2014年度 計量標準総合センター成果発表会
ポスターセッション 1日目

【時間周波数科】

  • 原子泉方式セシウム一次周波数標準器の開発の現状

    高見澤 昭文、柳町 真也、萩本 憲、平野 育、田邊 健彦、池上 健

    マイクロ波共振器などをリニューアルして再構築中の原子泉一号器NMIJ-F1と、10-16台の不確かさを目指して2次ゼーマンシフトや衝突シフトなどの周波数バイアスの評価を進めている原子泉二号器NMIJ-F2の開発の現状を報告する。

  • 一次周波数標準器評価のための参照用発振器の開発

    萩本 憲、高見澤 昭文、柳町 真也、平野 育、池上 健

    一次周波数標準器の開発においては、その周波数安定度を超える参照用発振器が存在しないため、2台の同等の標準器を開発し相互に比較することにより不確かさの低減を進める必要がある。開発中の原子泉二号機の参照用発振器として用いるため、原子泉一号機の再構築を進めているので、その現状について報告する。

  • 微小角近似、離散フーリエ変換による、位相雑音の算出

    柳町 真也、平野 育、和田 雅人、萩本 憲、高見澤 昭文、池上 健

    ディジタル通信システムでは、水晶発振器の位相雑音の増大がエラーの原因になるため位相雑音特性はますます重要になってきている。発振器の雑音には位相雑音と振幅雑音があるが両者を切り分けて考えることにより、精密な分析ができる。我々は、高速デジタイザーに波形を取り込み、数値演算による微小角近似により、位相雑音成分、振幅雑音成分を抽出した後、離散フーリエ変換を行うことにより、位相雑音、振幅雑音の算出を行った。

  • 被測定波の周波数値の誤差により現れる位相雑音

    平野 育、柳町 真也、池上 健、和田 雅人、萩本 憲、高見澤 昭文

    発振器のジッタの測定に用いるクロックは正確なものが要求されるが、一般的には利用が困難なため、位相雑音からの変換が期待されている。位相雑音が小さくなれば、被測定周波数と計算に使用する周波数のわずかな違いにより、算出される位相ノイズは実際の値より大きくなってしまう。この影響を、サンプリング周波数が100MHzキャリア周波数が10MHzから1mHz、100μHz、10μHz、1μHzずれた場合に見かけ上現れる位相雑音の値の見積もりを行った。

  • 冷凍機を用いた低温サファイア発振器の周波数安定度の改善

    池上 健、柳町 真也、平野 育、萩本 憲、高見澤 昭文、渡部 謙一、John G.Hartnett(アデレード大学)

    一次周波数標準器で用いるマイクロ波発振器として、冷凍機で7 Kまで冷却する低温サファイア発振器(Cryocooler-Cooled Cryogenic Sapphire Oscillator、cryoCSO)の開発を行っているが、今回、液体ヘリウムで冷却するCSOを参照発振器として用いて周波数安定度の評価を行い、その改善を行ったので報告する。平均時間1秒〜1000秒で2×10-15より良い周波数安定度が得られた。

  • Yb光格子時計とSr光格子時計の開発 -デュアル光格子時計の実現に向けて-

    安田 正美、赤松 大輔、保坂 一元、稲場 肇、大久保 章、田邊 健彦、大苗 敦、洪 鋒雷

    当研究室では、秒の再定義を目指してYbおよびSr光格子時計の開発を行ってきた。特に、同一真空装置内で2種の光格子時計を実現するデュアル光格子時計を進めている。この新しいタイプの時計を用いれば、現在最大の不確かさ要因である黒体輻射由来の不確かさの抑制につながると期待される。また、可搬型光格子時計の開発によるジオイド面の精密測定と、地質分野との融合的テーマ推進についても検討する。

  • イッテルビウム原子の1S0-1P1遷移の絶対周波数測定

    田邊 健彦、赤松 大輔、安田 正美、小林 拓実、保坂 一元、稲場 肇、大久保 章、大苗 敦、洪 鋒雷

    イッテルビウム(Yb)原子の1S0-1P1遷移は、極低温Yb原子集団を生成するためのレーザー冷却用遷移として用いられる。この1S0-1P1遷移の遷移周波数の値は過去に2例報告されているが、2つの結果には大きな不一致があり、依然として議論の余地があると言える。そこで本研究では、光周波数を測定するための強力なツールである「光周波数コム」を用いてこの遷移の絶対周波数測定を行ったので、報告する。

  • 光周波数コムの開発と応用

    稲場 肇、大久保 章、保坂 一元、安田 正美、赤松 大輔、大苗 敦、洪 鋒雷

    波長標準研究室では、モード同期ファイバーレーザーを用いた光周波数コム「ファイバーコム」を開発し、jcss校正業務をはじめとする国家標準としての運用、光格子時計の時計遷移観察用レーザー、冷却用レーザーの安定化、そしてこれまでにない分解能・波長帯域・測定速度の分光を実現するデュアルコムの開発などを行っている。ここでは、それらの近況について報告する。

  • 光周波数コムを用いた次世代フーリエ変換分光計の開発

    大久保 章、岩國 加奈、稲場 肇、保坂 一元、大苗 敦、佐々田 博之(慶應義塾大学)、洪 鋒雷

    光周波数コム(光コム)はそれまで難しかった光の周波数計測を革命的に簡単にし、2009年からは我が国の長さの国家標準となっている。近年は、光コムを光源とした分光測定など周波数計測にとどまらない応用研究も盛んに行われている。その代表格が、2台の光コムを用いたフーリエ変換分光計「デュアルコム分光計」である。我々は、周波数を高速で制御できる光コムを用いてデュアルコム分光計を開発し、広帯域、高分解能、高速データ取得という特性を併せ持つ分光測定を行った。これは、従来のフーリエ変換分光計の性能を凌駕するものであり、呼気の分析、環境ガスの観測など、様々な実用的な応用が期待されている。本講演では、デュアルコム分光の原理と性能を、最新データを交えて紹介する。

  • 光格子時計のための狭線幅レーザーの開発と評価

    保坂 一元、稲場 肇、大久保 章、赤松 大輔、安田 正美、田邊 健彦、大苗 敦、洪 鋒雷

    波長標準研究室では、YbおよびSr光格子時計のために時計遷移励起用狭線幅レーザー光源を開発した。これらのレーザーを高速制御可能な光周波数コムを用いて相互に比較し、周波数安定度を評価した。その結果、狭線幅レーザー光源の短期における周波数安定度は、超高フィネス光共振器の熱雑音によって制限されていることが明らかになった。

  • 周波数標準の高精度比較・供給関連システムの開発

    鈴山 智也、和田 雅人、雨宮 正樹、奥田 敦子、渡部 謙一

    周波数システム研究室では、高信頼、高安定な時間周波数国家標準UTC(NMIJ)を連続的に発生させ、周波数の持込み及び遠隔校正を実施するとともに、原子時計間の比較装置、標準供給関連システムの高精度化に取り組んでいる。本発表では、(1)開発された周波数標準比較システムとその運用状況(2)衛星双方向比較技術等を用いた高精度比較・供給装置(3)光ファイバを用いた高精度比較システムの開発状況について報告する。

  • 光キャリア伝送における位相安定化システム

    和田 雅人、渡部 謙一、鈴山 智也、奥田 敦子、雨宮 正樹

    遠隔地にある光時計間の高精度な周波数比較の手段として、光ファイバを利用する方法がある。ファイバによる光キャリア信号伝送では、温度変動による伸縮及び屈折率の変化、音響及び機械的振動などの影響により、位相変動が生じる。本発表では位相変動を補償するための光キャリア伝送システムの開発状況について報告する。

  • 宇宙技術を利用した高精度時間周波数比較の研究開発

    渡部 謙一、鈴山 智也、雨宮 正樹

    周波数システム研究室では、宇宙技術を利用した高精度時間周波数比較プロジェクトに参画している。本発表では衛星搭載原子時計等を使った超高精度比較システムの特徴、基本構成並びに初期特性を報告する。これらの技術は大陸間離れた超高精度な光時計の比較に極めて有望である。

【長さ計測科】

  • リンギング不要なブロックゲージ干渉計の開発

    平井 亜紀子、尾藤 洋一

    ブロックゲージ寸法の経年変化評価や熱膨張係数の評価、また、二本のブロックゲージのわずかな寸法差測定など、ブロックゲージ寸法の相対測定に対する要望がある。絶対寸法測定の際に行う平面基板へのリンギング(密着)は、その不確かさの影響が大きいため、リンギング不要な測定法が望まれている。開発中のリンギング不要なブロックゲージ干渉計について報告する。

  • 球面度の校正について

    日比野 謙一

    開口数の高い球面形状は、紫外光リソグラフィの集束光学系や、非球面レンズ測定の参照面として需要が高まっている。波長150 nmのリソグラフィー光学系に必要な反射球面の精度は5 nmである。本研究室では、今年度より球面度の校正サービスを開始し、口径4インチ、NA=0.66の球面原器を用いた絶対球面測定、および比較測定を行うこととなったので、その概要を述べる。校正方法、不確かさと系統誤差要因について詳述する。

  • 局部傾斜角測定を利用した高分解能絶対形状測定装置の開発

    尾藤 洋一、近藤 余範

    高精度かつ大口径な平面度標準の実現に向けて、角度測定を用いた新たな形状測定装置の開発に取り組んでいる。本発表では、Null instrumentの導入による高分解能化(空間分解能)への取り組みについて報告する。

  • 表面形状測定に関する校正サービスの範囲拡大

    近藤 余範、尾藤 洋一

    フィゾー干渉計を用いた世界最高精度(φ300 mmの測定範囲に対して、10 nm(k = 2)の拡張不確かさ)で平面度の標準供給を実施している。一方、産業界からは、測定範囲の拡大に加えて、測定不確かさの低減が求められている。本発表では、さらなる高精度化を目指し、角度測定を利用した新たな方式による平面度測定技術に基づく、表面形状測定の校正サービス開始に向けた取り組みについて紹介する。

  • 次世代3次元内外計測の評価基盤技術開発

    阿部 誠、高辻 利之、藤本 弘之、佐藤 理、松崎 和也、佐藤 克利((株)日立製作所)

    産業製品の内部を非破壊で高精度に計測し、高エネルギーで計測精度の保証があるディメンジョナルX線CTを開発している。その性能や計測結果の信頼性について客観的な評価技術を開発するため、分解能に続いて幾何誤差の検討を行っている。これらの結果について報告する。

  • 非直交型非接触座標測定機の国際標準化

    阿部 誠、佐藤 理、鍜島 麻理子、松崎 和也

    2013年にISO国際標準化を達成した直交型非接触座標測定機に続いて、非直交型の非接触座標測定機の国際標準化に着手し、我が国がプロジェクトリーダを務めることとなった。今日段階での開発の動向と今後の方針・見込みについて報告する。

  • 物体内外部の寸法、形状を高精度で測定のできるX線CT装置の開発

    藤本 弘之、松崎 和也、佐藤 理、阿部 誠、高辻 利之

    本研究では物の内外部の構造の寸法、形状を非破壊で長さの国家標準にトレーサブルに計測することのできるX線CT装置の開発を行っている。100 mm×100 mm×100 mm程度の対象をマイクロメートルの精度で測定することを目指している。

  • 画像測定機による二次元グリッド校正

    鍜島 麻理子、渡部 司、阿部 誠

    画像測定機は、光学顕微鏡により構造物の二次元形状測定を行う装置で、部品製造などの分野から半導体マスク製造等に至るまで、多様な分野で利用されている。この画像測定機を簡便に検査、校正する手段として、二次元グリッドマスクの校正技術を開発しているので、これを紹介する。

  • Dimensional X線CT装置の簡易検査

    佐藤 理、松崎 和也、大澤 尊光、藤本 弘之、阿部 誠、高辻 利之

    一般にX線CTを含む座標測定システムの測定空間は測定機の幾何誤差などの影響により歪んでいる。精密な三次元計測を行うためにはこの歪みを補正する必要がある。広く使われている座標測定機 CMM では補正方法が成熟しているのに対して、X線CTの場合は補正技術が未成熟であり、使用時における座標空間歪みを補足する方法も発展途上である。本研究では簡易にX線CTの座標空間歪みを検出する方法について報告する。

  • 計測用X線CTの高精度化に関する調査研究

    松崎 和也

    X線CT計測における幾何誤差に対する統一的なモデルの構築と補正方法の確立、および測定結果に対する客観的な精度評価技術の開発に向け、国内外の現状を調査した結果について報告する。また、調査結果を受けての今後の研究方針についても報告する。

  • リアルタイム自己校正ロータリーエンコーダ SelfART

    渡部 司、堀口 美央、藤本 弘之

    自己校正機能付きロータリエンコーダSelfAは、ロータリエンコーダ自体の角度誤差を検出する機能を有する。しかし、角度誤差解析にはコンピュータを必要としていた。この度、SelfA単体で角度誤差解析を実現し、角度誤差を補正済みの角度信号をリアルタイムに出力できる SelfARTエンコーダを開発した。

  • 高精度変位計の内挿誤差評価装置の開発

    堀 泰明、権太 聡、尾藤 洋一

    高精度化が年々進んでいるリニアエンコーダ等の変位計は、その内挿誤差がナノメートルオーダまで低減されてきており、正確な内挿誤差の評価が課題となってきた。そこで、産総研で開発した超高分解能レーザ干渉測長モジュールとピエゾステージを用いたリニアエンコーダ評価装置を構築した。デモンストレーションとして、1 nm以下の内挿誤差をノイズレベル0.1 nm以下で評価することに成功したので報告する。

  • 深さ用標準片(Type A2)の評価方法の検討

    直井 一也、権太 聡

    ISO5436(JIS B 0659-1)において、触針式表面粗さ測定機の縦方向成分の校正に用いる標準片として、深さ用標準片がある。深さ用標準片には、Type A1(平底の広幅溝)とType A2(丸底の広幅溝)がある。本研究では、Type A2の谷底の円弧の当てはめに関して、最小二乗円を当てはめる手法と最適化手法を用いる評価方法の比較を行う。

  • レーザ干渉計搭載型の走査電子顕微鏡によるフォトマスク線幅校正

    菅原 健太郎、土井 琢磨、三隅 伊知子、権太 聡

    フォトマスク線幅の校正範囲の上限を拡大するため、レーザ干渉計搭載型の走査電子顕微鏡を用いたミリメートルサイズの線幅校正技術の開発を進めている。また、同様にレーザ干渉計を搭載した光学顕微鏡による測長システムの開発が進められている。両手法による線幅校正値の差異について評価をすることが精度向上に寄与すると期待され、校正技術開発の現状について報告する。

  • AFM式表面粗さの校正サービスの開始

    三隅 伊知子、直井 一也、菅原 健太郎、権太 聡

    薄膜表面や加工表面の品質管理に、原子間力顕微鏡(AFM)を用いた表面粗さ測定が行われるようになってきた。AFM表面粗さ測定の信頼性評価のため、我々はJIS R 1683:2007「原子間力顕微鏡によるファインセラミックス薄膜の表面粗さ測定方法」に整合した手順で、測長原子間力顕微鏡を用いた表面粗さ校正技術を開発した。2014年度より校正サービスを開始した。

  • 傾斜探針を備えた測長AFMによる絶対線幅校正技術の開発

    木下 和人、権太 聡

    次世代の10 nm級ナノデバイスの線幅標準として、探針傾斜機構を備えたAFM(原子間力顕微鏡)を用い、絶対線幅校正技術の開発を進めている。これまでに垂直側壁を有する、数10〜数100 nm級の孤立ラインの側壁のイメージを含む低ノイズの三次元AFM像の取得に成功した。今回は、探針先端形状の影響を補正する手順を開発したほか、不確かさの見積を行ったので報告する。

  • 絶対スケール付顕微干渉計による段差校正の不確かさとその評価

    土井 琢磨

    顕微干渉計を用いて、光学式段差の校正を行っている。顕微鏡下の干渉においては、照明光の開口問題は無視できない。そこで、レーザ干渉計を使って直接干渉縞間隔を求める絶対スケール付顕微干渉計を開発し、開口補正係数を求めた。本装置による段差校正の不確かさについて述べる。さらに校正ごとに求めた開口補正係数、および管理用標準段差標準片の校正の長期安定性を基にその性能を評価する。

【力学計測科】

  • X線結晶密度法による質量単位キログラムの実現

    水島 茂喜、張麓 ルウ(ナノ材料計測科)、倉本 直樹(材料物性科)、上田 和永、藤井 賢一

    2018年に質量単位キログラムの再定義が予定されている。再定義後のX線結晶密度法によるキログラムの実現方法について報告する。また、1 kg単結晶シリコン球体の表面層の質量測定法、表面に物理吸着した水蒸気の質量測定結果、国際度量衡局との1 kg質量測定結果の比較、1 kg単結晶シリコン球体の質量測定の不確かさ評価についても紹介する。

  • 10 kg質量比較器の室温変動の影響の低減

    植木 正明、孫 建新、上田 和永

    測定環境劣化の影響が大きい高感度10 kg質量比較器を対象に、比較器本体と周辺の温度を詳細に測定し、独自の設計の風防で本体を囲うこととした。本報では、室温変動の影響の低減のための措置の概要と現状の測定環境で10-9オーダの標準偏差の質量比較を確認した結果について報告する。

  • NMIJにおける500 kg高精度質量比較器の開発(第一報:試作機での性能評価)

    孫 建新、植木 正明、上田 和永

    当所では、最近の質量計測および質量関連量の計測の進歩に対応するため、50 kgから5000 kgまでの大質量の領域における質量の国家計量標準の高度化を進めていて、その一環としてひょう量500 kg、分解能0.01 gの高精度な質量比較器の開発を試みている。今回、新設計の質量比較器を試作しその性能を評価したところ、当所の使用している既存品より、分解能は1/10に、繰り返し性は40 %に低減した。ここでは、新しい質量比較器の概要と評価結果について報告する。

  • 傾斜法による分力計評価装置の力分解能向上

    林 敏行、前島 弘、上田 和永

    分力計に鉛直軸力以外の力を加えて評価を行う方法の一つとして、傾斜板を用いる傾斜法が挙げられる。一軸の材料試験機を用いて簡便に負荷する装置を開発したが、試験機内蔵の力計を参照する構成では、力分解能不足のため繰り返し性と線形性が不十分であった。高精度参照用力計によるビルドアップ式の構成を採用することで、繰り返し性と線形性が向上したので報告する。

  • トルク試験装置の動特性評価法に関する提案

    大串 浩司、上田 和永

    各種モータ試験機、エンジン試験機、材料のねじり疲労試験機などのトルク試験装置においては、試験対象の安全性、信頼性、性能向上のために、発生するトルクの動的挙動の計測が必須である。動特性の計測にはインラインで組み込まれるトルクメータが使用されることが多いが、トルクメータ自体の動的特性を評価するための指針はない。本研究ではトルク試験装置のメーカ、ユーザ等に対して動トルク計測の調査を行い、またトルク試験装置の動特性評価法について考察したので報告する。

  • 小容量参照用トルクレンチの校正方法に関する研究

    西野 敦洋、大串 浩司、上田 和永

    本研究では、10 N・m実荷重式トルク標準機と、新たに開発した定格容量1 N・m及び5 N・mの小容量参照用トルクレンチを用いて、日本計量機器工業連合会規格JMIF-016(TTSG-W102)の校正方法について検討した。実験の結果、小容量参照用トルクレンチの校正では、レバー長さを変えた場合の再現性が、最も支配的な不確かさ要因であることなどが明らかとなった。

  • 標準コンダクタンスエレメントの高度化と信頼性評価

    吉田 肇、新井 健太、藤井 賢一

    ステンレス製多孔質焼結体を用いたガス導入素子「標準コンダクタンスエレメント(SCE)」について、従来より5桁広い、10-13 m3/sから10-7 m3/sのコンダクタンスを持つ多孔質体の開発に成功した。また、産総研と�螢▲襯丱奪�で、SCEの評価し、結果を比較した。

  • 標準リークの発生するリーク量の真空中、及び大気圧中への変化

    新井 健太、吉田 肇、藤井 賢一

    リーク検査におけるリークの大きさは、既知の流量を発生させる標準リークを基準にして定量化される。標準リークは真空へのリーク量として校正されることが多いため、大気圧下のリーク検査(例えば、スニッファー法)においてどのように変化するか情報が少なかった。我々は、真空・大気圧下双方へのリーク量が正確に測定できる流量計を用いて、真空・大気圧下双方への標準リークの発生リーク量を調べた。

  • 隙間制御型圧力天びん及び高精度増圧器による1 GPaまでの発生圧力評価と整合性確認

    梶川 宏明、小畠 時彦、藤井 賢一

    1 GPaまでの液体圧力標準の開発のために用いた2種類の装置・方法について報告する。隙間制御型圧力天びんを用いる方法では、Heydemann-Welchモデルを利用し、特性パラメータを実験的に評価した。高精度増圧器を用いる方法では、詳細に求めた増圧比の圧力依存性を高圧側に外挿し、1 GPaまでの増圧比を評価した。2種類の装置による発生圧力の直接比較を行い、両方法での評価結果の整合性を確認した。

  • 大気圧計の長期安定性とゼロ点ドリフト

    小島 桃子

    圧力真空標準研究室では、長期に亘って圧力計の校正を行っており、特に大気圧計については、10年以上継続的に校正を行っているものもある。今回は、これらの校正データから、複数台の大気圧計についてゼロ点とスパン出力の長期安定性をまとめた結果を紹介する。また、研究室所有の2台の大気圧計について、全圧力範囲における詳細な校正曲線と長期安定性を示す。

  • 電離断面積由来の電離真空計の指示値の差

    杉沼 茂実

    電離断面積は電極電圧の組み合わせに対してガス種ごとに異なる関数を持っている。このことから、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの導入ガス種の違いにより電離真空計の指示値が異なる。この現象を説明するガス種ごとの現実に近い高度化された数値計算を試みた。この数値計算の詳細を報告する。

  • 気体高圧力標準(〜100 MPa)の国際比較に用いる高精度圧力計の特性評価

    飯泉 英昭、梶川 宏明、小島 桃子、藤井 賢一

    今年度新たに開発した気体高圧力標準について、その国際同等性を確認するために米国との国際比較(APMP.M.P‐S6)を幹事機関として実施している。国際比較の実施には、仲介器として高精度圧力計を用いるが、正確な比較を行うためには、その特性評価が必要である。高精度圧力計の安定性や周囲温度の影響など、特性評価の結果について報告する。

  • 質量計に係るJIS・OIMLの活動状況

    福田 健一、浜川 剛、大谷 怜志、薊 裕彦、高橋 豊

    当室は質量計(主に非自動はかりの型式承認)に関する試験検査等の仕事を主としているが、近年、質量計に係るJISおよび国際的な計量器の技術基準(OIML)の改正等に関わる機会が多くある。その活動の概要を紹介し、また、活動の際に感じた事柄等について報告を行う。

【音響振動科】

  • 基準音源の音響パワーレベル校正の不確かさ

    山田 桂輔、高橋 弘宜、堀内 竜三

    我々は現在、基準音源の音響パワーレベル校正に関する研究を行っている。本稿では、無響室内での半自由音場法による絶対校正の不確かさと、残響室内での拡散音場法による比較校正の不確かさについて報告する。床面での音の吸収や理想的な音場からのずれなど、校正に影響を与える要因について精査を行った。

  • 可聴域におけるWS3マイクロホンの自由音場比較校正

    高橋 弘宜、米嶌 和香子、堀内 竜三

    音響計測において、WS3マイクロホンと呼ばれる直径が約7 mmのマイクロホンが使用されるようになってきた。従来から使用されているWS1またはWS2マイクロホンと比較して形状が一回り小さいため、測定する音場を乱しにくいことが利用の拡大する理由の1つである。WS3マイクロホンの自由音場感度校正は20 kHzから100 kHzまでの周波数域に限定していたが、以上のような背景を鑑み校正周波数域を拡大する。本報告ではその校正内容を紹介する。

  • 水を発熱体とするカロリメトリ法による超音波パワー計測 −測定の不確かさ評価−

    内田 武吉、吉岡 正裕、松田 洋一、堀内 竜三

    100 Wまでの超音波パワー供給範囲拡張のために、カロリメトリ法による超音波パワー校正装置を完成させた。また、測定の不確かさ評価を行い、標準供給を開始した。今回は、カロリメトリ法による超音波パワー計測の不確かさ評価を中心に報告する。

  • 相互校正法を用いた100 kHz - 1 MHz帯域用超音波音圧標準の構築 −伝達インピーダンスによる比較校正法の検討−

    吉岡 正裕

    NMIJでは、相反定理を用いて絶対校正された基準ハイドロホンとの比較校正により、ユーザに100 kHz〜1 MHzの超音波音圧標準を供給する予定である。しかし一般的なハイドロホンの感度は、我々が用いる基準ハイドロホン感度に比べ二桁程低く、S/Nや電気計測系のダイナミックレンジの影響が問題となる。そこで、それぞれの感度に応じ異なる音圧を利用できる、伝達インピーダンスによる比較校正法について検討した。

  • 40 MHzにおける超音波音圧標準(ハイドロホン感度校正)の供給開始と60 MHzへの拡張

    松田 洋一

    当研究室では、高周波での超音波音圧標準の開発を行っている。今回、周波数上限を40 MHzに拡張し供給を開始した超音波音圧標準について報告する。供給する標準の相対拡張不確かさは、30 MHzでは13 %であり、40 MHzでは17 %である。また、40 MHzを超える周波数の超音波を光干渉計やハイドロホンを用いて検出した結果や周波数上限を60 MHzに拡張するための課題を報告する。

  • ビッカースくぼみのレーザ干渉計による測定

    清野 豊

    ビッカース硬さでは、くぼみの対角線長さの測定が最も大きな不確かさ要因である。対物ミクロメータを参照標準としたくぼみ計測装置の校正の不確かさも個人誤差と同等の寄与を持つため、この過程を直接レーザ波長と結び付けられれば不確かさを小さくすることができる。そこで、DSP-Heydemann補正機能を持つレーザ干渉計が設置された並進ステージを測定顕微鏡に取り付けたビッカースくぼみ測定システムの試作を行っている。

  • ホモダイン式レーザ干渉計とレーザドップラ振動計を用いた衝撃計測の比較結果について

    野里 英明

    これまで衝撃校正装置のレーザ干渉計はホモダイン式であったため、反射ミラーが校正対象物である加速度センサに取り付けられていた。しかし、ヘテロダイン式であるレーザドップラ振動計(LDV)は反射ミラーを必要とせずに計測可能なことから、様々な校正ニーズに対応できるだけでなく反射ミラーの質量に依存することなく加速度センサの校正も可能である。本発表では、衝撃計測に対するホモダイン式とLDVとの比較を行ったので、その結果について報告する。

  • 角振動標準の開発

    穀山 渉、渡部 司(長さ計測科)、野里 英明、大田 明博

    自動車やロボットの安全性評価における標準ニーズに対応するため、当研究室では幾何標準研究室とともに、自己校正型ロータリーエンコーダ(SelfA)を角度基準として内蔵した角振動標準を開発した。本発表では、装置の特徴、性能、不確かさ評価やトレーサビリティ、今後の標準供給について報告する。また、検討中のラウンドロビン試験についても述べる。

  • ヘテロダインレーザ干渉計用新方式デジタル復調アルゴリズムの開発

    穀山 渉

    ヘテロダインレーザ干渉計は、測長計やレーザドップラ振動計として適用されている計測装置であるが、信号復調器がその計測性能に大きく寄与することがわかっている。今回、計測分解能・高速応答性・ダイナミックレンジを両立する新方式のデジタル復調アルゴリズムを開発した。また実際の干渉計信号に適用し、その有効性を確認した。本発表では、詳細および今後の計画について報告する。

  • 超低周波振動加速度標準の不確かさ低減に向けた取り組み

    穀山 渉、石神 民雄、野里 英明、大田 明博

    超低周波振動加速度標準(周波数範囲:0.1 Hz 〜 2 Hz)は、地震計測やインフラ計測のための計量標準であるが、不確かさが最大6 %と大きかった。現在、我々は信号処理系などの装置の改良を行っており、不確かさ低減、位相校正への対応、周波数領域の拡張が可能である目処を得ている。本発表では、装置の現状および今後の計画について述べる。

【温度湿度科】

  • 熱力学温度測定に向けたAGTの開発(音速の測定)

    三澤 哲郎、ジャヌアリウス・ウィディアトモ、狩野 祐也(材料物性科)、山澤 一彰

    熱力学温度の測定を行うため、擬球形の無酸素銅製共鳴器を用いた音響気体温度計(AGT)の開発を進めている。予備的に行った、水の三重点温度における音速測定の結果を報告する。また将来的に、ボルツマン定数および熱力学温度の測定を行うために必要となる装置および解析手法について検討する。

  • 抵抗温度計により銀点セルを比較する際の抵抗測定について

    ジャヌアリウス・ウィディアトモ、原田 克彦、山澤 一彰

    1990年国際温度目盛(ITS-90)の定義定点の1つである銀凝固点において、白金抵抗温度計を校正する際の不確かさを低減させるため、新規の銀点セルの製作や測定技術の開発を行っている。本報告では、白金抵抗温度計を用いて銀点セル同士を比較する際に見られた、直流測定あるいは交流測定という抵抗測定方式の違いにより生じる差異の概要を示す。

  • 精密海洋温度センサの校正の不確かさ評価

    斉藤 郁彦、山澤 一彰、ジャヌアリウス・ウィディアトモ 、丹波 純、内田 裕((独)海洋研究開発機構)、河野 健((独)海洋研究開発機構)

    深海の温度の変動は地球の気候変動に密接に関連すると考えられている。精密海洋温度センサを1 mK以下の不確かさで校正するため、用いる比較水槽の改良と評価を行った。また、定点校正および比較校正を行う際の不確かさを評価した。さらに、実際に試験的に行った校正結果を報告する。

  • 1950 ℃付近におけるイリジウム−ロジウム熱電対の評価

    小倉 秀樹、井土 正也、山澤 一彰

    酸化雰囲気中においても使用可能な高温用熱電対であるイリジウム−ロジウム熱電対の高精度化のためには、高温域における絶縁管や保護管の材料の選定に加え、熱起電力の正確な測定が必要となる。そこで、まず、試作したイリジウム−ロジウム熱電対を炭素雰囲気中において1950 ℃付近まで昇温する暴露試験を行った。さらに、ルテニウム−炭素(Ru-C)共晶点(1953 ℃)における熱起電力を測定した。

  • ネオン単一同位体20Ne, 22Neの三重点実現とその温度差の評価

    中野 享

    ネオンの三重点は現在の温度標準である1990年国際温度目盛(ITS-90)の定義定点の一つであるが、近年、市販のネオン試料の同位体組成の違いにより三重点の実現温度に差が生じることが明らかになってきた。このため、本研究では同位体組成差による問題が生じないネオンの単一同位体20Ne, および、22Neの三重点を実現し、それらの三重点の実現温度の差を評価したので、その結果を報告する。

  • 極低温域で用いられるカプセル型抵抗温度計向け校正サービスの概要

    島崎 毅

    NMIJにおける極低温域用(温度範囲:0.65 Kから25 K)の抵抗温度計への校正サービスでは、これまで校正器物を標準用のカプセル型ロジウム鉄抵抗温度計としていたが、本年度より標準用のカプセル型白金コバルト抵抗温度計を追加し、校正対象を拡張した。極低温域用抵抗温度計向け校正サービスの概要を紹介する。

  • PLTS-2000実現に向けた核断熱消磁冷凍機の開発 2

    中川 久司

    国際低温度目盛PLTS-2000に基づき、650 mKから50 mKまでの極低温抵抗温度計を対象とした標準供給および低温度計測の研究を行うための装置開発を行っている。PLTS-2000の下限温度0.9 mK以下までの低温度を生成可能な核断熱消磁冷凍機の開発を進め、現在その冷却試験を行っている。開発した核断熱消磁冷凍機は、自作した到達温度4 mKの希釈冷凍機と9 Tの超伝導磁石がベースとなっており、その概要を報告する。

  • 2波長反射率比測定による放射率補正温度計測

    山田 善郎、石井 順太郎

    これまでに開発してきた反射率比による放射率補正技術を、今回新たに2波長測定に適用した。従来は、2偏光測定による反射率比放射温度計測によりシリコンウェハの表面温度を測定していたが、これに比べ、より表面粗さの影響を受けにくいため、様々な対象物の表面温度測定に適用できることが期待される。測定原理を紹介し、基礎的な試験結果を報告する。

  • VNIIOFI、NIM、NMIJによるWC-C包晶点の国際比較

    笹嶋 尚彦、B. Khlevnoy(VNIIOFI)、I. Grigoryeva(VNIIOFI)、W. Dong(NIM)、T. Wang(NIM)、山田 善郎

    APMP TC Initiative projectの一環として、VNIIOFI(ロシア)、NIM(中国)、NMIJ間でWC-C包晶点セル(2748 ℃)の国際比較を世界で初めて行った。WC-C包晶点セルは各研究所でそれぞれ異なる供給元の金属を用いて作製し、それをNMIJに運んで比較を行った。この結果、質の高いWC-C包晶点セルは0.05 Kで一致し、温度定点として高い信頼性を持つことを実証した。

  • カーボンナノチューブ黒体による赤外放射温度計の校正技術

    清水 祐公子、山田 善郎

    産総研で開発した空気循環式の温度可変黒体炉に、カーボンナノチューブを応用することで、黒体炉の実効放射率を著しく向上させ、波長依存性を大幅に低減させた。産業界では、500 ℃までの温度域は8 μm〜14 μm帯の熱赤外波長域の温度計が広く普及している一方で、国家標準は1.6 μm帯の近赤外放射温度計である。このカーボンナノチューブ黒体技術により、波長の異なる放射温度計の比較校正技術を確立し、熱赤外放射温度計の校正を可能とした。

  • 黒体放射に基づく熱力学温度測定技術の開発

    山口 祐、山田 善郎

    黒体放射による熱力学温度測定技術の開発状況について発表する。高輝度かつ広帯域の連続光が得られるスーパーコンティニュアム光源を用いる比較校正システムに関して、安定性、波長、輝度/角度均一性、距離など放射温度計の絶対校正技術の評価を行った。これらの結果を踏まえ、高温定点の熱力学温度値決定に向けた測定の結果およびその不確かさについて報告する。

  • アルゴン中微量水分標準の開発

    天野 みなみ

    半導体デバイス製造で用いられる様々なガス(窒素・アルゴン・ヘリウム・酸素など)について微量水分標準を確立することを目指し、多種ガス用微量水分発生装置の開発を行っている。まずはアルゴンを対象とし、2014年度内の標準供給の開始を予定している(濃度領域: 10 nmol/mol〜1 μmol/mol)。本発表では、拡散管法に二段階希釈を組み合わせた標準ガス発生方法について説明するとともに、不確かさ評価の結果についても報告する。

  • 微量水分計測用CRDSの開発

    橋口 幸治

    近年需要が高まっているガス中微量水分を測定する方法として、キャビティリングダウン分光法(CRDS)が注目されている。CRDSの測定感度を上げるためにはミラーの反射率を上げることが必須だが、それに伴い、レーザーを共振器に入射させるのが困難になる問題がでてきた。そこで、共振器長をHeNeレーザーで安定化し、さらにレーザーの周波数を波長計で制御するという比較的容易な方法でこれを解決した。その結果、1秒当り200回以上の測定に成功、測定感度も約50 pptを実現できた。

  • キャビティリングダウン分光システムの高感度化

    阿部 恒、D. Lisak (NCU)、A. Cygan (NCU)、R. Ciurylo(NCU)

    市販のCRDS微量水分計(ノイズの標準偏差約300 ppt)より高感度となる、CRDS分光システムを開発している。今回、シングルモードCRDSと呼ばれる方法を採用し、光学系の調整を行うことで感度向上を図った。また、レーザー光とキャビティのカップリングはレーザー周波数を変調することで行い、これにより長期間の連続測定が可能となった。乾燥窒素を使った測定では、数日間の積算を行うことで、ノイズの標準偏差を5 ppt程度まで低減させることに成功した。

【流量計測科】

  • 金属細線充填型圧力容器による通風空気の温度調整に関する考察

    舩木 達也

    呼気計測のような空気脈動を取り扱う計測機器の特性評価では、流量変動と同時に、温度や湿度の影響を見積もることができる計測システムの構築に期待が寄せられている。本研究では、金属細線を充填した圧力容器へ空気を通風することにより、空気の温度制御性や安定性について実験的に確認をし、それらの成果を報告する。

  • 体積流量を基準とした気体大流速標準の設定における不確かさ評価

    岩井 彩、石橋 雅裕

    台風や竜巻など風に起因する自然現象の理解や飛行機など高速移動体の空力特性評価のために大流速域の標準ニーズが高まっており、来年度から流速40 m/s 〜 90 m/sを扱う気体大流速標準の供給を開始する予定である。本発表では、気体流量計校正設備を一部改造した高速風洞システム及び大流速風洞を用いて流速値を測定した際の、不確かさ要因とその評価について報告する。

  • 水素ガス流量標準の開発

    森岡 敏博、櫻井 真佐江

    2015年の燃料電池自動車の販売開始が迫り、水素ステーション等のインフラにおいて燃料となる水素ガスの取引計量も開始されることになる。本報告では、特定標準器である気体流量校正設備を用いて開発した水素ガス流量標準について紹介する。

  • 基幹比較CCM-FF.K3への参加報告

    栗原 昇

    現在PTB(ドイツ)とCETIAT(フランス)が幹事国となって進められている気体流速に関する基幹比較CCM-FF.K3に参加し、二種類のトランスファ標準器(超音波流速計およびレーザ流速計)について当方の標準と比較したので報告する。今回のトランスファ標準器はそれぞれ挿入式と光学式であり流れへの影響は著しく異なるが、閉塞率の補正により両者の結果に良好な一致がみられた。

  • スパイラル型容積流量計の内部流動特性の調査

    嶋田 隆司

    容積流量計の流量特性を決定づける流体の漏れ(リーク)は、回転子先端部と流量計本体とのトップクリアランス、回転子端面と本体とのサイドクリアランス、及び回転子のかみ合わせ部等で発生すると考えられる。そこで、スパイラル型の回転子を持つ容積流量計を用いて、クリアランスの幅を変化させた流量計の校正を行い、流量計の特性に及ぼすクリアランスの影響を調査した。

  • ピストン駆動式定流量発生装置による微小流量校正装置の開発

    土井原 良次

    燃費計測用流量計や半導体製造装置、医療、分析分野では、液体の微小流量計測が行われているが、現場で使用されるような実液、特に揮発性の強い液体に対しては高精度の校正方法は確立されているとは言えない。そこで、小型のピストン式定流量発生装置により密閉系で校正装置を構築する方法について検討したので概要を報告する。

  • 石油小流量標準設備の最終目標とする下限流量(0.05 L/h)達成に向けて

    CHEONG Kar-Hooi

    今まで、石油小流量標準設備では、流量範囲拡大と液種拡大を段階的に行ってきた。今年度中に、最終目標とする0.05 L/hへの範囲拡大を達成する。ここで、最終目標達成のための標準開発について報告する。

  • 超音波ドップラー式流量計の曲り管下流における不確かさ評価

    和田 守弘

    従来の流量計測手法では計測が難しい曲り管下流において、液体流れの流速分布を直接計測することで流量を計測可能な超音波ドップラー式流量計を適用することを試みている。本報告では、曲り管下流を模擬した流れ場において基礎実験を行い、その不確かさについて報告する。

【材料物性科】

  • 熱拡散率標準の供給と開発-依頼試験範囲拡大及び新規熱拡散率CRMの開発-

    阿子島 めぐみ

    固体材料の熱拡散率の標準として、依頼試験(温度範囲:297 K -1500 K)と認証標準物質(等方性黒鉛)を供給している。昨年度までに依頼試験の対象を従来の等方性黒鉛のみから黒色試験片に拡大した。また、今年度末までに新規認証標準物質(Al2O3-TiC系セラミックス)の開発を予定している。これらの詳細と開発の進捗を報告する。

  • Mo薄膜による薄膜熱拡散率標準物質の開発

    八木 貴志

    薄膜用の熱物性評価装置の普及が進む中、計測機器の性能を担保するための標準物質が求められている。産総研では、2008年度にTiN薄膜(680 nm)の標準物質を配布開始したが、さらに時間精度の高い機器に対応すべくMo薄膜(400 nm)の標準物質の開発を進めている。ここではMo薄膜標準物質の開発に関する詳細を報告する。

  • 比熱容量標準の高温への範囲拡張

    阿部 陽香

    比熱容量は、50 K〜350 Kでは断熱法、300 K〜900 Kでは示差走査熱量測定法による標準供給を行っているが、昨年度から示差走査熱量測定法による1600 Kまでの供給を開始した。これまでの比熱容量標準・標準物質開発について紹介するとともに、新規に拡張した温度域での不確かさ評価について報告する。

  • 分散型熱物性データベースの開発

    山下 雄一郎

    分散型熱物性データベースを開発している。収録データは約3,600種類の物質・材料に対して約11,200件の熱物性データ(1件はグラフプロット1つに対応)となっている。本報では、新規追加データの紹介、熱物性データの信頼性レーティング機能開発、産総研物質・材料データバンクポータルとの連携機能について報告する。

  • 今後の熱膨張率標準の整備・供給に関する調査研究

    鈴木 智世、山田 修史

    省エネルギー技術・材料開発などにともない、デバイスや構造部材に対する熱物性の信頼性ある評価が求められている。固体材料の熱膨張率標準の整備・供給には標準物質の開発・維持・供給と依頼試験の実施がある。本発表では、これらに関する現状と産業界のニーズについての調査と、その結果に基づいた今後の標準整備の方向性について報告する。

  • 熱膨張率標準の供給と開発

    山田 修史

    固体熱膨張率に関して現在、依頼試験2項目および標準物質4品目の供給を行っている。依頼試験ではレーザ干渉式熱膨張計によりゲージブロックや熱膨張率標準試験片の熱膨張率校正を実施している。標準供給項目の整備状況を紹介すると共に、室温における依頼試験の供給温度範囲拡張に関する開発状況について報告する。

  • 粘度標準の維持・開発・供給状況について

    藤田 佳孝、山本 泰之、倉本 直樹

    粘度の標準供給は、常温域はJCSS及び高温低温域はNMIJ依頼試験を通じて、細管式標準粘度計群により校正された標準液の供給により実施されている。この標準の国際同等性評価のためにNMIJが幹事機関として参加したCIPM基幹比較(CCM.V-K3、粘度 5 mm2/s〜160000 mm2/s)の実施状況について報告するとともに、併せて、一次標準のための絶対測定の開発状況について報告する。

  • 自己参照型X線格子比較器を用いた単結晶シリコンの結晶評価

    早稲 田篤、藤本 弘之(長さ計測科)、倉本 直樹、張 小威(高エネルギー加速器研究機構)

    シリコン28同位体濃縮結晶を用いたアボガドロ定数決定のための国際研究協力の一部として、KEK放射光を利用した格子定数分布測定によるシリコン単結晶の結晶評価を行っている。現在、装置の分解能向上を目指し、装置の改良を行っている。28Si結晶の測定と併せて現在の状況を報告する。

  • シリコン28同位体濃縮結晶によるアボガドロ定数の測定−キログラム再定義のための国際研究協力−

    藤井 賢一(力学計測科)、上田 和永(力学計測科)、水島 茂喜(力学計測科)、早稲 田篤、倉本 直樹、黒河 明(ナノ材料計測科)、東 康史(ナノ材料計測科)、張 ルウルウ(ナノ材料計測科)、藤本 弘之(長さ計測科)、日置 昭治(無機分析科)、成川 知弘(無機分析科)

    質量の単位であるキログラムを普遍的な基礎物理定数により再定義するための研究が世界各国の計量標準研究機関で進んでいる。再定義に直結する基礎物理定数はアボガドロ定数とプランク定数である。NMIJは、シリコン28同位体濃縮結晶を用いたアボガドロ定数精密決定のための国際研究協力「新アボガドロ国際プロジェクト」に参加し、キログラム再定義のための研究において主導的な役割を果たしている。また、プランク定数とアボガドロ定数の両方を高精度に決定し、それらの整合性を検討する国際共同研究にも参加している。二つの国際研究協力の概要およびNMIJでの研究内容を紹介する。

  • 基礎物理定数による質量標準実現のためのシリコン単結晶球体体積測定

    倉本 直樹、藤田 佳孝、東 康史(ナノ材料計測科)、稲場 肇(時間周波数科)、洪 鋒雷(時間周波数科)、藤井 賢一(力学計測科)

    質量の単位であるキログラムを普遍的な基礎物理定数により再定義するための研究が世界各国の計量標準研究機関で進んでいる。アボガドロ定数はキログラム再定義に直結する基礎物理定数であり、シリコン単結晶の密度、モル質量、格子定数の絶対測定により決定される。現時点でのアボガドロ定数決定の主要な不確かさ要因は、密度測定に必要なシリコン単結晶球体の体積測定および表面分析である。アボガドロ定数高精度化のために実施中の体積測定用レーザー干渉計および球体表面分析用分光エリプソメーターの高精度化について紹介する。

  • アルコール表の再計算について

    竹中 正美、藤井 賢一(力学計測科)

    現行アルコール表の基になったデータを検討し、その不確かさの要因の評価を行い、誤差行列(分散共分散行列)を構成する。各種の測定法の誤差要因について当時の技術の評価に基づいて推定し、対角項を評価しさらに非対角項を評価する。この行列を用いて最小二乗法による再計算を行い、誤差伝播則から推定値の不確かさの評価、温度目盛改訂の影響の評価等を行った結果について報告する。

  • 高温ヒートポンプ・ORC用作動流体評価のための高温高圧用PVT性質標準の開発

    粥川 洋平

    産業用ボイラを高温ヒートポンプに置き換えることによる総合エネルギー効率の向上や、未利用廃熱・中低温の地熱を利用した発電に用いるORCに必要な高沸点作動流体の熱物性の評価が求められている。これを受けて、高温高圧まで測定可能な新たなPVT性質の標準の開発について報告する。

  • 非ニュートン性液体の粘度標準とMEMS粘性センサの開発状況

    山本 泰之

    液体の粘度は、医薬品や食品などの性能評価に用いられており、近年では、バイオフューエルなどの粘度測定も注目されている。これまで高精度なニュートン性液体の標準液を供給してきたが、非ニュートン性の標準も供給すべく、並進円筒法という独自に開発した測定装置を用いた依頼試験を開設した。また、非ニュートン粘度標準液の開発も進めている。さらに、産業界での実情を考慮して、MEMS技術を用いた粘度センサの研究も行っており、開発状況について報告する。

【光放射計測科】

  • 1 kWレーザパワー精密評価技術の開発 〜所内連携による標準開発の取り組み〜

    沼田 孝之、瀬渡 直樹(先進製造プロセス研究部門)、福田 大治、雨宮 邦招、田辺 稔

    1 kWレーザパワー標準および校正技術の確立を目指し、先進製造プロセス研究部門の協力の下、東事業所に設置の高出力YAGレーザ光源を用いた開発を進めている。これまでに、レーザ光源の出力ファイバに適用する水冷式ビームコリメータを開発し、校正測定に用いるφ20 mmの並行ビームを得ると共に、kWレベルの照射下で減衰量の精度を確保する高レーザ耐力基準光減衰器を開発した。これをもとに水冷型実用標準器の非直線性を評価することで、既存のパワー標準にトレーサブルなkWレベルのレーザパワー測定を実現する。

  • イオントラックマイクロキャビティを用いた極低反射光吸収体の開発

    雨宮 邦招、越川 博(日本原子力研究開発機構)、前川 康成(日本原子力研究開発機構)、沼田 孝之、木下 健一、蔀 洋司、田辺 稔、福田 大治

    極低反射率な黒色素材は、熱型光検出器用の低反射ロス光吸収部をはじめ幅広い用途がある。可視‐近赤外域で光熱変換能の高い平板型極低反射材であるニッケル‐リン(Ni-P)ブラック表面のマイクロキャビティ構造に倣い、新規極低反射光吸収体を開発している。特に長波長域でも極低反射となるキャビティサイズ、及び表面光吸収層厚等を設計した。構造形成にイオンビーム照射によるトラックエッチング法を応用し、DLC黒化層をコーティングしたマイクロキャビティ構造を試作した。

  • シリコンフォトダイオードの応答非直線性の波長依存性II

    田辺 稔、雨宮 邦招、沼田 孝之、福田 大治

    レーザ光は様々な波長域・パワー領域で使用されている。フォトダイオード(PD)は、そのようなレーザ光のパワー計測に有効な測定器の一つとして広く利用されているが、PDの応答度は入射パワーや波長によって非直線性を示し測定値に誤差を生じさせる。本研究では、その様なPDを対象にして、応答非直線性の値やその波長依存性を測定し、理論モデルを用いた定量的な解析を実施している。また、その結果から非直線性の予測や抑制する技術開発も進めている。

  • 単一光子検出器の検出効率標準の開発

    福田 大治、沼田 孝之、田辺 稔、雨宮 邦招、吉澤 明男(電子光技術研究部門)、土田 英実(電子光技術研究部門)

    絶対的な安全性が担保される量子暗号通信や大容量・高速通信を可能とする量子情報通信など、光の量子的な性質を利用した新しい産業が急速に拡大している。このような産業分野では、単一光子検出器等の検出効率の高精度な評価が必要となっている。そこで、NMIJでは四光波混合による相関二光子対を用いた検出効率標準の開発を行った。本発表では、本技術の詳細について報告すると共に、single photon radiometryに関する世界的な現況について紹介する。

  • 基幹比較(CCPR-K5)による分光拡散反射率標準の国際整合性の検証

    蔀 洋司

    産総研では、積分球を用いた独自の絶対反射率測定法に基づく分光拡散反射率標準を確立し、現在、波長250 nmから2500 nmにおける校正サービスを提供している。産総研を含む13カ国の国家計量標準機関が参加して行われた基幹比較(CCPR-K5)は、分光拡散反射率標準の国際整合性を示す最も重要な根拠であり、昨年度、当該比較の最終報告書が発行された。本発表では、日本の分光拡散反射率標準の国際整合性の程度について報告すると共に、国際比較結果から示唆される、分光拡散反射率測定の一層の高精度化に向けた課題について考察する。

  • マルチチャンネル型分光器の特性評価

    神門 賢二

    小型でコストパフォーマンスに優れたマルチチャンネル型分光器が測光・放射測定で広く利用されてきている。本研究発表では、2台のマルチチャンネル型分光器の諸特性(直線性、迷光等)を評価し、特性の違いによる色度を含む測光・放射量測定に与える影響や不確かさについて検討したので報告する。

  • UV-LED全放射束標準の開発

    木下 健一、神門 賢二、座間 達也、松岡 真也(日亜化学工業(株))、石田 幸平(日亜化学工業(株))、 山路 芳紀(日亜化学工業(株))

    波長域360 nm-400 nmに発光ピークを持つUV-LEDの普及が急速に進んでおり、樹脂硬化、印刷、紙幣識別などの用途で従来光源からの置き換えが進んでいる。将来的にはより短波長(250 nm〜)のUV-LEDのさらなる普及も予想されている。NMIJではUV放射束の信頼性のある評価のためにUV-LED放射束標準の開発を進めている。配光測定に基づくUV-LED放射束測定とその不確かさ評価について発表する。

  • 極微弱LED光源の光子数測定

    丹羽 一樹

    生物発光反応あるいは化学発光反応のような極微弱な発光は、微量物質を検出するためのプローブとして医療分野などで広く普及している。極微弱発光の測定はルミノメータあるいはマイクロプレートリーダと呼ばれる専用の装置が用いられており、その精度管理のための参照用光源として極微弱LED光源が市販されている。本発表では、同光源の分光全放射束測定に基づく発光光子数測定について報告する。

  • 配光測定による全光束導出における最適な方法の検討

    中澤 由莉、神門 賢二、座間 達也

    配光測定は光源や照明器具の配光特性や全光束評価に用いられるが、近年の光源の多様化やSSLを用いた大型の照明器具の登場により、配光測定の重要性は増している。しかし、配光測定において測定精度の向上と測定時間の短縮の両立は困難であり、測定の効率化が望まれている。本報告では、短時間の配光測定で充分に精度の良い全光束値を導出するための新規手法の提案、および白熱電球、LED電球への新規手法の適用結果を報告する。

【法定計量科】

  • 特定計量器の放射電磁界イミュニティ試験用電波暗室の新設

    長野 智博、原田 克彦

    これまでの特定計量器の放射電磁界イミュニティ試験用電波暗室は、平成6年に設置した簡易的な方式であり、試験可能な周波数を拡張するなど改修を繰り返し、維持・管理を行ってきた。しかし、試験器物の大型化や試験の厳しさレベルが上がるなどの理由から、電波暗室の能力向上による新設が必要となった。この電波暗室の新設について、電界均一面の校正結果も含めて報告する。

  • 法定計量業務の活動

    法定計量科

    2014年4月に関西センターにおける法定計量業務のつくば集約化により、組織改編を行った。集約する業務に関して、西日本地域におけるサービスが低下することから、法定計量業務に関連したサービスをより充実させる目的で、基準器検査業務の効率的な実施、技術相談窓口及び法定計量セミナーの開催を行いサービスをより向上させることを目指した活動を報告する。