現在使われている太陽電池は、原料としてシリコンなどの無機物を利用しています。そのため、製造行程のどこかである程度高い温度にしてやる必要が生じたり、真空装置を使う必要が生じたりします。これが常温・常圧で製造できれば、その分コストダウンが可能になります。それを可能にするのが、現在開発中の有機物を用いた太陽電池です。
有機物を用いた太陽電池には、下記のようなものがあります。
色素増感太陽電池
光を吸収する色素と、イオンが移動する電解質の層を持つ、変わり種の太陽電池です(図1)。製造が比較的簡単で、無機物で構成された太陽電池よりも安価に量産できると期待されています。また色素を変えることによって、様々な色の太陽電池を作れるのも特徴です。
現在のところ、研究レベルでの変換効率は約10%です(*1)。既に屋外でのモジュールの暴露試験も始まるなど(*2)、激しい開発競争が行われています。
有機薄膜太陽電池(有機半導体太陽電池)
普通の太陽電池はp型とn型の二層に分かれていますが、この太陽電池は違います。n型とp型の両方の半導体を混ぜ合わせて塗り、電極をつければ電池になります。無機半導体からすれば常識外れのこの太陽電池、有機物を用いた半導体から出来ています。図2の「花」の部分がこの構造の太陽電池です。もちろん、通常通りにp型とn型の2層構造のものも製造できます。
近年開発が始まったばかりですが、製造が簡単な上、様々な色や形が実現でき、半透明のものやフレキシブルなものも造ることができます。変換効率はまだ3~5%程度(*1)ですが、室内のインテリアやおもちゃなどから実用化が始まる見込みです。将来は、屋根や壁に「塗る」だけで使えるようになるかも知れない太陽電池です。
いずれも現在のところ、変換効率と耐久性が課題になっています。しかし耐久性をあまり必要としない用途から実用化が始まり、性能の向上につれて市場で大きな競争力を持つようになると考えられています。
ペロブスカイト型太陽電池
「ペロブスカイト」と呼ばれる結晶構造を持つ材料を用いた、日本発の新型太陽電池です(図3)。低温で製造できることから製造コストの低減が期待され、薄型で柔軟・カラフルなものも作製可能で、かつ研究レベルでは多結晶シリコン並みの変換効率も確認されており、将来の低コスト太陽電池として有望視されています。課題は耐久性の向上や量産技術の開発で、当センターでも研究開発を進めています。
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