2016年度 計量標準総合センター成果発表会
ポスターセッション 2日目

【工学計測標準研究部門 長さ標準研究グループ】

  • 回転精度検査用標準器の測定真円度曲線に関するフラクタル次元の評価

    直井 一也

    粗さなどのランダム波形の客観的な評価として、統計的な手法によるパラメータが用いられる。複雑な形状の複雑さの客観的な評価として、フラクタル次元がある。粗さにおいてもフラクタル次元に評価が行われている。そこで、回転精度検査用標準器の測定真円度曲線に対して、フラクタル解析を適用し、形状の評価を行う。

  • 大口径平面基板の3Dトポグラフィ測定システムの開発

    近藤 余範、尾藤 洋一

    表面の局部傾斜角測定に基づく形状測定機が注目されているが、測定対象が2次元(ライン)形状に限定されて問題がある。本研究では、物体表面の局所的な角度測定を利用した高精度かつ大口径3Dトポグラフィ測定法を提案する。最終的には、Φ800 mmの範囲において、±5 nmの絶対精度で測定できるシステムの構築を目指す。

  • 局部傾斜角測定法による平行平板の平面度測定

    尾藤 洋一、近藤 余範

    これまでに提案された局部傾斜角測定に基づく形状測定法では、干渉計による手法と同様に、裏面反射の影響の為、平行平板の表面形状(平面度)測定は基本的に困難であった。本研究では、角度測定ビームの入射角を従来の垂直から斜めにすることで裏面反射の影響を取り除く手法を提案する。

  • フィゾー干渉計の内部散乱光による誤差の低減法

    日比野 謙一、熊谷 俊樹(オリンパス(株))、長池 康成(オリンパス(株))

    球面フィゾー干渉計の測定繰り返し性能を、従来の0.3 nmから0.03 nmへ一桁向上させるには、内部反射光雑音に起因する誤差の低減が必須である。測定面と参照面の二重位相シフトによる新しい低減法を提案する。異なる測定面位置での位相測定結果を独自に調整した重み関数で平均することで、塵、点欠陥や不完全なコーティングにより発生する位相測定誤差を打ち消した。

  • 球面・曲率半径標準に関する調査研究

    工藤 良太

    高精度な非球面レンズや微細構造物等の需要が高まっている。これらの加工のためには高精度な測定技術が必要であるため、高精度形状測定装置(μCMM等)のさらなる高精度化が産業界に求められている。形状測定装置高精度化のために、測定装置の評価及び校正用基準として、高精度球面・曲率半径標準のニーズが高まっている。それらの現状と展望について調査研究を行ったので報告する。

  • 距離計校正用七測点基線の再構築

    寺田 聡一、Ketsaya Vacharanukul(NIMT)

    光学トンネル内にある距離計校正用基線の七点基点の再構築を実施した結果について報告する。

【工学計測標準研究部門 幾何標準研究グループ】

  • 3Dスキャナと3Dプリンタの連携によるクローズドループエンジニアリングの実証

    高辻 利之、阿部 誠、佐藤 理、松崎 和也

    公設試験研究機関との連携のもと、産総研が保有する3Dスキャナおよび3Dプリンタおよびこれらに関する知見に基づき、クローズドループエンジニアリングの高度化を目指している。3Dプリンタで造形した3D造形器物を仲介し、3Dスキャナ計測による計測を行うことにより、ワーク形状データ(=3Dプリンタ入力)の幾何誤差の評価を行った結果について報告する。

  • 光学式非直交座標測定機の国際標準化

    阿部 誠、佐藤 理、松崎 和也、高辻 利之

    光学式非直交座標測定機の性能評価法を標準化するISO 10360-13 non-Cartesian CMMs equipped with optical distance sensor(仮称)をISO/TC213/WG10に提案している。これまで、フレームワークの提案を行っているところ、概要について報告する。

  • 高エネルギー高分解能X線CT「eXTRACT」の開発

    高辻 利之、阿部 誠、藤本 弘之、佐藤 理、松崎 和也、佐藤 克利((株)日立製作所)

    高エネルギー高分解能X線CTを実現し、計測性能を評価するための分解能評価用ゲージをはじめとする性能評価用ゲージを設計・製作した。開発した高エネルギーX線CTの性能を検証した結果について報告する。

  • 計測用X線CTの不確かさ評価法開発

    松崎 和也、佐藤 理、藤本 弘之、阿部 誠、高辻 利之

    内外3次元幾何形状を計測可能な計測用X線CTによる測定結果は多様な不確かさ要因を含んでいるが、全ての要因の評価方法が確立しているわけではない。本研究では測定対象の形状や材質の違いに起因する測定結果への影響について、透過長さの変化と測定結果の相関に着目し実機測定とシミュレーションソフトを用いて解析を行った。

  • 計測用 X線 CT 装置の精度評価法標準化

    高辻 利之、阿部 誠、藤本 弘之、佐藤 理、松崎 和也

    X 線 CT 装置は製造業において、非破壊検査用の観察装置としての利用に留まらず、製品の寸法計上を計測する測定機としての利用が増えている。近年では計測用 X 線 CT 装置として市場に投入されている製品も登場している。測定機としての X 線 CT 装置の精度評価法は開発途上であり、標準化もされていない。本研究では ISO 化を最終目的とした計測用 X 線 CT 装置の精度評価法開発について紹介する。

  • 自動検査プロセス実現のための測定データ標準処理手順検討

    佐藤 理、阿部 誠

    光学式 3D スキャナや X 線 CT 装置は部品の全面データを高密度に測定することができ、CAD データとの照合が容易に行えるという特徴を持つ。しかしながら設計図面での指示に基づき測定データと設計データとの照合をどのように行うか、については標準的な手続きが定められておらず、オペレータの違いによる評価結果のばらつきを生じたり、検査プロセスの自動化ができないなどの要因となっている。本研究では自動検査プロセスの実現を目標とし、オペレータの差異に依存しないロバストな標準処理手順案を検討する。

  • 幾何学測定のためのX線CT装置の開発

    藤本 弘之、松崎 和也、佐藤 理、阿部 誠、高辻 利之

    X 線CT装置を製品の寸法計上を計測する測定機として利用するためには、既存のX線CT装置に加えて、ハードウエア、ソフトウエア両面から研究開発を行う必要がある。測定精度の現状を紹介する。

  • 2次元グリッドプレート校正装置の高度化

    鍜島 麻理子、阿部 誠

    NMIJでは、レーザー干渉計搭載画像測定機を用いて、2次元グリッドの校正を行っている。現在は、高精度化のため、器物を90度ずつ回転させて測定結果を平均する、マルチステップ法を行っているが、この方法では対応できない種類のグリッドプレートがあること、測定時間が非常に長くなることが、問題である。そこで、画像測定機の機械的誤差自体を測定して補正し、1姿勢での測定から測定結果を求める方法について検討したので、報告する。

  • 回転軸振れ量の検出が可能なロータリエンコーダ(SelfA+)の開発

    上山 裕理、渡部 司

    産業技術総合研究所が開発した「SelfA」は、角度誤差要因を検出し補正することで角度0.1″を超える精度を実現することができる自己校正機能付きロータリーエンコーダであり、さらに回転軸振れ量を検出する機能「SelfA+」を追加できる、開発した軸振れを定量的に発生させる装置を用いて、レーザ変位計で計測した回転軸振れ量を基準としてSelfA+が検出した軸振れ量を比較することにより、回転軸振れ検出能力を評価した結果を報告する。

【工学計測標準研究部門 ナノスケール標準研究グループ】

  • 回折式ピッチ校正装置の校正・測定能力の再評価

    三隅 伊知子、橘田 淳一郎((一財)日本品質保証機構)、木津 良祐、平井 亜紀子

    一次元回折格子は、半導体デバイス製造現場において測長走査型電子顕微鏡の倍率校正に用いられる重要な標準試料の一つである。一次元回折格子のピッチ(周期)は、ユーザから校正事業者に定期的に再校正の依頼があるため、ピッチ校正装置の長期安定性が求められる。今回、産総研の測長原子間力顕微鏡を参照標準として、校正事業者の回折式ピッチ校正装置(光学式、X線方式)の校正・測定能力の再評価を行ったので報告する。

  • DUV反射顕微鏡を使ったマスク線幅の測定

    土井 琢磨、菅原 健太郎

    DUV(248 ㎚)光源を使った反射顕微鏡の画像解析より、マスクパターンの線幅測定を行っている。事前に画素の間隔は長さにトレーサブルに校正されている。0.5 ㎛から10 ㎛の線幅測定において、焦点合わせの手法と不確かさ、CCDの画素間隔の不均一性、測定の再現性等を解析するとともに、最大の不確かさ要因である光が捉えるエッジ位置について明らかにする。

  • 空間分離型ヘテロダイン干渉計の非線形誤差評価装置の開発

    堀 泰明、横山 修子(日本マイクロ光器(株))、横山 敏之(日本マイクロ光器(株))、平井 亜紀子

    本研究では、日本マイクロ光器(株)が開発した空間分離型ヘテロダイン干渉計の非線形誤差を評価した。空間分離型ヘテロダイン干渉計は非線形誤差の発生要因を排除した光学系で構成されている。この干渉計の残存非線形誤差を評価するため、産総研にて評価装置を開発し、産総研の高精度干渉計モジュールを基準とした比較測定を実施した。その結果、日本マイクロ光器が開発した干渉計の非線形誤差が10 pm以下であることを確認した。

  • 傾斜探針型原子間力顕微鏡による線幅計測技術開発

    木津 良祐、三隅 伊知子、平井 亜紀子、権太 聡(研究企画室)

    傾斜探針型原子間力顕微鏡を用いた線幅計測では、1つのラインパターンに対し、2回にわけて左右からそれぞれの側壁と上面を含む形状測定をする。上面形状の特徴点を利用して2回の測定結果をつなぎ合わせ、探針畳み込み幅を除去することで線幅を求める。今回、つなぎ合わせアルゴリズムと探針畳み込み幅の除去手法を改良した。これらをふまえた線幅計測の不確かさ評価結果について報告する。

  • サファイア原子ステップを利用した両段差構造の応用に向けて

    菅原 健太郎、Bo-Ching He(CMS/ITRI)、権太 聡(研究企画室)

    段差として究極に小さなもののひとつとして、サファイアの原子ステップを基準としたナノ段差試料の開発を進めている。市販のサファイア基板に対して微細加工技術を用いた表面修飾を行い、その熱アニール処理によって単原子ステップからなる両段差構造を誘起することに成功している。今回、段差試料としての有用性について評価を行ったので報告する。

  • てこ式ダイヤルゲージ校正時の取り付け角度による不確かさ

    平井 亜紀子、眞下 寛治(群馬県発明協会)、尾藤 洋一(長さ標準研究グループ)、佐藤 理(幾何標準研究グループ)

    てこ式ダイヤルゲージは、使用時に測定子の取り付け角度による補正が必要なことは知られているが、今回、校正時の取り付け角度の精度による校正の不確かさについて解析的に検証した。モンテカルロシミュレーションの結果と一致することも確認し、特に測定子が長い場合や測定範囲が広い場合は、校正時の取り付け角度を注意深く合わせる必要があることがわかった。

【工学計測標準研究部門 質量標準研究グループ】

  • シリコン28同位体濃縮結晶によるキログラムの定義改定−アボガドロ国際プロジェクトの進展−

    藤井 賢一、倉本 直樹、水島 茂喜、早稲田 篤(流体標準研究グループ)、東 康史(分析計測標準研究部門 表面・ナノ分析研究グループ)、成川 知弘(分析計測標準研究部門 環境標準研究グループ)、日置 昭治(研究戦略部)

    質量の単位「キログラム」を基礎物理定数によって再定義するための研究が、世界の幾つかの計量標準研究機関で進んでいる。NMIJでは、シリコン28同位体濃縮結晶を用いたアボガドロ定数精密測定のための国際プロジェクトを推進し、アボガドロ定数を1.8 × 10-8の世界最高精度で決定することに成功した。国際プロジェクトの概要および最新の測定結果などについて報告する。

  • プランク定数に基づくキログラムの実現に関するパイロットスタディ

    倉本 直樹、水島 茂喜、藤田 一慧、藤井 賢一、黒河 明(分析計測標準研究部門 表面・ナノ分析研究グループ)、東 康史(分析計測標準研究部門 表面・ナノ分析研究グループ)、張 ルウルウ(分析計測標準研究部門 表面・ナノ分析研究グループ)

    質量の単位「キログラム」は、世界に一つしかない分銅「国際キログラム原器」によって定義されている。この定義が、近い将来、プランク定数による定義に改定される予定である。質量関連量諮問委員会(CCM)は、2018年の改定実施を目標とするロードマップを公開し、各国のキログラム実現能力の同等性を評価するためのパイロットスタディを実施した。NMIJは、定義改定後にシリコン28同位体濃縮結晶球体を用いてキログラムを実現するための準備を進め、このパイロットスタディに現在参加中である。パイロットスタディの概要および新しい定義に基づくキログラム実現の精度などについて紹介する。

  • 分量校正の不確かさ評価

    植木 正明、孫 建新、上田 和永(力トルク標準研究グループ)

    2個の参照分銅を用い、1桁分の組分銅の分量校正を行う校正手順を考案した。この手順は、比較的単純で効率的なひょう量様式であり、分量校正の理解を容易にする。発表では、10 g分銅を参照する1 gから5 gの分量校正を一例として、その校正手順、校正結果及び不確かさ評価について報告する。

  • 1000 kg高精度質量比較器の試作

    孫 建新、植木 正明、上田 和永(力トルク標準研究グループ)、藤井 賢一

    1000 kg分銅の校正能力の向上を目指して、これまでに開発した500 kgの高精度な質量比較器を改造して、ひょう量を1000 kgにまで拡大することを試みている。今回、ひょう量拡大機構のてこを交換することによって、1000 kg高精度質量比較器を試作した。ここでは、試作した1000 kg高精度質量比較器の概要と評価の結果について報告する。

  • プランク定数に基づいて実現されたキログラムの国際整合性評価のための質量測定

    水島 茂喜、倉本 直樹、藤井 賢一

    キログラムの定義改定に向けて、数値を固定したプランク定数に基づいて実現したキログラムの国際比較 CCM Pilot Study が実施された。国際比較には、X線結晶密度法によってキログラムを実現する NMIJ を含む5か国の計測標準研究機関が参加し、実現されたキログラムの一様性と連続性が試験された。本報告では、国際比較への参加に必要な仲介器の質量決定、不確かさ評価、仲介器の特性評価について紹介する。

  • キログラムの実現に関する分光エリプソメーターを用いたシリコン球体表面層の評価

    藤田 一慧、倉本 直樹、水島 茂喜、藤井 賢一、東 康史(分析計測標準研究部門 表面・ナノ分析研究グループ)、張 ルウルウ(分析計測標準研究部門 表面・ナノ分析研究グループ)

    シリコン28同位体濃縮結晶球体によるキログラムの実現には球体表面層の評価が必要であるが、真空雰囲気下における表面層の安定性については未評価の部分が多い。本研究では、真空、大気雰囲気下の両方でシリコン結晶球体を測定可能な分光エリプソメーターを開発し、キログラム定義改訂に向けたパイロットスタディのためにシリコン28同位体濃縮結晶球体表面層の評価を行った。装置開発の概要およびその測定結果について報告する。

【工学計測標準研究部門 流体標準研究グループ】

  • 低温室効果冷媒の音速および誘電率計測

    狩野 祐也

    近年、中小型空調機器用の冷媒として地球温暖化係数の小さい新規フロン物質が注目されており、既存冷媒の代替による低温室効果の空調機器の実現へ向けた研究開発が進んでいる。本研究では、新規フロン物質であるHFO-1123の熱力学性質を評価するため、気相域における音速ならびに誘電率を測定し、理想気体比熱や双極子モーメントなどの基礎物性を明らかにした。

  • トレーサブルな微小質量計測の実現とMEMS天秤、およびMEMS粘度センサーの開発

    山本 泰之

    創薬の研究開発の現場などでは微小なサンプルを取り扱っており、その質量の高精度計測の必要性がますます高まっている。しかし現状のミリグラムからマイクログラムオーダーの分銅は精度が十分ではなく、トレーサブルな高精度測定が困難であった。キログラムの定義改定に伴い、質量を電気素量などから決定することが可能になる。このことを利用して微小質量を静電気力の精密測定で決定できる新しい測定法としてボルトバランス法の開発を進めている。また、この原理を応用した質量・力センサーの開発も進めている。上記の微小質量の研究に加えて、粘度センサーの開発状況についても報告する。

  • 標準海水の絶対塩分評価技術の開発

    粥川 洋平

    地球環境や海洋のモニタリングを目的とした海水の塩分測定において、最も多く用いられている電気伝導度センサの校正には標準海水が用いられている。この標準海水に値付けされた電気伝導度に基づく標準塩分と、密度の絶対値から決まる絶対塩分に有意な差があることが課題となっており、絶対塩分を評価するために開発している海水の密度・屈折率計測技術について報告する。

  • 自己参照型格子比較器による28Si単結晶の格子定数の完全性評価

    早稲田 篤、藤本 弘之(幾何標準研究グループ)、張 小威(中国科学院高能物理研究所)、倉本 直樹(質量標準研究グループ)、藤井 賢一(質量標準研究グループ)

    高エネルギー加速器研究機構放射光施設を利用した自己参照型格子比較器により、アボガドロ定数決定用28Si単結晶の格子定数の一様性評価を行った。単結晶インゴット内の不純物分布に対応した格子の分布が見られた。アボガドロ定数決定に用いられた結晶部位では格子分布が一様であったが、不純物が多いテール側では比較的大きな格子分布が見られた。格子定数分布評価の概要およびアボガドロ定数決定への影響について報告する。

  • 粘度絶対測定のための落球実験装置の開発(落球法におけるwall effect)

    藤田 佳孝

    粘度の国際基準値である水の粘度絶対値の見直しを目指して落球法に基づく粘度絶対測定の開発を進めている。落球実験における高精度な落球終端速度の決定には、試料槽内壁による球体落下速度減速への影響の精密評価が必要不可欠であるが、そのための機構開発の取り組みについて紹介するとともに落球実験システムの開発状況について報告する。

【工学計測標準研究部門 力トルク標準研究グループ】

  • 気圧急変時の密閉型ロードセル校正における気圧補正

    林 敏行、上田 和永

    密閉型ロードセルは、外部の気圧の変化により膨張、収縮して弾性体に作用する力が変化するため、気圧急変時には出力が変化し適切な校正ができなかった。無負荷時に気圧と出力の関係を記録し、ロードセル校正時に気圧変動を記録することで、気圧急変時の校正における気圧変動の影響を補正し、測定の繰り返し性を改善することができる。本報では、補正の方法と効果について報告する。

  • 球座による大容量力計校正の不確かさ低減

    前島 弘、林 敏行、上田 和永

    力計の底面と力の増幅機構を有する力標準機の下部耐圧盤との間に球座を挿入することによって、力計校正の不確かさを低減した。参照用重錘から与えられる校正力を増幅すると、力標準機の下部耐圧盤に不均一な応力分布が生じ、この応力分布がある種の力計の感度に影響する。球座により、下部耐圧盤から力計に伝達される不均一な応力分布を緩和して、力計校正の不確かさを低減することができる。本報では、この球座の効果について報告する。

  • 電磁力による微小トルク標準機の開発

    西野 敦洋、藤井 賢一(質量標準研究グループ)

    本研究では、重力によるトルクの発生方法では実現が困難な微小領域において、SIトレーサブルなトルクを実現するために、電磁力によるトルクの発生方法について検討し、その新しい原理に基づく高度な微小トルクの計測技術を確立することが目的である。本発表では、電磁力によるトルクの発生原理、電磁力式トルク標準機の概要、電磁力式トルク標準機によって実現されるトルクの評価方法について報告する。

  • 純ねじり負荷とトルクレンチ負荷によるトルク計測機器の校正結果の違いについて

    大串 浩司

    トルク分野において、純ねじりの負荷とトルクレンチ形状の負荷とを必ずしも明確に区別していないことがある。しかしながら過去にこの違いについて定量的に研究された報告はほとんどない。そこで本研究では両者の負荷形態を同一のトルク変換器で実現できる特別なトルク変換器を開発し、二種類の負荷形態の校正結果に与える影響の違いを定量的に調べたので報告する。

【工学計測標準研究部門 圧力真空標準研究グループ】

  • 国際計測連合(IMEKO)の圧力真空計測技術委員会(TC16)の活動

    小畠 時彦

    国際計測連合(IMEKO: International Measurement Confederation)の24ある技術委員会(TC: Technical committee)の一つ、圧力真空計測技術委員会(TC16)の委員長を2016年9月から、3年間の任期で、務めることになった。圧力・真空等の計測及び計量に関する研究・技術開発について、国際的な連携を推進するために同技術委員会が取り組んでいる活動の内容を紹介する。

  • 圧力媒体の種類による気体用デジタル圧力計への影響評価

    飯泉 英昭、梶川 宏明、小畠 時彦

    圧力真空標準研究グループでは、100 MPaまでの気体高圧力標準の国際同等性を確認するため、国際比較を実施した。国際比較の仲介器には、デジタル圧力計を用いたが、その特性評価の結果、圧力媒体の種類により校正値が異なる事が判明した。本研究では、さらなる評価を行い、圧力媒体の種類によりデジタル圧力計の校正値が異なる原因について調査した。

  • 連続加圧時の液体高圧力用圧力計のドリフト特性

    梶川 宏明、小畠 時彦

    液体高圧力用の高精度圧力計に対して100 MPaの圧力を連続して印加し、校正値の長期的なドリフトを評価した。1年半以上にわたり加圧を継続した場合と、途中で加圧を中止し大気圧に戻した場合で校正値の変化を比較した。測定結果を基に、連続加圧時のドリフト特性の評価方法及び補正方法について議論する。

  • 大気圧測定値のウェブ配信システムの開発

    小島 桃子、小畠 時彦

    国家標準にトレーサブルに校正された大気圧計を用いて、現在の大気圧値を事業所内にウェブ配信するシステムを構築した。システムにおいては、おおよそ過去24時間の大気圧変動をグラフで確認することができ、建物内の階による高さ補正値も表示する。

  • 三極管形真空計の比感度係数の圧力依存性

    杉沼 茂実、平田 正紘(知的財産・標準化推進部)、小畠 時彦

    熱陰極電離真空計の感度係数、比感度係数は、圧力範囲を考えて測定する必要があるし、使う必要がある。文献に見られる熱陰極電離真空計の一種である三極管形真空計の圧力依存性の実験データはこのことを支持している。三極管形真空計の感度係数、比感度係数の圧力依存性についてシミュレーションもまじえて検討する。

  • 汚染診断機能付き冷陰極電離真空計の開発

    吉田 肇、新井 健太、小畠 時彦

    冷陰極電離真空計は、熱陰極電離真空計に比べて耐久性に優れると言われているが、一方で、電極の汚染により感度変化することも知られている。本研究では、一つの測定子内に、通常測定用電極と汚染診断用電極の、二つの放電電極を持つ冷陰極電離真空計を開発し、その特性を評価した。また、実際に炭化水素系の汚染ガスを導入して、汚染診断機能の検証も行ったので、併せて報告する。

  • リーク量の国家標準の整備と標準を利用したスニファー法リークディテクタの試験

    新井 健太、吉田 肇、小畠 時彦

    スニファー法リーク試験は稼働中の機器のリーク試験ができるため、温暖化ガスであるフロンが冷媒として充填されている冷凍空調機器のリーク試験をはじめ、広く用いられている。当研究グループでは、様々なリーク量の国家標準を整備し、校正サービスを実施している。本報告では、当該国家標準によりリーク量が校正された標準リークを用い、各種環境条件を変化させたときのリークディテクタの表示値の変化を紹介する。

【工学計測標準研究部門 強度振動標準研究グループ】

  • ナノインデンテーション法による機械特性評価に関する調査報告

    田中 幸美

    現在、ナノスケールの薄膜や複合材料など構造体の微細化が急速に進む中、微小領域の機械特性を評価するためにナノインデンテーション法が確立されてきた。本発表では、ナノインデンテーション法を用いた弾性率・硬さの算出手法、および残存する課題について調査した内容を報告する。

  • 画像処理を用いたくぼみサイズの自動測定

    清野 豊

    ブリネル硬さやビッカース硬さでは顕微鏡を用いてくぼみサイズの測定を行うが、眼視による測定では個人差が生ずる。大きな偏差要因である個人差を除くため、画像処理によるくぼみサイズ測定の試みについて報告する。

  • ヘテロダイン型レーザ干渉計を搭載した20 kHz超 高周波振動校正装置の開発

    野里 英明、穀山 渉、石神 民雄、三森 弘美

    ISO 16063-11で規定される2位相検出型ホモダイン型レーザ干渉計では、5 kHz近辺が加速度計の一次校正可能な上限となる。そこで、20 kHz(変位振幅 10 nm弱、加速度振幅 100 m/s2)以上の一次校正を可能にするために、ヘテロダイン型レーザ干渉計を搭載した高周波振動校正装置を開発した。本発表では、装置開発の現状とその校正結果について報告する。

  • 超低周波振動加速度校正装置の高性能化とその応用

    穀山 渉、新谷 昌人(東京大学)、石神 民雄、野里 英明、大田 明博、服部 浩一郎

    0.1 Hz 〜 200 Hz 程度の超低周波領域での加速度計校正は、地震観測やインフラ計測の観点から、近年重要性が増してきている。それに伴い、当所では装置の高性能化改修を施し、国際基幹比較 CCAUV.V-K3 (2014年-2015年)に参加した。本発表では、その国際比較の結果を中心に、装置の現状、将来計画、および広帯域地震計校正実験に関する状況を報告する。

  • 新方式デジタル位相計の性能評価と応用状況

    穀山 渉

    RF(10 MHz 〜 200 MHz)信号用の位相計を開発した。これは、新方式アルゴリズムをFPGAに実装したものであり、精度・ダイナミックレンジ・高速応答を両立できる。本発表では、この位相計の性能評価(位相精度・直線性、応答特性、ノイズレベル、ダイナミックレンジ、AM-FMカップリング)および応用状況や将来の可能性について報告する。

【工学計測標準研究部門 液体流量標準研究グループ】

  • 半逆位相パルスを用いた超音波流速分布計測の高度化に関する研究

    和田 守弘

    本研究は、パルス超音波を用いた流速分布計測法を流量計測法をオンサイトキャリブレーションにおける参照流量計として用いることを最終目標とし、本報では、パルス超音波位相を一部反転させた半逆位相パルス利用により流速分布及び流量計測の高度化を行った。

  • 高レイノルズ数円管流れにおける管摩擦係数と流速分布

    古市 紀之

    バルクで10の7乗、摩擦速度で10の5乗を超える高レイノルズ数における円管流において、管摩擦係数と流速分布を高精度にて計測し、新たな管摩擦係数ーレイノルズ数式を提案する。

  • 液物性の違いに対する石油中流量校正設備の特性評価

    土井原 良次

    石油中流量校正設備は、試験液を交換することにより広い粘度範囲で流量計を校正することができる。一方、ダイバータおよび秤量タンクを使った校正原理であるため、液物性の違いが校正精度へ影響を与えることが懸念される。そのため壁面付着、蒸発等の影響を低減させる工夫が装置に施されている。4種類の試験液に対して影響の調査を行ったので、結果を報告する。

  • 流量計を用いた大型体積管式石油用流量計校正設備の校正

    嶋田 隆司、土井原 良次、CHEONG Kar-Hooi、寺尾 吉哉、糸 康((株)オーバル)、白鳥 慎治((株)オーバル)

    国家標準にトレーサブルである標準流量計と大型の容積式流量計を用いて、流量範囲100 〜 1800 m3/hである大型体積管式石油流量計校正設備を校正した。その結果、流量に対する体積管の校正値の偏差(ばらつき)は±0.02 %以内であり、良好な流量特性を示すことがわかった。さらに、体積管の校正値の拡張不確かさは0.090 %以下であると推定された。

  • 小流量域の流量校正における通液式静的秤量法の精度向上に関する研究

    CHEONG Kar-Hooi

    液体用流量計の校正に際して、校正装置で発生した標準流量とその標準流量に対する流量計の指示値が比較される。校正装置における標準流量の発生方法の一つとして、流量計に安定した連続流を供給できる利点を持った通液式静的秤量法がよく用いられる。通液式静的秤量法を実現するために、秤量計、秤量タンク、ダイバータ(転流器)から構成された秤量システムが必要である。秤量システムの構成要素の中で、秤量タンクへの試験液切り換え操作を制御するダイバータが重要な要素である。従来、産総研で開発した2枚羽根式ダイバータの高精度と回転式ダイバータの効率性を維持したまま、小流量域での校正において顕著化した蒸発量や液付着量、飛び散り量による誤差を低減し、小流量域での高精度な校正を可能にする秤量システムの開発について報告する。

【工学計測標準研究部門 気体流量標準研究グループ】

  • 気体大流速標準における新たな計測方法による流速分布の不確かさ評価

    岩井 彩

    気体大流速標準の確立過程において、標準体積流量から標準流速を算出する際に計測する流速分布が主要な不確かさ要因となっており、不確かさの低減が望まれていた。このため、熱線流速計を用いた新たな計測方法を採用し、実験と不確かさ解析を行った。本発表では、これらの詳細および結果について紹介する。

  • 数ミリ秒の気体流量変動生成技術に関する試行的研究

    舩木 達也

    気体流量計の動特性補償は、流量計測分野の残された課題の一つである。本研究では、数ミリ秒の流量変動を生成可能とするために求められる必要条件を試行的に検討し、課題点や展望などを報告する。

  • ポータブル校正風洞の試作

    栗原 昇

    流速は流量と違って位置ごとに定まるベクトル量である。したがってプローブが十分小さな風速計を風洞で校正する際には原理的にその口径も小さくできることになる。そこで持ち運び可能な校正風洞のプロトタイプを試作し、本年の産総研一般公開で稼働させたので、その概要を報告し今後の展開を検討する。

  • 臨界ノズルの1点補正による高精度気体流量測定の可能性

    石橋 雅裕

    トロイダルスロートを持つ超精密加工臨界ノズルの流出係数は層流境界層域で非常に安定しており、解析理論的にも数値計算的にもその正しさが確認され、ISO 9300やASME PTC 19.5などで基準のカーブとして利用されているが、通常加工の臨界ノズルであっても、製作上の簡単な制限を守ることにより、1点のみの校正でスロート直径を補正すれば、その基準カーブを用いて高精度の流量測定が可能となる可能性があることを示す。

【分析計測標準研究部門 音響超音波標準研究グループ】

  • 半無響室の音圧減衰特性評価における音源の指向性の影響

    山田 桂輔、高橋 弘宜、堀内 竜三

    我々は音響パワーレベル標準の開発に関連して半無響室の性能評価(音圧の距離減衰特性の測定)に関する研究を行っている。本稿では、音源の指向性が減衰特性の測定結果に与える影響について報告する。室内の空間中の音圧を音源の指向性を考慮に入れた上で計算により求め、無指向性音源を使用した場合との差を求めた。

  • 空中超音波域におけるWS3マイクロホンの相互校正法による自由音場感度校正の不確かさ

    高橋 弘宜、米嶌 和香子、堀内 竜三

    当グループでは、20 kHzから100 kHzの周波数域におけるWS3マイクロホンの自由音場感度校正を無響箱を用いた相互校正法によって行っている。本報告では空中超音波域特有の不確かさ要因などを説明しながら自由音場感度校正の不確かさを報告する。

  • 水を発熱体とするカロリメトリ法による超音波パワー計測 ‐200 Wへの拡張-

    内田 武吉、吉岡 正裕、松田 洋一、堀内 竜三

    NMIJでは、超音波パワー標準の供給範囲を100 Wから200 Wへ拡張する予定である。今回は、200 Wまでの範囲拡張に必要となる基準超音波振動子の開発について報告する。また、サーマルコンバータを使用した超音波振動子への入力電圧の測定方法についても報告する。

  • 広帯域超音波瞬時音圧の精密計測技術の開発−ハイドロホン感度周波数特性の影響−

    吉岡 正裕、内田 武吉、堀内 竜三

    近年、医用超音波としてパルス状の広帯域超音波が多く利用されるようになった。しかし、医用超音波の安全性評価のため、ハイドロホンを用いた超音波音場の精密計測法を規定するIEC規格では、狭帯域な超音波を想定し、超音波の中心周波数におけるハイドロホン感度のみを用いて音圧の瞬時波形を求めている。この方法で広帯域超音波の瞬時波形を計測した場合のハイドロホン感度周波特性の影響について検討し、より精密な広帯域超音波計測法開発の必要性を確認した。

  • ハイドロホン感度校正の国際基幹比較CCAUV. U-K4について

    松田 洋一、吉岡 正裕、内田 武吉、堀内 竜三

    我々は、医用超音波機器から出力される音圧の振幅計測に必要な標準(ハイドロホン感度校正)を0.1 MHzから40 MHzの周波数範囲で供給している。今回、2014年から2015年にかけて実施された国際基幹比較CCAUV. U-K4(周波数範囲:0.5 MHz - 20 MHz)に参加した。その結果、当所の校正値が不確かさの範囲内で基幹比較参照値(KCRV)に一致することが確認された。

【分析計測標準研究部門 放射線標準研究グループ】

  • IVR装置周辺の線量当量の測定

    黒澤 忠弘、加藤 昌弘

    カテーテル治療などの際に用いられるIVR(Interventional Radiology)装置では、透視X線による術者への被ばくが問題視されている。今回、電離箱線量計を用いて、H*(10), H'(3), H'(0.07)の線量の関係について測定を行った。

  • 異なるモンテカルロコードの相互比較

    森下 雄一郎、桐原 陽一(KEK)、清水 森人、波戸 芳仁(KEK)、平山 英夫(KEK)

    放射線標準の正誤の大半はモンテカルロコードに正誤に大きく依存している。モンテカルロコードの検証には実際の計測との比較が最適であるが、実際には様々な困難を伴う。そこで簡単な検証方法として、異なるモンテカルロコード同士を比較した。

  • ストロンチウム90によるβ線標準場の特性評価

    加藤 昌弘、黒澤 忠弘

    水晶体被ばく線量測定などに用いるβ線標準場の特性を調査した。ストロンチウム線源を用いた標準場についてビームフラッタニングフィルタの有無による線量率分布の変化を、測定及びシミュレーション計算によって比較した。

  • X線ビーム用小型カロリメータの開発

    田中 隆宏、加藤 昌弘、齋藤 則生、矢橋 牧名(理化学研究所)、登野 健介(理化学研究所)、石川 哲也(理化学研究所)

    これまで極低温放射計や常温カロリメータを開発し、X線領域の放射光やX線自由電子レーザの絶対強度測定を行ってきた。しかし、これらの絶対測定器は、大型の真空チャンバーを必要とするため、使用機会が限定されてしまっている。そこで、より使いやすさを追求し、70 mm径の真空ポートから光軸上に導入可能な小型カロリメータを開発した。本発表では、小型カロリメータによって測定される光強度(パワー)の絶対値の評価実験について報告する予定である。

  • コンパクトグラファイトカロリーメータを用いた高エネルギー光子線水吸収線量の絶対計測

    清水 森人、森下 雄一郎、齋藤 則生

    医療現場で用いられる幅広い種類の治療用放射線の水吸収線量を絶対計測するため、医療施設に持ち込み可能なコンパクトグラファイトカロリーメータを開発した。試験として、医療用リニアック装置からの高エネルギー光子線の計測を行ったので報告する。

  • アラニン/ESR線量計を用いた高線量γ線標準の開発状況

    山口 英俊

    キログレイレベルの高線量γ線は医療機器の滅菌や食品照射などに利用されており、品質管理の為に線量計測が重要となる。高線量計測に有用なアラニン/ESR線量計を用いた高線量γ線の水吸収線量標準の開発状況を報告する。

【分析計測標準研究部門 放射能中性子標準研究グループ】

  • 産総研中性子標準の現状について

    原野 英樹、松本 哲郎、増田 明彦

    各種中性子線量計の校正等の性能試験に必要とされる連続スペクトル中性子フルエンス標準のJCSS化の整備状況、本年度より開始されたCf中性子線源の中性子放出率に関する国際比較、単色中性子フルエンス標準の開発状況、中性子標準に関連した医療応用、高エネルギー中性子、検出器開発等、産総研中性子標準の現状について報告する。

  • ホウ素中性子補足療法向けの熱外中性子エネルギー分布測定

    増田 明彦、松本 哲郎、原野 英樹、高田 健太(筑波大学)、熊田 博明(筑波大学)

    ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)に用いる熱外中性子源として加速器を用いたものは、中性子発生・エネルギー変調方式や施設特性の多様性ゆえに得られる中性子のエネルギー分布も多様であり、その実験的評価が強く求められている。いばらき中性子医療研究センターで開発中の中性子源を利用して実施した、ボナーアンフォールディング法による測定の結果と得られた知見について報告する。

  • Liガラスシンチレータを用いた電流モードによる測定法の精密化に関する研究

    松本 哲郎、増田 明彦、原野 英樹、堀 順一(京都大学)

    ホウ素中性子捕捉療法においては、大強度かつパルス的な中性子が使用されるが、従来のパルスカウンティングによる測定手法では限界がある。そこで、本研究では、Li-6とLi-7のガラスシンチレータを組み合わせた検出器で、光電子増倍管からの出力電流を直接測定することによって、大強度かつパルス的な中性子の測定をする。今回は、その前段階として行った基礎実験の結果について報告する。

  • 放射性ガス標準に用いる通気式電離箱のキャリアガスによるレスポンスの違いの評価

    柚木 彰

    放射性ガスモニタの効率校正において主要な不確かさ要因の一つとなっている、基準器として用いる通気式電離箱のP-10ガスに対するレスポンスの、乾燥空気やメタンガスに対するレスポンスとの比を、精度良く求める手法を新たに開発し、試験評価に適用したのでその結果を報告する。

  • がん治療用のラジウム-223の放射能標準

    佐藤 泰

    がん治療用のラジウム-223の放射能標準を確立した。ラジウム-223は崩壊系列を成し、それぞれの核種からα線やβ線が放出される。そのため、アメリシウム-241の放射能を校正して、α線の標準線源とし、またトリチウムの放射能を校正して、β線の標準線源とした。これらに基づいて、液体シンチレーションカウンタにおける、放射性核種の検出効率を計算することにより、ラジウム-223の放射能が得られるようになった。

  • ウェル型Ge半導体検出器の特性評価とシミュレーション

    海野 泰裕、古川 理央、柚木 彰

    ウェル型Ge半導体検出器は、少量試料中の放射能に対して感度の高いガンマ線スペクトロメトリを実現する装置として用いられている。実用上、小型容器を用いてホール内に試料を入れる条件だけで無く、大型容器に試料を入れて装置上部に置く条件で使用したいニーズがある。ホール内試料と装置上部に試料を置いた両条件での感度変化を評価するためのシミュレーションを実現した。

  • 多電極比例計数管を用いたラドンガスのα線測定

    古川 理央、海野 泰裕

    ラドンは大気中に存在する自然放射性物質である。NMIJではラドンの一次標準立ち上げに向け、標準器を開発している。本発表では標準器として稼働させる予定のラドン濃度を絶対測定する多電極比例計数管を用い、ラドンガスからのα線を測定したのでその結果について報告する。

【分析計測標準研究部門 X線・陽電子計測研究グループ】

  • 超低消費電力放射線線量計の応用

    鈴木 良一

    福島原発事故で飛散した放射性物質による住民の外部被ばくを測定するための個人向け放射線線量計を開発した。この線量計は、バッテリー交換無しに1年以上一定時間毎の線量の記録が可能である。現在、この線量計の応用範囲を広げるための改良を行っている。

  • 小型ビーム分析装置の開発

    大平 俊行

    実験室サイズの汎用型陽電子ビーム寿命測定装置および間口30 cm幅の超小型イオン注入装置の開発について報告する。

  • 電子加速器ベース低速陽電子ビーム施設公開と最先端測定技術開発

    オローク・ブライアン

    機能性材料の特性は、原子〜ナノレベルの空孔に影響を受ける場合が多く、それらの計測・評価が重要である。陽電子はこのような極微小空孔に最も敏感なプローブとして知られている。我々は、電子加速器を用いて、低速陽電子ビーム施設を構築し、最先端測定技術を開発しながら装置公開により外部ユーザーの測定を積極的に実施している。

  • 小型軽量な非破壊検査用可搬型X線源の開発

    加藤 英俊

    針葉樹型カーボンナノ構造体冷陰極電子源を用いた小型軽量な高エネルギーX線源の開発を行ってきた。開発した非破壊検査用パルスX線源は管電圧170 kV以上でありながら、厚さ70 mm以下を実現し、これまで検査が難しかった狭い場所でのX線非破壊検査が可能になった。また、待機電力が不要で総合的なエネルギー消費が低いことから、USB電源や乾電池でも駆動できる。

  • 陽電子を用いた材料中のナノ空孔計測

    大島 永康

    電子の反粒子である陽電子は、高度なビーム制御をすることにより様々な条件下での計測が可能になる。本報告では入射エネルギー可変の陽電子ビームや陽電子マイクロビームを用いた材料中のナノ空孔計測について報告する。

  • 電子加速器による材料分析用中性子源の検討

    木野 幸一

    中性子は、材料中の微視的構造に敏感なプローブである。我々は、短パルス中性子ビームを利用した材料分析を行うため、高出力電子加速器で発生した高エネルギー電子ビームによる材料分析用中性子源の検討を行っている。

【分析計測標準研究部門 ナノ顕微計測研究グループ】

  • 水晶振動子型水素センサ・濃度計の実用化活動によるニーズ開拓とシーズ発掘

    鈴木 淳

    水晶振動子を用いた水素センサ・濃度計の実用化活動を行い、製品化された場合のニーズを把握した。また製品デモ機の製作依頼を行う過程でガスセンサメーカーとの議論及び意見交換を行った上で性能評価を実施していただいた。その結果、現状では即時の製品デモ機の制作には至らなかったが、必要な仕様及びこれまで把握していなかった有用な技術的情報が得られた。

  • ナノ材料の形態・ナノ物性評価法の開発

    井藤 浩志

    ナノ材料の形態や物性を走査型プローブ顕微鏡(SPM)で評価する方法の開発を行っている。薄膜を利用した高分解能観察法(光学顕微鏡測定)、SPMによる粒径分布測定法、および、その応用例を示す。

  • 凍結乾燥法による、ナノ粒子のシリコン基板上への分散

    重藤 知夫

    ナノ粒子の顕微鏡観察には、粒子密度が高いにもかかわらず凝集は少ない試料が求められる。さらに、粒径等の分布を統計的に扱うには、試料全体の均一性が重要となる。分散液を薄膜化した後に凍結乾燥することにより、-80 ℃の冷凍機とシリコン基板という悪条件においても十分な分散状態の試料を作成できる手法を開発した。この方法により、入手性の高い器具のみによる簡便な試料作成が可能になる。

  • 亜鉛錯体を利用したラジカル分解質量分析法によるリン酸化ペプチド配列解析法の開発

    浅川 大樹

    リン酸化はタンパク質の最も重要な翻訳後修飾の一つであるが、ペプチド・タンパク質がリン酸化されることでイオン化の効率が著しく減少し、質量分析における検出感度が低くなることが知られている。リン酸基に特異的に結合する金属錯体を用いることで、リン酸化ペプチドのイオン化効率を向上させるとともに、ラジカル分解質量分析法と組み合わせによりリン酸化ペプチドのアミノ酸配列の決定が可能となった。

【分析計測標準研究部門 放射線イメージング計測研究グループ】

  • Sm系磁石の磁気異方性に関する研究

    柏谷 裕美、田中 真人、乙川 光平(早稲田大学)、小川 博嗣、池浦 広美、豊川 弘之

    当グループで開発中のMCDーPEEMやXAFSの結果解析のための第一原理計算を行っている。本研究では、ジスプロシウム・フリーの磁石であるSm系磁石の磁気異方性を研究している。Sm2Fe17N3の状態密度など、電子状態の計算を行った結果を報告する。

  • 内殻分光法を利用したバンド構造評価手法の研究

    池浦 広美、小川 博嗣

    内殻電子励起をともなうX線吸収分光では内殻ホールのポテンシャルによって局在化した励起状態が生じる。しかしながら、バンド構造を持つ場合、完全には局在化せず、内殻束縛励起子とバンド構造に由来する二種類のピークが観測されるケースがある。近年、有機半導体においても同様の現象を見出しており、内殻励起状態を利用した新たな分析手法の開拓を目指した研究とその進捗について報告する。

  • 蛍光ガスを用いた放射線検出

    藤原 健

    ガラス製のガス電子増幅器(Glass GEM)と蛍光ガスを組み合わせることで、放射線とガスの相互作用により生じた微小電荷を増幅し、その際に生じた高輝度なシンチレーション光を検出することで放射線の検出・イメージングが可能になる。本原理を用いたX線や中性子、重粒子線のイメージングについて報告する。

  • 高出力レーザーの応用に関する研究

    三浦 永祐

    高出力レーザーを用いてエネルギーを時間的、空間的に集中することにより、高いエネルギー密度状態を生成することができる。レーザーによって生成される高エネルギー密度プラズマを利用した光・量子ビーム源の研究を進めている。また、高エネルギー密度状態を反応場として利用し、材料の改質、新材料の創成の研究も進めている。これら高出力レーザーの応用研究について報告する。

  • X線イメージング光学素子に関する研究

    安本 正人、黒田 隆之助、平 義隆、三澤 雅樹(健康工学研究部門)

    位相コントラスト法を用いたX線検査装置について研究開発を行っている。位相コントラスト法の中でも、準単色の光源を利用して、大面積で測定可能なタルボ干渉法について実験を進めている。本発表では、タルボ干渉法で用いるX線用回折格子の設計、製作、評価について報告する。

  • 線形加速器を用いた高出力テラヘルツ光源の開発

    清 紀弘、小川 博嗣、早川 建(日本大学)、田中 俊成(日本大学)、早川 恭史(日本大学)、境 武志(日本大学)、野上 杏子(日本大学)

    分析計測標準研究部門では、日本大学と共同し、日本大学の加速器施設LEBRAにおいて高強度テラヘルツ光源の開発を進めている。導体薄膜を相対論的電子ビームが通過する際に発生するコヒーレント遷移放射(CTR)では、パラメトリックX線ビームラインを使用して実験室まで輸送できる複合ビームラインを建設した。本講演では、国内の加速器を利用した広帯域テラヘルツ光源としては最高強度である、日本大学のCTR光源について報告する。

  • インフラ診断用後方散乱X線イメージング技術の開発

    豊川 弘之、藤原 健、萬代 新一(BEAMX)、伊佐 英範(BEAMX)、大橋 和也(名古屋大学)、山崎 淳(名古屋大学)、渡辺 賢一(名古屋大学)、瓜谷 章(名古屋大学)

    後方散乱X線イメージングによるインフラ診断技術を実証し、同手法を実用化することを目指している。そのために、小型電子加速器技術を用いた高エネルギーX線発生装置、および後方散乱用イメージング検出器の開発を行っている。後方散乱を用いて測定したコンクリ—ト内部の可視化について報告する。

  • フェルミ準位近傍の非占有電子状態の計測技術開発

    小川 博嗣、池浦 広美

    有機デバイスの動作において重要な因子である有機電子材料の非占有軌道の情報を取得する計測手法の開発を行っている。軟X線吸収分光法とオージェ電子分光法を用いた有機ケイ素ポリマーの測定例および最近、取り組み始めた逆光電子分光法の高感度化について報告する。

【分析計測標準研究部門 非破壊計測研究グループ】

  • 等方性グラファイト材料の超高温クリープ変形挙動の計測

    岩下 哲雄

    各種の等方性グラファイト材料において、2500 ℃での高温引張クリープ試験を行った。その結果、高温クリープ変形速度は、グラファイト材料の種類によって異なる結果が得られた。その超高温クリープ変形挙動について紹介するとともに、それに影響を及ぼす要因を考察する。

  • 炭素繊維の断面形状の評価が材料特性に及ぼす影響

    藤田 和宏、岩下 哲雄、北條 正樹(京都大学)

    昨年度、新規に開発した装置による計測によって、炭素繊維の断面形状は位置によってほとんど変化なく、その方向は回転してるものの、一様に回転しているわけではないことを明らかにした。今年度は、さらに3種類の繊維について計測を行い、同様の結果を得た。材料力学的特性への影響を調べるために、単繊維でのねじり試験、引張試験を行った。ねじり弾性率、引張特性どちらの評価においても、楕円断面と仮定することで分散を小さくすることができ、より信頼性の高い評価を行えることを見出した。

  • 実構造部材の超音波探傷技術の開発

    遠山 暢之、山本 哲也、宮内 秀和、津田 浩

    自動車、鋼橋、水素タンクなどの実構造部材の欠陥をその場で迅速に検出できる超音波検査システムの開発と社会実装を目的として、超音波探傷の要素技術開発および実証試験を進めている。各種実構造部材における欠陥検出例をはじめとして、レーザー励起超音波やレーザードップラー振動計を使用した最新の超音波計測システムの開発動向や今後の展開などについても併せて紹介する。

  • 複数欠陥を有する試験片における超音波伝搬現象の映像化

    山本 哲也、遠山 暢之、宮内 秀和、津田 浩

    複数(2か所)の欠陥を有する試験片においてレーザー超音波映像化探傷装置を用いてデータ取得を行い映像化を行った。従来の欠陥が1か所のみの場合との比較、複数欠陥試験片における各欠陥の判別可能性等に関して議論する。

  • ホログラフィとモアレを融合させた高精度3次元変形・ひずみ計測システムの検討

    夏 鵬、王 慶華、李 志遠、津田 浩

    実際の物体変形は面内だけではなく、面外方向も発生している。面外変形は面内変形の計測結果に影響を及ぼすことから、正確な面内変形計測には面外変形を計測した結果を用いて補正する必要がある。面外方向変形をナノオーダーで計測できるデジタルホログラフィを面内用モアレ計測システムに融合し、面外面内変形を両方高精度計測の可能性を検討した。

  • 社会インフラのモアレ変位計測技術の開発

    李 志遠、王 慶華、津田 浩

    橋梁やトンネルなど社会インフラの老朽化が問題になっている。本発表では、橋軸方向からの画像撮影でたわみを測定できる方法の原理と同手法を跨線橋・跨道橋へ適用した結果を示す。加えて、吊り橋のトラス構造や鉄道橋のリベットなどの繰り返し模様を利用することで、遠方に設置されたデジタルカメラより車両通過時の画像を連続的に撮影するだけで、高精度かつ簡便・安価に変位を測定できるようになった。これらのモアレ変位計測結果を報告する。

  • 超音波伝播可視化映像のオプティカルフローによる欠陥検出法の開発

    宮内 秀和、遠山 暢之、山本 哲也、津田 浩

    構造体の欠陥検出に利用できる可視化計測法として、「励起用レーザ走査による超音波伝播の映像化法」(標準仕様書(TS) Z0028)がある。欠陥のある構造体を伝播する超音波をその可視化計測法で得られた超音波伝播映像に対して、画像処理法の一つであるオプティカルフローによりその映像の特徴点を追跡することで、欠陥検出する方法を開発した。これは、欠陥からの反射波を逆時間方向に特徴点を自動追跡し収束させることにより、湧き出し点としてみえる欠陥による超音波反射源の位置を推定する方法である。

  • Microscale Deformation Visualization and Strain Mapping of Composite Materials for Instability Evaluation

    王 慶華、李 志遠、津田 浩

    The deformation distributions of carbon fiber reinforced plastics and titanium alloys in mechanical loading tests were nondestructively investigated using our recently developed moir? techniques. The microscale full-field displacements were directly visualized and strains were accurately measured. Quantitative evaluations of strain concentration and crack occurrence were successful.

  • 炭素繊維の軸直角方向弾性率評価条件の検討

    永井 英幹、藤田 和宏、岩下 哲雄

    PAN系炭素繊維単繊維の繊維軸直角方向の圧縮弾性率を、繊維圧壊試験によって評価する手法の開発を進めている。弾性率は、評価に用いる対象区間の取り方によって影響を受けるので、評価に適した区間を客観的に決定する方法を検討した結果を報告する。

【分析計測標準研究部門 ナノ分光計測研究グループ】

  • 波面制御に基づく散乱媒質を透視する光イメージング

    白井 智宏

    光を使って生体組織などの多重散乱媒質内部を、より深く、より高い分解能でイメージングする技術の確立を目指して、波面制御に基づく散乱媒質を透過した光波のフォーカシング技術と、それを深部イメージングに適用する実用的な手法を検討した。

  • 赤外線カラー暗視撮影技術の開発と応用

    永宗 靖、時崎 高志、太田 敏隆(ナノ材料研究部門)

    これまで夜間の防犯や動物観察などの暗視撮影を必要とする分野では赤外線暗視カメラが使用されてきたがモノクロの映像しか撮影出来なかった。一方、赤外線撮影により肉眼に近いカラー映像が撮影出来ればこれまでとは質的に異なる情報が得られ前述の分野などで新しい展開が期待される。本発表では、赤外線でカラー映像の撮影を実現する赤外線カラー暗視撮影技術の開発と応用について紹介する。

  • レーザー蒸発により生成した中性粒子の拡散過程

    永井 秀和

    固体表面へのレーザー照射により気化生成する中性粒子は、2次イオンや脱離イオンに比べ大量に存在するため、これらを観測する事で質量分析の測定感度の向上が期待できる。本研究ではパルスレーザー照射により発生する中性粒子が真空中で、どのように拡散していくのか(角度分布や速度分布)物質による違いや照射条件(出力やビーム径)による変化を調べるため、共鳴イオン化質量スペクトルにより観測を行った。

  • 時間分解分光法による有機薄膜太陽電池の光励起状態ダイナミクスの研究

    松 弘幸

    ジケトピロロピロール(Diketopyrrolopyrrole: DPP)骨格を有するドナー・アクセプター結合型コポリマーは、低バンドギャップ(‾ 1.5 eV)に由来する広帯域の光吸収性から、バルクヘテロ型有機薄膜太陽電池におけるドナー材料として注目され、近年盛んに研究されている。 実際に、DPPポリマーを用いたバルクヘテロ型有機薄膜太陽電池では、高い変換効率(6.5 %) [1]が報告されている。 本研究では、DPPとナフタリンからなるコポリマー(PDPP-TNT)とこれを用いたバルクヘテロ型太陽電池における基礎光電過程を明らかにするために、フェムト秒過渡吸収分光法とピコ秒時間分解発光分光法を用いて、本系における励起子及び光キャリアの高速ダイナミクスを調べた。その結果について報告する。

  • 材料の励起状態を分析する二光子—光電子収量分光の開発

    細貝 拓也、松 弘幸、中村 健

    材料の励起状態の電子準位は電子デバイスの伝導特性に極めて大きな影響を与えるが、その計測手法および測定雰囲気は限られていること。我々は近年、励起状態の電子準位をより簡便に調べるための新しい手法として二光子−光電子収量分光法を提案している。本研究では、本手法の原理を説明し、その開発状況について報告する。

  • 過渡吸収分光法を用いたTADF材料の励起状態ダイナミクスと高効率逆交換交差の分子構造条件

    細貝 拓也、松 弘幸

    熱活性型遅延蛍光(TADF)材料は電気励起によって発生した励起子を全て蛍光に利用できる、次世代の有機EL用発光材料として現在高い注目を浴びている。本発表では、TADF材料の高効率な発光メカニズムを解明するために、当グループが所有する各種の過渡吸収分光法を用いたTADF材料の励起状態ダイナミクスの研究成果について報告する。