研究活動

組成標準物質の開発及び供給
 材料・環境・食品分析における精度管理、妥当性確認、更には分析者の技術教育等に有効な、無機分析用高純度標準物質や組成標準物質を開発しています。これらの標準物質は、ISO Guide 34に基づいたマネジメントシステムによって生産されており、計量計測トレーサビリティが確立されたものです。値付けを行う我々の分析能力は、国際比較試験への参加を通じて他国との同等性が確認されているため、生産された標準物質は国際的に認められています。この他、新たな標準物質開発のための基盤技術の開発も行っています。
無機計測技術の開発及び高度化
 標準物質の値付けのための高精度分析技術の開発のみならず、化学分析の信頼性確保に役立つ分析技術及びデバイス開発等の研究にも注力しています。デバイス開発に関しては、民間企業との共同製品開発にも取り組んでいます。
 現在、下記の研究テーマに取り組んでいます。

NMIJ未整備領域の低電気伝導率測定に向けた新規セル開発
 電気伝導率は幅広い分野で水質の指標として利用されていますが、ニーズが高いと考えられる水道水より高純度な水の電気伝導率(0.01 S/m以下)においては、現在NMIJはSIトレーサブルな一次測定法を有していません。現在、この状況を打破するべく、NMIJが保有する一次ジョーンズタイプセルよりも低い電気伝導率(1 mS/m以下)の測定に特化した一次測定セルの新規開発に取り組んでいます。

単一粒子誘導結合プラズマ質量分析法(spICP-MS)によるナノ粒子分析システムの開発
 spICP-MSは、ナノ粒子の元素組成、個数濃度、サイズ情報の取得を可能とする比較的新しい分析法であり、様々なナノ粒子含有製品における粒子の特徴付けや環境中での粒子の挙動解析等のツールとしての活用が広まりつつあります。我々は、より精確かつ簡便な個数濃度・サイズ情報の取得の実現を目指した分析システムの開発を推進しています。

全自動pH調整装置の開発と応用
 試料液のpHは、キレート樹脂を用いた固相抽出の結果の質を左右する主要因です。最適なpH範囲は、抽出剤の種類や目的元素によって異なり、プロトン濃度 [H+] を10−6 mol L−1レベルで正確かつ精密に調整する必要がある場合もあります。また、pH調整時の微量元素のコンタミネーションのコントロールも大切です。本研究はpH調整の正確さと精度を確保し、コンタミネーションを抑制した自動化装置の開発と普及を目指しています。