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水素材料グループの研究紹介

水素吸蔵合金を用いた高効率熱化学式水素昇圧システムの研究

水素社会への移行に向けた水素ステーションの導入拡大のために、水素圧縮機の導入・運営コスト削減が求められています。水素材料グループでは高効率な熱化学式水素昇圧システムとして、電気化学方式から供給される40MPa程度の中圧水素ガスと排熱および水素吸蔵合金の化学反応を利用して80MPa以上に昇圧する技術開発を提案しています。現在はNEDO超高圧水素インフラ本格普及技術研究開発事業において、80℃以下の排熱で80MPaへの昇圧が可能な水素吸蔵合金の開発に取り組んでいます。


   高効率な熱化学式水素昇圧システムイメージ     低圧用水素吸蔵合金を用いた
                                      水素昇圧のデモ

水素吸蔵合金の選択的反応性を利用した水素精製

水素吸蔵合金は水素ガスを吸蔵・放出する性質を有しています。そのため、不純物ガスを含有した水素混合ガスから選択的に水素を水素吸蔵合金に取り込み、その後水素吸蔵合金から純水素だけを放出させることで純度の高い水素を供給することが可能です。不純物ガスによる水素吸蔵合金の劣化が生じることもあるため、不純物ガスに対する被毒耐性を有する新規水素吸蔵合金の開発に取り組んでいます。現在は不純物ガスとしてCO2を対象とし、NEDO「クリーンエネルギー分野における革新的技術の国際共同研究開発事業」において、ギ酸を活用した化学昇圧による高圧・高純度水素供給技術の国際共同研究開発として実施中です。

Power to gas用高密度水素貯蔵・加圧水素供給システム開発

再生可能エネルギーの変動吸収対策の一つとして、再生可能エネルギーから水素を製造・貯蔵し、必要な時に電力として利用するPower to Gas(P2G)システムの実証研究が各地で始まっています。我々は山梨県で計画された実証プロジェクトに参画し、水素吸蔵合金を用いた低圧水素貯蔵システム技術を開発しています。その中で、材料の大幅な低コスト化が見込めるTi-Fe系水素吸蔵合金の実用に向けて、課題である初期活性および耐久性の向上と昇圧機能付与のための特性最適化に取り組んでいます。

ナノメートルオーダーの特殊な構造創製・制御技術を活かした
高容量・低材料コスト水素貯蔵材料の開発

水素貯蔵・供給システムの広い普及に向けた主な課題のひとつに材料コストが挙げられ、貴金属および希少遷移金属の使用から脱却する必要があると考えられます。本グループでは、水素の高密度貯蔵に有望であるものの、高い反応温度に課題があったマグネシウム水素化物の構造と熱的安定性に着目し、非混合性の遷移金属(TM)との複合化をナノスケールで制御することで、高容量と低材料コストを両立した水素貯蔵材料の開発を進めています。近年は国内外の他大学との共同研究を通じて、科研費事業等の基で材料試作および評価を実施しています。

先端解析技術を活用した水素吸蔵合金の基礎研究

上記のように様々な用途に水素吸蔵合金を利用する際、求められる特性はそれぞれ異なるが、共通する特性は高容量化と繰り返し耐久性の向上です。これらは特に水素の占有サイト、結晶格子内部の乱れなどと相関があります。そのため、各種先端解析技術を活用することで、高容量化および繰り返し耐久性を向上させるための因子の解明に取り組んでいます。水素吸蔵合金の反応過程を調べることも重要であることから、その場測定環境の構築にも力を入れています。



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