CIGS太陽電池

薄くて性能も良い、新顔の太陽電池

CIGS系太陽電池は、最近実用化がはじまったばかりの、新顔の太陽電池です。薄膜シリコン同様に薄膜太陽電池の長所を備えながら、より高い変換効率が期待できる太陽電池です。種類が幾つかあり、まとめてCIS系、CIGS系、カルコパイライト系(*1)などと呼ばれます。

CIGS(”シーアイジーエス”)とは聞き慣れない名前ですが、これはCu,In,Ga,Se(銅、インジウム、ガリウム、セレン)の4つの元素の頭文字をとったものです。CIGS太陽電池はシリコンの代わりに、この4つに代表される元素を混ぜ合わせて使います。これらの元素を混ぜ合わせた化合物は、シリコン同様の半導体になります。しかも結晶シリコンに比べて光を吸収しやすく、太陽電池そのものの厚みは2~4μm程度で済みます(図1)。

この太陽電池の特徴として、用いる材料や製造法の選択肢が豊富なことが挙げられます(図2)。これらを使い分けることで、1つの材料系で低価格品から高性能品まで対応できます。またフレキシブルにもできることから、用途に合わせて様々な性能や形態の製品を製造できると見込まれています(図3)。

こうした特徴から、一般的な平板状の製品だけでなく、電気自動車や建造物などへの組み込み用途向けとしても期待されています。こうした組み込み市場は現在はまだ比較的小さいのですが、今後大きく拡大することが予想されています。またこの太陽電池の特徴として宇宙空間における放射線に強いという性質もあり、人工衛星や探査機などへの応用も期待され、開発が進められています(*2)。

CIGS太陽電池は現在のところ効率8~12%程度の性能のものが市販されていますが、研究レベルでは既に多結晶シリコンと同等の性能が確認されていて(*3)、量産品でも多結晶シリコン並に性能が向上することが期待されています。また薄膜太陽電池ですので、量産規模の拡大によるコストダウンの余地も大きいと期待されています。


(*1)…Chalcopyrite(黄銅鉱)と同様の結晶構造を持つことに由来します。黄銅鉱(CuFeS2)を使うわけではありません。

(*2)…日本においては、実証衛星「つばさ」(MDS-1)において非常に優秀な特性が確認されています。小型衛星XI-V(サイ・ファイブ)において世界で初めて衛星の電源に用いられたほか、SOHLA-1(まいど1号)にも試験用のセルが搭載される予定です。

(*3)…研究室レベルでは、これまでに約20%の変換効率が確認されています。(各種セルやモジュールの変換効率の公式世界記録については、たとえばM.A.Green et al., "Solar Cell Efficiency Tables". Progress in Photovoltaics:Research and Applications (不定期掲載)で確認できます。)

(最終更新:2008年10月30日)

CIGS系太陽電池の構造

↑図1CIGS系太陽電池の基本構造(クリックで拡大します)

CIGSの成膜方法

↑図2 CIGSの製膜方法(クリックで拡大します)

CIGS太陽電池の例

↑図3 CIGS 太陽電池の例(クリックで拡大します)

 

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