの試作・評価を行ったので報告する。

【物理計測標準研究部門 量子光計測研究グループ】

  • 光導波路デバイスを用いた高効率第2高調波光源の開発

    衞藤 雄二郎

    第2高調波発生 (SHG) は、レーザー加工のような産業応用から先進の量子光学実験まで、幅広く利用されている非線型光学過程である。SHGを利用した多くの応用では、高出力のSHGをより効率的に安定に生成することが重要である。本研究では、ナノ秒のパルス光源と周期分極反転LiNbO3光導波路を用いた高効率なSHGについて報告する。

  • 単一光子分光可能な超伝導素子の開発 ーバイオイメージングに向けてー

    服部 香里

    単一光子を分光可能な超伝導転移端センサ(Transition edge sensor; TES)は、可視光・近赤外同時イメージングが可能であり、バイオイメージングの新しいプローブとして期待されている。しかし、このような幅広い帯域にわたって、詳細にTESの応答特性・検出効率を測定した例はない。そこで、スーパーコンティニューム白色光源(SC光源)を用いて、可視光から近赤外まで検出効率および検出器の応答を連続的に測定した。その結果、近赤外と可視領域では、検出器の応答が異なることを発見した。

  • 単一光子の広帯域高効率スペクトル分光に向けたアレイ化超伝導転移端センサの開発

    今野 俊生

    我々は超伝導転移端センサ(Superconducting Transition Edge Sensor: TES)を用いて、可視光から近赤外波長領域の入射光子エネルギーを検出・分光することで、バイオイメージングを行うことを目的としている。本研究では、広帯域高効率スペクトル分光に向けた光閉じ込め構造(光キャビティ)および動作速度の向上を目指したアレイ化TESの開発を行った。

  • バイオイメージングへの応用に向けた可視光用超伝導転移端センサの信号多重化読出し

    中田 直樹、服部 香里、小林 稜、今野 俊生、鷹巣 幸子、福田 大治、山森 弘毅(ナノエレクトロニクス研究部門)、神代 暁(ナノエレクトロニクス研究部門)、平山 文紀(ナノエレクトロニクス研究部門)、佐藤 昭(ナノエレクトロニクス研究部門)、山本 亮(ナノエレクトロニクス研究部門)、中島 裕貴(ナノエレクトロニクス研究部門)

    バイオイメージングへの応用に向けて、マイクロ波SQUIDマルチプレクサ(MW-Mux)を用いた可視光用超伝導転移端センサ(TES)アレイからの信号の多重化読出しについて取り組んでいる。これまでの研究では、単一の可視光用TESとMW-Muxを組み合わせた測定体系で世界に先駆けて光子数スペクトルを得ることに成功した。今後は、現在の測定体系を改善することで複数の可視光用TESからの同時読出しを目指す。