 現在の研究を始めたきっかけと研究内容についてご紹介ください。
川﨑さん〉 私は、大学院では有機合成の分野でしたので、無機材料には全く触れていませんでした。そんなとき、チーム長である蛯名さんをたまたまＴＶで拝見し、世界中のどこにでもある粘土 を素材としていろいろな材料を作ることに興味を持ちました。「産総研は敷居が高いだろうな」と不安な気持ちで蛯名チーム長にアポをお願いしたところ、気軽にお会いしていただき、現在、このように一緒に研究をやらせてもらっています。蛯名さんがＴＶに出ていなかったら、私がＴＶを見ていなかったら、ここには居なかったと思います。
現在の研究は、耐水・耐熱性の透明粘土膜の開発を主に行っております。今のところ、フレキシブル透明フィルムとしてはプラスチックのフィルムが主流ですが、耐熱性が非常に低く加熱時の着色、変形が問題です。しかし、この透明膜は約400℃に加熱しても着色がほとんどありません。ディスプレイ用フィルムへの応用もありますが、ガラス等と比べるとまだまだ自立膜として強度が足りないので、コーティング材としても使えないものか試しています。
鈴木さん〉 私は就職活動していたときに、たまたま産総研の職員募集を見つけたのがきっかけで、今のチームに配属され、粘土膜に携わることになりました。現在は粘土合成と粘土膜作りを行っており、初期段階の条件出しから始まり、チーム内の実験で使用するほとんどの粘土膜を作製しています。夏は湿度が高いので膜ができにくいのですが、これからの時期は粘土膜作りの最盛期になります。また最近ではもみ殻に含まれるシリカから透明な粘土膜を作ることも新しい試みとして研究しております。
手島さん〉 私も就職活動のときですが、実は何社か受けて落ちていました（笑）。 |
たまたま私の研究室の上司と水上前研究センター長が知り合いで、そのときに水上前研究センター長から「誰か適当な人材はいないか」みたいなお話があったらしく、余っていた私にその声がかかったのがきっかけです。研究内容は、鈴木さんが新規材料等で作製された膜の、開発や測定を主に行っております。耐水性膜も元々鈴木さんが最初にやられていて、私はそのkg単位の量産化に向けての条件出しも行っております。量産化となりますと実験器具レベルではできませんので、攪拌機を使用するための下処理は全て手作業で行わなくてはならないため、腰へかなりの負担がかかります。やっていることは半分お料理教室みたいです。混ぜて、裏ごしして、寝かせてみたいな（笑）。
基本は粘土を" 膜"にすることから始まるのですか？
手島さん〉 必ずしもフィルムにするというわけではありません。フィルムで挟み込むのが難しい場合は、ゲル状のものを刷毛で塗って粘土層を作るような使い方もあります。それに、粘土は予測したものとは全く違う挙動するところがありますので、こうなるだろうなとの予測で実験をしても、その成果物の性能評価をしてみると全く違う特性になっていることもあります。そこから新素材が生まれるかもしれませんが。
鈴木さん〉 粘土はそもそも混ざりものなので、精製するテクニックが実に重要です。粘土の混ぜ方やフィルムの乾かし方のひとつをとっても全く違うものになります。
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