2015年度 計量標準総合センター成果発表会
ポスターセッション 1日目

【物質計測標準研究部門 無機標準研究グループ】

  • 金属亜鉛の純度測定に関する国際比較試験(CCQM-P149)

    三浦 勉、鈴木 俊宏、朝海 敏昭、山内 喜通

    CCQM/IAWGで実施された金属亜鉛の純度測定に関する国際比較試験CCQM-P149に参加した結果を報告する。

  • NMIJ CRM金属標準液シリーズの安定性評価

    鈴木 俊宏、三浦 勉

    計量法に指定された特定標準物質校正用の一次標準液として供給され、JCSS標準液の基準となっているNMIJ CRMの金属標準液シリーズについて、滴定法を用いた精密な安定性評価を行っている。各標準液の長期安定性に関して、得られた結果と知見について報告する。

  • ICP-MSによる軽元素分析に関する一考察

    野々瀬 菜穂子

    ICP-MSによる分析は、多元素分析から、従来は困難であった軽元素分析や単元素分析への志向が高くなってきている。そこで半導体産業や医学生理学等の分野においてニーズの高いP, S, Ca, Kについて、ICP-MSの測定条件が感度に与える影響(P, S)や、様々分光干渉軽減法が軽元素分析に与える影響(P, S, Ca, K)について、理論計算・実験の両面からさまざまな検証を行った。

  • 高純度亜鉛中の酸素および炭素分析

    大畑 昌輝

    高純度亜鉛の純度を評価するためは不純物分析を行う必要があるが、その一環として高純度亜鉛中の酸素および炭素分析について、それぞれ不活性ガス融解-非分散型赤外線吸収法および高周波加熱炉方式酸素気流中燃焼–赤外線吸収法を用いた検討を行ったので、その際に得られた知見について報告する。

  • IC-ICP-SFMSによる海水中のりん酸イオンの精密定量法の開発

    チョン 千香子

    海水栄養塩の全球観測の指標として、我々は2014年に海水組成標準物質を開発した。参考値であるりん酸イオンの認証値化を目指して、吸光光度法と同程度の精確さを有する第二の定量法としてIC-ICP-SFMSを用いた海水中のりん酸イオンの定量法を開発したので、その詳細を報告する。

  • ICP-MSによる高純度金属カドミウム(5N)中の不純物分析

    和田 彩佳、野々瀬 菜穂子、大畑 昌輝、三浦 勉

    カドミウム一次標準液の原料物質として用いる高純度金属カドミウム(表示値:99.999 %)の金属不純物をICP-MSで定量分析した。マトリックス共存下での標準添加法と、イオン交換法によりマトリックス除去して得られた定量分析結果について比較・検討したので、その際に得られた知見について報告する。

【物質計測標準研究部門 環境標準研究グループ】

  • ひ素化合物・微量元素分析用玄米標準物質の開発

    宮下 振一、稲垣 和三、成川 知弘、朱 彦北、黒岩 貴芳、小口 昌枝、工藤 いずみ

    食品中に含まれる有害微量元素分析は、複雑な前処理操作と高度な機器分析技術が要求される。分析値の信頼性を確保する内部精度管理の手法としては、分析試料と類似主成分から成る組成標準物質を用いた分析法の妥当性確認が有効である。本発表では、本年度取り組んだ食品分析用の組成標準物質の開発として、ひ素化合物・微量元素分析用玄米標準物質の開発について紹介する。

  • 微量元素分析用水道水認証標準物質の開発

    朱 彦北、成川 知弘、稲垣 和三、黒岩 貴芳、宮下 振一、小口 昌枝、工藤 いずみ

    水道水中のカドミウム・鉛・亜鉛などの元素について品質基準が定められている。これらの元素の分析における品質管理のため、NMIJは微量元素分析用水道水認証標準物質を開発した。本発表は、同認証標準物質の試料調製、均質性評価、値付け分析などに関する技術的詳細を紹介する。

  • イカ粉末標準物質の開発

    成川 知弘、稲垣 和三、宮下 振一、朱 彦北、小口 昌枝、工藤 いずみ

    食品の国際規格を制定するCodexでは、頭足類中カドミウム濃度が規制されているが、現状として頭足類組成の認証標準物質はなく、分析の妥当性確認等が難しい。そのため、当研究室では、イカ粉末組成型標準物質を開発した。本発表では、SIトレーサブルな微量元素の値付け方法など、その開発内容の詳細について報告する。

  • プラズマ分光分析用2液同時噴霧型グリッドネブライザーの開発

    松下 莉那、藤井 紳一郎(バイオメディカル標準研究グループ)、宮下 振一、稲垣 和三

    本研究では、ICP-OESもしくはICP-MSの試料導入に用いる噴霧器(ネブライザー)に噴霧以外の機能を付与することを目的として、単一ノズルで2液を高効率に同時噴霧可能なネブライザーを設計開発している。本発表では、新たに開発した2液同時噴霧型グリッドネブライザーの基本性能評価およびオンライン内部標準補正への応用結果について報告する。

【物質計測標準研究部門 ガス・湿度標準研究グループ】

  • CRDS微量水分計によるアルゴン中微量水分測定

    天野 みなみ

    1台で窒素・酸素・アルゴン・ヘリウムに対応可能な「多種ガス用微量水分発生装置」を開発し、これを用いて2015年1月にアルゴン中微量水分標準を確立した。本装置に市販のCRDS(キャビティリングダウン分光法)微量水分計を接続し、この指示値を標準値と比較した。本発表では、この結果を示すとともに、CRDS微量水分計でアルゴンその他ガス中の水分測定を行う際の留意点についても議論する。

  • 波長計制御型CRDSを用いたガス中微量水分計測装置の開発

    橋口 幸治

    ガス中微量水分を正確に測定するために現在開発中のキャビティリングダウン分光法(CRDS)を用いた測定装置について紹介する。現在開発中の装置では、HeNeレーザーを用いて共振器長を制御し、さらにCRDS測定用レーザーの周波数を波長計の値を用いて制御することによって、比較的容易に高フィネス共振器へのレーザー光の入射を可能にしている。

  • デュアルCRDSを用いたガス中微量水分のリアルタイム測定

    阿部 恒

    キャビティリングダウン分光法(CRDS)を使った、微量水分測定システムの開発を行っている。今回、2つの波長のレーザーを用いてベースライン変動の補正をしながら、ガス中微量水分をリアルタイムに測定できるシステムを開発したので、それについて報告する。

  • 亜酸化窒素標準ガス(窒素希釈、300 µmol/mol)の開発

    松本 信洋

    亜酸化窒素ガスは温室効果ガスの一つであり、主な排出源として土壌、および、自動車がある。亜酸化窒素濃度分析用機器の校正に使用する事が可能な窒素希釈亜酸化窒素標準ガスを開発したので、報告する。

  • 大気観測用超高精度酸素標準ガスの開発

    青木 伸行、下坂 琢哉、石戸谷 重之(環境管理研究部門)、村山 昌平(環境管理研究部門)

    二酸化炭素の収支を解明するツールとして大気中酸素の微少な濃度変化の観測が±1 μmol/mol以下の精度で行われている。しかしながら、測定精度以下の酸素標準ガス調製技術が確立されておらず、各研究機関が異なるスケールの標準ガスを使用していることが問題となっている。本発表では、我々が取り組んでいる酸素濃度の拡張不確かさ1 μmol/mol(k=2)以下の酸素標準ガスの調製技術の開発について報告する。

【物質計測標準研究部門 有機組成標準研究グループ】

  • 安定同位体標識内部標準を用いた残留農薬分析におけるマトリックス効果の影響

    鎗田 孝、大竹 貴光、青柳 嘉枝

    従来、ガスクロマトグラフィー/質量分析法による食品残留農薬分析において安定同位体標識体を内部標準に用いれば、正確な分析値が得られると考えられていた。これに対し発表者は、たとえ安定同位体標識体を用いたとしても、食品成分に起因するマトリックス効果を受けることにより、最大で10 %も分析値が偏ることを見いだした。この問題を克服するためには、校正標準液のマトリックスマッチングが有効であることを報告する。

  • 有機ふっ素化合物分析に関連する認証標準物質

    羽成 修康

    ペルフルオロオクタンスルホン酸に代表される有機ふっ素化合物は、耐熱性・耐薬品性など優れた性質を有するため、様々な産業分野で使用されてきた。しかし、有害性及び環境残留性が問題となり、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約などにより規制され始めた。そのため、これら化合物を適正管理する上では、分析機器校正用の標準物質や、分析法の妥当性確認用の標準物質が必須となる。そこで本稿では、既供給の関連認証標準物質を紹介する。

  • 菌根菌のCenococcum geophilumが高濃度に含む4,9-dihydroxyperylene-3,10-quinoneの抗菌性

    伊藤 信靖

    菌根菌の一種であるCenococcum geophilumの休眠体(菌核粒子)に含まれている4,9-dihydroxyperylene-3,10-quinone(DHPQ)は、堆積物中のペリレンの起源であるとも推察されているものの、その役割は良くわかっていない。そこで演者らは、DHPQの構造の一部が抗生物質のテトラサイクリンと同じ点に着目したが、DHPQに有意な抗菌性は確認できなかった。

  • QuEChERS法と一斉試験法による玄米中農薬の定量値の比較

    大竹 貴光、鎗田 孝

    食品中の残留農薬分析において、簡便かつ迅速に結果が得られるQuEChERS法は、世界的にも広く普及している。その妥当性は、添加回収試験で確認されている例が多いが、抽出過程を含めた評価のためには不十分な場合も考えられる。そこで本報告では、農薬が残留した玄米を試料とし、十分に妥当性確認された一斉試験法で得られた定量値と比較することにより、QuEChERS法の評価を行った。

  • バイオディーゼル燃料標準物質(NMIJ CRM 8302-a)の認証における水の値付け

    稲垣 真輔、沼田 雅彦、北牧 祐子、羽成 修康、岩澤 良子

    NMIJではバイオディーゼル燃料(BDF)中の成分分析における精度管理用の認証標準物質の開発を行った。本発表ではBDF中の精確な水の値付けについて報告する。BDFは吸湿および脱水の影響を極めて受けやすいことから、その影響を抑えた試料の取り扱い方法を確立し、KF電量滴定法およびKF容量滴定法による測定を行った。これにより、BDF中における水分の精確な測定が可能となり、本標準物質における認証値およびその不確かさを得ることに成功した。

  • HPLC-蛍光検出法による下痢性貝毒オカダ酸群の分析

    稲垣 真輔、鎗田 孝、高津 章子(バイオメディカル標準研究グループ)

    2015年3月に下痢性貝毒(オカダ酸群)の検査法としてLC-MS/MSによる機器分析法が適用された。LC-MS/MSは高感度で高い同定能力を有する分析法である一方、精確な定量を行う観点からは実試料を測定する際に生じるマトリックス効果の影響が懸念される。したがって、その影響を受けない原理の異なる分析法が求められており、本研究ではHPLC−蛍光検出法による分析法について検討を行った。

  • 繊維製品中に含まれる特定芳香族アミンの定量分析法の開発

    宮本 綾乃、羽成 修康、沼田 雅彦

    繊維製品の染色に用いられるアゾ色素の一部は、発がん性のある特定芳香族アミンを生成することが知られており、日本でも平成28年度から法規制が始まる。しかし現行の特定芳香族アミンの分析法には問題が多いため、信頼性の高い分析法の開発を目指し、ガスクロマトグラフィーの分離条件の改善や校正用標準液の安定性について検討を行った。

  • バイオディーゼル燃料認証標準物質(NMIJ CRM 8302-a)の開発状況報

    北牧 祐子、朱 彦北(環境標準研究グループ)、稲垣 真輔、狩野 祐也(工学計測標準研究部門 流体標準研究グループ)、藤田 佳孝(工学計測標準研究部門 流体標準研究グループ)、沼田 雅彦

    地球温暖化対策の1つとしてバイオ燃料の導入が進められていることを受け、産総研計量標準総合センターでは、バイオエタノール認証標準物質(NMIJ CRM 8301-a)に続いて、バイオディーゼル燃料認証標準物質(NMIJ CRM 8302-a)の開発を進めてきた。今回は、今年度認証を予定しているバイオディーゼル燃料認証標準物質の開発について、認証予定項目のうち化学成分(水、メタノール、S、P、Na、K、Ca、Mg)を中心に紹介する。

【物質計測標準研究部門 有機基準物質研究グループ】

  • フェノール類高純度物質の熱重量分析による揮発性・吸湿性評価

    清水 由隆、鮑 新努、鈴木 彰子、加藤 尚志、井原 俊英

    水道水質基準項目の一つであるフェノール類について、濃度測定の基準となる高純度標準物質の開発を行っている。今回は試料取扱時に正確なはかり取りを行うことができる条件を確認するため、熱重量分析によりフェノール類高純度標準物質の揮発性・吸湿性を評価したので報告する。

  • 定量NMR法によるアシルカルニチンの精確な純度評価のための体系的な条件設定方法の確立

    斎藤 直樹、齋藤 剛、山崎 太一、鈴木 彰子、藤峰慶 徳(大塚製薬(株))、井原 俊英

    信頼性の高い先天性代謝異常の検査を目指して、当該検査に用いる計5種類のアシルカルニチン標準物質の原料を定量NMR法によりSIトレーサブルに値付けした。なお、値付けにあたっては、本研究で用いたアシルカルニチンに不純物としてアルキルカルボン酸やカルニチンが含まれていることが1H NMRスペクトル上で示唆されたため、アシルカルニチンの不斉炭素に結合する1H核の信号がそれら不純物の信号を最も良好に分離でき得ると期待し、当該信号を値付けに用いるターゲットとした。その上で、アシルカルニチンの種類によらず適用できる体系的な条件設定方法を構築し、計5種類に適用した。

  • qNMR/LC法によるハロ酢酸混合標準液への値付け方法の開発

    加藤 尚志、山崎 太一、西 雄三(国衛研)、杉本 直樹(国衛研)、井原 俊英

    ハロ酢酸は吸湿性や昇華性の問題から精密なはかり取りが困難であるため、従来から行われている質量比混合法では標準液の精確な調製値付けが困難と考えられる。そこで、定量NMR法とHPLC法を組み合わせることにより、標準液の各成分濃度を直接値付けするqNMR/LC法の適用を検討した。本法の理論的な裏付けや適用可能な範囲について説明すると共に、本法を利用した標準液開発のメリットについて紹介する。

  • An inter-comparison study of data acquisition and processing in qNMR measurement among national metrology institutes

    山崎 太一、齋藤 剛、Jhon Warren(LGC)、Stephen Davies(NMIA)、沼田 雅彦

    定量NMR法を高度化するために当該技術の国際比較(CCQM-P150)を実施し、試料調製、NMR測定及びデータ解析におけるバイアス要因やばらつき要因について評価した。その結果、試料調製及びデータ解析のほか、NMR測定における装置コンディショニングが重要な要因となる傾向が確認されたので、それらの詳細について報告する。

【物質計測標準研究部門 バイオメディカル標準研究グループ】

  • 下痢性貝毒標準液の開発

    川口 研、山崎 太一、惠山 栄、高津 章子

    現在、世界的に下痢性貝毒の検査方法として、機器分析への移行が進んでいる。機器分析において、測定値の信頼性を確保するためには、基準となる標準物質が重要である。また、その標準物質には、トレーサビリティおよび不確かさが明記された認証標準物質(CRM)を用いることが望ましい。本研究では、貝毒標準液の試供品を開発し、CRM開発における知見を得ることを目標とした。

  • 二官能基誘導体化とマイクロLC-MS/MSによるタンパク質及びペプチド類分析

    坂口 洋平

    アミノ基に対し、単純かつ素早く進行する反応により安定同位体標識化を行い、カルボキシル基に対し高感度化を目的としる誘導体化法を開発した。これにより、高収率の安定同位体標識ペプチドを得ることができ、高感度化を目的とした誘導体化を組み合わせることで高精度かつ高感度なペプチド分析が可能になる。本法の有用性を実証するため、血清中ペプチド分析や酵素消化を組み合わせたタンパク分析へと応用した。

  • CCQM-K115 C−ペプチドの純度測定の国際比較

    絹見 朋也、水野 亮子、高津 章子

    31アミノ酸からなるC−ペプチドの純度測定について、BIPMとNIMCを幹事とする基幹比較が行われ、これに参加した。アミノ酸分析によってペプチドを定量し、LC-MS,LC-UVによって同定と定量を行った不純物ペプチドを差引くことでC−ペプチドとしての純度を求めた。参加9カ国の結果は収束した値とならなかった。ここでは、NMIJでの測定の結果について報告する。

  • LC/MS/MSによる核酸塩基測定を用いたDNA定量法の開発

    柴山 祥枝、藤井 紳一郎、山崎 太一、高津 章子

    本研究では、ギ酸を用いた酸分解によりDNAを核酸塩基に分解し、核酸塩基をLC/MS/MSで測定することでDNAを精確に定量可能な分析法を開発した。約10 ng/mLのlDNA(48,502-bpの二本鎖DNA)水溶液を定量用の試料とし、分解条件を最適化することで、拡張不確かさとして2 %以下でlDNAを定量することができた。

  • デオキシグアノシン1リン酸の元素を指標とした定量と不純物分析(CCQM-P156)

    藤井 紳一郎、成川 知弘(環境標準研究グループ)、柴山 祥枝、稲垣 和三(環境標準研究グループ)、高津 章子

    国際度量衡委員会物質量諮問委員会(CCQM)において実施された国際比較、デオキシグアノシン1リン酸(dGMP)の元素を指標とした定量と不純物分析(P156)について報告する。本件は、dGMP水溶液中の全りん定量と併せて、不純物分析を行った。全りん定量については誘導結合プラズマ(ICP)-発光分光分析装置を用い、不純物分析には液体クロマトグラフ-ICP-質量分析装置などを用いた。

【物質計測標準研究部門 表面・ナノ分析研究グループ】

  • XPSによるSi球表面酸化膜の膜厚測定

    張 ルウルウ、東 康史、黒河 明、倉本 直樹(工学計測標準研究部門 質量標準研究グループ)、藤井 賢一(工学計測標準研究部門 質量標準研究グループ)

    基礎物理定数による新しい質量標準実現のためにアボガドロ定数をさらなる高精度な測定が求められている。28Siを99.99 %まで濃縮したSi単結晶球体を用いてアボガドロ定数を精密に測定する際に、球体表面酸化膜の膜厚を精密に評価する必要がある。本研究では、X線光電子分光法(XPS)を用いて、濃縮Si球表面酸化膜の膜厚を測定し、不確かさ各要因の評価を行った。

  • 固体の性質が分からなくても可能なXPSピーク強度の求め方

    城 昌利

    XPSスペクトルのピーク強度を用いる表面の元素定量方法は簡便なため広く用いられているが、あまり精度が良くない。正確な定量のためには、非弾性バックグラウンドを決定しなければならず、そのために本来未知である対象試料の物性情報が事前に必要という、表面分析の趣旨に反する矛盾を抱えている。この問題点の解消を目的として、当グループで開発中の、固体の物性情報が不要な定量方法の現状を紹介する。

  • EPMA分析用合金標準物質の開発

    寺内 信哉、伊藤 美香

    EPMA分析用認証標準物質としてFe基合金およびNi基合金標準物質の開発を行い、現在計19種類の合金標準物質を供給している。これらのEPMA分析用認証標準物質について紹介するとともに、供給開始後の安定性モニタリング等について紹介する。

  • デルタBN多層膜標準物質の開発

    東 康史、寺内 信哉、黒河 明

    二次イオン質量分析法(SIMS)による深さ方向分析における装置の校正、精度管理、妥当性評価に用いることができるデルタBN多層膜標準物質を開発し供給を開始した。この標準物質の認証値はX線反射率法によって求めた。本標準物質の構造的特徴、構造解析結果、不確かさ評価等について詳細に報告する。

  • デルタBN多層膜つきヒ素ドープ基板標準物質によるSIMSラウンドロビンテスト

    黒河 明、東 康史、寺内 信哉、成川 知弘(環境標準研究グループ)、高塚 登志子(ナノ構造化材料評価研究グループ)

    ヒ素の濃度とデルタ層間距離の2つの特性値を持つ標準物質を開発した。これを用いてSIMS分析における深さ方向とヒ素濃度の校正を行うことで、表面から10 nmにヒ素をドープしたシリコン試料のSIMS分析のラウンドロビンテスト結果が向上することを確認した。

  • Adhesive Coatingを用いたSEMによるナノ粒子粒径分布測定用試料調製の検討

    熊谷 和博

    走査電子顕微鏡法(SEM)よるナノ粒子粒径分布計測では、粒子の凝集を抑制した試料調製が重要となることから、本グループでは試料調製法の開発を進めている。本研究ではpolycationic adhesive層を持つ基板を利用したSEM観察用の試料調製法について検討したのでこれを報告する。

【物質計測標準研究部門 ナノ構造化材料評価研究グループ】

  • 楕円レーザービームによって発生するスペックル画像の相関

    富樫 寿

    スペックル画像による位置評価の精度を調べるために、円筒レンズによってレーザービームを物体表面に集光したときに発生するスペックル画像の集光位置とレンズ物体間の距離による変化を考察した。単独のデジタル画像の一方向のピクセルデータ列の間の相関、及び、一枚の画像のすべてのピクセルデータ列を加えて得られる積算データ列による画像間の相関が解析式で近似出来ることを見出した。

  • Sub MeV〜MeV級高速イオンビームを用いたナノ薄膜評価

    平田 浩一

    イオンビームは、イオン注入による元素ドーピング、表面分析等、材料改質、材料分析の幅広い分野で用いられている。イオンビームを用いた材料分析では、入射イオンと材料との相互作用により、試料表面から放出される散乱粒子や2次粒子等を適切な方法で検出・分析することにより、材料の深さ方向元素分布、材料表面の微量元素や化学構造の分析を行うことが可能である。本発表では、sub MeV〜MeV領域の入射エネルギーを持つ高速イオンビームを用いたナノ薄膜評価に関する報告を行う。

  • 酸化ハフニウム薄膜の安定性モニタリング手法の検討

    高塚 登志子

    ハフニウム定量用酸化ハフニウム薄膜(NMIJ CRM5605-a)の経時安定性をモニタリングするための手法について検討している。蛍光X線分析において、測定系の変動の影響を除去するため、測定対象のハフニウムと、安定な比較試料からの、蛍光X線強度の比を用いた。比較試料として、ひ素をイオン注入したシリコン基板を用い、ひ素からの蛍光X線を参照強度とした結果について報告する。

  • 陽電子寿命による金属疲労測定装置の開発

    山脇 正人、伊藤 賢志

    陽電子消滅法は原子欠陥の高感度検出が可能であり、金属疲労の研究等にも利用されている。しかし、従来の陽電子寿命測定法ではサンプルの切出しが必要なことや、放射線管理区域外で使用可能な陽電子寿命測定用線源がない等の課題から、実際の構造物を現場で測定することは出来ずにいた。そこで本研究ではそれらの課題を解決した汎用性の高い陽電子寿命測定手法を開発した。本年度は製品付属用のデジタル式陽電子寿命測定プログラムを作成した。

【物質計測標準研究部門 粒子計測研究グループ】

  • 光散乱式パーティクルカウンタ評価手法の標準化

    飯田 健次郎、水上 敬

    産総研では発生器型気中粒子数標準であるインクジェットエアロゾル発生器(IAG)による光散乱式気中パーティクルカウンタ(OPC)の校正サービスを立ち上げた。現状JIS・ISO規格に準じて校正された気中OPCが測定する粒径は、ポリスチレンラテックス(PSL)光散乱相当径である。 この発表では、IAGで発生したイオン化合物による固体および液体粒子を、目標とするPSL光散乱相当径の粒径域内に発生する手法を中心に、最近の進捗について報告する。

  • 細胞有害性評価における ナノ材料分散調製手法の開発

    中村 文子、加藤 晴久

    ナノ材料は微細なサイズを取ることによる有害性の懸念は高く、世界各国で多くのその有害性評価が行われている。当該試験の中でも細胞有害性試験はその簡便さからよく利用されているが、培養液のようなイオン強度の高い分散媒中ではナノ材料は凝集しやすい欠点を持ち、その分散法の開発や標準化は必須である。そこで本研究ではナノ材料分散調製において、化学修飾や遠心処理、フィルター処理等を行わずに培養液中で安定分散させる手法の開発結果を報告する。

  • 液中粒子数濃度標準操作性および精度向上のための計測技術と標準を用いた計数装置評価法の開発

    坂口 孝幸

    液中粒子数濃度標準における粒子計数操作性向上のため、電子天秤上に設置した懸濁液質量変化と液中粒子計数との同期による濃度測定技術開発を行っている。既知濃度懸濁液を用いてシステムとしての評価を行ったので報告する。また、液中粒子数濃度標準懸濁液をもちいた光遮蔽式計数装置および油中粒子計数装置性能評価について検討結果を報告する。

  • エアロゾル質量分級器のナノ粒子質量分級精度に対する実験的評価

    桜井 博、村島 淑子

    2つの市販型エアロゾル質量分級器に対し、粒径12 nm〜200 nmの範囲で電気移動度分級した粒子を用い、質量分級精度の比較を実験的に行った。2つの装置の間の比較結果、および電気移動度に基づいて算出した粒子質量値との比較結果を報告する。

  • 光散乱法による微粒子物性の高精度計測

    高橋 かより、桜井 博

    動的光散乱法、静的光散乱法などの光学的計測法を使用して明らかとなる微粒子の物性として、拡散粒子径、回転半径、微粒子質量、電気泳動移動度などが挙げられる。NMIJでは光学的手法を使用して既に分子量標準物質とし複数種の標準物質を開発し、供給を開始している。NMIJにおいて開発された高精度光散乱法を報告するとともに、今後の標準物質供給計画について紹介する。

  • 計数ミリカン法における電極の上下反転または粒子の極性反転に基づく電極表面仕事関数差の評価

    高畑 圭二、桜井 博、榎原 研正(計量研修センター)

    計数ミリカン(EAB)法は、高精度の粒径絶対測定が可能であることから、粒径の1次標準として利用されている。このEAB法において2枚のミリカン型電極表面間の仕事関数が異なる場合に生じ得る付加的な静電気力の影響が懸念されてきた。本発表では、ミリカン型電極の上下反転または封入する帯電粒子の極性反転に基づいた電極表面間の仕事関数差の評価方法を提案する。

  • 比表面積によるナノ粒子の粒子径決定法の検討

    水野 耕平

    比表面積は非多孔性試料であれば粒子径を反映することが多く、製造現場では簡易な粒子径の指標として利用されることもある。より一般性の高い粒子径決定法として比表面積測定が利用可能か、比表面積より計算される粒子径と画像解析により測定された粒子径との比較試験について報告する。

  • PM2.5自動測定器の高精度化を支援するための基盤技術の開発

    村島 淑子、桜井 博

    PM2.5の常時監視では、自動測定器の1時間値の精度が不確かであることが問題となっている。現状の精度管理法は自然大気を使っての試験だが、自然大気中の粒子には揮発性や吸湿性等から粒子性状に変化があり、また温度や湿度など環境の変化も大きく、同じ試験環境を再現することができない。本研究ではPM2.5自動測定器について既知の粒子をフィルター法と同時測定して比較するラボ試験を行ったので、結果を報告する。

【物質計測標準研究部門 熱物性標準研究グループ】

  • 熱流密度標準の開発

    阿子島 めぐみ、山田 修史

    熱エネルギーの入出の見える化のニーズから、熱流センサの普及が期待されている。熱流センサは、それを通過する熱流の大きさとセンサの出力電圧の関連付けを事前に行う必要がある。熱物性標準研究グループでは、熱流密度標準として、保護熱板法(GHP法)を用いた熱流センサの校正システムを開発し、依頼試験による標準供給を開始したので報告する。

  • サーモリフレクタンス法による薄膜・界面・微小材料の熱物性計測技術

    八木 貴志、竹歳 尚之

    薄膜や微小材料の熱物性値は、電子デバイスの熱マネジメントや熱シミュレーションに必須の情報である。我々は薄膜の膜厚方向の熱拡散率を計測するパルス光加熱サーモリフレクタンス法装置や微小領域用の周期加熱サーモリフレクタンス法装置の開発を行い、さまざまな形態の材料に対応した計測装置群を構築してきた。これらの各種計測技術と測定事例を示すとともに、実用装置の校正用途に有効な薄膜標準物質を紹介する。

  • 示差走査熱量法による比熱容量評価

    阿部 陽香

    現在、産業技術連携推進会議(産技連)/知的基盤部会/計測分科会の温度・熱研究会において、比熱容量測定ラウンドロビンテストを企画・実施している。測定対象である4種類の固体材料について、示差走査熱量法を用いた比熱容量測定と不確かさ評価を行った。本ラウンドロビンテストの内容を紹介すると共に、その測定結果と不確かさ評価について報告する。

  • 分散型熱物性データベースにおける熱物性式データの整備

    山下 雄一郎

    分散型熱物性データベースにおけるデータ整備と利用の状況を報告するとともに、本年度の取り組みである熱物性式データの整備と、整備した式データの利活用方法について、開発したアプリケーションとともに報告する。

  • 熱膨張率標準の供給と開発

    山田 修史

    固体熱膨張率に関して依頼試験2項目および標準物質4品目の供給を行っている。依頼試験ではレーザ干渉式熱膨張計によりゲージブロックや熱膨張率標準試験片の熱膨張率校正を実施している。標準整備状況を紹介すると共に、熱膨張特性の実用計測器である押し棒式膨脹計におけるデータ解析の高度化に関する検討結果について報告する。

【物質計測標準研究部門 計量標準基盤研究グループ】

  • 「OIML R87 包装商品の内容量」の開発の現状と新規開発したサンプリング手法について

    田中 秀幸

    現在OIML TC6では、包装商品の内容量を検査するための国際勧告文書R87を作成中である。本勧告には日本で開発した新しい抜取検査手法である段階的サンプリング法が採用される予定である。本発表では、この段階的サンプリング手法の紹介と、統計的手法に関するR87原案の討論状況を紹介する。

  • 「測定の不確かさ」の情報がある場合の試験所間比較における統計的方法

    城野 克広、田中 秀幸、榎原 研正(計量研修センター)

    試験所間比較結果の統計処理方法はJIS Z 8405「試験所間比較による技能試験のための統計的方法」にまとめられている。しかしながら、近年計量の分野で普及が進む「測定の不確かさ」を試験所間比較にどのように用いるかについては十分な記述がない。本研究では、測定の不確かさが報告された際の試験所間比較を通したパフォーマンス評価について、ベイズ統計や最尤法に基づくロバストな統計的方法を提案する。

  • プログラミング言語Scalaの紹介

    松岡 聡

    プログラミング言語ScalaはJava仮想機械上で動作するプログラミング言語である。オブジェクト指向言語と関数型言語の両方の特徴を持ち、Javaと比較して少ないコードで同じ機能を実現できる傾向を持つ。特に、少ない労力でマルチコア・プロセッサを持つコンピュータを有効活用および複数のコンピュータを用いた分散処理を行うのに有用な機能を有しており、現在開発中のProof Net Calculator もScalaを用いて開発している。本発表ではScalaの基本機能のいくつかについて簡潔に紹介する。

  • SDBS-NMRの帰属評価を題材としたAssurance Case作成実験

    渡邊 宏

    有機化合物のスペクトルデータベース(SDBS)の整備活動で評価を行い公開しているNMRスペクトルの帰属について、Assurance Caseの事例を作成する取り組みを紹介する。Assurance Caseは主張およびその根拠から構成される議論の文書一式である。安全分野から来たものだが、測定、評価されたデータおよびプロセスの妥当性を主張、管理する枠組みとしても活用できるかもしれない。事例作成の取り組みは神奈川大学との共同研究の中で実施している。

  • フタル酸エステル類分析用ポリ塩化ビニル認証標準物質の開発

    松山 重倫

    EUにおける環境規制の一つであるRoHS指令では、フタル酸エステル類の一部(フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、フタル酸ブチルベンジル)の使用を2019年より禁止する。この規制に対応した認証標準物質NMIJ CRM 8152a ポリ塩化ビニル(フタル酸エステル類分析用)を開発したので報告する。

  • ISO REMCO関係ガイドの更新状況

    齋藤 剛

    ISO REMCO関係ガイドであるガイド30シリーズは、数年前から全面的な改正作業が行なわれており、改正された新ガイドが発行され始めた。ガイド30シリーズのガイドの改正状況などを、REMCOからCASCOへ議論の場を移して国際規格化の作業が行なわれているガイド34の改正進捗状況と合わせて報告する。

【物質計測標準研究部門 精密結晶構造解析グループ】

  • Liイオン伝導体の温度・圧力相図とイオン伝導度圧力依存性

    山脇 浩

    錯体水素化物系のLiイオン伝導体であるLiBH4, LiNH2,およびその複合錯体について、ラマン分光測定等で温度・圧力相図を調べ、相境界や新規高圧相を見出した。粉末X線回折データとリートベルト解析、DFT計算に基づき高圧相の結晶構造を求め、電気インピーダンス測定により各相のイオン伝導度の圧力依存性について明らかにした。

  • π共役骨格を持った有機分子性固体テトラチアゾリルチオフェンの光物性と結晶構造

    藤久 裕司、山脇 浩

    π共役骨格を持った有機分子性固体テトラチアゾリルチオフェンは外部ストレスによってその発光色が多彩に変化することが発見された。我々はテトラチアゾリルチオフェンの高圧力下におけるIRスペクトル測定とDFT計算を行い、結晶構造、分子構造の圧力変化と発光特性との関連を調べた。

  • 多孔質体上を連続フローさせた超偏極129Xeによる吸着相XeのNMR観測

    服部 峰之

    129Xe NMR法は、多孔質材料のポロシティの測定に応用されており、化学シフトがポアサイズと相関があることが知られている。超偏極により1万倍以上の感度向上が得られ、積算なしでも十分な検出感度が得られる。数十msから1秒程度の時間分解で、リアルタイム測定が可能になった。多孔質材料に吸着しているXeの129Xe NMRの化学シフトと線幅は、細孔径とXeと細孔との相互作用の大きさに依存する。超音波画像診断用に気体を吸着させられる有機物多孔質材料をとりあげ、室温以下Xeの凝固点直下(-130 ℃)までの温度範囲において129Xe NMRスペクトルの取得を行った。

  • 固体NMRによるプロトン伝導性無機固体酸塩の水素結合ネットワークの解析

    林 繁信、治村 圭子

    CsHSO4に代表される無機固体酸塩ではAO4型の四面体イオンが水素結合ネットワークを形成し、融点直下の高温相において高いプロトン伝導を示すものがある。相転移やプロトン伝導には水素結合が大きく関与していると予想される。本研究では、固体高分解能NMRを用いて、プロトン伝導性無機固体酸塩における水素結合ネットワークについて調べた。

  • 単結晶精密X線構造解析法の高度化によるGeネットワーク型新規超伝導物質の原子構造評価

    後藤 義人

    単結晶を用いた物性測定によって新規の超伝導体であることが明らかにされているBa-Ir-Ge系化合物の不確実な結晶構造を解明するために、微小な単結晶を用いた精密X線構造解析を行った。情報量規準を用いたモデル評価法を導入することによって精密な原子構造の決定に成功した。

【分析計測標準研究部門 音響超音波標準研究グループ】

  • 音響パワーレベル測定に用いる無響室の特性評価

    山田 桂輔、高橋 弘宜、堀内 竜三

    我々は現在、基準音源の音響パワーレベル校正に関する研究を行っている。本稿では、校正周波数範囲の拡張に向けた、音響パワーレベル測定に用いる無響室の評価について報告する。これまでに評価を行ってきた100 Hz〜10 kHzに加え、100 Hz以下においても音圧の距離減衰特性を測定し、逆二乗則に基づく理論値からの偏差を求めた。また、測定に用いる音源の指向性と評価結果の信頼性について精査を行った。

  • 音響カプラの違いによる高域側の音圧感度校正値の整合性に関する検討

    高橋 弘宜、米嶌 和香子、堀内 竜三

    IEC 61094-2ではマイクロホンの音圧感度校正に使用する音響カプラとしてLarge volumeカプラとplane waveカプラの2つが定義されている。どちらの音響カプラを使用しても同じ音圧感度が得られるはずであるが、現実の整合度は詳細に調べられていない。今回は特に高域側に着目して検討をしたので、その結果を報告する。

  • 水を発熱体とするカロリメトリ法による超音波パワー計測 −200 Wへの拡張の検討−

    内田 武吉、吉岡 正裕、松田 洋一、堀内 竜三

    NMIJでは、水を発熱体とするカロリメトリ法による超音波パワー校正装置を用いて、200 Wまでの超音波パワー標準を整備する予定である。そこで今回は、100 Wまでの供給で使用している基準超音波振動子の評価と超音波振動子への入力電圧の測定方法を中心に報告する。

  • 超音波音圧標準(ハイドロホン感度校正)の高周波化 −40 MHzを超えて−

    松田 洋一、吉岡 正裕、内田 武吉、堀内 竜三

    高解像度医用超音波機器から出力される超音波音圧振幅を評価するために、20 MHzを超える周波数でのハイドロホン感度校正が求められている。これまで我々は、0.5 MHzから40 MHzの周波数帯域において、光干渉法を用いたハイドロホン感度校正装置を構築し、超音波音圧標準を供給してきた。今回は、さらなる高周波化のために40 MHzから80 MHzの遠距離音場超音波を光干渉計および市販メンブレン型ハイドロホンを用いて測定した結果を報告する。

【分析計測標準研究部門 放射線標準研究グループ】

  • 治療用Ir-192線源に対する基準空気カーマ率標準の開発

    黒澤 忠弘、三家本 隆宏(日本アイソトープ協会)

    治療用Ir-192線源に対する基準空気カーマ率の標準を開発し、BIPMとの国際比較に参加した。今回はその結果について報告する。

  • 水晶体被ばく線量測定技術の開発

    加藤 昌弘、黒澤 忠弘

    放射線被ばくが白内障の原因になることが知られており、放射線作業従事者の安全を確保するため、眼の水晶体の被ばく線量を正確に測定する手法の開発が望まれている。本研究では従来、皮膚の被ばく線量を測定するために使われていた外挿電離箱を用いて、水晶体被ばく線量測定技術を開発した。

  • EGS5の実験的な検証

    森下 雄一郎、清水 森人、波戸 芳仁(KEK)、平山 英夫(KEK)

    放射線標準の正しさは(トレーサビリティ)は、電気標準や質量標準だけでなく、モンテカルロコードの計算結果に最も大きく依存しており、計算の妥当性の確認は必須である。そこで簡単な計測結果をEGS5を使って計算した。その結果、EGS5の直線偏光の扱いに不具合が見つかり、線量が最大で0.7 %変動することがわかった。

  • カロリーメータによるX線自由電子レーザーの絶対強度測定

    田中 隆宏、加藤 昌弘、齋藤 則生

    X線自由電子レーザーの強度(パワー)の絶対測定が可能な常温カロリーメータを新たに開発した。常温カロリーメータによって測定されるパワーの絶対値の妥当性を評価するため、放射光およびX線自由電子レーザーの強度を測定した。測定した結果は既存の絶対測定器である極低温放射計との比較により評価し、良好な結果が得られた。比較結果および不確かさなどの詳細について、当日発表する。

  • 高エネルギー光子線水吸収線量標準の国際比較結果

    清水 森人

    医療用リニアック装置からの高エネルギー光子線の水吸収線量標準について、BIPMとの国際比較を行ったので、報告する。比較はBIPMが標準器であるグラファイトカロリーメータを産総研に持ち込み、BIPMのカロリーメーターによる計測結果と、あらかじめ産総研のグラファイトカロリーメータで校正された電離箱線量計による計測結果とを比較する方法で行った。比較の結果、両者の値は不確かさの範囲内で一致していることが分かった。

【分析計測標準研究部門 放射能中性子標準研究グループ】

  • 産総研中性子標準の現状について

    原野 英樹、松本 哲郎、増田 明彦

    熱中性子フルエンス率、中性子線量当量、単色中性子フルエンスに関する最近の国際比較、新規供給開始した減速中性子標準と高エネルギー中性子フルエンス標準、本年度JCSS化された熱中性子フルエンス率と中性子放出率、今後の標準開発予定など、産総研中性子標準の現状について報告する。

  • 静電加速器を用いた中性子フルエンス標準の高度化研究

    松本 哲郎、増田 明彦、原野 英樹

    放射能中性子標準研究グループでは、4 MVペレトロン加速器と300 kVコッククロフト加速器の2台を用いて24 keV〜14.8 MeVまでの中性子を生成し、標準供給を行っている。ペレトロン加速器については、標準場のエネルギー分布評価に反映させるため、パルスビームの最終的な特性評価を行った。コッククロフト加速器については、産業利用で求められている大強度場における線量評価を可能にする中性子源の計算による設計を行った。

  • 中性子飛行時間法とボナーアンフォールディング法による準単色高エネルギー中性子場の測定

    増田 明彦、松本 哲郎、原野 英樹、吉富 寛(JAEA)、西野 翔(JAEA)、谷村 嘉彦(JAEA)、志風 義明(JAEA)、倉島 俊(JAEA)、清藤 一(JAEA)、吉澤 道夫(JAEA)

    数十MeVの高エネルギー中性子の校正場では、バックグラウンドとなる低エネルギー連続成分のスペクトラルフルエンスの把握が課題である。近年可能になった低エネルギー領域までの中性子飛行時間法と、高エネルギー中性子場に対応させたボナー球検出器によるアンフォールディング法の組み合わせによる高精度な中性子スペクトル測定を行った。

  • 不確かさ評価を取り入れた放射性セシウムを含む玄米試料の放射能測定技能試験

    柚木 彰、三浦 勉(無機標準研究グループ)、海野 泰裕、古川 理央、濱松 潮香(食総研)、八戸 真弓(食総研)、板津 英輔(セイコー・イージーアンドジー(株))、水井 雅之(セイコー・イージーアンドジー(株))

    放射性セシウムを含む玄米試料の放射能測定技能試験を平成24年度より展開している。これまで標準的な容器に充填した玄米試料の放射能を報告してもらっていたが、今回は参加者が試料充填作業を行い、さらに試料の放射能に加えて測定の不確かさを報告対象とした。これまで不確かさ評価を行ったことがない参加者が大多数を占めた本試験の、準備及び試験結果について報告する。

  • Lu-177の放射能絶対測定

    佐藤 泰、石津 秀剛(日本アイソトープ協会)

    ルテチウムドータオクトレオテート(Lu-177)は、神経内分泌腫瘍、傍神経節腫、神経芽細胞腫、甲状腺癌に適用することが期待され、研究開発が進められている治療薬である。最大 498.3 keVのβ線と比較的長い6.647日の半減期による薬効が期待されている。本研究においては、4πβ-γ同時測定装置、液体シンチレーションカウンタ、電離箱によるLu-177の放射能測定法を確立し、Lu-177の標準供給が行える体制を確立した。

  • ウェル型Ge半導体検出器による放射性セシウム測定

    海野 泰裕、古川 理央、八戸 真弓(食総研)、濱松 潮香(食総研)、三浦 勉(無機標準研究グループ)、柚木 彰

    放射性セシウムを測定するために用意する試料供試量が少ない特長を持つウェル型Ge半導体検出器による測定について、標準溶液を用いた校正の結果とともに、放射性セシウムを含む試料を測定した結果のばらつきを報告する。

  • ラドン放射能標準の立ち上げに向けた現状の調査報告

    古川 理央

    ラドンは大気中に存在する自然放射性物質であり、放射能濃度の管理が行われている。適切な被ばく管理を行うためには十分に信頼できる測定結果が必要であり、そのために装置の校正は欠かせない。各国計量研はラドンの一次標準を保持しているが、日本では標準が未だなく、NMIJではラドンの一次標準立ち上げを計画中である。本発表では、ラドン標準に関わるニーズや校正対象となる機器の測定技術、一次標準の測定方法などの調査結果を発表する。

【分析計測標準研究部門 X線・陽電子計測研究グループ】

  • 個人向け放射線線量計の開発

    鈴木 良一

    福島原発事故で飛散した放射性物質による住民の外部被ばくを測定するための個人向け放射線線量計を開発した。この線量計は、バッテリー交換無しに1年以上一定時間毎の線量の記録が可能である。現在、この線量計の応用範囲を広げるための改良を行っている。

  • 小型ビーム分析装置の開発

    大平 俊行

    実験室サイズの汎用型陽電子ビーム寿命測定装置および間口30 cm幅の超小型イオン注入装置の開発について報告する。

  • 電子加速器ベース低速陽電子ビーム施設公開と最先端測定技術開発

    オローク・ブライアン

    機能性材料の特性は、原子〜ナノレベルの空孔に影響を受ける場合が多く、それらの計測・評価が重要である。陽電子はこのような極微小空孔に最も敏感なプローブとして知られている。我々は、電子加速器を用いて、低速陽電子ビーム施設を構築し、最先端測定技術を開発しながら装置公開により外部ユーザーの測定を積極的に実施している。

  • 小型軽量な非破壊検査用可搬型X線源の開発

    加藤 英俊

    針葉樹型カーボンナノ構造体冷陰極電子源を用いた小型軽量な高エネルギーX線源の開発を行ってきた。開発した非破壊検査用パルスX線源は管電圧170 kV以上でありながら、厚さ70 mm以下を実現し、これまで検査が難しかった狭い場所でのX線非破壊検査が可能になった。また、待機電力が不要で総合的なエネルギー消費が低いことから、USB電源や乾電池でも駆動できる。

【分析計測標準研究部門 ナノ顕微計測研究グループ】

  • ナノ材料の安全性評価のための顕微鏡観察技術の開発

    山本 和弘

    工業ナノ材料の安全性評価方法の確立が求められている。工業ナノ材料の製造現場での曝露では呼吸器系への影響が懸念されるため、動物を用いた吸入曝露試験および気管内投与試験を行い、工業ナノ材料の安全性を評価している。本報告ではラットの肺組織について透過型電子顕微鏡による微細構造観察と光学顕微鏡による免疫組織学的解析を併用した観察技術について述べる。

  • プロトン性イオン液体のイオンビーム化と二次イオン質量分析(SIMS)への応用

    藤原 幸雄

    二次イオン質量分析法(SIMS)は、一次イオンビームを試料表面に照射し、生じた二次イオンを質量分析する手法である。無機材料のみならず、有機材料の分析も可能であるが、二次イオン収率の増大が課題となっている。我々は、プロトン性イオン液体を真空中でイオンビーム化し、SIMS用一次イオンビームとして有機材料試料に応用した。プロトン性イオン液体から有機分子にプロトンが移動する反応により、二次イオン強度を増大できることがわかった。

  • ラジカル分解質量分析法の基礎研究

    浅川 大樹

    質量分析は試料分子を高感度かつ、網羅的に計測できる分析技術であるが、試料分子の同定能力が低いことが欠点である。本研究はラジカル分解質量分析法を用いて、生体試料に含まれる分子の同定手法を確立することを目的とし研究を行っている。このラジカル分解法において、金属イオンの添加により、分解の効率が上がることを明らかにした。この現象は従来のラジカル分解のメカニズムとして考えられているプロトンと電子の再結合反応では説明できず、分解プロセスの本質に繋がる重要な発見であると考えられ、量子化学計算により反応過程を詳細に解析した。その結果、タンパク質のラジカル分解反応はペプチド結合のカルボニル結合に電子が付加によることを明らかにした。

  • 基板に分散された材料形態の計測技術開発

    井藤 浩志

    光学顕微鏡の照明方法を改良し、1μm以下の材料分散位置を明瞭にコントラストをつけ、位置合わせを行った後に、原子間力顕微鏡(AFM)で精密に計測する方法・手順を開発した。改良した照明方法では、全反射照明からの伝搬光の利用、および、透過光の効果的な利用により、光の波長以下の物体まで認識することに成功した。この結果、容易にAFM測定が行うことが可能になり、(分散前の濃度等の)定量的な粒径分布等の測定が可能になった。

  • 原子間力顕微鏡によるナノ粒子計測

    重藤 知夫

    産総研と計測器メーカー5社でつくる「ナノ材料の産業利用を支える計測ソリューション開発コンソーシアム」では、各種計測機器によるナノ粒子計測の相互比較を可能とするプラットフォームの構築を目指している。発表者らが担当する原子間力顕微鏡による粒径測定、およびそのために行っているナノ粒子試料分散技術の開発について報告する。

  • 温度安定型水晶振動子出力に対する湿度の影響

    鈴木 淳

    温度安定型水晶振動子を水素センサとして屋外使用する場合に問題となる、湿度の影響について調べた。相対湿度一定条件で温度を15 ℃から50 ℃に変化させた際の最大変化率は湿度の増加と共に増加し、湿度の影響があることがわかった。現状、水素漏洩検知器として必要な安定性の最終目標と比較しても湿度の影響が大きいため、温度安定型水晶振動子においても水素漏洩検知器の屋外使用のためには湿度の影響を抑制するための対策が必要である。

【分析計測標準研究部門 放射線イメージング計測研究グループ】

  • Sm系磁石の磁気異方性に関する研究

    柏谷 裕美、田中 真人、乙川 光平(早稲田大学)、小川 博嗣、池浦 広美、豊川 弘之

    当グループで開発中のMCDーPEEMやXAFSの結果解析のための第一原理計算を行っている。本研究では、ジスプロシウム・フリーの磁石であるSm系磁石の磁気異方性を研究している。Sm2Fe17N3の状態密度など、電子状態の計算を行った結果を報告する。

  • 内殻分光法を利用した有機電子材料評価手法の研究

    池浦 広美、小川 博嗣

    内殻電子励起をともなうX線吸収分光法は励起の遷移モーメントを利用することで、X線構造解析などで計測できない有機薄膜材料の配向評価法として活用されている。近年、内殻励起後の緩和のダイナミクスが電子移動と関係し、分子レベルでの非接触伝導特性評価法として活用できる可能性がでてきた。これまで我々が行ってきた内殻分光法の有機電子材料への応用と課題について報告する。

  • 電子増幅型ガスシンチレータの開発

    藤原 健

    放射線を可視光に変換する手段として、電子増幅型のガスシンチレータの開発に取り組んでいる。電子増幅器と蛍光ガスを組み合わせることで、低エネルギー放射線を高輝度の光子に変換し検出することが可能になる。電子増幅型のガスシンチレータを用い、低エネルギーX線の他、陽子線や重粒子線、中性子線等の放射線の検出について報告する。

  • テラヘルツ波パワーの絶対値測定による電子ビーム診断

    平 義隆、飯田 仁志(物理計測標準研究部門 高周波標準研究グループ)、木下 基(物理計測標準研究部門 高周波標準研究グループ)、黒田 隆之助

    相対論的な高エネルギー電子ビームのパルス幅や電荷量を計測することは加速器の性能評価及び高性能化にとって必要不可欠な技術である。本発表では、物理計測標準研究部門の高周波標準研究グループが開発したテラヘルツカロリーメータを用いて電子ビームから発生するテラヘルツ波の絶対パワーを測定し、電子ビームのパルス幅と電荷量を測定した結果について発表する。

  • 超短パルス高強度レーザーの応用に関する研究

    三浦 永祐

    超短パルス高強度レーザーによりエネルギーを時間的、空間的に集中することにより、極限的な高いエネルギー密度状態を形成することができる。この様な高密度エネルギー状態を利用することにより、コンパクトな装置で高エネルギー粒子発生等が可能になる。光・量子ビーム源の開発等、超短パルス高強度レーザーの応用について報告する。

  • 光学素子を用いたX線イメージング技術の開発

    安本 正人、黒田 隆之助、平 義隆

    X線光学素子を用いて、微小物質や低コントラスト物質など可視化の難しい対象を画像化する技術の開発を目指している。放射光X線では積層型フレネルゾーンプレートを用いた硬X線顕微鏡を開発し、12.4 keVのX線で100 nm以下の解像度を実現している。また、レーザーコンプトン散乱X線源と回折格子を用いてタルボ干渉イメージング法の開発も行っている。

  • 加速器を用いた高出力テラヘルツ光源の開発

    清 紀弘、小川 博嗣、早川 建(日本大学)、田中 俊成(日本大学)、早川 恭史(日本大学)、中尾 圭佐(日本大学)、境 武志(日本大学)、野上 杏子(日本大学)、稲垣 学(日本大学)

    分析計測標準研究部門では、日本大学と共同し、日本大学の加速器施設LEBRAにおいて高強度テラヘルツ光源の開発を進めている。導体薄膜を相対論的電子ビームが通過する際に発生するコヒーレント遷移放射(CTR)を利用したテラヘルツ光源では、0.1〜2 THzの領域で最大1mJの出力が得られた。本講演では、国内の加速器を利用した広帯域テラヘルツ光源としては最高強度である、日本大学のCTR光源について報告する。

  • 円偏光を用いた磁性体・キラル物質の分析技術の開発

    田中 真人、小川 博嗣、乙川 光平(早稲田大学)、豊川 弘之

    紫外〜X線領域での偏光分光技術を開発している。Sm2Fe17N3永久磁石表面の磁区構造を放射光からの軟X線円偏光と光電子顕微鏡を用いた観察に成功し、さらに現在紫外円偏光によるラボサイズの磁区観察装置の開発を進めている。これらは無機機能材料研究部門と共同で行っている。また紫外〜真空紫外領域の円二色性スペクトルを計測するラボサイズの装置を開発し、タンパク質などのキラル分子の構造解析を進めている。

  • 超短パルス電子ビームを用いた各種光源開発と利用に関する研究

    黒田 隆之助

    Sバンド小型リニアックを用いて超短パルス電子ビームを生成し、レーザーコンプトン散乱による準単色X線、制動放射による短パルスγ線、コヒーレント放射によるテラヘルツ光などの光源開発を行っている。応用の範囲は、高度医療から、爆薬、麻薬などの検査、材料評価等と多岐にわたっている。研究の現状について報告する。

  • 高エネルギーX線を用いた後方散乱X線イメージング技術の開発

    豊川 弘之、藤原 健、萬代 新一((株)BEAMX)、伊佐 英範(加速器エンジニアリング(株))、遠山 貴之(名古屋大学)、渡辺 賢一(名古屋大学)、瓜谷 章(名古屋大学)

    後方散乱X線イメージングによるインフラ診断技術を実証し、同手法を実用化することを目指している。そのために、小型電子加速器技術を用いて管電圧900 kV相当の高エネルギーX線を発生するX線発生装置、および高エネルギーX線の後方散乱に適したイメージング検出器の開発を行っている。装置の開発状況について報告する。

【分析計測標準研究部門 非破壊計測研究グループ】

  • カーボンブロックの熱処理によるグラファイト化に伴う物性変化のその場計測

    岩下 哲雄

    コークス粉とバインダーピッチからなる等方性グラファイト材料素材のカーボンブロックをサンプルとして用いて、1000〜2600 ℃に温度領域における熱膨張率、電気抵抗および熱拡散率のその場(in-situ)計測を行った。1000〜1600 ℃の温度範囲の工程は、グラファイト材料の特性を決定する上で重要であり、注意深く取り扱うべきことが言われてきたことが、これらのその場計測において明らかになってきた。その計測結果を紹介する。

  • 超音波伝播可視化映像の特徴点追跡を利用した欠陥検出法の開発

    宮内 秀和、遠山 暢之、山本 哲也、時崎 高志

    構造体の欠陥検出のための非破壊計測の一手法として、励起用レーザ走査による超音波伝播の映像化法(TS Z0028)がある。構造体を伝播する超音波をその可視化計測法で得られた超音波伝播映像に対して、その映像の特徴点を追跡し、欠陥からの反射波を逆時間方向に自動追跡することで、反射源である欠陥位置を推定する方法を提案する。

  • 炭素繊維の断面形状とその分布の測定

    藤田 和宏、小島 実希子、岩下 哲雄、北條 正樹(京都大学)

    炭素繊維の単繊維での力学的特性評価には断面形状及びそのサイズの計測が不可欠である。繊維軸上の位置と断面プロファイルを同時に計測するために、より精密に位置、方向を調節しながら、繊維の外径をレーザー回折法で測定できる装置を開発した。2種類の市販の炭素繊維について計測を行った。その結果、断面形状は位置によってほとんど変化なく、その方向は回転してるものの、一様に回転しているわけではないことが分かった。

  • PAN系炭素繊維単繊維の横方向圧縮弾性率測定

    永井 英幹、藤田 和宏、岩下 哲雄

    PAN系炭素繊維単繊維の横方向圧壊試験では、微小変形時と大変形後とで荷重-変位曲線に明確な変化がなく、理論式フィッティングで弾性率評価を行う際の評価範囲が一目瞭然とはいえない状況にある。そこで、まずFEM弾塑性解析との比較から弾性として扱う範囲を限定し、さらに接触が理論式に添うとは限らない初期データを外してフィッティングの合致度を高め、評価範囲をより適切に限定した弾性率評価を行うことができた。

  • 2か所に配置したセンサからの厚板裏面欠陥における超音波伝搬現象の映像化

    山本 哲也、遠山 暢之、宮内 秀和、時崎 高志

    著者らは、これまでスリットを有する薄板における、複数のセンサを用いた複数系統信号の同時モニタリング・映像化手法に関して検討を行い、その有効性の検証を行ってきた。本成果発表会では、2センサを厚板の裏面欠陥を有する試験片に関して適用した際の映像化に関して検討を行ったのでここに報告する。

  • レーザー超音波可視化探傷法による航空機・自動車構造部材の非破壊検査

    遠山 暢之

    構造部材接合部の欠陥を迅速に検出できる航空機・自動車用非破壊検査技術の開発を目指し、レーザー超音波可視化探傷法による欠陥検出技術の開発を進めている。レーザー超音波可視化探傷法をチタン合金のレーザー溶接部のボイド検出およびCFRP/金属接着部の接着不良検出に適用した結果を報告する。

  • モアレ法による全視野変位・ひずみ計測法の開発とその応用

    李 志遠、王 慶華、時崎 高志

    これまで開発したモアレ縞と位相解析技術を応用した変位・ひずみ分布計測法を紹介する。本手法の利点は全視野、高精度、高速、簡便安価であるのに加えて、応用範囲が広いのが特徴である。本手法を構造材料のひずみ計測およびインフラ構造物のたわみ計測への適用例について報告する。

  • Recent Advances in Moiré Techniques for nondestructive measurements of deformation distributions at micro- and nano- scales

    王 慶華、李 志遠、時崎 高志

    This study reviews the up-to-date developments of moiré techniques on the micro- and nano-scale deformation measurements and their applications to various materials. The displacement and strain distributions are quantitatively and accurately measurable in a large view field with our developed techniques including the secondary moiré method, the multi-scale moiré method, etc.

【分析計測標準研究部門 放射線イメージング計測研究グループ】

  • スペクトル強度干渉断層イメージング法とその像品質の向上

    白井 智宏

    一般的な低コヒーレンス光源を利用して,量子OCT(光コヒーレンストモグラフィ)を凌駕する性能をもつ断層イメージング技術を実現するために,量子OCTとスペクトル領域の従来型OCTを融合したスペクトル強度干渉断層イメージング法を提案した.本報告では,この新しい断層イメージング法の原理を説明した上で,本手法に特有のアーティファクトを低減し像品質を向上する方法について紹介する。

  • ガンマ線カメラの試作 - 放射線源の分布を撮影するカメラの試作 -

    永宗 靖

    6x8画素の放射線撮影装置(ガンマ線カメラ)の試作を行った。なお、撮影部をアルミシャーシ内に収めそれを三脚上に設置して移動撮影可能となるよう撮影装置全体を構築した。本撮影装置は、新規のガンマ線撮影技術(特許出願済)を用いて構築しており、装置全体が非常に軽量なため、容易に移動可能で、様々な場所に設置することが出来る。

  • レーザー共鳴イオン化質量分析によるストロンチウム同位体の分析

    永井 秀和

    放射性廃棄物の一つであるストロンチウム90(90Sr)は、弱いβ線を放出するだけで固有γ線を放射しないため、放射線による検出は難しく、分析には2週間以上の時間がかかる。レーザーイオン化による選択的イオン化、質量分析による同位体の分離同定により、短時間で簡易な90Srの分析法を確立できないか試みた。レーザーアブレーションによる試料導入、紫外光による1光子共鳴2光子イオン化スペクトルの測定結果について報告する。

  • 過渡吸収分光を用いた色素増感太陽電池のキャリアダイナミクス解析

    松崎 弘幸

    色素増感太陽電池は、低コストな太陽電池として盛んに研究されているが、更なる効率向上には、長波長の光を吸収し光電変換する色素が重要である。フタロシアニンはその候補ですが、これを用いた太陽電池は従来効率が低いものであった。今回、過渡吸収分光を用いて、色素構造や会合の違いと電荷発生過程の相関を系統的に調べ、色素会合によるサブナノ秒オーダーの高速な電荷再結合が効率低下の主要因である事を明らかにした。

  • 熱活性型遅延蛍光材料の励起状態ダイナミクス

    細貝 拓也、松 弘幸、古部 昭広、徳丸 克己(CEREBA)、筒井 哲夫(CEREBA)、中野 谷一(九州大学)、八尋 正幸(九州大学)、安達 千波矢(九州大学)

    熱活性型遅延蛍光(TADF)材料は電気励起によって発生した励起子を全て蛍光に利用できる、次世代の有機EL用発光材料として現在高い注目を浴びている。本発表では、TADF材料の高効率な発光メカニズムを解明するために、当グループが所有する各種の過渡吸収分光法を用いたTADF材料の励起状態ダイナミクスの研究成果について報告する。

  • 大気下での非占有準位の計測を目指した二光子—光電子収量分光法の開発

    細貝 拓也、松 弘幸、古部 昭広、中村 健

    材料の非占有準位は電子デバイスの伝導特性に極めて大きな影響を与えるが、その計測手法および測定雰囲気は限られていること。我々は近年、非占有準位をより簡便に調べるための新しい手法として二光子−光電子収量分光法を提案している。本研究では、本手法の原理を説明し、その開発状況について報告する。