■ この7月中旬に東北センターを訪問し、研究の現場も見学させて貰い、研究者とも話を交わした。そして、本格研究が着実に進展していることに、大変意を強くした。第2期の中期計画が幸先よくスタートしていることを実感した次第である。
私は今年の4月から、理事(本年10月より常勤)に就任した。まだ、半年に満たないが、産総研の発足当初のことは深く印象に残っている。
独立法人化1年後の平成14年春に、私も委員を務めた第 1 回の運営諮問委員会が開催され、つくばセンター内の研究室見学ツアーにも参加した。産総研の理念の浸透を確認することは、委員会の重要な関心事である。私は研究者が取り組んでいる研究の位置づけ、すなわち、基礎研究であれば第1種と第2種のいずれの段階か、について行く先々で質問しようと決めていた。だが、この質問が無意味であることをすぐに悟らされた。つまり、位置づけを明確にして説明している研究者に対しては、あらためて聞くまでもないこと。そうでない研究者は、第1種と第2種の違いに無関心か理解してない。理解していても自分の研究と結びつけて考えてない。そのように回答から感じられたので、質問を続けるのは止めたのである。
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・ 中島理事 |
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産総研が発足する数年前の平成11年頃、東大工学部の現役であった私のところに、英国大使館の科学担当官が訪ねてきた。そして、独自の調査に基づいた日本の大学や国立研究機関の現状を解説してくれた。その内容は、最近のイノベーションに係わる基礎研究は大学の影響力が大きくなり、特殊な分野を除いて国立研究機関の貢献度は低く、その存在が希薄になっているというものであった。この現状分析
は大学 人 にとっても大変気がかりなことであった。
しかし、間もなく工技院傘下の研究所等は、本格研究を理念に掲げて独立法人産総研として発足する。時宜に叶い、明確な理念を打ち出したことに、私は深い感銘を受けるとともに安堵した。上述の理念の浸透については、発足間もないことを考えると無理な期待であったかと思う。だが、現在は状況が好転していることを、地域センターを訪問する度に感じている。
東北センターとして力を集結しているコンパクト化学プロセス研究センターは、広い専門分野の知見の統合を目指していることや、地域に根ざしたコンソーシアムが有効に機能していることなど、本格研究推進の一つのモデルとなっていると思う。東北センターが本格研究の実績を踏まえ 、 大きく発展されることを祈念 する 。
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