2017年度 計量標準総合センター成果発表会
ポスターセッション 2日目

【物理計測標準研究部門 時間標準研究グループ】

  • 可搬型光格子時計のためのレーザー制御型低速Yb原子線源の開発

    安田 正美、田邊 健彦、小林 拓実、赤松 大輔、佐藤 拓海(東京農工大学)、畠山 温(東京農工大学)

    酸化Ybに紫外レーザー光を照射することにより、低温のYb原子線生成に成功した。この低速原子は、強い双極子遷移(波長399 nm)を用いた磁気光学トラップにより捕獲することができた。この手法は、可搬型光格子時計やその他の応用に適したコンパクトな装置の開発につながる可能性がある。

  • デュアル光格子時計による超精密周波数比計測

    赤松 大輔、小林 拓実、久井 裕介、保坂 一元、田邉 健彦、安田 正美、洪 鋒雷(横浜国立大学)

    我々は、これまで二台の独立な光格子時計を用いて、SrおよびYb原子の時計遷移周波数の比を測定してきた。このように二台の光格子時計を用いた場合、それぞれの真空容器の温度の測定の不確かさを考慮する必要がある。そこで、測定不確かさの低減を目指し、SrおよびYb光格子時計を一つの真空容器中で実現するデュアル光格子時計の開発を行った。本発表では、デュアル光格子時計を用いた周波数比計測結果を発表する。

  • 深層学習による時刻系信号の高精度化に向けた取り組み

    田邊 健彦、鈴山 智也、赤松 大輔、小林 拓実、安田 正美

    本グループでは、時刻の標準である協定世界時UTCと同期した時刻系信号UTC(NMIJ)を管理し、またこれを用いた各種機器の周波数校正サービスを提供している。我々は最近、UTC(NMIJ)とUTCの同期の精度向上を目的として、機械学習の手法の一つである「深層学習」により、UTC(NMIJ)の周波数源である水素メーザー周波数標準器の周波数値の予測に取り組んでいる。本発表ではこの取り組みの現状について報告する。

  • 時間周波数国家標準高度化のためのイッテルビウム光格子時計の開発

    小林 拓実、赤松 大輔、久井 裕介、田邊 健彦、稲場 肇(周波数計測研究グループ)、鈴山 智也、洪 鋒雷(横浜国立大学)、保坂 一元、安田 正美

    近い将来のSI秒定義改定を見据えて、光格子時計を用いた時間周波数国家標準UTC(NMIJ)の高度化を目指した研究を行っている。これを可能にするために、堅牢で長期運転可能なイッテルビウム光格子時計を開発している。本発表では、開発の現状を報告する。

【物理計測標準研究部門 周波数計測研究グループ】

  • デュアルコムによる温度計測技術の開発

    清水 祐公子、大久保 章、稲場 肇

    光周波数コムを2台用いたデュアルコム分光装置により、気体分子の振動回転スペクトルを測定し、気体の温度を測定する新たな技術「Rotational state Distribution Thermometry: RDT」を開発した。この技術は、高速に変化する動的な温度変化の測定や、混合気体の分子種ごとの温度測定にも適用できるため、既存技術では困難な温度計測への応用が期待される。

  • 高速・高精度ガス分析に向けたデュアルコム分光計の開発

    大久保 章、岩國 加奈、山田耕一、洪 鋒雷(横浜国立大学)、佐々田 博之(慶應義塾大学)、稲場 肇

    2台の光コムを用いるデュアルコム分光法は、ガスの吸収スペクトルを高い周波数精度で、広い波長帯にわたり、短い測定時間で得ることができる。本発表では、アセチレン分子の圧力広がりのオルト/パラ依存性と遷移双極子モーメントの観測について紹介する。また、最近の取り組みとして、可視域への波長帯拡張、および感度の向上についてふれる。

  • 安定な環境による光ファイバの雑音低減

    和田 雅人、大久保 章、稲場 肇

    光ファイバは、精密な光周波数のやり取りに必須であり、光コムの一部として使用されている。近年、環境ガス分析をはじめ、長さ計測・標準、光時計などの精密測定において光コムが用いられており、その精度向上が課題となっている。我々は、光ファイバに影響を与える温度や振動などの環境要因を安定化することで、光コムの雑音要因である「光ファイバの雑音」を十分低減できることを確認した。

  • 光コム広帯域化機構の解析的・実験的検討

    柏木 謙、稲場 肇

    光コムは光周波数測定のために開発され、その発生装置の作製技術の成熟に伴って様々な計測への応用が拡大している。しかし、その発生装置の設計・作製には経験による指針が利用されているが、理論や解析による理解が得られていなかった。そこで我々は光コム発生装置内のスペクトル拡大部の信号を数値解析することにより定量的に評価する技術を開発した。本研究では、解析と実験の両面からスペクトル拡大の機構を検討したので報告する。

【物理計測標準研究部門 量子電気標準研究グループ】

  • 超高精度電圧発生器の開発

    丸山 道隆、金子 晋久、山森 弘毅(ナノエレクトロニクス研究部門)

    産業界で幅広く利用可能な量子電圧源の開発を行っており、その開発状況について報告する。国家標準と同じ原理のジョセフソン効果を利用しながら、計測器ラックに収納可能なコンパクトなシステムとなっており、現状で最大2 Vまでの高安定出力を手軽に得ることができる。原理的に経年変化がなく、市販のハイエンド電圧標準器を超える安定度を実現し、ADコンバータなどの機器開発や評価で強力なツールになると期待される。

  • 高抵抗測定の支援(精密電気計測コンソーシアム)

    大江 武彦、藤木 弘之(応用電気標準研究グループ)、金子 晋久

    電子機器の小型化、省エネルギー化に伴い、微小電流、高抵抗の精密測定のニーズが増しつつある。精密電気計測コンソーシアムを通して高抵抗の精密測定技術向上の支援を行っており、今年度は校正事業者の登録審査に利用可能な形での技能試験の代替手法を実施した。本発表では、その結果について報告する。

  • 単一電子デジタル変調による有限周波数電流計測

    岡崎 雄馬、中村 秀司、金子 晋久

    単一電子素子を用いることにより単位時間当たりの電子数を一つ一つ数えながら生成することが可能になり、フェムト・ピコアンペアといった超微小電流の精密計測への応用が期待されている。本研究では、新たに単一電子パルス列をデジタル変調する技術を開発し、動作範囲をMHz程度の有限周波数電流へと拡張した。これにより電気化学やナノテクノロジーで重要となる化学インピーダンスや電流揺らぎの精密計測応用への道が開ける。

  • 二重量子ドットを用いた単電子転送の実時間測定

    中村 秀司、則元将太、岡崎 雄馬、高田 真太郎

    近年、量子情報処理実現に向けた研究において半導体量子ドットの電荷状態を高速に読み出す手法として高周波反射測定が行われている。この手法は、測定対象の量子ドットと静電的に結合した量子ドット電荷計にマイクロ波を入射し、その反射強度を実時間で測定することで測定対象の量子ドットの状態を実時間で読み出すことができる。本発表では二重量子ドットによる単一電子転送をこの高周波反射測定によって読み出す試みについて発表する。

  • 表面弾性波を用いた高精度な量子電流源の開発

    高田 真太郎、金子 晋久

    GaAs半導体二次元電子系では、圧電効果によって発生する表面弾性波の動的なポテンシャルを用いることで、離散化された量子電流を発生させることができる。一方で、先行研究で得られた量子電流の安定性は100 ppm程度であり、応用のためには2桁以上の安定性の向上が求められる。本発表では、より安定で高精度な量子電流源を実現するために行う新たな工夫とその実験の進捗状況について報告を行う。

【物理計測標準研究部門 応用電気標準研究グループ】

  • 抵抗器の直流-交流差評価

    堂前 篤志、大江 武彦(量子電気標準研究グループ)

    抵抗器を直流で使用する場合と、交流で使用する場合とでは抵抗値に差(交直差)が生じる。NMIJではこの交直差を精度よく評価することが可能である。本発表では公称値10 kΩの抵抗器について、交直差評価の方法および結果の一例を紹介する。

  • 直流極性反転を用いた簡便なゼーベック係数の測定技術

    天谷 康孝、島崎 毅(極限温度標準研究グループ)、大川 顕次郎、藤木 弘之

    我々は直流と交流電流を試料に流すことで、試料の熱伝導率など熱物性値を測定することなく、ゼーベック係数(固体の熱-電気変換性能の指標)を簡便に求めることが可能な測定法を提案した。この方法はゼーベック係数の高精度測定が可能であるが、交流信号を用いるため手間がかかる。そこで、測定法を簡便化することを目的に直流電流の極性反転により実用上は充分な不確かさでゼーベック係数を求める新しい測定法を考案した。

  • 交流ハーマン法を用いた熱電変換素子評価技術の開発

    大川 顕次郎、天谷 康孝、藤木 弘之

    未利用熱を利用した熱電発電技術の普及のため、熱電変換素子の正確な評価手法の確立は必須の技術課題である。本発表では、低周波電圧測定により素子性能を評価する交流ハーマン法の高精度化に向けた取り組みについて、素子を構成する材料計測における定量的な熱補正解析と、実証実験のための装置開発状況について報告する。

【物理計測標準研究部門 電磁気計測研究グループ】

  • 走査型マイクロ波顕微鏡法の高感度化研究

    平野 育、堀部 雅弘

    原子間力顕微鏡の優れた空間分解能とマイクロ波ネットワーク・アナライザの電気測定機能とを組み合わせた走査型マイクロ波顕微鏡計測技術に、種々のマイクロ波マッチング回路や干渉回路を適用し、試料表面の電気特性評価の高感度化を実現した。反射型干渉計方式は、高い感度を実現でき、明瞭な電気的特性の分布を観測することに成功した。

  • ミリ波帯平衡型円板共振器法の研究とその国際標準化に向けた取り組み

    加藤 悠人、堀部 雅弘

    平衡型円板共振器法は、単一の共振器でマイクロ波帯からミリ波帯の誘電率測定を行えることから、ミリ波帯電磁波の利用が進む近年、大きな関心を集めている。しかしながら、この方法は測定の再現性や信頼性に課題があった。そこで、産総研のミリ波帯電磁波計測技術により、再現性を改善し、不確かさを明確にした計測技術として確立した。測定方法の国際標準化活動や、産業界と連携した技術普及に向けた取り組みについても報告する。

  • ミリ波帯における高精度オンウェハ計測技術

    坂巻 亮、堀部 雅弘

    車載用レーダーやWiGigといった、ミリ波帯を利用したデバイスの開発が盛んに行われている。平面回路の評価にはプローブを用いた測定系が用いられているが、ミリ波帯に近づくにつれ既存技術では十分な測定再現性の確保が困難となる。そこで、産総研では測定再現性を大幅に向上させる高周波プローブの高精度位置合わせ技術を開発した。

  • 窒化ガリウム(GaN)デバイスおよび回路のマイクロ波特性の高確度計測

    岸川 諒子、堀部 雅弘、川繁 男(宇宙航空研究開発機構)

    光の領域で利用が進んでいる窒化ガリウム(GaN)は、今後、GHzを中心としたマイクロ波領域の通信等の回路やシステムへの利用の拡大が見込まれている。マイクロ波領域におけるGaNデバイスや回路について、製造業者などが提供する評価結果には、測定冶具等の不要な特性の影響が含まれることが問題となっている。この影響の実例を紹介し、それを補正する技術について報告する。

  • 電磁波による果実の非破壊品質評価技術

    昆 盛太郎、渡部 謙一、堀部 雅弘

    電磁波を用いて、果実の糖度や酸度を非破壊計測する技術の開発に取り組んでいる。従来の近赤外分光法などでは、対象の表面状態や外乱光の影響を大きく受けるため、皮の厚い果実や、生育途上で色が変化する果実を、収穫前に非破壊で評価することが困難である。本技術は原理的にこの課題を解決できる可能性があり、今回、糖および酸水溶液の濃度と電磁波の振幅および位相の比に相関があることを見出したので報告する。

  • マイクロ波を用いた肉の赤身/脂身比率の評価技術−

    渡部 謙一、昆 盛太郎、堀部 雅弘

    電磁気計測研究グループでは農林水産物・食品の品質評価・異物検出のためのマイクロ波を用いたセンシング技術の研究開発を進めている。本技術はマイクロ波の振幅、位相情報を活用することにより、農林水産物・食品を非破壊、リアルタイムで計測することが可能である。本発表では肉の赤身/脂身比率の評価技術について報告する。

【物理計測標準研究部門 高周波標準研究グループ】

  • テラヘルツ時間領域分光法による材料評価

    飯田 仁志、東島 侑矢、木下 基

    テラヘルツ時間領域分光法は、テラヘルツパルスの電場波形を観測し、それをフーリエ変換することでスペクトル情報を得る分光法である。電場の振幅と位相を同時に測定できることから、複素誘電率などの材料パラメータを評価することができる。本発表では、広帯域テラヘルツ波吸収体の特性やプラスチック材料の複素誘電率を評価したので報告する。

  • ミリ波・テラヘルツ波帯電力標準に関する調査研究

    東島 侑矢

    ミリ波・テラヘルツ波帯電磁波の産業応用と計測技術へのニーズを把握し、基本物理量となる電力(パワー)について計量標準の国際動向を調査するとともに、NMIJにおける当該電力標準の開発状況を報告する。

  • 重ね合わせ法によるテラヘルツ波センサの非直線性自己校正に関する研究

    木下 基、飯田 仁志

    医薬や基礎科学などで広く利用されているテラヘルツ波分光は、サンプルへの入射波に対する反射や透過波の強度比から物性を得る技術であるため、センサの直線性に大きく依存する。本研究では、センサの応答が「1+1=2」という単純な挙動を示すことを検証する重ね合わせ法を用いて、非直線性の自己校正装置を開発する。今回、試作した校正装置を用いてテラヘルツ波パワーメータの非直線性を評価したので、詳細について発表する。

  • セシウム原子泉一次周波数標準器NMIJ-F2の不確かさ評価

    高見澤 昭文、柳町 真也、萩本 憲、平野 育(電磁気計測研究グループ)、渡部 謙一(電磁気計測研究グループ)、池上 健

    10-16台の不確かさを目指してセシウム原子泉一次周波数標準器の2号器(NMIJ-F2)を開発している。現在、磁場による2次ゼーマンシフトや周辺の物体からの黒体輻射によるシフトなどの周波数補正量を定期的に見積もることができる状況にあり、最終的な不確かさ評価および国際原子時との比較を行なっているところである。これらの現状について報告する。

  • 精密デュアルチャネル移相量測定システム

    ウィダルタ アントン

    VNA等のような高周波・マイクロ波移相量の測定装置は主に中間周波置換法によるものなので、高周波(RF)の移相量は数メガヘルツの中間周波数(IF)にて置換測定されている。トレーサビリティの観点からRFの移相量国家標準よりもむしろIFの移相量の方が必要とされている。そこで、周波数10 MHzから1000 MHzのIF移相量標準を確立する目的で、精密デュアルチャネル移相量測定システムを独自に開発しており、システムの構造・特長及び測定能力について報告する。

【物理計測標準研究部門 電磁界標準研究グループ】

  • NMIJにおける交流磁界センサの校正システムと不確かさ −50 Hz〜100 kHz−

    石居 正典

    NMIJでは、これまでの電源周波数帯である50 Hzと60 Hzにおける磁界強度標準を、現在、100 kHzまで拡張した。磁界発生源であるヘルムホルツコイルの寸法とそれを流れる電流から、標準磁界を得る手法を採用している。また将来は、MHz帯までの高周波化も見据えている。本報告では、手法、構成システム、及び、不確かさについて述べる。

  • ミリ波帯材料特性の不確かさによる回路の伝送損失の予測 

    She Yuanfeng、加藤 悠人、黒川 悟

    効率予測または損失推定は、ミリ波帯における回路の性能を評価するために重要である。本研究により、ミリ波帯誘電特性の不確かさを含めで、回路損失を正確に予測できた。例として、60 GHzにおけるLTCCポスト壁導波路と平面アンテナの効率の予測を数値的かつ実験的に示した。

  • 広帯域アンテナを用いた1アンテナ法によるグランドプレーン反射面の影響評価

    松川 沙弥果

    通常アンテナ利得などの絶対校正には、同一周波数帯で利用する3本のアンテナが必要であるため、アンテナ校正を行う際はコストと時間を要する。そこで我々は、被校正アンテナ1本のみを用いてアンテナ係数の校正が可能な手法 (アンテナ自己校正法) を提案した。本研究では、リッジドガイドホーンアンテナを用いてアンテナ自己校正法を行った。その際、グランドプレーンに吸収体を設置することで反射面積を変更し、影響を検討した。

  • 電子校正モジュールを用いた一アンテナ校正法の高精度化

    飴谷 充隆

    近年、簡易的なアンテナ利得校正法として、1アンテナ校正法が提案されている。1アンテナ法を用いる場合、ネットワークアナライザの校正後にアンテナを上下に動かす必要があるため、同軸ケーブルの状態変化による精度の低下が懸念される。本発表では電子校正モジュールを常にアンテナの直後に接続することで、1アンテナ校正法を高精度化する方法について報告する。

【物理計測標準研究部門 温度標準研究グループ】

  • 高温用白金抵抗温度計の660 ℃以下での安定性評価

    ウィディアトモ ジャヌアリウス

    高温用白金抵抗温度計(HTPRT)は銀点(962 ℃)までの高温域において温度目盛を実現するための補間計器であり、適切な熱処理により、660 ℃以上の温度域では、1 mKの再現性があるものが開発されていることを報告してきた。今回、HTPRTについて、660 ℃以下温度域での再現性・安定性の評価を亜鉛点(419 ℃)およびスズ点(231 ℃)を用いて行なったので、その結果を報告する。

  • 温度目盛の高精度化に向けた温度定点の開発

    河村 泰樹

    国際的な温度の標準である1990年国際温度目盛では補間計器による個体差が生じており、特に-200 ℃から0 ℃の温度域においてその個体差が顕著である。温度が一意に決まる物質の三重点等を温度定点として活用出来れば、補間計器の個体差を低減し温度目盛の高精度化に繋げることが期待出来る。本発表では、-200 ℃から0 ℃にある温度定点の候補について調査した結果と三重点温度を高精度に測定するシステムを紹介する。

  • 熱電対校正のためのRh-C共晶点(1657 ℃)実現装置の開発

    小倉 秀樹

    1600 ℃以上での高温域ではガラス、半導体、セラミックスなどの素材産業等の分野で、製品の品質管理やエネルギー効率の向上のため熱電対を用いた高精度の温度測定が重要となっている。一方で、これまで産総研から供給してきた熱電対による温度標準の上限はPd点の1554 ℃であったため、温度標準研究グループではRh-C共晶点(1657 ℃)を用いた熱電対校正技術の開発に取り組んできた。本発表では新たに開発した熱電対校正用Rh-C共晶点実現装置の評価結果について報告する。

  • 標準用白金抵抗温度計の校正とその安定性評価

    斉藤 郁彦

    アジア地域内の計量標準研究機関の間で行われている国際比較「APMP.T-K9」に参加するため、複数本の標準用白金抵抗温度計に対し、水銀の三重点(-38.8344 ℃)から亜鉛の凝固点(419.527 ℃)までの温度定点において校正を行うとともに、温度計の安定性の評価を行った。本発表ではその評価結果を報告する。

【物理計測標準研究部門 極限温度計測研究グループ】

  • 低温域用熱伝導率測定装置の開発

    島崎 毅、丸山 道隆(量子電気標準研究グループ )、天谷 康孝(応用電気標準研究グループ )

    近年、液体ヘリウムや液体水素などをはじめとする低温流体の利活用に向けた低温機器の開発が活発化している。一方で、これら機器の設計や評価に必要な低温域における材料の熱伝導率データの不足や更新の必要性が指摘されて久しい。我々は機械式冷凍機を使用して、室温域から4 K近傍までの温度範囲でバルク材を対象とした定常法による熱伝導率測定を行う装置を開発中である。その概要について紹介する。

  • トポロジカル絶縁体による無磁場抵抗標準の研究

    三澤 哲郎、福山 康弘(量子電気標準研究グループ )、中村 秀司(量子電気標準研究グループ )、岡崎 雄馬(量子電気標準研究グループ )、名坂 成昭(東京工業大学)、笹川 崇男(東京工業大学)、浦野 千春、金子 晋久(量子電気標準研究グループ )

    トポロジカル絶縁体の表面においては、無磁場下でホール抵抗が量子化する、量子異常ホール効果(QAHE)が発現する。この研究では、QAHEの抵抗標準への応用可能性を探索するため、トポロジカル絶縁体デバイスの開発を行っている。物性評価およびデバイス作成・基礎評価について報告する。

  • 光学実験用無冷媒希釈冷凍機システムの焼結金属粉末製熱交換器の開発

    中川 久司

    我々は、これまでに極低温度標準を実現するために開発した希釈冷凍機などの極低温技術を活用し、操作性が高く、様々な光学実験に利用できる無冷媒希釈冷凍機の開発を進めている。特に、希釈冷凍機性能を決めるキーデバイスのステップ型熱交換器の最適化を進め、より高効率に極低温環境を生成できるシステムの開発を目指している。

【物理計測標準研究部門 応用放射計測研究グループ】

  • 加工用高出力レーザのパワー制御システム

    沼田 孝之

    高出力レーザのパワーを高い精度で制御できれば、レーザ加工の品質向上をはじめ、ものづくり技術の高度化が期待できる。しかし光学素子の耐久性などの問題から、従来、加工用の高出力レーザに適用可能な制御システムは存在しなかった。そこで本研究では、近接場光の結合効果を利用した耐久性の高いパワー制御システムを開発し、波長1.1 μm、光強度2 kW/cm2のファイバレーザのパワーを、0.1 %以下の精度で制御可能であることを実証した。

  • 白金−炭素共晶合金を用いた高温温度分布モニターの開発

    笹嶋 尚彦

    SiCパワー半導体の高温熱処理においては、温度分布の測定と制御が重要である。しかし、放射温度計や熱電対による温度測定では測定窓や測温接点等による問題があり、正確な温度測定は難しい。そこで、本研究では、熱処理装置内のウェハ面内の温度分布を評価するため、白金を蒸着したグラファイト試料を作製し、熱処理によって引き起こされる試料表面や断面状態の変化から到達温度の違いを判断する技術を開発しており、その成果について報告する。

  • 金属材料の温度・放射率同時計測

    山口 祐

    製造プロセスにおいて、高温材料を対象とした温度計測は、品質向上・省エネルギー対策のために重要である。しかし、例えば溶融状態の金属のように放射率が明らかでない物質では、温度を精度良く求めることは困難であった。そこで、2波長放射温度と反射率比の測定を組み合わせることにより、放射率と温度を同時に測定する技術を開発した。これにより、新規材料や表面条件が変化する場合でも、正確な温度測定が可能となることが期待される。

  • 表面状態および温度の異なる金属試料の分光放射率測定

    井邊 真俊

    金属の積層造形中の温度分布測定を目的として、対象試料の分光放射率測定を実施した。試料は溶融により表面状態を変化させた。研究開発を進めている分光放射率測定技術により約600 ℃における測定を実施し、それぞれの値を比較した。さらに、室温においても分光放射率測定を実施し、高温の場合と結果を比較した。以上から表面状態と試料温度による温度分布測定への影響を検討した。

【物理計測標準研究部門 光放射標準研究グループ】

  • 分光透過率測定システムの開発および材料の高精度光学特性評価

    蔀 洋司

    ガラスや樹脂等に代表される各種光学材料の高精度な透過特性評価は、分光分析の信頼性を支える基幹計測技術であると共に、新規材料開発における性能指標の評価において必要不可欠である。本研究では、国際整合性が確保された高精度な絶対分光透過率測定技術の開発をはじめ、光学材料の透過特性を様々な幾何条件で総合的に評価できる測定システムを構築してきた。ここでは、測定システムの概要、国際整合性の程度、代表的な測定例などについて報告する。

  • レーザーディスプレイ・照明における放射輝度・放射照度の評価法の開発

    田辺 稔、木下 健一、蔀 洋司

    レーザー光は、その3原色を組み合わせることで広い色域を実現できるため、レーザーディスプレイ・照明への活用が期待されている。この分野では、単位面積や単位立体角あたりの放射量(放射照度や放射輝度)の評価が必要である。従来の方法では、レーザー光に最適化された放射量の評価や、広い光強度範囲での評価が実現不可能であった。そこで、光放射に関する国家標準を用いて、これらを評価できる新たな評価技術を開発した。この技術を用いることで、レーザーディスプレイ・照明の放射量の精密評価が可能となるため、それらの製品の安全性や品質の確保に貢献できる。

  • 分光式球形光束計によるLED照明評価技術

    中澤 由莉、神門 賢二、丹羽 一樹、座間 達也、山路 芳紀(日亜化学工業(株))、松岡 真也(日亜化学工業(株))

    我々はこれまで、分光測定に基づくLED照明の特性評価に最適なスペクトルをもつ標準LEDの開発を手がけてきた。今回、この標準LEDを用いた新たな分光測定の体系を構築し、従来の分光式球形光束計における4π幾何条件だけでなく、LED照明等に対する2π幾何条件での分光全放射束の高精度な測定技術を開発した。本発表では、2π幾何条件での分光全放射束測定における測定不確かさや、標準LEDを参照標準としてLED照明を測る場合の優位点について報告する。

  • 紫外LED製品の信頼性向上のための紫外放射照度校正

    木下 健一、神門 賢二、宮坂 勝也((株)オーク製作所)、利根 俊文((株)オーク製作所)、芹澤 和泉((株)オーク製作所)、早川 壮則((株)オーク製作所)、鈴木 智久((株)オーク製作所)

    近年、紫外LEDの普及が進展してる。それらは露光装置、非破壊検査装置などの光源として活用されている。それにより紫外LED光源からの放射量を正確に測定するニーズが高まっている。しかし既存の放射計では、主に校正方法が定まっていないことなどによりメーカー間のばらつきが大きく、測定値の整合性の向上が求められている。そこで、各種紫外放射計の検証および校正方法の検討を行った。

【物理計測標準研究部門 量子光計測研究グループ】

  • シリコンアバランシェフォトダイオード(Si-APD)の単一光子検出効率評価

    福田 大治、吉澤 明男(電子光技術研究部門)、田辺 稔

    Si-APDは、量子情報通信やバイオイメージングを始めとして、微弱光計測が必要な様々な分野で使用されている単一光検出器の一つである。検出効率は、単一光子検出器の性能として重要な指標の一つであり、高精度な評価が求められている。本発表では、近赤外波長領域でのSi-APDに対する単一光子検出効率を光減衰法を用いて評価した結果について報告する。

  • 超伝導単一光子検出器のバイオ応用技術の開発

    丹羽 一樹、沼田 孝之、服部 香里、小林 稜、福田 大治

    超伝導技術により微小なエネルギー検出を可能とする超伝導転移端センサ(TES; transition edge sensor)を用いた単一光子分光計測の新分野応用研究として、創薬や医療につながるライフサイエンス分野での利用技術を開発している。今回は、TESを光センサに共焦点光学系を組合せ、蛍光標識細胞標本のカラー顕微鏡像撮影について紹介する。

  • 超伝導転移端センサを用いた単一光子検出器の開発

    服部 香里

    単一光子のエネルギーを測定可能な超伝導転移端センサ(Transition edge sensor; TES) は、次世代量子情報通信やバイオイメージングへの応用が期待されている。本発表では、バイオイメージングに向けた、可視光領域におけるTES検出器の評価について報告する。

  • パルス光と光導波デバイスを用いたスクイーズド光源の開発

    衞藤 雄二郎

    光は、量子力学的な揺らぎを持っている。スクイーズド状態とは、ある特定の物理量に対してその揺らぎを通常のレーザー光が持つものよりも小さくした状態のことであり、量子情報通信や量子イメージングなど、様々な応用における重要なリソースとして用いられている。本発表では、実用上多くのメリットを持つパルス光源と光導波路デバイスを用いたスクイーズド光源技術の開発状況について報告する。

【物理計測標準研究部門】

  • 白色LED用セラミックス蛍光体の配光蛍光分光測定

    市野 善朗、高橋 向星(物質・材料研究機構)、広崎 尚登(物質・材料研究機構)、大澤 祥宏(大塚電子(株))

    白色LEDを用いた照明製品等の普及が進むなか、波長変換を担う蛍光体の光学特性評価の信頼性向上が求められたことから、わが国主導のもと内部量子効率測定法に関する国際規格(ISO 20351)が発行された。一方、蛍光体製品取引においては外部量子効率や吸収率も重視されるため、現在配光蛍光分光測定に基づく量子効率等絶対測定法の国際標準化事業(経産省委託)に取り組んでいる。測定装置開発、及び酸窒化物蛍光体の反射・蛍光配光特性について報告する。

【分析計測標準研究部門 音響超音波標準研究グループ】

  • 半無響室の音圧減衰特性測定における基準音源の利用可能性

    山田 桂輔、高橋 弘宜、堀内 竜三

    ISO 3745 Annex Aは半無響室の性能評価法(音圧の距離減衰特性の測定)を規定しているが、その中で求められる無指向性の音源は現実には入手困難である。そこで我々は、音源の指向性が減衰特性の測定に与える影響の算出法を開発し、音響パワーレベルの測定において広く使われている基準音源を音源として利用することの可否を考察した。

  • 水を発熱体とするカロリメトリ法による超音波パワー計測 ‐水の溶存酸素濃度の影響-

    内田 武吉、吉岡 正裕、松田 洋一、堀内 竜三

    我々はカロリメトリ法による超音波パワー標準の整備を行っている。今回は、超音波パワーに対する水の溶存酸素濃度の影響を検討した。溶存酸素濃度の異なる飽和水と脱気水を用いて超音波パワーを測定した結果、両者に有意差が確認できたので報告する。また、両者の差の原因についても報告する。

  • NMIJにおける超音波音場パラメタ校正装置を用いた計測サービス

    吉岡 正裕、内田 武吉、松田 洋一、堀内 竜三

    NMIJでは、医療、産業で求められる超音波音場精密計測に資する3品目の超音波計量標準、すなわち超音波パワー校正、ハイドロホン感度校正、及び超音波音場パラメタ校正を供給するとともに、それらの校正範囲に含まれない超音波音場計測のご要望にもお応えしている。このたびは超音波音場パラメタ校正装置を用いて実施した計測サービスについて報告する。

  • 光干渉法を用いた超音波音圧標準 - 60 MHzへの拡張 -

    松田 洋一、吉岡 正裕、内田 武吉、堀内 竜三

    我々は、眼科や血管の診断で用いられる高周波の超音波を定量的に評価する目的で、超音波音圧標準(ハイドロホン感度校正)の周波数帯域を60 MHzに拡張するための開発を進めている。今回は標準の構築に必要となる、光干渉計による高周波超音波の変位振幅の計測や、そこで使用する光検出器の周波数特性の計測等について、現状を報告する。

【分析計測標準研究部門 放射線標準研究グループ】

  • 産総研X線標準場の3 mm線量当量換算係数

    加藤 昌弘、黒澤 忠弘、谷内 一史(東京工業大学)

    わが国では眼の水晶体の職業被ばく限度値引き下げが検討されている。水晶体の等価線量の推定に用いられる3 mm線量当量を導出するための空気カーマ3 mm線量当量換算係数を、産総研で維持管理している種々のX線標準場(QIシリーズ、Nシリーズ、Wシリーズ、RQRシリーズ)について求めた。

  • MRIによる強磁場中の線量計測

    森下 雄一郎、清水 森人、山口 英俊、佐藤 優樹、安江 憲治、岡本 裕之(国立がん研究センター中央病院)、逆井 達也(国立がん研究センター中央病院)、三浦 悠記(国立がん研究センター中央病院)、西岡 史絵(国立がん研究センター中央病院)、安倍 容久(国立がん研究センター中央病院)、伊丹 純(国立がん研究センター中央病院)

    MRIを使って人体の癌の位置をリアルタイムに特定しながら放射線治療を行う装置が日本でも導入され始めている。この場合強い磁場が常時印加されており、放射線量にかかわる高エネルギーの電子はローレンツ力を受けるため、線量計測にも影響が及ぶ。この影響について、実験とモンテカルロ計算の両面で調べた。

  • 炭素線の水吸収線量絶対計測技術の開発

    清水 森人、森下 雄一郎、田中 隆宏、山口 英俊、佐藤 優樹、平山 憲、加藤 昌弘、黒澤 忠弘

    炭素線の線量集中特性を利用した炭素線治療は、その線量集中特性ゆえに高精度な線量管理が求められる。そこで本研究では、水カロリーメータを用いた炭素線の水吸収線量の絶対計測技術の開発に取り組む。

  • アラニン線量計を用いた線量測定技術の開発状況

    山口 英俊

    医療機器の滅菌や食品照射に用いられる高線量放射線の線量標準確立のために、アラニン線量計を用いた線量測定技術の開発を行っている。今年度、試験的にキログレイレベルの照射を行った結果やESR装置による信号測定手法の構築などについて発表する。また、放射線治療レベルの線量測定への応用も進めており、アラニン線量計を用いる利点と共に、測定結果などを紹介する。

【分析計測標準研究部門 放射能中性子標準研究グループ】

  • 甲状腺モニタの試験用ファントムの標準化について

    柚木 彰

    体内被ばくを評価するために震災後に広く使われている体内放射能測定装置について、平成27年にJIS Z 4343が制定された。これを受け、産総研では国内の甲状腺モニタのレスポンスを評価出来る試験治具を整備した。現状では形状・寸法の異なるファントムが用いられているため、試験結果がばらつく。この状況を解消するためファントムの標準化を目指した試験を行ったのでその結果を報告する

  • CIEMAT-NIST法を用いたGe-68/Ga-68の放射能測定

    佐藤 泰

    CIEMAT-NIST法は放射線源の放射能を求める際に用いられる方法である。液体シンチレーション計数装置により、放射線源から放出される放射線が計数されるが、液体シンチレーション計数装置の放射線に対する計数効率をCIEMAT-NIST法で計算することにより、計数値から放射能を求めることができる。今回、本方法をGe-68/Ga-68溶液に適用し、放射能測定を行った。

  • マイクロパターンガス検出器による放射性物質の分布測定への応用

    海野 泰裕

    放射性物質の分布を測るための手法について、検討している。特にCERNガス検出器開発チームを中心とした国際共同研究で開発が進められているマイクロパターンガス検出器を候補とした場合の、実現可能性と想定される課題について考察する。

  • 1.2 MeV単色速中性子フルエンス標準の開発状況

    増田 明彦、松本 哲郎、原野 英樹

    中性子線量計等の応答評価試験で要望されている1.2 MeVの単色速中性子フルエンス標準を開発している。1.2 MeV単色中性子はバンデグラフ加速器による陽子ビームとトリチウムターゲットによるT(p,n)反応で生成し、生成中性子のフルエンスは水素含有コンバーターで生じる反跳陽子を半導体検出器で検出することで評価する。現段階での中性子発生実験、モンテカルロ計算による中性子エネルギー評価、検出器の改良による信号波高スペクトルの最適化について発表する。

  • 産総研中性子標準の現状について

    原野 英樹、増田 明彦、松本 哲郎

    各種中性子線量計の校正や性能試験等に必要とされる中性子標準の現状について報告する。連続スペクトル中性子フルエンス標準のJCSSの整備状況、Cf中性子線源の中性子放出率に関する国際比較、単色中性子フルエンス標準の開発状況、中性子標準に関連した医療応用、高エネルギー中性子、検出器開発等について紹介する。

  • ラドン放射能標準立ち上げに向けた多電極比例計数管の特性評価

    古川 理央

    ラドンは大気中に存在する自然放射性物質であり、放射能濃度の管理が行われている。産総研ではラドンの一次標準立ち上げに向け、ラドン放射能濃度の絶対測定が可能な多電極比例計数管を作製した。本発表では、作製した多電極比例計数管の特性評価の結果について紹介する。

【分析計測標準研究部門 X線・陽電子計測研究グループ】


  • ガンマ線レーザー実現に向けた高効率ポジトロニウム生成法の開発

    大島 永康、オローク ブライアン、満汐 孝治、鈴木 良一

    高い透過力や高い分解能等の優れた特性をもつガンマ線レーザーの発生は、未だに実現されていない。本調査研究では、世界初のポジトロニウム(Ps)のボース・アインシュタイン凝縮法の開発とそれを用いたガンマ線レーザーの実現性を探る。

  • ステンレス鋼の陽電子分光による疲労損傷評価

    MAO Wenfeng、オローク ブライアン、大島 永康、原田 祥久(製造技術研究部門)、名越 貴志(製造技術研究部門)

    ステンレス鋼(SUS316L)の疲労過程における損傷評価を行うため、室温(26 ℃)、高温(550 ℃)下において異なるサイクル数で疲労試験が行われた試料に対して陽電子寿命測定とドップラー広がり測定を行った。陽電子の疲労寿命は疲労サイクル数とともに上昇し、欠陥の増加が示された。また、室温での疲労試験においてはごく低サイクル数でも明らかな欠陥の増加が確認され、ごく初期の疲労を評価することができる可能性が示された。

  • 構造材料分析を目指した小型加速器中性子源の設計

    木野 幸一、大島 永康、小川 博嗣、豊川 弘之、O'Rourke Brian、鈴木 良一、清 紀弘、黒田 隆之助、田中 真人、藤原 健、満汐 孝治、宍戸 玉緒(新構造材料技術研究組合)、渡津 章(構造材料研究部門)、林崎 規託(東京工業大学)

    構造材料分析を目指して小型加速器中性子源の設計・建設を行っている。パルス中性子透過イメージングによる構造材料のミクロ情報の分析に最適となるよう中性子源を設計しており、全体の構造とともに最適化について紹介する。

  • 高速反射ポジトロニウム表面解析法の開発

    満汐 孝治、ルカ キアリ(千葉大学)、田中 文(東京理科大学)、大島 永康、長嶋 泰之(東京理科大学)

    ポジトロニウム負イオン(電子2個と陽電子1個の結合状態)のレーザー光脱離を利用したポジトロニウムビーム発生技術の開発を行ってきた。本技術の詳細とポジトロニウム散乱波の解析を利用した新たな表面分析法の展開について報告する。

  • 小型ビーム装置の開発

    大平 俊行、高輪 正夫(フジ・インバック(株))、北村 是尊(フジ・インバック(株))、小林 洋一(フジ・インバック(株))

    実験室サイズの汎用型陽電子ビーム寿命測定装置および間口30 cm幅の超小型イオン注入装置の開発について報告する。

  • 構造材料解析用中性子源のための電子線形加速器の開発

    オローク ブライアン、藤原 健、林崎 規託(東京工業大学)、木野 幸一、黒田 隆之助、満汐 孝治、大島 永康、小川 博嗣、清 紀弘、宍戸 玉緒(新構造材料技術研究組合)、鈴木 良一、田中 真人、豊川 弘之、渡津 章(構造材料研究部門)

    我々は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の新規研究開発テーマ「中性子等量子ビームを用いた新構造材料等解析技術の開発」の一環として、小型加速器中性子源を開発する。本発表は新規加速器施設の設計について紹介する。

【分析計測標準研究部門 ナノ顕微計測研究グループ】

  • サンドイッチ凍結乾燥法によるナノ粒子の基板上分散

    重藤 知夫

    顕微鏡観察のためにナノ粒子をシリコン基板上に分散させる場合、粒子密度を確保しながら凝集を避けるのは非常に難しい。それを可能にする「サンドイッチ凍結乾燥法」について、昨年度の報告からの手法の進歩や原理的考察、各種粒子への応用などを紹介する。(参考: J. Chem. Phys 147, 084201(2017))

  • 多層膜プロセスを利用した分解能テスター

    井藤 浩志、本田 暁紀、七里 元晴、青山 保之

    多層膜プロセスを利用して作成した、近接場顕微鏡(NSOM)、ナノ赤外分光法(ナノIR)、単結晶線幅標準などの作成プロセスを検討し、試作を行った。この結果、ナノIR法の分光データで、10 nmクラスの分解能を確認可能なことがわかった。ナイフエッジ法では、NSOM画像の分解能はある程度把握できるが、分光データの分離性能を計測するには不十分であった部分が明確になった。さらに、これまで多層膜プロセスを利用したシリコン製のラインスペースは、アモルファスであったが、改良したプロセスで単結晶線幅試料を作製した結果についても報告する。

  • 二次イオン質量分析(SIMS)用イオンビーム源の開発ープロトン性イオン液体のビーム化ー

    藤原 幸雄、齋藤 直昭

    プロトン性イオン液体の一種である硝酸プロピルアンモニウムを真空エレクトスプレー法によりビーム化し、SIMS用一次イオンビームとしての性能を評価した。実験結果から、アミノ酸等のプロトン化や脱プロトン化が可能であることが確認でき、有用性を実証できた。

  • 二核金属錯体添加によるリン酸化ペプチドの電子移動解離タンデム質量分析法

    浅川 大樹

    電子移動解離タンデム質量分析法のメカニズムについて、実験と密度汎関数理論を用いた計算化学からアプローチした結果を紹介する。さらに、この基礎的な知見を応用し、二核金属錯体添加を用いリン酸化ペプチド分析の分析を行った例を紹介する。

  • 水晶振動子型水素センサ・濃度計の屋外使用における安定性改善

    鈴木 淳

    水晶振動子型水素センサ・濃度計の屋外使用において問題となる圧力及びプリアンプ温度の影響を低減するためこれらの校正を行った。その結果、それぞれの校正のみを行った場合よりも24時間での変動率が小さく、安定性が改善された。以上の結果は日が異なっても定性的には同様であり、また24時間の変動率を水素センサとして必要な0.33 %以下と、実用化レベルの水準を得た。

  • 真空排気技術の革新的展開:気体ため込み式ポンプに関する技術調査

    中村 健、吉田 肇(工学計測標準研究部門)、新井 健太(工学計測標準研究部門)、久保 利隆(ナノ材料研究部門)

    電子やイオンなどをプローブとする機器分析や気体を原料とする機能性材料のプロセス及び物性評価では測定を大気圧以下の真空環境で行う必要があり、そのための排気技術は分析計測の基盤技術の一つとして重要である。本発表では、TIA5機関連携の調査研究「真空排気技術の革新的展開」のうち、ため込み式ポンプに関する技術調査の結果などについて報告する。

【分析計測標準研究部門 放射線イメージング計測研究グループ】


  • 相対論的電子ビームを用いた高出力テラヘルツ光源の開発

    清 紀弘、小川 博嗣、田中 俊成(日本大学)、 早川 恭史(日本大学)、境 武志(日本大学)、住友 洋介(日本大学)、早川 建(日本大学)、野上 杏子(日本大学)

    分析計測標準研究部門では、日本大学と共同し、日本大学の加速器施設LEBRAにおいて高強度テラヘルツ光源の開発を進めている。偏向電磁石端面で射出されるコヒーレントエッジ放射光(CER)を、パラメトリックX線ビームラインを使用して実験室まで輸送できる複合ビームラインを建設した。本講演では、CER光源としては国内唯一の日本大学テラヘルツ光源について報告する。

  • 光学素子を用いたX線イメージング法に関する研究

    安本 正人、三澤 雅樹(健康工学研究部門)、寺崎 正(製造技術研究部門)

    X線管球を利用して、大面積で位相情報を使ったX線検査装置(タルボ干渉法)について研究開発を行っている。特に、タルボ干渉法に必要不可欠な透過型X線回折格子について研究開発を進めているので、その回折格子の光学設計、製作、性能評価について報告する。

  • インフラ診断用後方散乱X線イメージング装置の開発

    豊川 弘之、藤原 健、萬代 新一(BEAMX)、伊佐 英範(BEAMX)、大橋 和也(名古屋大学)、山崎 淳(名古屋大学)、渡辺 賢一(名古屋大学)、瓜谷 章(名古屋大学)

    橋梁や道路床版などのコンクリート構造物内部の劣化や損傷を、様々な条件の現場で簡便に撮影するため、小型電子加速を用いた新たなX線イメージング手法(後方散乱X線イメージング法)について研究している。テーブルトップサイズの小型電子加速器を用いた高エネルギーX線発生装置、および一次元マルチスリットX線検出器を用いた後方散乱X線イメージング装置の開発について報告する。

  • Sm系磁石の磁気異方性に関する研究

    柏谷 裕美、田中 真人、小川 博嗣、池浦 広美、豊川 弘之

    当グループで開発中のMCDーPEEMやXAFSの結果の解析のため第一原理計算を行っている。本研究では、ジスプロシウム・フリーの磁石であり、磁石材料として大変期待されているSm系磁石の磁気異方性について報告する。

  • インフラ診断用の大面積/リアルタイムX線検出器の開発

    藤原 健、加藤 英俊、鈴木 良一

    高度成長期以降に集中的に整備された配管などの産業インフラの老朽化が問題となっており、効率的な検査・メンテナンス技術の確立が喫緊の課題となっている。我々は広大な大型配管を効率的に検査するために、大面積/リアルタイムX線検出器を開発しており、産総研で開発している小型X線源と組み合わせることで、従来のX線検査技術と比較して大幅に検査タクトを短縮することに成功した。

  • 電子加速器中性子源のための電子ビームターゲット設計

    小川 博嗣、木野 幸一、大島 永康、豊川 弘之、O'Rourke Brian、鈴木 良一、清 紀弘、黒田 隆之助、田中 真人、藤原 健、満汐 孝治、宍戸 玉緒(新構造材料技術研究組合)、渡津 章(構造材料研究部門)、林崎 規託(東京工業大学)

    電子加速器を用いた小型加速器中性子源の開発および建設を行っている。中性子源の高強度化のため当所で開発中の高強度電子ビーム(ビームパワー10 kW)の高熱負荷に適用できる水冷式固体ターゲットの設計について紹介する。

  • 有機半導体の光酸化ドーピング手法に関する研究

    池浦 広美

    X線吸収分光法は、化学結合に関与しない1s内殻電子を励起するため、励起する元素の空軌道の情報を得ることができ、これらの微細構造を指紋スペクトルとして利用することで、電子状態だけでなく、化学状態および酸化状態についての分析が可能である。本発表では、硫黄を側鎖に持つポリアセチレン誘導体の光酸化ドーピングの生成物検出について報告する。

  • 偏光を用いた分光・イメージング装置の開発と応用

    田中 真人、高鍋 彰文、澁谷 達則、乙川 光平(早稲田大学)、小川 博嗣、黒田 隆之助

    紫外〜真空紫外線領域における偏光を用いた分光装置(エリプソメトリ、円二色性など)や光電子顕微鏡によるイメージング装置の開発の現状ならびに、これら装置や放射光を用いたレーザー加工材料、タンパク質などキラル分子、焼結磁石などの試料の計測例を紹介する。

  • 高出力レーザーの応用に関する研究

    三浦 永祐

    高出力レーザーを用いてエネルギーを時間的、空間的に集中して物質に照射することにより、エネルギー密度の高いプラズマを生成することができる。この高エネルギー密度プラズマを利用することにより小型の光・量子ビーム源の実現が期待される。また、高エネルギー密度状態を反応場として利用することにより新奇な材料創成や改質が可能となる。これらの高出力レーザーの応用研究について報告する。

【分析計測標準研究部門 非破壊計測研究グループ】

  • レーザドップラ振動計を用いた非接触レーザ超音波可視化計測

    遠山 暢之

    完全非接触超音波検査技術の開発を目指して、レーザ励起超音波の検出にレーザドップラ振動計を組み込んだ超音波計測システムの開発を行っている。本計測システムを用いて金属板やCFRP板を伝搬する超音波の可視化を行った結果を紹介する。

  • 超高温熱膨張計測装置の開発

    岩下 哲雄

    炭化ケイ素(SiC)単結晶などパワー半導体材料の製造には2000 ℃を超える高温での結晶成長プロセスが必要とされるため、超高温域での物性評価が非常に重要となってきている。そこで、人造グラファイト材料の超高温域での熱膨張を接触法と非接触法により同時に測定できる装置の開発に取り組んだ。この装置によって計測した結果を報告する。

  • 炭素繊維のせん断応力−せん断ひずみ線図

    藤田 和宏、岩下 哲雄、澤田 吉裕(元大阪市立大学)

    2種類の炭素繊維について、単繊維でのねじり試験を行った。炭素繊維とガラス繊維を直列に張り付けた試料のねじり試験によって、炭素繊維のせん断応力−せん断ひずみ線図を得た。PAN系繊維はせん断破壊まで直線的なせん断応力−せん断歪関係を示したが、ピッチ系繊維はあるところまでは直線的な関係を示すが、それより歪が大きなところでは非線形挙動を示した。しかし、どちらの繊維でも塑性変形は認められなかった。

  • PAN系炭素繊維曲げ試験のFEM解析

    永井 英幹、藤田 和宏、卜部 啓、岩下 哲雄

    炭素繊維はたいへん強い異方性を有する材料であり、繊維軸方向引張以外の各種力学特性も評価する必要がある。本研究では、FEMによって単繊維の三点曲げ試験で生じる応力分布を解析し、試験での曲げ特性実測結果と比較した。具体的には、PAN系炭素繊維単繊維において、引張弾性率とねじり弾性率、あるいは圧縮弾性率との違い等の異方性を考慮した解析を行い、曲げ弾性率を評価した。

  • 超音波を利用した非破壊探傷技術

    山本 哲也、遠山 暢之

    本成果報告会では超音波を利用した非破壊探傷技術について議論する。水浸した試験片に対してプローブを走査し、PE試験片中のターゲットを探傷した。あらかじめ想定された位置においてセットされた微小な大きさのターゲットについて対応可能であることを示した。

  • モアレを利用したマルチスケール変位・ひずみ分布計測技術の開発

    李 志遠、王 慶華、津田 浩

    橋梁などの社会インフラである巨大構造物から半導体・電子デバイスに至るマルチスケールでの変位・ひずみ分布計測ニーズに応えることができるモアレ計測技術を説明する。

  • デジタルホログラフィとモアレ融合による高精度3次元計測システムの開発

    夏 鵬、王 慶華、李 志遠、津田 浩

    位相シフトデジタルホログラフィでは、ピエゾ素子などの位相シフト装置を利用して、複数の位相シフトされた干渉縞画像を記録する。しかしながら、記録環境やピエゾ素子の動作不安定から、正確な位相シフトは困難である。サンプリングモアレ法を導入した高精度な位相シフトデジタルホログラフィシステムを紹介する。

  • Automatic ultrasonic image pattern investigation with AI-enabled computing

    叶 嘉星

    This research addresses the topic of substituting human roles in interpreting ultrasonic image data during the non-destructive test (NDT).AI technologies demonstrated enormous possiblities for real world visual information processing and we introduce those techniques to ultrasonic imaging data analysis.Both conventional and latest AI techinques have been investigated for the application and experimental results demonstrated the profound potential of the research theme.

【分析計測標準研究部門 ナノ分光計測研究グループ】

  • スペクトル強度干渉断層イメージング法のバリエーション

    白井 智宏

    これまでに量子OCT(光コヒーレンストモグラフィ)の古典的なカウンターパートとして、耐分散性をもつスペクトル強度干渉断層イメージング法の原理とその実現法の幾つかを提案した。本研究では、より実用的な光学系とより効果的なアーティファクトの低減法を考案したので報告する。

  • 赤外線カラー暗視技術の研究開発

    永宗 靖

    これまで夜間の防犯や動物観察などの暗視撮影を必要とする分野では赤外線暗視カメラが使用されてきたがモノクロの映像しか撮影出来なかった。一方、赤外線撮影により肉眼に近いカラー映像が撮影出来ればこれまでとは質的に異なる情報が得られ前述の分野などで新しい展開が期待される。本発表では、赤外線でカラー映像の撮影を実現する赤外線カラー暗視撮影技術の開発と応用について紹介する。

  • レーザー脱離イオン化における中性種の生成過程—共鳴イオン化による観測

    永井 秀和

    レーザー脱離イオン化により生成するイオンと、同時に生成する中性種を共鳴イオン化質量スペクトルにより同時に観測した。硝酸ストロンチウムや、塩化ストロンチウムを試料として生成するSrイオンを観測した結果、無集光の波長1064 nm、パルスエネルギー0.1 mJ程度のマイルドな条件では、Srイオンよりも中性のSr原子の生成量が数倍大きいことが明らかになった。

  • 高効率TADF材料の高速逆項間交差メカニズム

    細貝 拓也、松 弘幸

    熱活性型遅延蛍光(TADF)材料は電気励起によって発生した励起子を全て蛍光に活用できる、次世代の有機EL用発光材料として現在高い注目を浴びている。本発表では、TADF材料の高効率な発光メカニズムを解明するために、当グループが所有する各種の過渡吸収分光法を用いたTADF材料の励起状態ダイナミクスの研究成果について報告する。

  • 二光子吸収による励起準位からの光電子放出の検討

    細貝 拓也、松 弘幸、中村 健

    材料の励起状態の電子準位は電子デバイスの伝導特性に極めて大きな影響を与えるが、その計測手法および測定雰囲気は限られていること。我々は近年、励起状態の電子準位をより簡便に調べるための新しい手法として二光子−光電子収量分光法を提案している。本研究では、本手法の原理を説明し、その開発状況について報告する。