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研究内容

「レーザフラッシュ法による物性値としての熱拡散率の決定方法」

 レーザフラッシュ法を用いて、試料形状や測定条件に依存しない、試料固有の熱拡散率を求める手法を確立した。
熱拡散率は、温度に依存する物性値であり、物質や材料に対して固有の値である。レーザフラッシュ法では、パルスレーザビームにより試料表面をパルス加熱した時の、試料裏面の温度応答を観測する。試料の温度は、測定中にパルス加熱によって上昇するので、その測定で得られた熱拡散率は、厳密には、試料の温度が変化した温度領域内の熱拡散率値を平均したような値であり、ある一定温度での熱拡散率を定義することは難しい。また、同じ強度のパルス加熱を異なる厚さの試料に適用すると温度上昇が試料の熱容量に応じて異なるため、温度依存性を反映して測定結果がばらつくことが考えられる。そこで、パルス加熱強度に対する熱拡散率の変化を調べ、パルス加熱強度をゼロに外挿することによって、パルス加熱する前の一定温度での熱拡散率を推定できることを提案した。
 
この方法は、試料厚さの影響に加えて試料裏面温度応答を観測する赤外放射計の温度に対する出力電圧の非線形性をキャンセルする効果も期待できる。更に、フラッシュ法では試料表面から裏面への1次元熱拡散現象を観測しているため、見かけ上、熱拡散時間が試料の厚さに依存しており、測定装置の応答性の都合で熱拡散率が試料厚さに依存するように見える場合が懸念される。これらを考慮して、同一材料の同じ位置から取り出した厚さの異なる試料を、同じ一定温度で、上述のパルス加熱強度を変えながら測定した結果のゼロ外挿から、その材料固有の熱拡散率を決定することができる。

 等方性黒鉛に対して行った測定例を示す。パルス加熱エネルギーゼロに外挿して求めた各試料の熱拡散率は、試料厚さによらず、材料のばらつきの範囲で一致した。




 なお、この方法の有効性は、同じバッチの試料を当研究グループと仏国標準研究所であるLNEの共同研究で実証されており、フラッシュ法による熱拡散率測定の国際比較で採用されている他、JIS R 1611にも記載されている。
  

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