ひとくちに太陽電池といっても、低コストなものから高性能なもの、フレキシブルなものやカラフルなものなど、性能も形態も様々です。現在既に広く用いられているものから開発中のものまで、いろんな材料や構造を用いたものがあります。
太陽電池は、その中に用いられている材料(*1)で分類できます(図1)。細かく分けていくと数十種類になりますが、おおまかにはシリコン系・化合物系・有機系の3つに分類できます(*2)。最も広く用いられているのがシリコン系、新顔が最近量産され始めたのが化合物系、開発中だけれど将来を期待されているのが有機系、と言うことができます。(このほか、図2のように構造や動作原理による分類も可能です。)
主な太陽電池の種類には、下記のようなものがあります。それぞれに特徴があり、最適な用途もそれぞれ異なります。市場でも様々な種類の太陽電池が棲み分けながら、年と共により新しくて高性能な太陽電池へとシェアが移行すると予測されています。
- 単結晶シリコン太陽電池
- 最も古くからある太陽電池です。高性能で、特に変換効率が求められる用途に使われます。
- 多結晶シリコン太陽電池
- 現在もっとも広く使われている太陽電池です。細かいシリコン結晶が集まった「多結晶シリコン」を用います。単結晶シリコンよりも省エネルギーな方法で製造でき、変換効率も良い太陽電池です。製造方法や構造も多様です。
- リボンシリコン太陽電池
- シリコンの融液から直接、シート状の多結晶シリコンを製造し、太陽電池に用いるものです。インゴットからウエハを切り出す手間が省ける特徴があります。
- 球状シリコン太陽電池
- 直径1mm程度の球状の多結晶シリコンを、多数並べて構成する太陽電池です。意匠性に富んだモジュールが造れる特徴があります。
- 薄膜シリコン太陽電池
- 結晶シリコンの100分の1程度のごく薄いシリコン膜を使う太陽電池です。アモルファスシリコン、または微結晶シリコンを用います。変換効率では劣りますが、大量量産しやすく、軽量でフレキシブルなモジュールも造ることができるなどの長所があります。
- ヘテロ接合(HIT)太陽電池
- 結晶シリコンとアモルファスシリコンを組み合わせて、結晶シリコンだけの場合よりも省資源で、性能も高めた太陽電池です。
- CIGS系太陽電池
- 省資源でなおかつ多結晶シリコンに近い性能が出せる太陽電池です。量産性やデザイン性が良く、価格を下げる余地も大きく、今後の普及が期待されています。
- CdTe太陽電池
- 毒物のカドミウムを使いますが、製造時に使うエネルギーが少なく、実は環境性能が良い太陽電池です。価格が安く、欧米などで大規模発電所に利用され始めています。
- 色素増感太陽電池
- 製造が容易でカラフルなものが作れる太陽電池です。量産したときの価格を下げる余地が大きいと期待されています。今のところ寿命と変換効率が課題ですが、もうすぐ実用化できそうな水準まで開発が進んでいます。
- 有機半導体太陽電池
- 今世紀に入ってから開発が本格化した太陽電池で、有機物を含んだ固体の半導体薄膜を使います。常温で塗布するだけで製造でき、カラフルで軽量なものも造れる太陽電池です。寿命と変換効率の向上が課題ですが、屋内用のものは量産が始まっています。
- III-V族多接合型太陽電池
- 主に宇宙用に用いられるもので、集光すると40%以上の変換効率を発揮する超高性能太陽電池です。非常に高価ですが、地上でも直射日光の多い国や地域での利用が検討されています。
- 量子ドット太陽電池
- 量子効果を利用して性能を向上させる技術です。ナノサイズの微小加工が必要で、太陽電池の中に材料が異なるnmサイズの粒を規則的に並べた構造などが提案されています。これはまだ基礎研究の段階ですが、現在の理論限界を破る太陽電池として開発が進められています。
- ペロブスカイト型太陽電池
- 「ペロブスカイト」と呼ばれる結晶構造を持つ材料を用いた、日本発の新型太陽電池です。低温で製造できることから製造コストの低減が期待され、薄型で柔軟・カラフルなものも作製可能で、かつ研究レベルでは多結晶シリコン並みの変換効率も確認されており、将来の低コスト太陽電池として有望視されています。課題は耐久性の向上や量産技術の開発で、世界中で研究開発が進められています。
このように、太陽電池にはたくさんの種類があります。そして、そのどれもが-少しづつ、でも着実に-改良され続けています。
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