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「ナヰフル」に対して「ナイソデハフレナイ」のか?

東北センター所長 加藤 碵一
我が日本(ひのもと)には、その昔「ナヰフル」という語がありました。「ナ」は「地」を表し、「ヰ」は地面や場所を示します。すなわち「ナヰフル」は「地面が揺れる」ことを表す言葉だったのです。その後古代中国から「地震」という漢字が伝えられこの概念に対応されたのです。私たちの祖先が古くから地震の揺れを認識していたことがわかります。

 さて、日本震災史上、未曾有の災害であった大正12年の関東大震災後、有識者より幾多の反省が述べられました。1例を挙げますと『明治維新以後、市区改正をはじめ、建築上に耐震耐火に注意し、再び安政2年の震災の如きを見ないと信じたのに、地震の程度ほぼ当時と同じく災害の及ぶところ死傷者より計算し、 啻 ( ただ )に10倍どころの話ではない。大正年間にかかる現象あること誰が想像したか。』とあります。それなりに対策を施していたものの予想を超える被災状況に愕然としている様がうかがえます。その後も予期せざる震災が断続して生じてきたことはご承知の通りです。

  さてさて、宮城県沖地震の再来は、国の「地震調査研究推進本部」によって、今後10年間に50%、同30年間に99%の発生確率が公表され、充分予期されています。30年間に交通 事故で負傷する確率が24%,ガンで死ぬ 確 率 が6.8% 、 航空事故で死ぬ確率が0.002%であることに比べればいかに切迫性が高いか自明ではないでしょうか。地震の発生は防ぎ得ないとしても、事前の対策いかんによって被害を最小限に止めることはできようし、またしなければならないことはいうまでもありません。

  8月16日の地震では、幸い軽微な被害にとどまりました。一昨年の地震を教訓に器物の固定など行ったことなどは有効でした。東北センターでは、危険度の高いA棟からの退避を実施し、すでに7月1日から同建物の閉鎖をしており、不便を忍びつつも自らできることから地震対策を行っています。しかし、これはいわゆる宮城県沖地震ではなく、その危険性は一向に低減したわけではありません。幾たびも繰り返し行われた耐震診断や老朽化調査でaだのbだの格付けをする調査・議論の時は過ぎ、緊急性を最大限に考慮した高度の経営判断による可及的速やかな抜本的震災対策、例えばA棟の取り壊しと新築を決断するべき時期であります。一日遅れて人柱がたつような事態になれば取り返しがつきませんし、こんな状況下で拠点間流動による研究・産学官連携活動の強化など夢の又夢でしかありません。



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外国人フェローからのメッセージ

タナカさん
タナカさん
My name is David Alfredo Pacheco Tanaka. I was born in Peru. I came to Tohoku National Industrial Research Institute in 1997 after getting PhD in Chemistry at University of Surrey, UK. My scientific backgrounds are solution chemistry, coordination chemistry and thermodynamics. I spent some years working with Dr. Suzuki in development of selective ion exchange resins for the separation of toxic anions from water. In accord with reorganization of the Institute, we changed our research topics sometimes. Currently we are developing palladium based membranes for the separation of hydrogen. Recently we developed unique membrane of novel configuration in which nano size palladium grains were packed in the nano space of support. I am very happy living in Sendai with my wife and my 4 years old son, enjoying the research work and delighted the collaboration with the kind researchers in AIST.

 The climate in Japan is different from Peru, particularly the four seasons are quite marked here giving their charms. We enjoy winter at onsen resorts, ohanami places in spring, nice beaches in the summer, and autumn mountains where leaves change color. But best one is many types of drinking places and good sakes.

私は、ペルー生まれのアルフレド・パチェコ・タナカです。イギリス、サリー大学でPhDを得てから1997年に東北工研にまいりました。私のバックグラウンドは、溶液化学、錯形成反応、熱力学です。当初は、こちらの鈴木さんと選択的イオン交換樹脂の開発と、有害陰イオンの除去に関する研究に従事していました。産総研への機構改革に伴い、研究課題をいくつか変え、現在は、水素の分離を目的としてパラジウム膜の開発に取り組んでいます。最近、ナノサイズのパラジウム粒子を支持体のナノ空隙に充填した新規な水素分離膜を開発しています。私は、妻と4歳になる息子とともに仙台に暮らし、親切なAISTの皆さんと仕事をし、研究を楽しんでいます。

 
ペルーと違って日本は四季がはっきりしていてそれぞれの魅力を発揮しています。冬は温泉、春はお花見、夏のビーチ、色とりどりの秋の山など。しかしなんといっても色々な飲み屋さんやおいしいお酒が一番ですね。

* デビド・アルフレド・パチェコ・タナカ 1963 ペルー生まれ 1996 年  英国サリー大学で博士号 1997 年  STAフェロー、東北工研 2005 コンパクト化学 プロセス 研究センター 契約職員


http://unit.aist.go.jp/tohoku/ UP