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研究紹介

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伯田研究員
子径が10nm以下の金属酸化物シングルナノ粒子は、量子閉じ込め効果からバルクとはまったく異なる物理化学的特性を発現する。この特性を生かし、半導体や蛍光体などの電子デバイスを製造すれば、その性能の飛躍的向上が期待できる。

属酸化物ナノ粒子は気相法や液相法によって合成されているが、これら既存の合成法は、膨大な消費エネルギーや有機溶媒、高濃度アルカリの使用など、環境負荷の観点から問題を抱えており、工業化を進めるためには、より低エネルギー消費で環境負荷の少ないナノ粒子の製造法の確立が望まれている。このような背景のもと、我々は低環境負荷型ナノ粒子製造技術として、環境にやさしい超臨界状態の水を利用した「超臨界水熱法」の確立を進めている。

臨界水とは、臨界温度(374℃)、臨界圧力(22.1MPa)以上の状態にある高温高圧の高密度状態の水である。超臨界水の特徴は温度圧力操作によって密度や誘電率といった晶析反応を支配する溶媒物性を連続的かつ大幅に変化することができる点にある。本技術の概要を図1に示す超臨界水熱法の概略図によって簡単に説明する。ナノ粒子の原料である金属 塩 水溶液は、ポンプで所定圧力まで加圧された後、別のラインから供給される超臨界水と混合され、水熱反応を生じる。臨界点近傍では、水熱反応(加水分解、脱水反応)が極めて高速であり、かつ、酸化物の溶解度が低いため、極めて高い過飽和度が与えられ、結果として金属酸化物はナノ粒子として析出する。反応器内を滞在( 10ms-20s )したのち、反応液は冷却、減圧され、ナノ粒子分散液として連続的に回収 される。 超臨界水熱法によれば、温度や圧力の操作によって反応場に与える過飽和度を調整することで、形状の制御もできる。例えば、図2に示すような光触媒チタン酸カリウムナノワイヤー(a) 1) 、透明導電性薄膜用ベーマイト(b) 2) 、紫外レイザー用酸化亜鉛ナノロッド(c) 3) などの合成も可能である。最近、高流量マイクロ反応装置を開発することで、高密度セラミックコンデンサーやメモリー材料として利用される強誘電体チタン酸バリウムナノ粒子の連続合成にも成功している(d) 4),5) 。このように本技術はサイズ、形状制御から複合酸化物合成まで対応できる汎用なナノ粒子合成技術であるといえる。
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後は、超臨界水熱法をより高度に粒子サイズや形状を制御できるナノ粒子製造技術としての確立を進めるとともに、共同研究を軸に、合成したナノ粒子を用いた反応触媒膜やコンポジットなどの新規デバイスの創製を進めていきたい。

引用文献 :
1)Y. Hakuta, et al., J. Mater. Sci., 39 (2004) 4977.
2)Y. Hakuta, et al., Mater. Chem. Phys., 93 (2005) 466.
3)Y. Hakuta, et al., Quantum Dots, Nanoparticles and Nanowires, 789 (2004) 263.
4)伯田幸也 ら ,チタン酸バリウム微粒子及びその製造方法 特開 2004-107883.
5)Y. Hakuta, et al., Ind. Eng. Chem. Res., 44 (2005) 840-846.


http://unit.aist.go.jp/tohoku/ UP