研究紹介
当グループでは、以下に示すような海陸の地質、古生物及び地球物理学的情報を統合して、地質学的時間スケールの地球環境システムやテクトニクスの変動史の解明を目標としています。
このような広域の研究をカバーするため、グループは多様な専門分野からなる研究者集団として構成されています。個々の研究者が高い技術力を維持するとともに革新的な技術を創出するなどして、国土の知的基盤としての陸域、海域、及び沿岸域の地質情報の整備を行い、更に発展的な研究としてこれらを展開します。
年代層序及びタイムスケールの高精度化
微化石層序、古地磁気層序・古地磁気強度変化、同位体層序、テフラ層序、サイクル層序等を統合した新生代の高分解能タイムスケールを構築し、その高精度化を図ります。また、この高分解能タイムスケールを地質図で活用するなどして日本列島の新生界層序の再検討を行います。
古地磁気変動・岩石磁気学的研究
古地磁気強度変動に関する研究、地磁気逆転・エクスカーションの詳細とその宇宙線生成核種との関連に関する研究、古地磁気記録の信頼性向上と古地磁気層序への応用、磁気顕微鏡に関する基礎技術開発等を行うとともに、岩石磁気データの解析手法を開発します。また、岩石磁気学的手法の古環境研究や津波堆積物の解析への応用を行います。
堆積物の分析手法に関する基礎的研究
堆積物の採取方法、堆積物の非破壊イメージング、粒度分析、元素分析、年代測定等の基礎的研究を行います。
物理探査の研究
地球物理学的手法を用いて日本列島及び周辺海域の地質構造に関する調査研究を実施し、地質情報の着実な蓄積を図ります。そのために、地中レーダーや高分解能地層探査装置を用いた沿岸域堆積物のイメージングに関する技術、およびその基礎となる堆積学的研究を実施します。また、海域における重磁力探査の調査・解析技術の研究を行います。
微化石及び大型化石による古環境解析に関する研究
過去の地球環境の高精度な復元を目指し、微化石及び大型化石の記載分類学的研究に基づく古環境指標ポテンシャルの評価と、化石の珪酸塩及び炭酸塩骨格を対象とした同位体組成及び微量元素の分析結果に基づく古環境推定に関する研究を行います。
沿岸域の地質災害リスクに関する研究
社会活動が集中する陸域及び海域の沿岸部において、地質情報に記録された過去の地震や洪水などの自然災害と環境汚染などの人為的な影響を評価します。主に物理探査手法とコア試料の堆積物分析をもとに、断層の分布と活動履歴、津波堆積物の頻度、洪水の痕跡と関連した気候変動記録、重金属やマイクロプラスチックの含有量などに関する調査研究を行います。
AIを活用した地質情報データ処理の高度化
微化石や鉱物粒子の分類、岩石磁気データ、物理探査データ等、従来の手法で得られる複雑な地質情報について、AI(人工知能)などの最新技術を用いることで分析や解釈の効率化・高度化を図る技術の開発・運用を進めます。あわせて、これらデータの簡便な可視化手法の開発を行います。
IODPの推進
日本が主導する国際深海科学掘削計画(IODP)について、乗船研究及び関連研究等を通じて、その推進に貢献します。
アウトリーチ
産総研の一般公開やテクノブリッジフェア、地質標本館の活動、地質情報展など各種普及行事、ジオパークへの協力を通じて「地質の調査」の普及と広報に積極に取り組みます。