独立行政法人産業技術総合研究所

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小売サービスプロジェクト

課題
  • ● 顧客の全体像を把握することが困難なため、商品提供の仕方、量、プロセスが最適化できず
       商品提供プロセスが非効率(廃棄率の増加、宣伝広告の効果減少、品揃え減少)
  • ● ID-POSデータと個別クーポン利用歴からなる大規模データ分析により、顧客カテゴリと商品
       カテゴリの動的抽出技術を確立
  • ● 発見した潜在的カテゴリに基づく特定商品カテゴリや顧客カテゴリに対する心理学的分析と
       行動観測データを統合した生活者の理解技術と生活品質の評価技術、生活価値の向上
  • ● 以上を活用した電子広告制御(デジタルサイネージ)要素技術開発、地域・生活連携サービス

小売サービスプロジェクト

生鮮食品販売

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サービスを介して収集、蓄積される大規模データをモデル化し、利用者行動シミュレーションにつなげるための基盤技術整備を目的として、大きく2つのフィールド研究を実施した。第一は、大規模小売店舗で収集、蓄積されたID-POSデータをモデル化して利用者行動をシミュレーションするための基盤技術開発である。第二は、飲食店での提供者スキルの理解とそれに応じた利用者行動のモデル化を進めるための基盤技術開発である。双方に共通している特徴は、サービスを介して得られる大規模データをモデル化し利用者行動シミュレーションにつなげる点、さらに、そのモデル化を単に情報学的手段によるのではなく、利用者や提供者の行動を理解する心理学的手段を統合する点である。
第一の大規模小売店舗におけるID-POSデータのモデル化技術について概要を述べる。利用者は常にすべての状況、条件を判断して最適な行動をとっているわけではない(限定合理性)。状況や情報に応じてさまざまな行動をとるとした場合、数式で記述した最適行動モデルでの表現は難しい。そこで、本研究では実データを機械学習して得られる確率モデル(たとえば、ベイジアンネットワークなど)を利用者行動シミュレーションに用いることを考えている。しかしながら、1億トランザクションを超えるような大規模データを店舗での日常業務で利用できる程度の時間で処理するとなると、1つ1つの商材や利用者をばらばらに扱うのではなく、ある程度のまとまり(カテゴリ)に分類して扱う必要がある。ところが、利用者の購買行動は季節や時代によって容易に変動し、また商材も変わりうる。したがって、このようなカテゴリの分類は、最初に一度やればよいものではなく、データの更新に応じて随時カテゴリを更新できなければならない。このような大規模データに基づくカテゴリの自動生成技術として、平成21年度では「カテゴリマイニング技術」を開発した。これには自然言語処理分野で活用されてきた確率的潜在意味解析法(PLSI: probabilistic Latent Semantic Indexing)を適用した。情報量基準を用いてID-POSデータがもっともよく説明できるカテゴリ数を決定するとともに、これらの情報学的手法によって抽出されたカテゴリと、利用者アンケート分析(心理学的手法)によって抽出されたカテゴリを連結させ、利用者のライフスタイルと商品カテゴリを分類することに成功した。1億トランザクションのID-POSデータで20程度のカテゴリ分類が、約1時間程度の処理時間で計算できることを確認した。また、このカテゴリ分類結果に基づいてベイジアンネットワークを用いて利用者行動の確率モデルを構築した。そのモデルに基づいて、利用者の潜在需要喚起のためのデジタルサイネージシステムを開発するための仮説形成まで実施した。

小売業には、大規模小売店舗のように利用者自身が独力で商品閲覧、選択をするスタイルだけでなく、提供者が商品を推奨するという、いわゆる「接客」を伴うスタイルも多い。前者は大規模データをモデル化して自動的に商品推奨を行う(デジタルサイネージシステム)などで対応できるが、後者については、接客を行っている提供者自身にスキルが蓄積されている場合が多く、利用者のみならず提供者の理解とモデル化が不可欠である。第二の飲食店での提供者スキルの理解の研究は、これを目的に進めた。ここでは、スキルの高い提供者の接客行動を観測するとともに、提供者、利用者への個別もしくはグループインタビューを実施して、接客スキルの構造を明らかにした。この結果、サービス提供者の「気づき」の差によって、サービスの質にどのような差異が生じ、それが「当たり前品質」または「魅力的品質」としてどのように受け止められるかが明らかにできた(図1-7)。なお、このような技術を水平展開して行くには、サービス提供者の行動観測を簡易化するセンシング技術が不可欠である。特に、観測環境(店舗)に多数のビデオカメラを設置するような方策は展開が難しく、少数のカメラとサービス提供者に装着できる小型のセンサによるセンシングが求められた。平成21年度ではこれに対応するセンシング技術を独自開発し、あらかじめ知識として持っている店舗マップと対応させることでサービス提供者の動線を記録、可視化することに成功した。

ID-POS データのカテゴリマイニング結果

サービス提供者の気づきの差とサービス品質

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成果報告書(PDF 20.7MB)

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