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東北経済産業局蘆田和也地域経済部長のインタビュー写真

産業界に押し寄せる大変革の波

―TAI プロジェクトは蘆田さんによるアイディアがきっかけで発足したと伺いました。本プロジェクトを着想するに至った経緯について、社会や東北地域に対する現状認識も含めてお話いただけますか?

自動車産業の「CASE(*1)」に象徴されるように、社会的・技術的な変化が一挙に押し寄せ、産業のあり方を変えるレベルの大変革がまさに今、起こり始めています。またユーザーの価値観も大きく変化しています。インターネット普及後に生まれてきた若い世代は、モノを所有することに喜びを感じていた世代とは価値観が異なり、「いいね」数に代表されるような、シェア、オンデマンド、ソーシャル等、新たな価値観に合わせたサービスが流行しています。
これらを支える技術の進歩も日進月歩です。コンピューターの計算速度は飛躍的に向上し、AI(人工知能)も実用的に使えるようになりました。さらにインターネットで “ 情報 ” が瞬時に伝わった世界から、ビットコイン等の暗号通貨に用いられる基盤技術である「ブロックチェーン(分散型台帳技術)」等の技術によって瞬時に “ 価値 ” を伝えられる世界になろうとしています。また、あらゆる場所にセンサーを配置して情報を取得し通信によって常につながる IoT(Internet of Things)の実現には、これまで無線通信にかかるコストの高さがネックでしたが、低コストで省電力な無線通信方式の LPWA(Low Power Wide Area)の開発が進むなど、IoT の通信を安価に実現できる新技術も登場しています。
新しい技術を活用した新しいビジネスが既存の常識を破壊し、ビジネスそのものの形を変え劇的な競争力を生みだすことがありうる時代に入ってきました。このような新しい動きを、まず試してみなければわからない時代に入っているはずです。すると、ここ東北でも、まずは新しい情報に触れられることと実際に試せる場が大切であり、それが今の時代背景で最も求められていることではないかと感じています。
一方で 2017 年の産総研東北センター 50 周年の際、産総研の持つ技術シーズを地域の産業界に「橋渡し」をするミッションに加えて、社会が急速に変化する中、産総研のポテンシャルを活かす形で地域に貢献すること、例えば、新しい技術を噛み砕いて紹介し、実際に触れてもらう場を、産総研という大きな “ 器 ” で地域に提供することも大きな役割ではないかという議論がありました。その際、研究機関等が新技術と地域のニーズを結びつける場として貢献している好例として、私は会津大学の「会津オープンイノベーション会議(AOI 会議)」を紹介しました。AOI 会議では最新の情報に触れるところから始めて徐々に具体的な関心に焦点を絞っていくような形で、幅広いテーマで頻繁に会合を開いているそうです。例えば、ブロックチェーンをテーマに勉強会を開いた時には「試しに学内通貨をつくってみよう」となり、会津大学が持つ IT 関連技術がその実現を支えました。そのようなことを東北6県でやれるとすれば、やはり産総研東北センターだろうと思いお話した議論を産総研として真摯に受け止めてご検討を進めていただき、今回の TAI プロジェクトを発足いただいたと理解しています。

(5ページに続く)

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