走査型SQUID顕微鏡プロジェクトHP

走査型SQUID磁気顕微鏡の詳細

走査型SQUID磁気顕微鏡本体

走査型SQUID磁気顕微鏡(以下、SQUID顕微鏡)本体の詳細についてはKawai et al. (2016)で記述されている。高い空間分解能で微小な磁気マッピングを行うことができるSQUID 顕微鏡は,電子回路の配線不良検査やマウスの心磁計測など様々な分野で応用されている。我々は,岩石試料の微細な磁気イメージングを目的としてSQUID 顕微鏡の開発を行い,断熱層の距離(リフトオフ)を調整し易い手法として,中空構造のクライオスタットを用いたSQUID 顕微鏡を開発した。図1に開発したSQUID 顕微鏡の概観を,図2に模式図を示す(応用物理学会予稿 河合ほか (2014); Copyright(2014)The Japan Society of Applied Physics)。直径は370mm,高さは約900mm である。装置は液体ヘリウムリザーバ,真空断熱層に配置された伝導冷却機構およびSQUID の位置調整機構,サファイア窓から構成される。液体ヘリウムリザーバ中央部分は中空構造を成しており,その部分にマイクロメータを取付けたシャフトが貫通している。シャフトはフレクシャー機構を経て伝導冷却用の銅ブロックに接続され,銅ブロックにはサファイアロッドが取り付けられている。サファイアロッドの先端直径は2mmφで,この表面に1mm2のSQUID チップが実装され,サファイアロッドにメタライズされた配線を通して外部と電気的接続される。SQUID は200μm2のワッシャタイプのNb 系マグネトメータで,磁場の垂直成分(Bz)を検出するように実装されている。室温側でサンプルに接触させるサファイア窓は直径3mmφ,厚さは40μm である。リフトオフの粗調はサファイア窓が取付けられたベローズの伸縮によって行われ,さらにマイクロメータを回すことで微調整することができる。液体ヘリウムリザーバの容量は約10L で,保持時間は約4日間のスキャン計測が行える。SQUID を冷却し,直接読み出し方式のFlux Locked Loop (FLL)で動作させた際のシステムノイズは1.1pT/√Hz@1Hz であった。リフトオフは,線径25μm のアルミ線を用いた直線電流が作る磁場をスキャン計測したが、これまでのところ最小約120μmが実現されている。この場合,サファイアウィンドウと保護フィルムの厚みを加えるとセンサと試料の距離は約200μmである。

  •          図1
  •           図2

走査型SQUID顕微鏡システム

 走査型SQUID顕微鏡システムの詳細についてはOda et al. (2016)で記述されているが,そのFig. 1を図3として示す。SQUID 顕微鏡本体(D)はPCパーマロイ2重磁気シールドケース(E)の中でU字型アルミフレーム(K)によって保持されている。 磁気シールドケースのZ軸方向のシールド係数は約100であり、100nT程度の外部磁場変動が1nT程度に低減される。また、試料測定部分での残留磁場の直流成分は±3nT程度以下となっている。磁気シールドケースは液体ヘリウムトランスファ用の上部扉(H)、メンテナンス用の取外式前面扉(A)、試料の出し入れを行う右側面扉(F)の3つの扉を備える。磁気シールドケースは下部のアルミフレーム(B)によって支えられており、アルミフレームの中にはXYZステージの駆動部(C)が納められている。岩石薄片試料は試料ホルダに収めてXYZステージのアクリルパイプ(L)の先端部分に装着される。非磁性の長いアクリルパイプによってSQUID顕微鏡測定部と駆動部のステッピングモーターの距離を離して、磁気ノイズが低減されるようになっている。XYZステージ駆動部は専用コントローラに接続されUSB経由でPCから制御される。また、SQUID顕微鏡のFLLのアナログ出力も専用コントローラに入力され、内部のADコンバータでデジタル化されてPCにデータが取り込まれる。XYZステージの制御とデータ取り込みは専用ソフトウェアSQUID MagScanによってシーケンス制御され、2次元グリッドを移動しながら決められた範囲のデータが自動的に取得されるようになっている。



                     図3

主要関連論文

  • Oda,H., J. Kawai, M. Miyamoto, I. Miyagi, M. Sato, A. Noguchi, Y. Yamamoto,
    J. Fujihira, N. Natsuhara, Y. Aramaki, T. Masuda, C. Xuan,
    Scanning SQUID microscope system for geological samples: system integration and
    initial evaluation .
    Earth Planets Space, 68, 179, doi:10.1186/s40623-016-0549-3, 2016.
    [Link to]
  • Kawai, J., Oda, H., Fujihira, J.,Miyamoto, M., Miyagi, I., Sato. M.,
    SQUID Microscope with Hollow-Structured Cryostat for Magnetic Field Imaging of Room Temperature Samples
    IEEE Transactions on Applied Superconductivity, 26, 1600905, doi:10.1109/TASC.2016.2536751, 2016.
    [Link to]