Theme個別研究課題
フレキシブル透明導電膜の研究開発
研究のキーワード
光照射、固相結晶化、透明導電酸化物、キャリア輸送、マグネトロンスパッタ、イオンプレーティング
研究の目的
本研究では、高品質なフレキシブル透明導電性酸化物(TCO)薄膜を実現するための製造技術の開発を行っています。 高温にさらすことができないフレキシブル基板上で、TCO前駆体薄膜の結晶化やドーパントの活性化を基板に熱ダメージを与えることなく実現する技術の開発により、フレキシブル基板上での高い導電性と高い光透過性の実現が期待されます。
上記の目的を達成するために、波長やパルス幅により熱的・化学的影響を制御できる光照射技術と、各種プラズマ蒸着法による前駆体薄膜の高品質化を実現する成膜技術を応用しています。
研究の成果
顕著に高いキャリア移動度を示す水素を添加した、または水素とセリウムを共添加した酸化インジウム透明導電膜が、可視から近赤外領域まで広い分光感度を持つ太陽電池用の窓電極として検討されています。当該薄膜は、非晶質の前駆体薄膜を約 150 度以上の加熱により固相結晶化することで、高移動度の特長が発現します。そのため、耐熱性の低いフレキシブル樹脂基材上への形成は、困難でした。私たちは、前駆体薄膜の固相結晶化プロセスに、光照射技術を適用することで、樹脂基材上で世界最高のキャリア移動度 133 cm2/Vs を実現し、従来品と比べて約 3 倍の電気伝導の向上に成功しました。この成果は、従来品が直面していた問題を解決し、次世代のフレキシブルオプトエレクトロニクスを支えるコンポーネントになることが期待されています。
参照情報(外部発表や特許、関連リンクなど)
- “Over 130 cm2/Vs Hall mobility of flexible transparent conductive In2O3 films by excimer-laser solid-phase crystallization”, 野本淳一、鯉田崇、山口巖、牧野久雄、北中佑樹、中島智彦、土屋哲男、NPG Asia Mater 14, 76 (2022); doi: 10.1038/s41427-022-00421-4
- ”Origin of simultaneous enhancement of work function and carrier concentration in In2O3 films by excimer-laser irradiation”, 野本淳一、松井浩明、山口巖、中島智彦、土屋哲男、 Appl. Phys. Lett. 118, 101602 (2021); doi: 10.1063/5.0041353
- ”Excimer laser annealing method for achieving low electrical resistivity and high work function in transparent conductive amorphous In2O3:Zn films on a polyethylene terephthalate substrate”, 野本淳一、山口巖、中島智彦、松林康仁、土屋哲男、 Thin Solid Films 698, 137867 (2020); doi: 10.1016/j.tsf.2020.137867