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セルロース材料グループでは、「作る」「知る」「使う」のサイクルで研究開発を進めています。


〒739−0046 広島県東広島市鏡山3-11-32
国立研究開発法人 産業技術総合研究所
中国センター 機能化学研究部門

セルロース材料グループ

技術のポイントPRIVACY POLICY

当研究グループの研究開発の過程で得られた技術のポイントを紹介します。

エックス線回折法によるナノセルロースの結晶性評価

内容
 木質の主要成分は、セルロース、ヘミセルロース、リグニンです。これらのうち、セルロースは結晶性を持っています。ナノセルロースは、セルロース分子の集合体であるミクロフィブリルが基本であり、セルロース結晶の本体でもあります。
 木質組織は、ミクロフィブリル、つまりナノセルロースが集合・積層することで形成されています。そのため、単純には、木質組織をほぐせば、ナノセルロースを製造することができます。木質組織は、ナノ結晶であるセルロースミクロフィブリル(ナノセルロース)の集合体であるため、ほぐして得られたナノセルロースと原料の結晶性は、理論的には同じになります。
 ナノセルロースの製造では、水とともに、機械処理は必須です。機械処理によるせん断力や圧力は、大なり小なりセルロース結晶にダメージを与えます。処理条件を強くしすぎたり、処理回数を増やしすぎたりすると、結晶性の低下したナノセルロースになります。ナノセルロースの結晶性は、その利用性や複合化した材料の物性にも影響すると考えられるため、その評価は大切です。
測定方法
 ナノセルロースの結晶性評価方法としては、比較的簡単なためエックス線回折法(粉末エックス線回折法)がよく用いられています。その他には、固体核磁気共鳴(NMR)法や赤外分光法などがあります。
 ナノセルロースがセルロース100%で構成されている場合、セルロース分子配列が乱れた(結晶配列が乱れた)部分が非晶質となり、結晶成分の割合から、このナノセルロースは結晶化度60%などと示されます。しかし、原料や製法によっては、セルロース以外のヘミセルロースやリグニンも含んだナノセルロースが得られます。これら成分は、ナノセルロースの表面に堆積しています(参考1)。ヘミセルロースやリグニンは非晶質であるため、これら成分が多いと、見かけ上の結晶化度は低く算出されます。そのような場合、厳密に結晶性評価が必要であれば、NMR法等を用いる必要があります
 また、エックス線回折法で得られる結晶の回折ピークは、結晶のサイズにも影響を受けます。結晶サイズが極めて小さいと、回折ピークはブロード化して、非晶質のように見えるようになります(シェラーの式/参考2)。

参考1:「研究紹介」−「水晶振動子マイクロバランス法によるナノセルロース表面特性解析技術」
参考2:P. Scherrer, Nachr. Ges. Wiss. Göttingen, 26 (September), 98 (1918)
測定の実際
 当研究グループでは、測定を円滑に進められるように、あらかじめサンプルをペレット化します。ペレット化装置としては、赤外分光分析用のKBr(臭化カリウム)錠剤作成器を流用しています。当研究グループ保有のエックス線回折装置は、オートサンプラー(自動サンプル交換器)が取り付けてあるため、あらかじめサンプルペレットを作製しておけば、測定が一度に進行できます。


結晶化度の計算方法
 エックス線回折法により得られた結果を用いて、セルロースの結晶化度を算出する方法にはいくつかの方法が知られています。当研究グループでは、東京大学・磯貝明先生の提案された方法(参考文献)を用いています。以下の図に、典型的なセルロース系サンプルのエックス線回折パターンと結晶化度の計算方法を示しいます。



参考文献:A. Isogai et. al., Sen'i Gakkaishi, 46 (8), 324 (1990).

その他の計算方法
 結晶化度(%)={(200の強度−非晶の強度)/200の強度}×100

その他の計算方法
Segal法
 結晶化度(%)={(200の強度−非晶の強度)/ 200の強度 }×100

出典:NEDO「セルロースナノファイバー利用促進のための原料評価書」
   4.3.1.結晶化度(X 線回折、固体NMR)
参考資料
NEDO「セルロースナノファイバー利用促進のための原料評価書」2020年3月公開
装置・設備へのリンク
「構造解析」
粉末X線回折装置 / (株)リガク RINT TTR3

追記事項

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