薄膜シリコン太陽電池

省資源で量産向き

薄膜シリコン太陽電池は、厚みが1μm程度、もしくはそれ以下の極薄のシリコン膜を用いる太陽電池です。面積あたりの発電量を決める変換効率では劣るのですが、液晶ディスプレイのように量産性が高く、コストダウンの余地が大きい太陽電池です。

薄膜シリコン太陽電池は、大きなガラス(や樹脂)の基板に、ごく薄い太陽電池を製膜することで製造します。そのシリコン層は一般的な結晶シリコン太陽電池の100分の1前後の厚みしかなく、とても省資源です(図1)。製造工程も大きく異なり、大面積のものを連続的に量産することができます(図2)。そのかわり変換効率は低め(7~10%程度)ですが、設置面積よりもコストを重視する地域などに向けて大量生産されています。

薄膜シリコン太陽電池には、下記の2種類のシリコン膜が用いられます。どちらも同じシリコンですが、膜の中の原子の並び方を変えることで、光学的・電気的な特性が違います。

アモルファスシリコン

シリコン原子がランダムに結合した状態で、非晶質シリコンとも呼ばれます。結晶シリコンに比べると、薄い膜でも光を吸収できる(吸収係数が高い)、青や緑などの比較的波長の短い光だけを利用する(禁制帯幅が大きい)などの特徴があります。アモルファスシリコン太陽電池は基本的に赤い光や赤外線が利用できませんが、シリコンを1μm以下の厚みに薄くできるほか、温度特性も良くなるなどの利点があります。

微結晶シリコン

多結晶シリコンの結晶の粒をうんと小さくして、50~100nm程度にしたものです。結晶のサイズを小さくするほど、性質がアモルファスシリコンに近くなります。シリコンの厚みはアモルファスシリコンより少し厚く、2~3μm程度です。アモルファスシリコンと組み合わせて、多接合(タンデム)太陽電池を造るのにも用いられます(図3)。

アモルファスシリコン太陽電池は室内などの極端に光が弱い環境での効率が高い性質があり、電卓や腕時計などに用いられてきました。昔は長期安定性に課題があり、屋外用に用いられることはまれでしたが、今では実用的な耐久性を持つようになり、屋外用にも市販されるようになっています(図4)。また効率についても、上記の微結晶シリコンを併用したり、SiC,SiGeなどの化合物を用いて多接合化することで、変換効率を10%前後まで向上させた製品が市販されはじめています。これらはまだ性能向上の余地があり、現在は15%前後を目標に開発が進められています。

一方、薄膜であることを活かして、フレキシブルな製品も製造・販売されています(図5)。このような製品は持ち運びが簡単なだけでなく、軽量であることを活かしてスレート屋根など比較的強度の低い建造物にも設置しやすい利点があり、今後の市場拡大が期待されています。

(最終更新:2008年11月7日)

アモルファスシリコン太陽電池の基本構造

↑図1アモルファスシリコン太陽電池の基本構造(クリックで拡大します)

薄膜シリコンの成膜行程

↑図2 薄膜シリコンの成膜行程(クリックで拡大します)

薄膜多接合シリコン太陽電池の基本構造

↑図3微結晶/アモルファスシリコン多接合太陽電池の基本構造例(クリックで拡大します)

アモルファスシリコン太陽電池パネル

↑図4 アモルファスシリコン太陽電池モジュール(屋外用)

フレキシブルモジュール

↑図5 フレキシブル薄膜シリコン太陽電池モジュール例 (提供:富士電機アドバンストテクノロジー社)

 

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