基礎環境微生物学分野は、平成14年度に国立研究開発法人産業技術総合研究所北海道センター(以後、産総研北海道センター)との連携大学院として分子生命科学講座(現在の生命分子化学講座)に新設された新しい分野です。
本分野では、地球環境の保全や修復に役立つ微生物の探索、同定、機能解析、利用、モニタリング等に関わる環境微生物学の基礎研究を広く実施します。以下に、連携大学院方式、本分野の設立の経緯と研究の概要についてご紹介します。
連携大学院とは?
国立研究機関の第一線で活躍する研究者を大学が併任教授・准教授として迎え、大学院の学生は連携先研究機関等において研究指導を受け、一方、課程修了に必要な単位を大学において履修するという新しい方式です。すでに筑波大学、東北大学、東京理科大学等の国・私立大学にいくつかの実施実績があります。
本分野の連携先は、産総研北海道センターです。
連携大学院の必要性
これまで応用生命科学専攻分子生命化学講座では、微生物関連分野として応用菌学分野、微生物生理学分野の2分野体制で教育研究を担当してきました。しかし、微生物バイオテクノロジーの研究領域においては、学問的、社会的ニーズがますます多様化かつ増大しており、特に農学の理念でもある、地球環境の修復にかかわる基礎環境微生物学分野の教育・研究に対しては近年様々な要請が出されております。
また一方では、ゲノム生物学に代表される急速な学問領域の進展により、それぞれの研究分野は先端化し、細分化される傾向が強くなっています。同時に、異分野の融合により新しい研究領域が創生されたり、社会や産業からの要請に伴い、基礎から実用化を目指した横断的なプロジェクトが実施されるなど、研究環境が多様化しています。
そこで大学院農学院では、これらの高度で複雑な要請に応える研究分野の創生・多様化・充実と、研究交流、人材育成を推進するために、産総研北海道センターと連携して教育・研究を実施する新たな組織、すなわち本連携大学院の設置を企画し、文部科学省に概算要求しました。産総研北海道センターではこれまで低温環境をキーワードとして、微生物機能の様々な基礎的応用的解析が行われており、多くの先端的な成果が蓄積されています。その結果、北海道大学、産総研双方の熱意が実り、この要求は採択され、平成14年度から連携大学院として基礎環境微生物学分野が発足したのです。
この連携大学院は、既存の研究科(現在の研究院)としては北海道大学で初めてのもので、全学からその教育研究の成果が注目され、期待されています。
教育・研究上の特長
本連携大学院によれば、学生は産総研北海道センターの第一線の研究者から直接指導を受けられるばかりでなく、様々なセミナーやその他の国内外の一流研究者との接触を通じ、大学内では体験できない教育内容を修得することが可能となることでしょう。特に連携分野では学生一人当りの教官数が多いので、手厚い指導を受けられるメリットがあります。その反面、学生には恵まれた環境に甘えることなく、それをバネにして新たな道を切り拓く気概が求められます。
また、同センターの各種分析機器、実験装置などを有効利用して教育効果をあげることも期待されます。さらに併任教官が大学院講義の一部を分担することにより、大学院教育の充実と有為な人材育成が可能になるものと予想されます。
連携先の研究室
産総研北海道センターの次の4つの研究グループを連携先の研究室としています。それぞれの研究室のグループリーダー、研究内容は以下の通りですが、詳細をお知りになりたい方は、各研究グループのページでご確認下さい。
大学院生の日常生活
連携分野の大学院生の日常生活は、通常は産総研北海道センターの上記研究室において論文作成に関わる実験を行い、講義、演習のある時間帯(週一回半日程度)には大学に出向いて既存分野の大学院生と共に授業を受けることになります。
連携先研究機関の所在地は札幌市内(札幌市豊平区月寒東2条17丁目2-1)なので、移動は公共交通機関等により支障なく行えます。また、学内の関連分野に副指導教員(微生物生理学分野:教授 横田 篤)を置き、学生の教育・研究指導、事務連絡、日常生活上のサポートを行うので、安心して研究に打込めます。
入学定員・入学試験
基礎環境微生物学分野の入学定員は修士、博士各1名ずつですが、これを越えても構いません。入学試験は、修士課程は夏と冬(8月・2月)の2回、博士課程は2月に1回行われます。入学試験は連携大学院として独立に行うのではなく、大学院農学院として一括して行います。その際に受験分野として基礎環境微生物学を指定して下さい。