2014年度 計量標準総合センター成果発表会
ポスターセッション 2日目

【電磁気計測科】

  • 交流プログラマブルジョセフソン電圧標準による10 Vrms正弦波交流電圧のサンプリング測定

    天谷 康孝、丸山 道隆、山森 弘毅(企画本部)、陳 士芳(CMS/ITRI)、藤木 弘之、金子 晋久

    プログラマブルジョセフソン電圧標準(PJVS)システムの交流電圧標準への応用研究を進めている。これまで、チップ交換と動作条件の最適化により、実効値10 Vのステップ近似正弦波信号の生成に成功した。本研究では、サンプリング測定により、市販の交流電圧発生器を評価した。実験的に最適なサンプリング条件を見出し、実効値10 V、周波数62.5 Hzの正弦波交流電圧において1 μV/V(k = 2)の相対拡張不確かさを得た。

  • AC/DC法を用いた金属材料の絶対熱電能の評価

    天谷 康孝、山本 淳(エネルギー技術研究部門)、阿子島 めぐみ(材料物性科)、藤木 弘之、金子 晋久

    エネルギーハーベスティングデバイスである熱電変換モジュールや材料の評価法の標準化に向け、エネルギー技術研究部門と共同で、絶対熱電能の評価技術の開発を進めている。これまで、AC/DC変換標準の測定技術を応用した新規測定法(AC/DC法)を考案した。従来法とは異なり、熱物性によらず電気量から熱電能を評価可能な利点がある。本研究では、AC/DC法によりはじめてPt線の絶対熱電能を評価し、従来より小さな不確かさを得た。

  • 薄膜型サーマルコンバータの真空動作特性の評価

    天谷 康孝、藤木 弘之、清水目 浩司(ニッコーム(株))、岸野 要(ニッコーム(株))、日高 滋(ニッコーム(株))

    10 Hz以下の交流電圧標準の不確かさ改善を目指し、ニッコーム株式会社、ナノエレクトロニクス研究部門と共同で薄膜型サーマルコンバータの開発を進めている。本研究では、従来、大気中で動作させていた薄膜型サーマルコンバータを真空中で安定に動作させることに成功し、特性評価を行った。その結果、低周波特性が改善され、1 Hz以下まで平坦な周波数特性を得た。さらに、大気中への熱損失が減少し、測定感度が従来の3倍に向上した。

  • インピーダンス標準の現状と蓄電デバイス評価技術に関する調査研究

    坂巻 亮、坂本 憲彦、藤木 弘之、金子 晋久

    蓄電デバイスは、電力平準化、電力回生といった様々なニーズが存在し、その安全運用のための検査技術の向上が求められている。インピーダンス計測は、蓄電デバイスの検査に有効であるが、検査に必要な領域の標準は未整備である。そこで、インピーダンス計測手法について調査し、蓄電デバイスの評価基準に適した標準の開発手法について検討する。また、検討した開発手法に基いた基礎検討の進捗状況についても報告する。

  • 薄膜型サーマルコンバータの性能改善

    藤木 弘之、天谷 康孝、清水目 浩司(ニッコーム(株))、岸野 要(ニッコーム(株))、日高 滋(ニッコーム(株))

    交流電圧標準を導く薄膜型サーマルコンバータの開発をニッコーム株式会社と共同で進めている。これまでに開発してきたサーマルコンバータの熱電対薄膜において、その抵抗値が、使用時間に伴って、増大する問題が観測されていた。今回サーマルコンバータの熱電対薄膜の劣化対策を行なったので、報告する。

  • 離散フーリエ変換(DFT)修正をベースとしたスペクトルリーケージ誤差補正

    山田 達司、昆 盛太郎

    デジタルサンプリングとDFT(FFT)によって、各周波数成分の振幅情報や位相情報を引き出せるが、通常は非同期サンプリングによる影響で、周波数・振幅・位相には大きな誤差が生じる。これは、DFT(FFT)処理後にスペクトルリーケージが発生するためである。今回開発した誤差補正アルゴリズムを紹介し、それらの測定量に対するシミュレーション結果を提示する。

  • マイクロ波光子を利用する電流計測素子の提案

    岡崎 雄馬、金子 晋久

    希釈冷凍機を用いた電流スペクトル測定は、電流標準素子の研究で重要な役割を担う。従来、トランジスタ回路で構成される電流アンプが用いられてきたが、素子の発熱が大きく雑音レベルの改善が困難である。本研究では、超伝導マイクロ波共振器とジョセフソン素子を結合した新しい電流計測素子を提案する。この素子は超伝導を利用しており、発熱が極めて少なく、高感度かつ広帯域な電流スペクトル測定を可能にする。

  • マンガン窒化物の標準抵抗器への応用の検討

    大江 武彦、金子 晋久、竹中 康司(名古屋大学)

    逆ペロブスカイト構造をもつマンガン窒化物が、室温付近で抵抗率の極大を示すことが明らかにされ、標準抵抗への応用が期待されている。本発表では、温度依存性のほか、経年変化や湿度依存性、気圧依存性など、標準抵抗器に求められる性能を満足するか否か検討した結果について報告する。

  • 機械式冷凍機を用いたプログラマブルジョセフソン電圧標準システムの開発と応用

    丸山 道隆、高橋 ひかり、天谷 康孝、山森 弘毅(企画本部)、岩佐 章夫、浦野 千春、桐生 昭吾(東京都市大学)、金子 晋久

    液体ヘリウムが不要で、任意の量子電圧値を発生可能なプログラマブルジョセフソン電圧標準(PJVS)システムの開発を行っている。冷凍機を用いた場合、素子の発熱が動作に影響する場合のあることが分かった。実装素子の断面観察や伝熱解析を用いてこの原因を明らかにし、その結果について報告する。また、本システムを用いた直流電圧校正やDVMのリニアリティ測定、実効値10 Vの交流波形生成などについても紹介する。

  • 電流標準実現に向けた単電子素子の研究

    中村 秀司、岡崎 雄馬、金子 晋久

    近年、単一電子素子を用いて電流の基準となる量子電流標準を実現しようという試みがなされている。本発表では、超伝導リードと常伝導アイランドを持つ単一電子ターンスタイル素子や半導体二次元電子系を用いた単電子素子などによる単電子ポンプの研究について報告する。

  • 100Ω抵抗器の開発と3カ国比較による安定性評価

    金子 晋久、大江 武彦、Wan-Seop Kim(KRISS)、Dong-Hun Chae(KRISS)、Randolph Elmquist(NIST)、Marlin Kraft(NIST)

    究極の性能をもつ100Ω抵抗器を開発し、その運搬における安定性、環境特性などを3カ国で量子標準をもとに評価した。ハンドキャリにおいても通常の空輸においても運搬による値の変動は観測されなかった。また、温度係数などの環境特性は極めて高い性能を示した。その具体的結果について報告する。

  • 超微細加工技術を応用して物理シミュレートされた電気接点の集中抵抗

    福山 康弘、坂本 憲彦、金子 晋久、近藤 貴哉(矢崎部品(株))、大沼 雅則(矢崎部品(株))

    電気接点の構造とその接触抵抗の関係を明らかにするために、超微細加工技術を応用して電気接点の構造を物理的にシミュレートした試料を作製し、その電気抵抗を精密に測定した。先行研究において、理論および数値シミュレーションで予測されていた値を概ね支持する結果が得られた。これにより、物理シミュレーションが電気接点の研究に対して有効な手法であることが示された。

【電磁波計測科】

  • インピーダンス測定における精密同軸-電源プラグ変換アダプタの影響

    岸川 諒子、堀部 雅弘

    多くの擬似電源回路網の測定端子は電源プラグ形状であり、VNAのテストポートは同軸形状であるため、インピーダンス校正では同軸-プラグ変換アダプタが必要となる。しかし、変換アダプタは校正結果に影響を与え、間違った適合性判定結果を導いてしまう可能性がある。本発表では、変換アダプタの評価方法および結果を報告する。

  • 擬似電源回路網に対する国家計量標準にトレーサブルなインピーダンス校正方法の開発

    岸川 諒子、堀部 雅弘

    NMIJでは、CISPR 16-1-2規格で要求される擬似電源回路網(LISN/AMN)のインピーダンス校正を、国家計量標準にトレーサブルかつ簡便に行うことができる方法について検討してきた。本発表では、市販のLISN/AMNに対して適用した校正結果を示し、今回開発した方法が規格への適合性判定に使用可能であることを示す。

  • テラヘルツ帯カロリメータによる絶対電力の測定

    飯田 仁志、木下 基、雨宮 邦招(光放射計測科)、島田 洋蔵

    テラヘルツ帯における計測器の普及に伴い様々な応用開発が進展している。しかしながら、これらの精度評価法やトレーサビリティが未だ確立できていないことが課題となっている。テラヘルツ計測において基本的な物理量である絶対電力の校正を目的として、我々は等温制御方式によるテラヘルツ帯カロリメータを開発した。本発表では当該カロリメータの概要と実験結果について報告する。

  • 110 GHz〜170 GHz帯カロリメータを用いた高周波電力計の線形性評価

    島岡 一博

    2014年度から産総研では110 GHz〜170 GHz帯カロリメータを用いた高周波電力計の校正サービスを実施しており、0.1 mWから1.2 mWの電力レベルでの校正が可能である。本発表では、複数の電力レベルにおける校正結果を用いて市販の高周波電力計の線形性評価を実施したので報告する。

  • ラビ周波数を用いた自由空間磁場測定に関する基礎検討

    木下 基、石居 正典、島田 洋蔵

    我々は今までに原子のラビ周波数を基にしたマイクロ波強度測定に関する研究を行ってきた。過去の研究において測定対象は導波管内のマイクロ波に限定してきたが、これを自由空間へ拡張することで高精度で非摂動なマイクロ波磁場測定が実現可能性であることが期待される。今回、ラビ周波数を用いた自由空間磁場測定法の基礎検討を行ったのでその詳細について発表する。

  • 33 GHz 〜 50 GHz (Qバンド)高周波減衰量標準の確立

    ウィダルタ アントン、加藤 悠人

    産総研ではこれまでに10 MHzから40 GHzまでの高周波減衰量標準を確立して供給を行っている。一方、最近40 GHz以上動作しているネットワーク・アナライザ等のようなミリ波測定装置は一般的に使われているようになったため、それに対応する標準も必要とされる。 本稿は産総研で確立された周波数範囲33 GHz〜50 GHz (Q-band)の高周波減衰量標準装置及びそのトレーサビリティについて紹介する。

  • VNAを用いたRF減衰量校正システムの開発

    プランギンーアンギン ウィンディ(KIM-LIPI)、 ウィダルタ アントン

    最近、高周波汎用測定のネットワーク・アナライザ(VNA)の性能は著しく改善され、精密高周波減衰量校正システムとして適用可能と考えられる。その実現に既存の高周波減衰量標準のものと比較しながらVNAの諸基本特性の分解能、直線性、安定性等を詳細に調べた。本研究は国際計量室のMetrology Network in ASEAN Programの一環としてインドネシア国家計量標準機関(KIM-LIPI)の高周波標準開発に対して技術協力を行っている。

  • 高周波インピーダンス標準に関する国際比較

    堀部 雅弘、岸川 諒子

    現在、NMIJではCCEM.RF-K5c.CL (3.5 mm 同軸Sパラメータ測定)およびAPMP.EM.RF-S5.CL (同軸エアライン特性インピーダンス測定)に関するパイロットラボを担当している。本発表では、これら2件の国際比較の概要について紹介する。

  • ミリ波導波管ベクトルネットワークアナライザの検証技術

    堀部 雅弘、岸川 諒子

    ミリ波・サブミリ波(テラヘルツ波)領域では、主に導波管が用いられている。測定器においても、導波管のベクトルネットワークアナライザ(VNA)が多用されている。しかしながら、110 GHz以下のVNA測定においては、測定確度の検証方法および基準デバイス群は提供されているが、110 GHz以上では具体的な方法が示されておらず、課題となっている。このたび、反射特性に関する検証用デバイスの設計方針について検討したので報告する。

  • 高周波分野におけるIEC国際標準化の活動

    堀部 雅弘

    現在、IECを中心に高周波関連の国際標準化の活動を進めている。同軸コネクタの評価方法、導波管形状や仕様の決定方法から、ナノテク材料の電磁波特性評価などがあり、これらの標準化の動向を紹介する。

  • 誘電率評価技術のパイロットスタディ

    堀部 雅弘、加藤 悠人

    昨今の電磁波利用の拡大から、材料の特性、とりわけ誘電率の測定については、ニーズが高く、その背景からNMIレベルでの国際比較の前段階であるパイロットスタディが3年前に米国NISTより提案された。当初より日本も参加を表明し、測定に用いる材料についても国内の事業者の協力の下、供給することとなっている。また、今年度よりパイロットをNMIJが担当することとなり、適した測定方法や材料の形態の検討を開始した。本発表では、パイロットスタディの内容に加え、これまでのNMIJの研究成果をあわせて報告する。

  • 電磁波を使った穀物水分量の動的観測技術

    堀部 雅弘、加藤 悠人

    穀物、とりわけ米については、その水分含有量が品質を決定する。そのため、商取引においても重要なパラメーターでありながら、現在、電気的な破壊検査あるいは乾燥法によるサンプル検査が主流であり、現場で簡便かつ全数の評価ができる方法の要望がある。そこで、電磁波を利用した現場での動的観測を可能とする測定・解析原理を開発したので報告する。

  • グラフェン電磁波遮蔽材料とナノ材料電磁波特性計測技術の研究開発

    加藤 悠人、堀部 雅弘、長谷川 雅孝(ナノチューブ応用研究センター)、石原 正統(ナノチューブ応用研究センター)、中村 孝志(コンパクト化学システム研究センター)、蛯名 武雄(コンパクト化学システム研究センター)、南條 弘(東北センター・イノベーションコーディネーター)

    軽量かつ電気伝導性に優れた炭素系材料は、エレクトロニクス応用に向けた新たな機能材料として期待されている。高伝導性で軽量であるため、とりわけモバイル機器での電磁環境対策部材への適用に向け、新材料・ハイブリッド構造体などを検討しており、その最終評価として、電磁波遮蔽特性の評価を行っている。従来の方法を用いる場合であっても、被評価材料が金属材料とは異なり、測定ジグ筐体とのコンタクトによっても評価結果が異なるなどの課題があり、測定法の改良も取り組んだ。測定系に加え、一連の評価結果についても概要を報告する。

  • 外挿レンジ法を用いた三面コーナーリフレクタのRCS校正

    飴谷 充隆、黒川 悟

    近年、衝突被害軽減装置の大型トラックへの搭載義務化を背景として、ミリ波帯レーダーの普及が進んでいる。レーダー性能を評価する指標としてターゲットからの散乱強度を表すRCS(Radar Cross Section, レーダー散乱断面積)が用いられる。本発表では、模擬ターゲットとして一般的に使用されている三面コーナーリフレクタのRCS値を外挿レンジ法により校正する方法を提案する。外挿レンジ法により、ターゲット近傍においても正確なRCS校正が可能となる。

  • 台車ロボットと光マイクロ波変換を用いた放射ノイズの位相分布測定

    飴谷 充隆、黒川 悟

    近年、電子機器の増大や高速無線通信の普及により、放射妨害波測定(EMI測定)の重要性が高まっている。EMI測定は通常電波暗室で実施されるが、自動車、半導体検査装置、工作機械など大型の機器では、電波暗室への運搬が困難であり、設置場所において試験できることが望ましい。本発表では、ターンテーブルによってEUTを回転させる代わりに、台車ロボットによってEUTの周りの電界強度を測定することで、EUTからの放射妨害波の強度分布および位相分布を測定可能であることを示す。

  • 30 MHz以下の低周波帯における5面電波暗室の特性評価に関する一検討

    石居 正典、吉田 秀樹((株)本田技術研究所)、檀上靖之((株)本田技術研究所)、黒川 悟、藤井 勝巳((独)情報通信研究機構)

    最近、9 kHz〜30 MHzの低周波数帯域においても、EMC/EMI測定を実施する動きがある。この30 MHz以下の周波数帯域では、30 MHz以上の周波数帯と異なり、EMI測定を実施する上で必要な電波暗室などの測定環境の評価方法が確立されていない。本発表では、10 m以上の大きさを持つ大型の電波暗室でも、特に金属床面を持つ5面電波暗室の特性評価に関する1つの検討を行ったので報告する。

  • 基地局アンテナの絶対利得とパターンのKim法による測定のそのバイアス誤差要因

    廣瀬 雅信、黒川 悟

    携帯電話で使用される基地局アンテナの縦長形状のアンテナの絶対利得とパターンを測定する方法としてKim法がある。しかしながら基地局アンテナはアレイアンテナから構成させるのでアンテナパターンはアレイアンテナを構成する各素子に振幅中心が存在するために、Kim法による長手方向のパターンがずれてくる。この原因を明確にしたので報告する。

  • マイクロ波帯アンテナの各種特性測定技術と標準供給に関する調査研究

    Yuanfeng SHE、飴谷 充隆

    マイクロ波帯アンテナの利得、放射パターン等の各種特性測定技術に関して、産業界のニーズ及び技術動向や各国NMIにおける測定技術並びに不確かさ評価技術、標準供給の現状について文献調査や実地調査を実施した。例として、60 GHz無線端末用小型アンテナ特性評価と不確かさ評価を報告する。

【量子放射科】

  • 効果的な除染計画・評価のための放射線・放射能測定装置の実用化開発

    黒澤 忠弘、齋藤 則生、加藤 昌弘、岩下 敦(川口電機)

    敷地等の除染において、効果的な除染には、汚染域の推定やその寄与率を知ることが重要となる。また土壌中の放射線物質の深度分布を効率的に評価することによって、迅速かつ効率的に表土剥ぎを行うことが可能となる。今回、指向性放射線検出器を用いて、放射性物質による汚染域の大よその距離、また土壌中の放射性物質の深度分布の推定手法を確立するため、シミュレーション及びモデル実験を行った。

  • 3 mm線量当量測定技術の開発

    加藤 昌弘、黒澤 忠弘、齋藤 則生

    国際放射線防護委員会の勧告により、目の水晶体の放射線防護の規制値が引き下げられる動きがある。そこで著者らは放射線作業従事者の安全を守るため、X線・γ線・β線の3 mm線量当量の測定技術を開発している。今年度は、光子に対する空気カーマから3 mm線量当量を導出するための変換係数をシミュレーションで導出する手法、およびβ線標準場での3 mm組織吸収線量を外挿電離箱で測定する手法を開発した。

  • 水吸収線量校正における防浸鞘の影響〜モンテカルロ計算の妥当性の確認〜

    森下 雄一郎

    水吸収線量の校正では、電離箱を水中に設置するのに防浸鞘を使う。この鞘の影響は㈰鞘と電離箱壁間にできる空洞の影響、㈪鞘の材質が水と違うために生じる影響の二種類がある。影響㈰については定量・定性的な説明が可能であるが、影響㈪についてはその影響が小さいため良く分かっていない。そこでこの影響が強く現れる状態で測定を行い、モンテカルロなどの線量計算の結果と比較を行った。

  • APMPの軟X線の国際比較結果(APMP.RI(I)-K2)

    田中 隆宏、黒澤 忠弘、齋藤 則生

    産総研がパイロットラボとなり、2008〜2011年にかけてAPMP内において軟X線の国際比較を行い、2014年9月に最終結果が発刊された。今回の国際比較には全部で9機関が参加し、概ね不確かさの範囲内で各国の標準の同等性が確認された。

  • 治療用荷電粒子線の水吸収線量標準の開発状況

    田中 隆宏、清水 森人、森下 雄一郎、黒澤 忠弘、加藤 昌弘、齋藤 則生

    産総研では放射線治療に使われる電子線や粒子線の水吸収線量標準の開発を行っている。電子線は産総研内の医療用リニアックを、粒子線は放射線医学総合研究所のHIMACを、それぞれ利用して標準の開発を進めている。これらの荷電粒子に対する標準開発の進捗状況について紹介する。

  • X線自由電子レーザー用常温カロリーメータの開発

    田中 隆宏、加藤 昌弘、齋藤 則生、登野 健介(JASRI)、矢橋 牧名(理研)、石川 哲也(理研)

    理研とJASRIが共同で開発したX線自由電子レーザー(SACLA)の共同利用が2012年より開始された。X線自由電子レーザーの強度の絶対値は、2光子吸収など非線形過程を議論する上で特に重要となる。従来の高輝度光源の光量(強度)測定用の極低温放射計よりも、簡便に動作する常温カロリーメータを開発した。

  • 医療用電位計校正のための電荷発生器の開発

    清水 森人

    放射線治療現場における線量評価は、電離箱から発生する電荷を医療用電位計を用いて測定することで行われる。現在、国内では放射線計測用に利用可能な電荷標準が供給されていないため、電位計と電離箱線量計の組み合わせに対して線量校正が行われてきたが、不便が多く、電離箱と電位計の分離校正の実現が求められてきた。本研究では校正されたコンデンサと電圧計の組み合わせによって、電気標準にトレーサブルな電荷発生器を開発し、これを用いて電位計の校正を行うことを試みた。

  • 放射性ガスの放射能標準について

    柚木 彰

    放射性物質の使用施設から環境中への放射性ガスの放出を監視するために、多くの施設にはガス放射能モニタが設置されている。このモニタの校正の基準となる放射能標準では長さの異なる複数の通気式比例計数管を用いて放射能の絶対測定を行う。以前用いられていた装置のオーバーホールを行い、付帯装置を更新したので、校正手順とその特性について改めて紹介する。

  • 超伝導放射線検出器用放射能線源の製作

    佐藤 泰、福田 大治(光放射計測科)

    超伝導放射線検出器を用いて放射能測定を行うと、検出効率が非常に高いので、従来よりも一桁程度測定不確かさが改善できると考えられる。超伝導放射線検出器は、放射線を熱に変換して測定を行うため、極低温の動作環境で、熱容量が小さくて温度変化の大きく、且つ熱伝導に優れた材質に放射線を吸収させる必要がある。今回、これらの観点から錫箔を用いた放射能線源の製作を検討した。

  • 福島第一原発事故現場での純ベータ核種の放射能測定法の開発

    海野 泰裕

    東京電力福島第一原子力発電所では、事故により大量の放射性物質が拡散した状況にあり、それを把握するための測定を実施している。その測定は、「放射能濃度が広範囲である」、「核種が混在している」など、従来の状況とは異なるため、最適な測定方法は新たに検討する必要がある。特に現在は、汚染水に含まれる放射性ストロンチウムが最大の関心対象である。その測定手法について、実施した研究内容を報告する。

  • 多層型マンガンバスによる中性子放出率導出法の確立

    松本 哲郎、原野 英樹、増田 明彦

    マンガン合金とポリエチレン減速材を多層状に構成した多層型マンガンバスを開発している。この検出器を利用してCfとAm-Be線源に対する中性子放出率を導出するデータ処理法を確立した。データ処理において、必要となる補正項目についても測定と計算から検証した。(本研究は、科研費若手Bによって実施されている。)

  • 準単色高エネルギー中性子場の低エネルギー成分評価技術の開発

    増田 明彦、松本 哲郎、原野 英樹、吉富 寛(JAEA)、西野 翔(JAEA)、志風 義明(JAEA)、谷村 嘉彦(JAEA)、吉澤 道夫(JAEA)、倉島 俊(JAEA)、清藤 一(JAEA)

    数十MeVの高エネルギー中性子の校正場では、バックグラウンドとなる低エネルギー連続成分のスペクトラルフルエンスの把握が課題である。keV領域までの中性子飛行時間法による測定が近年実現したので、特にそのエネルギー領域の測定精度向上に取り組んだ。また受動型のボナー球スペクトロメーターを開発し、全エネルギー領域の測定精度の向上を図った。

  • 重水減速252Cf連続スペクトル中性子フルエンス標準の開発と供給開始

    増田 明彦、原野 英樹、松本 哲郎

    中性子線量計の感度は中性子のエネルギーに強く依存するため、252Cfから放出される中性子を重水で減速することで核燃料施設等の中性子エネルギースペクトルを模擬する校正場を開発した。開発した場の特性評価結果、校正のデモンストレーション、および校正の概要について発表する。

【無機分析科】

  • 波長連続光源GFAASによるCa分子吸収を利用したプラスチック中ハロゲンの直接定量

    野々瀬 菜穂子、石澤 ゆかり、和田 彩佳、三浦 勉、日置 昭治

    グラファイトファーネス原子吸光法(GFAAS)においてCaX(X=F,Cl,Br,I)の分子吸収を利用したハロゲンの分析法を開発した。CaとF,Cl,Brとの分子吸収の特性を調べて、プラスチック(樹脂)中のハロゲンの直接定量に応用し、燃焼イオンクロマトグラフィー法や放射化分析法と比較した。

  • プラスチック製認証標準物質を利用した燃焼イオンクロマトグラフィーの妥当性評価

    和田 彩佳

    燃焼—イオンクロマトグラフィーは、材料の形態によらず微量のふっ素、塩素、臭素、よう素を同時に定量できる手法として利用される。燃焼イオンクロマトグラフィーの分析条件を最適化した後、プラスチック製認証標準物質3種類に含まれる塩素および臭素の定量値を他分析法と比較し、燃焼イオンクロマトグラフィーの妥当性を評価すると同時に分析性能を評価したので報告する。

  • SIトレーサブルな過よう素酸塩類の純度測定

    朝海 敏昭

    過よう素酸塩類は強い酸化剤であり、有機合成やマンガンイオンの検出に利用されているが、その純度の精確な分析法に関する報告はない。本研究では、電量滴定法及び重量滴定法を用いてSIトレーサブルな測定法の確立を試みた。その過程で、一般的な教科書や文書規格に示された測定条件より最適な条件を見出した。

  • 有機体炭素(TOC)標準液の開発

    鈴木 俊宏、朝海 敏昭、三浦 勉、日置 昭治

    TOCは水道法などで規制される水質基準のひとつであるが、少なくとも国内では、TOCについてSIトレーサビリティの明確な標準物質は存在せず、その整備が必要とされている。現状として、中和滴定で純度が決定されたフタル酸水素カリウム(KHP)が標準として用いられることが多いが、本研究では、硫酸塩重量法や不純物分析と併せてTOCとしての純度評価を行った。さらに、KHP溶液の安定性評価などと併せて、TOC標準液を開発したので報告する。

  • 放射性セシウムを含む玄米試料を用いた放射能測定試験所間比較

    三浦 勉、柚木 彰(量子放射科)、海野 泰裕(量子放射科)、濱松 潮香(食総研)、八戸 真弓(食総研)、等々力 節子(食総研)

    放射性セシウムを含む玄米試料によるGe半導体検出器を対象とした技能試験とシンチレーション式測定器を対象とした確認試験を行った。放射性セシウムを含む玄米を均質化しGe検出器向けにはU8容器と2リットルマリネリ容器に充填した試料を、シンチレーション式測定器向けには装置固有の容器に充填した試料を用いて試験を実施した。試験結果はおおむね参照値と一致しており、良好な結果が得られていることが確認できた。

  • 米中ひ素化合物の抽出挙動と濃度測定

    成川 知弘、稲垣 和三、宮下 振一、朱 彦北、黒岩 貴芳、小口 昌枝、工藤 いずみ、岩澤 歩美

    ひ素は化学形態によって毒性が異なることから、食品分野では化学形態分析の重要性や関心が高まっている。特に米中ひ素化合物の化学形態分析は容易ではなく、さらに目的に合わせた前処理を必要とする場合がある。本発表では、米中ひ素化合物の化学形態分析において最も重要となる抽出方法の妥当性と精確さについて、標準物質に適用した結果などを報告する。

  • 分析実務者のスキルアップを目的とした玄米中無機元素分析の技能向上支援プログラム

    宮下 振一、稲垣 和三、成川 知弘、朱 彦北、黒岩 貴芳、小口 昌枝、工藤 いずみ、岩澤 歩実、日置 昭治

    食品の安全・安心を確保する上で、検査等における分析の信頼性確保が必要不可欠である。信頼性の高い分析を行うためには確かな分析技術が必要だが、分析現場では実務者の技能教育が難しくなっているのが現状である。当研究室では、分析実務者の技能向上支援を目的として、技能試験とフォローアップ講習の一体型プログラム(分析技能向上支援プログラム)を提供している。本発表では、2011年度から3年連続で実施した玄米中無機元素分析の技能向上支援プログラムについて、その結果概要を報告する。

  • ICP発光分析装置用同軸型グリッドネブライザーの設計開発

    稲垣 和三、藤井 紳一郎(有機分析科)、宮下 振一、高津 章子(有機分析科)、千葉 光一(計測標準研究部門)

    ICP発光分析装置(ICP-OES)の試料噴霧器(ネブライザー)は、測定感度及び安定性を左右する重要なパーツである。当研究室で新たに設計開発した同時型グリッドネブライザーは、既存ネブライザーと比較して、噴霧性能(噴霧効率、高マトリクス耐性)に優れており、ICP-OES測定における測定感度も大幅に向上させることができる。本発表では、同時型グリッドネブライザーの基礎性能及びICP-OES装着時のパフォーマンス評価について報告する。

【有機分析科】

  • 同位体希釈質量分析法による食品衛生外部精度管理調査試料(残留農薬分析用)の分析

    鎗田 孝、大竹 貴光、青柳 嘉枝

    技能試験における同位体希釈質量分析法(IDMS)の精確さを評価するために、食品衛生外部精度管理調査(残留農薬㈵:とうもろこしペースト中のフェニトロチオンとクロルピリホスの定量)の調査試料をIDMSによって分析し、その結果を精度管理調査の付与値等と比較した。

  • NMIJ CRM 3406 二酸化炭素標準ガスの開発

    松本 信洋

    二酸化炭素混合標準ガスは、温室効果ガスモニタリング用・自動車排気ガス濃度測定用ガス分析計などの校正に使用されている。その混合標準ガスを調製する時の原料となる高純度二酸化炭素の純度を差数法により決定した認証標準物質を開発・供給しているので、報告する。

  • キュリー・ワイスの法則に基づく安定フリーラジカルをもつ高純度有機化合物粉末の純度分析の検討

    松本 信洋

    固体中の電子の磁気的性質の温度依存性を利用して、分析試料中の純度または濃度の直接定量が可能な新規分析法の開発に取り組んでいる。今回は3種類の高純度有機化合物粉末のラジカル数を直接測定することにより、これらの粉末の純度を定量する事を試みたので、報告する。

  • 動的発生法で調製した標準ガスによる高圧容器詰めホルムアルデヒド混合ガスへの値付け

    青木 伸行

    産業技術総合研究所計測標準研究部門(NMIJ)では、来年度に市販の高圧容器詰めホルムアルデヒド混合ガスへの校正サービスを開始する予定である。本校正サービスでは、動的発生法で調製した標準ガスを用いて高圧容器詰めのホルムアルデヒド混合ガスへ値付けを行う。本発表ではホルムアルデヒド濃度の値付け方法について説明する。

  • ABS樹脂(ペルフルオロアルキル化合物分析用:NMIJ CRM 8155-a)の開発

    羽成 修康、伊藤 信靖、岩澤 良子、青柳 嘉枝、沼田 雅彦

    ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)に代表される有機ふっ素化合物は、耐熱性・耐薬品性など優れた性質を有するため、様々な産業分野で使用されてきた。しかし、有害性及び環境残留性が問題となり、電気・電子機器材料に残留するPFOSは欧州指令により規制され始めた。そのため、この化合物を適正管理する上では正確な分析実施が不可欠であり、精確な工業製品中のPFOS分析の必要性が生じている。そこで、PFOSを含むABS樹脂の開発に着手し、本稿では特性値決定に関し報告する。

  • 農薬残留玄米試料を用いた技能試験結果の概要

    大竹 貴光、鎗田 孝、青柳 嘉枝、沼田 雅彦、高津 章子

    食品分析の信頼性を保証し、分析結果の国際整合性を確保するためには精度管理が必要である。そのため、産業技術総合研究所計量標準総合センターでは、残留農薬分析用食品認証標準物質の開発を行ってきた。さらに2012年度からは、食品メーカーや受託分析機関などを対象に「農薬残留分析の信頼性向上のための技能試験」を開始した。ここでは、2013年度に実施した玄米粉末を用いた農薬残留分析の技能試験結果の概要について報告する。

  • ヘッドスペースGC/MSを用いた水分測定法の開発とその応用

    稲垣 真輔、森井 奈保子、沼田 雅彦

    カールフィッシャー(KF)法は水分を迅速かつ簡便に測定することが可能であり、国内外の様々な公定試験法に採用されている。しかしながら、KF法は酸化還元性物質などのKF試薬中のヨウ素と反応する物質により妨害を受けるといった短所があるため、このような妨害物質が含まれる試料から精確な定量値を得ることは困難である。そこで、ヘッドスペースGC/MSを用いることにより、KF法における妨害物質の影響を受けず、かつ水分を直接検出する測定法の開発を行った。

  • 繊維製品中に含まれる特定芳香族アミンの分析技術に関する現状と課題

    宮本 綾乃

    近年、衣類など繊維製品に含まれる有害物質の危険性が注目されており、アゾ染料に由来し、発がん性物質として知られている特定芳香族アミンについては、法規制の準備が進められている。しかし、現行の手法では特定芳香族アミンの分析精度が不十分であるため、本研究では、その問題点について調査を行った。今後はそれらの課題を解決することにより、繊維製品に含まれる特定芳香族アミンについて、高精度の分析方法の開発を目指す。

  • 血清中エストラジオールの一次標準測定法の開発及びACRM試料の測定

    川口 研、恵山 栄、高津 章子

    血清中エストラジオールの一次標準測定法として、同位体希釈-液体クロマトグラフィー質量分析法を開発した。本法では、エストラジオールの高感度化のために誘導体化を検討した。開発した分析法を用いて、ACRM比較試料を測定し、国家計量機関間での測定値の同等性を確認した。

  • 核磁気共鳴スペクトルを用いたペプチドの高精度な純度決定法の確立

    山崎 太一、加藤 愛、高津 章子

    NMRスペクトルを用いた定量分析は急速に注目を集め、特に低分子有機化合物の定量分析に関する報告が数多く報告されている。本研究ではアミノ酸のオリゴマーであるペプチドの純度測定にNMRスペクトルを利用した、高精度な定量分析法を確立したので報告する。また、ペプチドの高精度な評価法として一般的に利用されているアミノ酸分析に加えて、NMRスペクトルにおけるシグナル間差を評価することで測定結果の妥当性評価も実施した。

  • 同位体希釈-アミノ酸分析を用いたタンパク質の吸着評価

    加藤 愛

    同位体希釈質量分析法を利用したアミノ酸分析は、タンパク質・ペプチドを高精度に測定することが可能である。本方法で内部標準として添加する同位体標識アミノ酸と試料タンパク質では前処理操作時の物性(特に吸着)が違うことが予想されるため、この物性の違いをタンパク質の吸着量測定に応用することで、より精確な定量法を構築することを目的とした。

  • アミノ基及びカルボキシル基を対象とした誘導体化-アミノ酸分析による糖化ペプチドの定量

    坂口 洋平

    先に、アミノ酸のアミノ基及びカルボキシル基に誘導体化を行う、多点誘導体化-アミノ酸分析法を開発した。本研究では、その多点誘導体化-アミノ酸分析法を糖化アミノ酸測定へ応用した。測定対象物として、N末端アミノ酸のアミノ基が糖化されたペプチドである1-deoxyfructosyl-VHLTPEを選択した。糖化ペプチドを加水分解した後、得られたアミノ酸及び糖化アミノ酸に対し本法を適用し、糖化ペプチドの定量を行った。

  • ヒト血清アルブミン認証標準物質の開発

    絹見 朋也、坂口 洋平、水野 亮子、高津 章子

    アルブミンは臨床検査など幅広い分野でタンパク質濃度の基準として用いられている。しかし、従来のアルブミン標準品はウシなどの動物由来であり、ヒト由来のアルブミン標準品がないため、臨床検査では定量法によっては種差が生じたり、輸出入における問題があった。そこで、アミノ酸分析により値付けを行ったヒト血清アルブミン溶液認証標準物質の開発を行ったので報告する。

  • 液体クロマトグラフィーによるDNAの分離・定量法の開発とDNAの分解率評価への応用

    柴山 祥枝

    本研究では陰イオン交換カラムと液体クロマトグラフィーを用いてDNAを高精度に分析可能な方法の開発を行った。混合DNA試料を分析し、分析条件やDNAの溶出挙動について詳細に検討した結果、目的DNAを高精度に測定・定量することが可能であった。開発した分析法をDNAの分解率評価へ応用した結果、分解率を約1 %のばらつきで評価可能であった。

  • DNAを対象とした分離分析技術の開発

    藤井 紳一郎

    分子量数万以上の高分子を形成するDNAを対象とする分離分析技術としては、その分離能の高さから電気泳動分析法が用いられてきた。しかし、繰り返し再現性の悪さが欠点であり、定量値に関する評価技術には適していない。そこで本研究では、サイズ排除クロマトグラフィを分離技術として用いたDNAの高精度分離分析技術の開発を目的とする。

【ナノ材料計測科】

  • 薄膜・多層膜材料の膜厚校正サービス

    東 康史

    これまで我々は、微細化する薄膜材料の膜厚を正確に評価するために必要な標準物質の開発を行ってきた。しかしながら薄膜材料における材質や膜厚はその用途によって多岐にわたるため、ユーザーのニーズに応える標準物質をすべて供給していくことは困難である。そこでこれまで培った膜厚計測技術を用い、ユーザーが必要な標準物質の使用を可能とするために膜厚校正サービスを開始した。その概要を紹介する。

  • Surface Layer Analysis of Si Sphere by XRF and XPS

    Lulu Zhang, Yasushi Azuma, Akira Kurokawa, Naoki Kuramoto(Material Properties Division), and Kenichi Fujii(Mechanical Metrology Division)

    To reduce the uncertainty of the Avogadro constant for the new definition of the kilogram, the surface analysis of the Si sphere produced for the accurate determination of the Avogadro constant is indispensable. In this work, we conducted the surface quantitative analyses to find out the metallic contaminations on a 1 kg natural Si sphere by x-ray fluorescence (XRF) analysis. The x-ray photoelectron spectroscopy (XPS) investigations were also carried out to estimate the thickness of the oxide layer and clarify the chemical binding state of the carbonaceous contamination layer on the surface of a dummy Si sphere.

  • 電子線トモグラフィーを用いたナノ粒子の三次元形状評価

    林田 美咲

    電子線トモグラフィーとは、透過型電子顕微鏡を用いて観察対象物の三次元構造を得る手法である。本研究室ではその手法の高度化に向けた技術開発を行ってきた。今回は、その技術をナノ粒子の三次元形状評価に応用した結果を発表する。

  • EPMA分析用合金標準物質の開発

    寺内 信哉、伊藤 美香

    これまでEPMA分析用認証標準物質としてFe基合金およびNi基合金標準物質の開発を行い、計19種類の合金標準物質を供給している。これらのEPMA分析用認証標準物質について紹介するとともに、供給開始後の安定性評価について紹介する。

  • 既存の物性情報を参照せずに行う電子分光スペクトルの解析

    城 昌利

    表面分析では測定対象であるnmサイズの領域を巨視的バルク試料の様に規定できないため、様々な仮定、組成、膜厚、等々を仮定してモデル化し、それを基に解析を行うのが普通である。明らかに、このようなアプローチは未知の対象を知るという本来の目的に逆行している。本研究ではバルク的な物性情報を参照せずに未知物質の電子分光スペクトルを解析する方法を開発しているので、その最近の進展を紹介する。

  • 電子顕微鏡用ナノ粒子粒径分布測定試料片調整法

    熊谷 和博、桜井 博、黒河 明

    現在、ナノ材料の適正管理のためのナノ粒子粒径分布測定法の議論が盛んとなるなか、電子顕微鏡法は像として粒径及び粒子形状を評価可能であることから注目を集めている。本法では顕微鏡像観察を行うという特性上、評価が容易な試料調整が重要となる。そこで本研究では電子顕微鏡法により信頼性の高い計測を行うための試料片調整法を提案する。

  • BNデルタドープ層標準物質の開発

    黒河 明、東 康史、寺内 信哉、成川 知弘(無機分析科)、高塚 登志子、伊藤 美香

    イオンスパッタリングを用いた深さ分析用に、スパッタリングレートの校正と、シリコン中のひ素濃度の校正の双方ができる標準物質の開発を行っている。それらの特性値の評価方法とその結果について紹介する。

  • MALDI質量分析試料の形成過程の干渉像による観察

    富樫 寿

    MALDI質量分析法に用いる試料の溶媒蒸発による形成過程をレーザー光照射によって発生する画像から調べる方法を検討した。画像は基板散乱のみに由来するものと液面反射と基板散乱の相互作用から生じるものが混在することが分かった。この現象は蒸発過程での液体の運動が堆積する試料の形態に及ぼす影響を調べるために使える可能性がある。

  • 高速イオンビームを用いたナノ薄膜評価

    平田 浩一

    イオンビームは、イオン注入による元素ドーピング、表面分析等、材料改質、材料分析の幅広い分野で用いられている。イオンビームを用いた材料分析では、入射イオンと材料との相互作用により、試料表面から放出される散乱粒子や2次粒子等を適切な方法で検出・分析することにより、材料の深さ方向元素分布、材料表面の微量元素や化学構造の分析を行うことが可能である。本発表では、数百keV〜数MeVの入射エネルギーを持つ高速イオンビームを用いたナノ薄膜評価に関する報告を行う。

  • 陽電子寿命による空孔欠陥測定用標準物質の開発

    山脇 正人、伊藤 賢志

    高純度単結晶シリコンを基材とした金属・半導体空孔欠陥評価用CRMを開発し、2014年6月より供給を開始した。本CRMは、欠陥を高い信頼性で分析可能な陽電子寿命測定法により認証値が決定されており、半導体分野でのデバイス部材開発や、構造インフラ劣化の原因となる金属部材疲労に関する安全性診断を行う現場での活用が期待される。

  • Hyphenated FFF による二次元ナノ材料評価手法の開発

    中村 文子、加藤 晴久

    流動場分離法(FFF)は近年ナノ材料のサイズ分級法として注目を集めているが、分級時の利用力場に依存した分級限界が存在する。当研究室では交叉流場と遠心場の2種類の力場を利用したHyphenated FFFを開発し、流動場分離原理よるナノ材料の分級限界を大幅に拡張することに成功した。開発された技術を利用した二次元的なナノ材料分級実例を紹介する。

  • 光散乱用ポリスチレン標準物質の開発

    高橋 かより、桜井 博

    NMIJでは分子量標準物質として5種のポリスチレン、3種のポリエチレングリコール、1種のポリエチレングリコール誘導体を供給中である。今回のポリスチレン標準物質は、これらの中で最も分子量が大きく、光散乱法等の計測手法の高精度化に貢献する目的で開発が計画された。本標準物質は分子量の他にも分子の幾何学的な形状に関する数値が値付けされており、微粒子の粒子径計測の分野においても活用が期待されている。

  • 液中ナノ粒径標準物質と計測法に関する調査研究

    前田 綾香

    液中ナノ粒径標準物質の現状とその計測法における課題について調査した結果を報告する。特に、近年の半導体業界、および化粧品等に使用される粉体業界におけるナノ粒子粒径標準物質に関するニーズと、これに基づいた標準物質の開発に必要となる計測法の高精度化等について報告する。

  • 気中粒子の粒径分布計測技術と標準に関する調査研究

    村島 淑子

    気中粒子の粒径分布測定法とその計量標準ニーズの現状について行った調査の結果を報告する。また、産総研が今後取り組む、電気移動度式粒径分布測定法による高精度な気中粒径分布測定装置の開発に向け、その性能評価に必要となる試験法の検討を行った。その結果を踏まえ、個数濃度標準を基準とした総個数濃度比較法等に基づく粒径分布測定器の性能評価法を提案する。

  • 粒径分布幅標準の開発

    高畑 圭二、桜井 博、榎原 研正(計量標準管理センター)

    粒子計測器の粒径分解能評価のための粒径分布幅標準の開発を行っている。20 〜 300 nmの粒径域の準単分散標準粒子を対象とした電気移動度分析法による粒径分布幅値づけ技術の詳細およびその不確かさについて報告する。

  • 液中粒子数濃度標準の対応粒径下限拡張と操作性向上のための計測技術と評価法の開発

    坂口 孝幸

    液中粒子数濃度標準供給対応粒径下限を10 μm から 2 μm まで拡張したのでこれを報告する。また、校正に用いる全数計数型フローサイトメーターの一部機能を自動化することにより操作性が向上したが、計数に時間を要するので粒子計数の更なる操作性向上のため、懸濁液質量変化と液中粒子計数装置を用いた粒子計数の同期による濃度測定技術を開発したので報告する。

  • 光散乱式パーティクルカウンタ(OPC)の計数効率とその不確かさ評価

    飯田 健次郎

    気中粒子数(濃度)の標準としてインクジェットエアロゾル発生器を開発した。校正サービスの立ち上げ準備として、サンプル流量範囲0.3-30 L/minのOPCの計数効率とその不確かさ評価を行った。模擬校正の結果、OPCが測定した粒子計数頻度に基づく効率、および、OPCが測定した粒子数濃度に基づく効率の校正結果の相対拡張不確かさは、それぞれ0.3 %および0.7 %になると予測した。

【計量標準システム科】

  • 高純度1,4-ジオキサン標準物質(NMIJ CRM 4057-a)の開発

    清水 由隆、北牧 祐子、吉村 恵美子、加藤 健次、沼田 雅彦

    1,4-ジオキサンは揮発性有機化合物(VOC)の一種であり、水道水の水質基準項目の一つである。当所では濃度測定の基準となる高純度VOC標準物質の開発・供給を行っており、今回は高純度1,4-ジオキサン認証標準物質(NMIJ CRM 4057-a)の開発について報告する。

  • バイオディーゼル燃料認証標準物質の開発状況および硫黄の精確な値付けの検討報告

    北牧 祐子、朱 彦北(無機分析科)、稲垣 真輔(有機分析科)、狩野 祐也(材料物性科)、藤田 佳孝(材料物性科)、松尾 真由美(有機分析科)、森井 奈保子、谷口 幸子、沼田 雅彦

    地球温暖化対策の1つとして、バイオ燃料の導入が進められている。バイオディーゼル燃料(BDF)は原料由来の夾雑物などの影響によるエンジントラブルなどを避けるために、品質規格(JIS K 2390)が制定されている。そこで、産総研計量標準総合センター(NMIJ,AIST)では、BDF認証標準物質の開発に着手した。来年度認証に向けての開発状況およびBDF中の硫黄の精確な値付けについての検討結果を報告する。

  • 非タンパク質性アミノ酸標準物質の定量NMR法による純度評価

    斎藤 直樹、齋藤 剛、宇佐美 佳代、加藤 尚志、山中 典子、井原 俊英

    昨年度に引き続き、数種類の非タンパク質性アミノ酸類に対して1H NMR法による純度評価方法を確立した。この成果とこれまでに純度評価方法を確立した成果を合わせ、本年度は約20種類の非タンパク質性アミノ酸標準物質に対して依頼試験における純度校正を実施し、滴定法と不確かさの範囲で一致する良好な校正結果を得た。

  • 滴定法を利用した非タンパク質性アミノ酸類の純度測定

    加藤 尚志、井原 俊英

    アミノ酸類の純度測定法としては、簡便で正確な分析法である滴定法が薬局方を始めとして広く活用されてきた。しかし、現在報告されている分析例の多くはタンパク質性アミノ酸であり、非タンパク質性アミノ酸類についてはその実施例は少ない。本研究では、20物質以上の非タンパク質性アミノ酸類について、非プロトン性溶媒を添加した例やケルダール分解法と組み合わせた例など、様々なテクニックを利用した滴定法による純度測定を試みたので報告する。

  • 確率密度関数つき四則演算プログラムの開発

    城 真範

    ある不確かさつきの測定量から、モデルに従った数式によって関係づけられた別の測定量の不確かさを推定するため、モンテカルロ法を内蔵し、それを意識せずに使える四則演算のライブラリを開発中である。その経過を示す。

  • OIML TC6 R87文書の統計的手法における日本からの貢献

    田中 秀幸

    商品量目制度における、内容量検査手法である平均値手法について、日本案として基本的な1回サンプリング手法のリバイスと、段階的サンプリング法の新たな構築を行い、2014年9月のOIML TC6会議にて提案を行い、日本案をレコメンデーション文書内に含めるという議決がなされた。本発表では、その手法の詳細を紹介する。

  • 幾何形状データ当てはめソフトウェアの開発

    松岡 聡、佐藤 理(長さ計測科)

    直線、平面、円、球、円筒、円錐などの幾何形状のデータ当てはめソフトウェアを現在開発している。現時点での開発状況を報告する。

  • プログラムの不確かさ伝播

    渡邊 宏

    命令型言語で記述されたアルゴリズムにもとづく計算について、計算に付随する不確かさ伝播を評価する枠組みとその応用を紹介したい。

  • コロナCAD検出HPLCによるプラスチック添加剤分析における密度の影響

    松山 重倫、折原 由佳利、衣笠 晋一、大谷 肇(名古屋工業大学)

    HPLC検出器の一つであるコロナCAD検出器の測定強度と添加剤密度の関係を調べた。その結果、密度が大きくなるとコロナCADの感度が低下することを見いだした。

  • ISO/REMCO関連ガイドの改正動向

    齋藤 剛

    ISO/REMCOで発行している通称ガイド30シリーズについて、現在進んでいる改正作業の状況を報告する。

  • ベイズ統計を用いた試験所間比較結果の解析方法

    城野 克広、田中 秀幸、城 真範、榎原 研正(計量研修センター)

    国際的な計量標準の同等性を確保のため、国家計量機関の間で試験所間比較(基幹比較)を実施することは、計量標準を供給する上での必須の要件である。本研究では同等性確認のために、試験所間比較の報告値とその不確かさから、データの一致性に依存して、適切な参照値を選び、参加試験所のパフォーマンスを評価するための方法を提案する。