本年7月に東北経済産業局長に着任いたしました。
直前は経済産業省地域経済産業グループの地域技術課長ということで、正に地域イノベーション創出の直接の担当でした。またその前は産業技術総合研究所の企画本部総括企画主幹の一人として業務推進本部や特別事業(平成13年度補正予算を用いた連携事業、仙台市泉区の平面ディスプレイ超先端研究センター等)などを担当しておりました。と言うことで、これまでも東京からイノベーションの創出を唱えてはいたのですが、今般は自ら地域の現場においてその創出の直接のお手伝いができることになり、大変張り切っているところです。着任後2ヶ月あまりの間に東北6県を一回りしました。まだまだ東北を識る・語るなどというところではありませんが、イノベーションに対する旺盛な意欲はどの地においても強く感じられ、産学連携などの取組みも予想以上に進んでいることを知りました。最近における自動車分野にかかる各県の取組みなどを見ましても、県のリーダーシップの下、産も学も一丸となって、自動車産業への参入を目指しています。
しかしながら、まだまだ東北地域は地域イノベーションの創出という意味では他の地域に比して弱いところが多く見られます。それは自ら研究開発を行う能力を持つ企業、さらには大学のシーズを積極的に取り込み、地域の技術・製品に結びつけていく「吸収能力」を持つ企業が少ないというところによるところが大きいと思われます。日本でも都市の名前を言えば、企業の名前を必ず思い浮かべるようなところが多くあります。昔ながらの企業城下町で停滞しているところもありますが、多くの企業は地域のアンカーテナントとして、大学とも深く結びつき、地元に仕事を落として行きます。残念ながら東北ではそのようなところは極めて少ないようです。でも、それを嘆いていても仕方がありません。そのような企業をこれからどんどん育てていけば良いのです。そのポテンシャルを持つ中堅・中小企業は多くあります。
それらの企業に「吸収能力」を養ってもらうための最善の指導書は「産学官のネットワーク」ではないでしょうか。そのネットワークの主要プレイヤーが企業、公設試験研究機関、産総研など国の研究機関、そして大学であり、官はそのネットワークの環境整備をお手伝いするという形です。このネットワークを十二分に活用し、公的な産学研究プロジェクトにチャレンジされることが、企業のそして地域の「吸収能力」を高める早道です。たとえプロジェクトが採択されなくても、あるいは成果が十分に上がらなくても、その提案のために産学官で議論し努力すること自体が、企業の吸収能力を高めていくことになるのです。産総研東北センターにはそのネットワークの一つの結節点として大きな期待をしていますし、私自身も経済産業局の立場だけでなく、引続き産総研の一員のつもりで一つの結節点にもなり得ればと思っています。 |
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