資源価値創生研究グループ
Resource Value Creation Research Group

研究内容

2022年度主要研究課題

  • NEDO受託(高効率な資源循環システムを構築するためのリサイクル技術の研究開発事業/廃製品リサイクルの動静脈連携システムの開発)
    • 動脈情報連携によるCEDESTシステム(無人選別システム)導入の検証
      • 動脈提供情報に基づくCEDESTシステム機能の検証
      •  動脈提供情報に基づく実証試験・製品化に向けたCEDESTシステムの最適化
  • NEDO受託(革新的プラスチック資源循環プロセス技術開発/高度選別システム開発)
    • 高度選別システム開発
      • フィールドピックアップ(FP)型AIソータの開発
      • 高度比重選別システムの開発 
  • NEDO先導(木質CCUSを加速する資源循環システムの開発)
    • 廃木材の高度選別のための要素技術の開発
  • NEDO助成事業に基づく民間共同研究(アルミニウム素材高度資源循環システム構築事業)
    • 溶解前処理によるスクラップ組成制御技術の開発に関する研究
  • 研究助成金
    • 粒状体の形状・粒径分布に関するステレオロジー補正法の開発(科研費・基盤B)
    • 球面調和関数・遺伝アルゴリズムによる粒子形状設計技術の開発及び回転式ミル粉砕媒体へ応用(服部報公会・工学研究奨励援助金)
  • 産総研戦略予算(CO2のネガティブエミッションを最大化する木質資源複合材料高度循環技術の開発)
    • 廃木材の新開発木質チップへの再資源化に向けた選別技術の高度化
  • 民間受託・技術コンサル 1件

研究トピックス 1(装置の実用化を目指した開発研究) 複合センシング・機械学習方式によるスクラップ自動選別技術

  • ARENNAソータとその派生技術の展開
    ARENNA:Appearance REcognition with Neural Network Analysis

研究開発のねらい

慢性的な人手不足に悩まされている我が国のリサイクリング現場において求められる、高性能・低コスト・高汎用性を兼ね備え、従来の人手選別を代替するスクラップ自動選別装置(ソータ)の開発。現在主流の欧米メーカの製品を凌駕する国産ソータの開発。近未来の廃製品の解体・選別工程における自動化・自律化の実現。

研究開発内容

ベルトコンベヤ上を流れる各種スクラップの3D画像、2Dカラー画像、重量をセンシング、そのデータを高速リアルタイム解析(ニューラルネットワークによる機械学習方式)して、種類を識別するスクラップ自動選別装置(ARENNAソータ)を世界に先駆けて開発。2015年に国内リサイラーに実用1号機を納入(図1)。以降、複数スクラップの同時認識・並列処理、走査型LIBSソータ向け3D位置検知、ロボットアーム連携制御技術を開発、最近ではNEDOプロジェクトにおいて、表面文字認識や深層学習による識別機能を組み込んだAI画像認識ソータを開発(図2図3)。現在、リサイクラー企業と連携して廃棄物データの収集・DB化を実施中。

図1

図1 ARENNAソータ実用1号機

図2

図2 NEDOプロジェクトにて開発の廃製品自動選別システム(AI画像認識ソータ) 

図3

図3 NEDOプロジェクトにて開発中の産廃プラスチック自動選別システム(FP型AIソータ)

用途・知財・ユーザー

  • 廃製品、部品、金属、プラスチック等の自動選別
  • 特許登録7件、出願中3件
  • プログラム・データベース10件 
  • 選別装置メーカ、リサイクラー企業等

研究トピックス 2(装置の実用化を目指した開発研究) 画像認識を用いた廃製品自動個体認識アルゴリズムの開発

  • 画像認識技術と機械学習を応用し、廃製品の型番レベルまでを自動認識
  • 比較的単純な画像処理の組合せによる、廃プリント基板の資源価値推定

研究開発のねらい

廃家電製品や内蔵プリント基板のもつ個別の資源価値に基づいてリサイクル方法を選択するため、粉砕処理前状態の2D画像を参照し、画像認識と機械学習の組合せにより、廃製品の個体認識および資源価値推定を実現するアルゴリズムを開発している。また「その場」での実施も目指し、スマートフォン等アプリへの当該アルゴリズムの実装も視野に入れた開発を進めている。

研究開発内容

  • 製品ラベル情報を用いた廃家電製品自動個体認識アルゴリズムの開発(図1
  • 廃製品の外観形態特徴情報(筐体・部品サイズ、位置等)を用いた自動個体認識アルゴリズム
  • 単純な画像処理の組合せ(ルールベース画像処理)による廃プリント基板の高速資源価値推定(図2
  • 廃LIB種類の自動認識
図1

図1 製品ラベル情報を利用した自動個体認識アルゴリズム

図2

図2 ルールベース画像処理に基づく中サイズICの検出

用途・知財・ユーザー

  • 廃家電製品・廃プリント基板の自動選別処理、資源価値推定
  • 特許出願3件、プログラム登録2件
  • 選別装置メーカー、リサイクラー等

研究トピックス 3(目的基礎研究) 粉体・混相流シミュレーションに基づく物理選別装置の最適設計

  • 数値シミュレーションを駆使し、物理選別(粉砕・固固分離)装置の効率的な開発を推進
  • 選別メカニズムの解明と、選別に貢献する因子の抽出・最適化

研究開発のねらい

経験や勘、多数の実験に基づく各種選別装置の従来型開発手法に対し、数値シミュレーションを通じて、装置内の現象を解明すると共に、選別にクリティカルに効く因子を抽出し、装置・運転条件の最適設計法を確立することを目的とする。更に、新たな物理選別メカニズムの創出とこれに基づく装置開発を目指している。

研究開発内容

  • 電子素子の形状を考慮したカラム式気流選別シミュレーションモデルの 開発(図1
  • トランスフォーマブル(TF)物理選別システム制御のための各種物理選別装置の固気混相流シミュレーション(図2
  • 高遠心微粒子比重選別機(Knelson式)の改良
図1

図1 非球形粒子使用シミュレーションによる電子素子気流選別機予測精度の向上

図2

図2 物理選別装置のシミュレーション
(左:ポケットエアテーブル,右:振動スクリーン選別機)

用途・知財・ユーザー

  • 各種物理選別装置の装置・運転条件の最適 設計、スケールアップ設計
  • 新規物理選別プロセスの開発
  • 特許登録1件
  • 選別装置メーカー、リサイクラー等

研究トピックス 4(目的基礎研究) ステレオロジカルバイアス補正技術の研究

背景

  • 鉱石から有用金属を回収する際、粉砕して単体分離(1成分1鉱物の状態に)させることが重要
  • 単体分離の評価は、専用分析装置による粒子切断面の2D計測による手法が一般的
  • この方法では2D-3D間の誤差であるステレオロジカルバイアス(SB)の発生が避けられない図1

目的

鉱石粒子の2D観測データから3D実態を予測するためのSB補正技術を開発する。

解決手段

  • 単体分離状態が鉱物粒子の3D内部構造に依存することに着目
  • 網羅的な粒子構造の数値解析によるデータベースを作成
  • 2D単体分離状態をデータベースと照らし合わせて3D単体分離状態を推定する手法を開発(図2

実用化イメージ

  • 近年普及が進んでいるSEM/EDXベースの鉱物単体分離分析装置(MLA(豪・米)等)の高機能化ソフトウェアとして開発
  • 精緻な鉱物相分析技術と併せて、新規の分析装置を開発

※SEM:電子顕微鏡、EDX:エネルギー分散型X線分析

図1

2D切断面の観測では3Dの単体分離状態を誤認(過大評価)してしまう

図1 ステレオロジカルバイアスとは

図2

図2 数値解析による補正結果の検証例

研究トピックス 5(装置の実用化を目指した開発研究) 省スペースで簡便な選別装置、色々な粒の分離に応用可能

  • コンパクトで多段(多選別)化が容易な設計
  • 多様な対象物へ適応可能

研究開発のねらい

物質の電気的特性や化学的特性に依存しない乾式の選別装置は、対象物を選ばず汎用性の高さが長所ですが、精度の向上や多選別化が課題でした。そこで、その簡便性を損なわない、気流や慣性力を利用した新たな装置設計をしています。

研究開発内容

下図に紹介する選別機は、気流を用いた選別装置の例で、一度に6つに選別します。これまでに、0.1mm強の植物の種子から、数cm程度のプラスチック片などを、実験室のデモ機でテストしています。これ以外に、慣性力を利用した、より小さい(<1μm)粒子を対象とした装置の開発&テストも行っています。

用途・知財・ユーザー

  • 種々の粒子(約0.1mm~)を種類や大きさで分ける
  • 限られた設置面積で一度に多種に分ける
  • 国内特許 6666012等 8件
  • 外国特許 US等 2件
  • 複数の企業と実施契約の実績あり