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  放射線イメージング計測研究グループ

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グループの研究課題

後方散乱X線検査装置
ガス検出器の開発




高エネルギーX線を用いた後方散乱X線イメージング装置の開発

背景

国内の道路橋(2m以上)は約70万橋あります。耐用年数の目安である50年を越える道路橋の数は、現在約16%ですが10年後には40%へ、20年後には65%へと飛躍的に増加します。これらの7割は地方の市区町村によって保守・点検・改修が行われていますが、財政・人員的に維持管理が難しくなっています。我が国ではコンクリート内部の鉄筋腐食、道路床版の損傷、プレストレストコンクリートを固定するPCワイヤーの破断などが問題となっています。

概要

当グループでは、現場でコンクリート構造物の内部を迅速に撮影することを目的として、高エネルギーX線を用いた後方散乱X線イメージング装置の開発を行っています。後方散乱とは、X線を照射した際に反射されるX線のことです。コンクリート深さ数cmで反射されるX線もあるので、表面から数cmであれば内部が可視化できます。いまのところ10 cmの深さにあるものが見えています。構造物の裏側にX線フィルムやX線カメラを置けない場所、たとえば狭い場所、ボックスカルバート構造の橋梁のように厚さ数メートルもある構造体、地面のアスファルトやコンクリートの下など原理的にアクセスできない場所であっても内部をX線で可視化できます。

研究の概要

研究のポイント

この研究のコアになる技術はテーブルに乗る、小さな電子加速器を開発して、強いX線源に仕上げる技術です。加速器要素技術、加速器システム技術、シミュレーション技術、高周波技術など加速器に関わるほぼ全ての技術、放射線計測技術などを使います。図面作成や機械加工、高周波試験なども実際に手を動かして自分で行うこともできますので、加速器全般について一通り経験することができます。今後はX線源の高強度化と検出器の大面積化を行い、検出効率を現在の100倍にして、社会実装へ向けて研究を加速したいと考えています。

参考文献

[1] 日本原子力学会2016年秋の大会、平成28年9月9日、久留米シティプラザ
[2] 大橋他、第77回応用物理学会秋季学術講演会、平成28年9月13日、朱鷺メッセ






ガスを用いた放射線イメージング検出器の開発

背景

10 keV以下の低エネルギーのX線や、中性子、陽子線、重粒子線など放射線は、一般的に従来の固体検出器では検出・イメージングが難しいと言われています。一方、これらの放射線は学術・研究用途だけでなく産業利用、放射線医療など様々な場面で重要になってきており、これらの放射線を正確かつ高速に計測・イメージングする技術が求められています。

概要

本研究では放射線を気体(=ガス)で検出するガス検出器の開発に取り組んでいます。ガスと放射線の相互作用によって発生する微小な電荷を、特殊なガラスの微細加工技術を用いて製作する電子増幅器(Glass GEM)と組み合わせて検出する装置を研究開発しています。ガス検出器は放射線由来の微小な電荷を10,000倍以上に増幅することが可能であるため低エネルギー放射線(電子線・軟X線)を高速に検出・可視化することが可能です[1]。我々は、特にガスの蛍光に着目しており、Glass GEMとシンチレーションガスを組み合わせた検出器の開発に取り組んでいます。近年では、シンチレーションガスを利用したGlass GEMを高い増幅率を保ちつつ安定して長時間動作させることに成功しており、世界で初めてガス検出器を用いた3次元CTに成功しています[2]。中性子の検出においては、密度の低いガスを用いることでγ線由来のノイズを大幅に低減することができます。また、陽子線・重粒子線は先進がん治療として注目されていますが、陽子線・重粒子線の線量イメージングにもガス検出器は優れた応答を示すことが分かってきており、放射線医療への応用が期待されています。

検出器の概要[2]

本検出器で撮像したX線ラジオグラフィ[2]

研究課題

ガス検出器に要求される仕様は用途によっても異なりますが、有感部の大面積化・高い安定性・高い電子増幅率・高計数特性・高空間分解能化が求められています。我々はそれらの課題を解決するために検出器の開発を、ガラスの微細加工技術を用いた電子増幅器(Glass GEM)の開発を中心に進めています。Glass GEMは2017年現在、世界的にもトップクラスの性能を誇りますが、使用しているガラスの物性など未解明の部分も多く、ジオメトリーの最適化によりさらなる性能向上が見込めます。また、検出に用いるガスの組成についても探求の余地があり、ガスの種類や混合比を変えながら実験を繰り返しています。

連携研究機関

ガス検出器の研究は様々な目的で開発しており、東京大学、高エネルギー加速器研究機構、京都大学、理化学研究所、奈良先端大学、北海道大学、放射線医学総合研究所、群馬大学、CERN、民間企業などの研究機関と連携して研究を進めてます。

参考文献

[1] T. Fujiwara, et al. High-photon-yield scintillation detector with Ar/CF4 and glass gas electron multiplier, Jpn. J. Appl. Phys., 55, 106401 (2016)
[2] T. Fujiwara, et al. Gas scintillation glass GEM detector for high-resolution X-ray imaging and CT, Nucl. Inst. Meth. A., 850, 7-11 (2017)



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