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セルロース材料グループでは、「作る」「知る」「使う」のサイクルで研究開発を進めています。


〒739-0046 広島県東広島市鏡山3-11-32
国立研究開発法人 産業技術総合研究所
中国センター 機能化学研究部門

セルロース材料グループ

研究紹介PRIVACY POLICY

当研究グループで得られた知見や開発した技術の例をご紹介します。

食品系原料由来ナノセルロース

内容
 ナノセルロース(セルロースナノファイバー/CNF)は、従来のポリマー素材には無い特徴を持ち、様々な用途への展開が期待されています。それらナノセルロースの原料としてはパルプが多く用いられていますが、当研究グループでは、木粉からの直接的なナノセルロース製造と応用に関する技術開発も進めています。
 理論的には、ほぼ全ての植物系原料から、ナノセルロースを製造することができます。ナノセルロースの用途は、樹脂やゴムの補強以外にも、食品への応用も関心を持たれています。しかし、木材やパルプから製造したナノセルロースを、そのまま食品へ応用することは様々な規制により、簡単ではありません。
 ナタデココは、デザートやダイエット系食品として、以前から利用されていますが、これは、微生物(酢酸菌の一種)が生産(生合成)したナノセルロース(木材・パルプ由来とはサイズが少し異なります)です。ナタデココは、食品以外にも化粧品としての利用実績もあります。古くから食習慣のある原料・素材は、歴史の中でその安全性が担保されています。
 果物や野菜も植物です。セルロースの含有量は、木材(50%程度)と比較する少なく、柑橘果皮では、15%程度(当研究グループ測定値)です。しかし、木材のように強靱な細胞壁構造を形成する必要が無く、約30%共存しているペクチンがナノセルロースの周囲を覆っているため、生合性されたままの約3nmのサイズで安定に存在しています。

 参考:「技術のポイント」-
    「化学処理なしで得られる幅3nmのナノセルロース(柑橘等由来)」

 食習慣のある、果物や野菜等から製造したナノセルロースは食品や化粧品に応用することで、安全・安心、そして快適が提供可能と考えられます。これらは、可食性ナノセルロースと言うことも可能と思いますが、ナノサイズにしたことで、今まで見出されていなかった特性が発揮される可能性もあり、食品・化粧品利用では、それ相応の注意は必要です。

 柑橘類の多くは、機能性成分が果皮に局在しています。河内晩柑(和製グレープフルーツとも呼ばれる)やハッサクが含むオーラプテン、シークワーサーが含むノビレチンは、抗炎症作用や認知機能の改善効果があることが報告されてます。これら柑橘類以外にも、普段はあまり食べていない果皮や廃棄されている部位などに機能性成分が多く含まれている食材は多くあると思われます。これらをナノセルロースにすることで、今まで利用が難しかった食品や化粧品へも応用が期待できます。
説明図 1
食品原料から製造したナノセルロース
 可食性ナノセルロース
(左から)
・温州ミカン果皮(外皮)
・ブドウ(ピオーネ)果皮
・シークヮーサー外皮・内皮・種
 可食性ナノセルロース
(左から)
・紫イモ
・サフラワー(ベニバナ)
・パプリカ
・ターメリック(ウコン)
 可食性ナノセルロース
(左から)
・茶葉
・昆布
・おから
 可食性ナノセルロース
サフラワー由来カルタミンを
      ナノセルロースに吸着
(左から)
・カルタミン高濃度
・カルタミン中濃度
・精製カルタミン低濃度
 可食性ナノセルロース
(左から)
・紫イモ(重曹添加・アルカリ性)
・紫イモ(アスコルビン酸添加・酸性)
※紫イモが含むアントシアニンは、pHにより色が変化します。
 
説明図2
食品系原料由来ナノセルロースの高分解能走査型電子顕微鏡写真
 可食性ナノセルロース
 可食性ナノセルロース
 可食性ナノセルロース
応用例1
食品系原料から製造したナノセルロースを用いた食品応用例1
 ※当所の規則上、食品加工のみ実施し、試食等は行っておりません。
 可食性ナノセルロース
メレンゲクッキー
 可食性ナノセルロース
人工イクラ
 注)独自の色素を持つ食品系原料由来のナノセルロースを用いて作製しています。  注)昆布が持つアルギン酸ナトリウムを塩化カルシウムで凝固させています。昆布由来のナノセルロースを用いると、外側の膜がしっかりした人工イクラが作製できました。
応用例2
食品系原料から製造したナノセルロースを用いた食品応用例2
 ※当所の規則上、食品加工のみ実施し、試食等は行っておりません。

 「しそ(紫蘇)」には、緑色の「大葉」と紫色の「赤しそ」があります。「赤しそ」は初夏に、梅干しを漬けるため市場に多く出てきます。梅干しの赤色は、「赤しそ」が含んでいるシアニジン[配糖体](アントシアニン系色素)によるものです。夏には、レモン汁やクエン酸を加えた「しそジュース」もよく飲まれています。
 「しそ」が含むシアニジン[配糖体]は水溶性ですが、「しそジュース」を作成する際は熱水で抽出(沸騰水で煮出す)します。その後、クエン酸やレモン汁、お酢等を添加します。シアニジン[配糖体]は、pHが酸性では、鮮やかな赤色を発色します。
 以下に、簡易ナノセルロース製造法であるボールミルを用いた方法で、「赤しそ」からナノセルロースを製造した場合の例を示しています。この操作では、加熱や熱水抽出等は実施していません。
 
試験に用いた「赤しそ」(地元スーパーで入手) 
 しそ シソ シソ
ボールミル処理前
(左:クエン酸無添加)
(右:クエン酸1%添加)
 しそ シソ シソ
ボールミル処理後
(左:クエン酸無添加)
(右:クエン酸1%添加)
 シソ しそ 紫蘇
クエン酸無添加・ボールミル処理物
 しそ 紫蘇 シソ
クエン酸1%添加・ボールミル処理物
シソ 紫蘇 しそ シソジュース しそジュース 
ボールミル処理物の遠心分離後の上精(上澄み)
[右の上清はクエン酸1%添加後]
 「赤しそ」を湿式ボールミル処理してナノ解繊した結果、クエン酸を添加して処理することで、ナノ解繊が効果的に進行しクリーミーなペーストが得られました。また、遠心分離後の上精を比較すると、クエン酸無添加では、葉の微細化物等が混在して濁っていますが、クエン酸を添加した場合には、熱水抽出は実施していませんが、澄んだ赤色の上精が得られました。
参考文献
1. 特開2019-172995、「柑橘果皮由来ナノファイバー及びその製造方法」
2. 熊谷 明夫, 齋藤 靖子, 遠藤 貴士、オレオサイエンス、21(11)、455-462 (2021)、”農業副産物を原料とするナノセルロースの食品用途への可能性”
参考リンク
「研究紹介」-「簡単な?ナノセルロースの作り方。」
装置・設備への リンク
「微細化装置」
ディスクミル(グラインダー) ・小型 増幸産業(株) MKCA6-2
高圧ホモジナイザー 増幸産業(株) マスコマイザーX MMX-L200-D10
高圧ホモジナイザー(株)スギノマシン スターバースト10
遊星型ボールミル フリッチュ・ジャパン(株) プレミアムライン P-7

追記事項

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