結晶シリコン太陽電池は、最も古くから使われている太陽電池です。その構造や性能は時と共に進歩していて、現在でも市場の主流を占めています。
「結晶シリコン」とは、シリコンの原子が規則正しく整列していて、材料としてのシリコンが最大限の能力を発揮できる状態だと表現できます。この結晶シリコンの中でも、素子全体にわたって”整列”が保たれた状態を「単結晶」、直径数mm程度の小さな単結晶が集まっている状態を「多結晶」と呼びます。(結晶の粒がさらに細かい場合は「微結晶」と呼ばれますが、これは厚みも製法も大きく異なります。)
- 単結晶シリコン太陽電池
- 最も古くからある太陽電池です。高価ですが高性能で、変換効率が20%を超える製品が販売されています。特に変換効率が求められる用途に使われます。
- 多結晶シリコン太陽電池
- 現在もっとも広く使われている太陽電池です。細かいシリコン結晶が集まった「多結晶シリコン」を用います。変換効率は少し落ちて15~18%ぐらいですが、単結晶シリコンよりも省エネルギーで安価な方法で製造できます。
結晶シリコン太陽電池は最も古い技術ではありますが、その時々の最新技術を使って少しずつ価格性能比を向上させてきました。それは現在でも続いていて、近年も下記のような技術の開発と実用化が進んでいます。
薄くする
現在主流の製法では、一度結晶シリコンの固まり(インゴット)を製造してから、これを薄く切ったウエハにして、太陽電池を造ります(図1)。ウエハの厚みは昔は300μm(0.3mm)以上ありましたが、現在では150~200μm程度のものが増え、さらに薄くなる傾向にあります(*1)。研究レベルでは50μm 未満の厚みのものも試作されています(*2)。
効率を上げる
ウエハの厚みを薄くするとコストダウンになりますが、厚みを単純に薄くしただけではせっかくの光エネルギーを吸収しきれなくなり、性能が落ちます。そこで、表面に細かい凹凸(テクスチャ)をつけたり、反射防止膜を形成するなどの工夫で光を逃がさない工夫がされています(ライトトラッピング)。エネルギーを吸収した電子を効率良く取り出せるよう、表面や電極周辺の構造にも様々な工夫がされています(図2)。
安く造る
原料となるシリコンも、昔は「半導体グレード」と呼ばれる非常に高純度なシリコン結晶が使われていましたが、現在では太陽電池専用の「ソーラーグレード」と呼ばれる、より安価な原料が増えてきています。これは半導体グレードよりも省エネルギーで低コストな方法で製造できます(図3)。またウエハを大型化したり、製造工程を簡略化したりするメーカーも現れています(図4)。
重ねる
同じシリコンでも、シリコンが”整列していない”状態である「アモルファスシリコン」は、光学的・電気的に結晶シリコンと大きく異なる性質を持ちます。結晶シリコンとアモルファスシリコンをうまく組み合わせると、結晶シリコンだけの時よりも性能を上げることができます。代表的な例がヘテロ接合(HIT)太陽電池です。
このように、最古参の結晶シリコン太陽電池も、その時々の最先端の技術を詰め込むことで、価格性能比を高める工夫が加えられ続けています。今後の市場ではより安価な薄膜太陽電池が台頭すると見られているものの、結晶シリコン太陽電池も当分は使われ続けると見られています(シェア推移の予想例がこちらにあります)。
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