質量分析によるグライコプロテオーム解析を加速するソフトウェア「GRable」の公開
分子細胞マルチオミクス研究グループの岡谷千晶主任研究員、梶裕之客員研究員、坂上弘明研究員、久野敦研究グループ長らは、創価大学の木下聖子教授、藤田晶大助教、明治薬科大学の富永大介教授らと共同で、グライコプロテオーム質量分析データを自動解析できるソフトウェアを公開しました。
産総研は、どのタンパク質のどの位置にどのような糖鎖が付加されているか(部位特異的グライコフォーム)を網羅的に同定する質量分析技術としてGlycan heterogeneity-based Relational Identification of Glycopeptide signals on Elution profile(Glyco-RIDGE)法を開発してきました[1]。本手法は、特定糖タンパク質の詳細構造解析と、クルード試料の大規模解析の両方に使用できます。最近、Glyco-RIDGE法による糖タンパク質解析を自動化するため、慶應義塾大学医学部洪繁特任准教授、合田徳夫特任講師(当時)との共同で新規ソフトウェア「GRable」を開発しました[2]。本ソフトウェアにより、疾患に伴う糖タンパク質上の糖鎖修飾の変化を明らかにすることが可能となり、疾患に関連した糖鎖を創薬に利用する「糖鎖創薬」の加速化に貢献すると期待されます。
本ソフトウェアは、日本糖質学会公式ポータルである糖鎖科学ポータルサイト「GlyCosmos Portal」[3]にて公開しています[4,5]。
Glyco-RIDGE解析自動化ソフトウェア「GRable Version 1.0」を糖鎖科学ポータル「GlyCosmos Portal」で公開
共同研究機関
創価大学、名古屋大学、慶應義塾大学、明治薬科大学
参考
- Narimatsu, H et al. Current Technologies for Complex Glycoproteomics and Their Applications to Biology/Disease-Driven Glycoproteomics. J. Proteome Res. 2018, 17 (12), 4097–4112.
- Nagai-Okatani C et al. GRable version 1.0: A software tool for site-specific glycoform analysis using the improved Glyco-RIDGE method with parallel clustering and MS2 information. Preprint (bioRxiv)
- 糖鎖関連オミクスデータへの入口:糖鎖科学ポータル(細胞分子工学研究部門:トピックス)
- GRableウェブサイト(公開日:2023年12月18日)
- GRable紹介ページ(細胞分子工学研究部門:公開ツール)
謝辞
本研究はAMED 糖鎖利用による革新的創薬技術開発事業(課題番号:JP20ae0101021h0005)およびJSTバイオサイエンスデータベースセンター(NBDC)の統合化推進プログラム(課題番号:JPMJND2204)の支援を受けています。