凝固点降下法による高純度有機標準物質の純度評価を主体に、熱重量分析を用いた不純物分析や揮発性・吸湿性試験も行っている。
凝固点降下法による純度評価
凝固点降下法は試料中に含まれる不純物による凝固点降下から試料の純度を評価する方法である。実際には試料を融解させながら測定を行い、試料が融解した割合と試料温度の関係から純度を評価する。温度と熱量という物理量の測定のみから試料の純度を評価することができるため、一次標準測定法のひとつとされている。測定には断熱型熱量計や示差走査熱量計が用いられる。求められる測定精度や使用できる試料量、測定温度範囲などを考慮して適切な測定装置や測定手法を選択している。
熱重量分析装置を用いた不純物分析
凝固点降下法では試料の融解中に試料中に溶解している不純物を定量することができるが、試料に溶解しなかったり、融解時に揮発してしまう不純物は検出できない。凝固点降下法で検出できない不純物として試料に溶解しない不純物を強熱残分として、揮発してしまう不純物を加熱減量として定量する。
赤外加熱方式の熱重量分析装置であるため、室温付近までの冷却が測定に組み込めることを利用して加熱減量の定量の際には加熱後に35 ℃まで冷却して加熱後の試料量を読み取るなど温度変化による浮力などの影響を少なくするよう測定精度を上げる工夫をしている。
熱重量分析を用いた揮発性・吸湿性試験
われわれが取り扱う試料の中には揮発性が高いものや吸湿性が高いものが含まれている。このような試料では、純度や不純物濃度を評価する際に試料量を正確に計量することが必要となるが、計量時に試料が吸湿してしまえば実際の定量結果は吸湿後の純度となるほか、計量後に試料が揮発してしまうと調製された試料溶液の濃度が正しいものではなくなり、正確な測定ができなくなってしまう。そのため、試料の揮発性や吸湿性を湿度コントロールが可能な熱重量分析装置を用いてあらかじめ評価し、純度に影響が出ない湿度範囲や、正確な計量が行える温度を定めて、取り扱い条件を設定している。