BioJapan2020 パネル展示一覧


「ポストコロナの新たな社会を健幸・安全に生きるための新技術」
  New technologies for healthy and safe life in the post-COVID-19 era
         産総研ブースNo.:C-34


「革新的医療・創薬に向けた新医用素材」
New materials for innovative medical treatment and drug discovery
   【 1 】  長期間使用可能なECMO用血液ポンプ
  ~連続1か月間使用可能な高性能ECMOシステムの実現に向けて~

  Blood pump for ECMO for long-term use
産総研 健康医工学研究部門  西田 正浩、迫田 大輔、小阪 亮、丸山 修 
新型コロナウィルスによる重症呼吸不全患者の肺を休めるため、血液中に酸素を直接付加するECMO(人工心肺)装置が必要です。 我々は、肺が回復するまでの数週間のECMO治療を実現するために、連続1か月間の長期間使用可能な遠心血液ポンプを開発しています。 しかし、血液ポンプは機械であるため、溶血(赤血球破壊)や血栓(血液凝固)がポンプ内部で生じる恐れがあります。そこで、モノピボット軸受や非接触の動圧軸受を用いた遠心血液ポンプを提唱するとともに、血液ポンプの内部形状を流体解析により最適化することで、血液適合性を図っています。 また、コロナ感染症での血液の凝固異常による血栓形成があっても早期検出ができる、リアルタイムモニタリングのための近赤外を用いた血栓センサーを開発し、製品化に向けた研究を実施しています。
   【 2 】  どんな抗体でも精製できるセラミックス粒子
  ~従来技術では困難であったIgMの精製が容易になります~

  New ceramic particles for purification of any antibody

1、産総研 生物プロセス研究部門 2、日本特殊陶業―産総研ヘルスケア・マテリアル連携研究ラボ  3、日本特殊陶業(株)
奥田 徹哉 1、加藤 且也 2、北村 昌大 2、笠原 真二郎 3 
精製が困難なIgMの精製にも適用できるセラミックス粒子(多孔質ジルコニア粒子:PZPs)を新たに開発しました。 実施例として、子宮頸がん細胞の糖鎖を特異認識するIgMの精製へと応用した結果を示します。 糖鎖を認識するIgMは、がんや感染症の新たな創薬ターゲットですが、従来技術では精製が困難であることが事業化へのボトルネックとなっていました。 PZPsを用いた抗体精製法によりこの課題が克服され、ハイブリドーマ培養上清などから容易にIgMが精製できるようになりました。 中性pHにて穏やかに抗体を精製できることや、安価かつ安定な性質によりコストを削減できるなど、創薬応用への実用的な性質も兼ね備えています。
   【 3 】  小型人工タンパク質のバイオ医薬品産業応用
  ~機能性ペプチドの潜在能力を最大限に高めた小型人工タンパク質~

  Small sized artificial proteins for biopharmaceutical applications
産総研 バイオメディカル研究部門  渡邊  秀樹 
精密な立体構造と機能をもつタンパク質は医薬品・産業用分子として広く利用されている一方、変性に伴う凝集・失活や製造コスト高が課題となることも少なくありません。 我々は、より単純化された構造をもつ小型人工タンパク質の開発技術として、独自に設計した10アミノ酸残基で立体構造を形成する微小タンパク質シニョリンを構成要素とする進化分子工学技術Adaptive assemblyを開発しました。 この小型人工タンパク質は、高機能に加え、化学合成による製造が可能、酸・アルカリ・有機溶媒耐性や耐凝集性にも優れており、本技術を用いて、機能性ペプチドを資源として活用した小型バイオ医薬品や抗体医薬品の品質管理技術の開発を進めています。
   【 4 】  抗がん免疫を増強するメソポーラスシリカ
  ~がん抗原特異的抗腫瘍免疫の増強と免疫ブレーキの解除を融合~

  Mesoporous silica adjuvants enhance anti-tumor immunity

産総研 健康医工学研究部門  王 秀鵬、伊藤 敦夫、廣瀬 志弘 
がん抗原に対して免疫反応を活性化できヒトに使用可能なアジュバントの開発が望まれます。 我々はメソポーラスシリカ等を基本成分としてサイズ・形状・二次成分の異なる数十種類のアジュバント用無機粒子の合成に成功しました。 これら一連の無機粒子のアジュバント能を網羅的に評価し分子性免疫刺激物質を含有しないメソポーラスシリカ単独でがん免疫療法用アジュバントに使用できることを初めて動物実験で示し、がん免疫療法の従来の常識を覆しました。 さらに、開発したメソポーラスシリカは手術、薬物、放射線、免疫チェックポイント阻害薬、温熱療法のさらなる効果増強作用を示しました。 今後、無機アジュバントの臨床への橋渡し研究や感染症用ワクチンへの応用が期待されます。

「人工組織・センシング・細菌制御の新技術 ~多様なバイオ産業応用を目指して~」
New technologies for artificial organs, bio-sensing and bacterial control: toward various bioindustry applications
   【 5 】  バイオセンシングとパターン認識の融合
  ~味覚の仕組みを模倣することで、バイオ試料の“味”を認識~

  Fusion of biosensing and pattern recognition
産総研 健康医工学研究部門  冨田 峻介 
ヒトの味覚からヒントを得て、複数の分子からなるアレイを利用したバイオセンシング技術“chemical tongue”を開発してきました。 バイオ試料をアレイに加えることで、バイオ試料の個性を反映した“応答パターン”が生じ、これをパターン認識技術によって解析することで、試料の同定や状態評価が可能となります。 この方法は、味覚と同様に、試料に含まれる成分が未知な状況でも試料を評価することができるという特長をもち、例えば、血清や腸内細菌叢、培地中に細胞が分泌した成分の組成の違いを高精度に認識ができることを実証しました。 本技術は、評価方法が定まっていない試料や製品を分類・判別するための新しい指標の提供につながると考えています。
   【 6 】  遺伝子組換えにならない細菌遺伝子発現抑制 ~各種産業や環境中での細菌叢操作を可能に~
  Gene silencing not involving gene recombination
産総研 生物プロセス研究部門  中島 信孝 
10-30mer程度の合成オリゴヌクレオチド類似体をアンチセンス核酸として利用し、細菌の遺伝子発現を抑制します。 これによって、環境中の細菌集団において、不要な特定の細菌種のみを除去、あるいは特定の不要な遺伝子の発現を抑制することが可能になります。 アンチセンス核酸は、天然の核酸(DNA/RNA)ではなく、細菌内で複製し得ない核酸類似体のみを用いますので、カルタヘナ法の規制を受けません。 よって、GMO(Genetically Modified Organisms)の抱える実用上の問題を考慮することなく、食品の発酵生産や環境中の細菌叢操作などの場面での遺伝子操作が可能になります。
   【 7 】  ヒト細胞組織を高機能化する培養・加工技術
  ~ヒトiPS細胞からの細胞誘導技術と培養デバイス作製技術の融合~

  Enhancing funtions of cultured human tissues by novel cell induction and fabrication technologies

産総研 細胞分子工学研究部門  髙山 祐三、森 宣仁、木田 泰之 
我々は生体の恒常性において重要な役割を果たす末梢神経系と様々な臓器を生体外で接続することで、生体内の複雑な臓器間相互作用を再現した創薬アッセイ系の開発を目指しています。 このために末梢神経の新規誘導技術の開発を行っており、特に自律神経系(交感/副交感神経)の誘導技術開発に注力しています。 更に、我々は新しい機能を持った細胞の作製や3次元組織の開発と、それらの応用を目指した研究開発に取り組んでおり、組織培養デバイスを用いて人工組織に大きな主血管とそこから枝分かれする毛細血管を作製する技術を開発しました。 以上の技術は、創薬や再生医療分野への貢献が期待されます。
   【 8 】  1個の細胞の顔「糖鎖」を測る ~希少細胞の創薬標的探索が可能~
  Measurement of single cell glycans
産総研 細胞分子工学研究部門  小高 晴樹、舘野 浩章 
細胞表層の糖鎖は細胞の顔と呼ばれ、創薬や幹細胞品質管理への応用が進んでいます。 しかし従来は細胞集団の糖鎖情報の平均値のみを取得可能であり、1個の細胞の糖鎖情報を取得することはできませんでした。 本技術を用いると、1個の細胞の糖鎖とRNAを同時に計測することができます。 そのため細胞集団の不均一性の解明や、がん幹細胞、循環がん細胞、胎児有核赤血球などの希少細胞の糖鎖マーカーの探索が可能です。 将来的には希少細胞を標的とした医薬品や診断技術の開発への展開が期待されます。



産総研の講演会情報はこちら