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研究チーム

超臨界流体研究センター材料合成チーム

 水は地球上に最も豊富に存在する物質で、毒性もなく環境に優しい反応媒体です。臨界点(374℃、22.1MPa)を超えた超臨界水の特徴としては、密度や誘電率、粘度などの諸特性を広い温度及び圧力範囲で変えることができることが挙げられます。特に臨界点近傍では、誘電率の大幅な低下に伴い、金属酸化物の溶解度の低下による大きな過飽和度での核生成・結晶成長の抑制により、ナノ粒子を合成することができ、また、反応速度も著しく増加することから、従来の水熱合成で数時間から数日かかるものが秒オーダーで合成できるという特徴があります。

 材料合成チームでは、連続合成が可能な流通式水熱合成手法による金属酸化物微粒子の合成技術の開発を行っています。これまでに、超臨界水反応場を用いることにより通常の水熱条件では得られない強誘電性を示す正方晶チタン酸バリウムナノ粒子(30−50nm)や無機フィラーや光触媒としての応用が期待できるチタン酸カリウムナノワイヤー(幅 10nm) の合成に成功しています。また、金属酸化物微粒子の応用を目的に、当研究センターの重点課題である「超臨界流体を利用した有機合成反応プロセス技術開発」の一環として、超臨界二酸化炭素を溶媒とする有機合成反応に利用できる固体触媒の開発を有機反応チームと連携して進めると共に、表面修飾した電極反応による機能性材より、微粒子合成の量産化の見通しが得られたことから、今後は民間企業との共同研究へと発展させて、環境調和型の材料合成技術として実用化に結び付けていきたいと考えています。(林拓道 記)
(列左より) 浦、伯田、林、佐々木(皇)、李
(列左より) 浦、伯田、林、佐々木(皇)、李


ナノパーツを用いた新規ゼオライトの設計、合成および構造解析 
                           (
メンブレン化学研究ラボ)


 当グループはメンブレン化学研究ラボにおいて、多孔質膜材料として用いるための素材設計と分析・解析の役割を担っています。粉末X線回折、固体NMR、熱分析を中心に、様々な測定法や解析技術を駆使して、粉末状の多孔質材料について結晶構造を決定すると同時に、その物理的・化学的性質を明らかにするのが主な目的です。

 現在の研究テーマは新規マイクロポーラス化合物の設計手法の開発です。その中で最近我々が独自に合成した層状ケイ酸塩PLS-1(図1左)は、その層状の骨格構造が既知のゼオライトの部分構造に類似していることを見出しました。そこでコンピューターシミュレーションにより、複数の骨格パーツが一つの多孔質構造体へ変化していく過程を予測しました。この推定に基づいて、シリケート層同士を脱水重縮合によって接合させるため幾つかの実験を試行し、非常に容易な方法で予測された構造を有すゼオライトCDS-1(図1右)を得ることに成功しました。このようにナノレベルでの構造類似性を使って積み木細工的に物質を構築する手法は、まだゼオライトの分野では少なく、現在主流の合成法と比べて非常に新しい方法であると言えます。
図1
 世界的に見ても、日本はゼオライトを用いた研究が非常に盛んなのですが、新規ゼオライトを合成した例は非常に少なく、CDS-1が2例目です。国内単独グループで構造まで決定できたのは本研究が初めてとなります。これは、単結晶が得られないことに大きく起因していますが、同時に当ラボの解析技術への認識が極めて高いことを端的に示す一例でもあります。ゼオライトの解析では、その構造的特徴から高度な技術が必要です。そのため装置開発や解析手法の検討を材料研究と同時に行ってきたことが、本研究に結びついたと言えます。

 CDS-1の他にも新規ゼオライトの構造設計や、ヘテロポリ酸化合物、ゼオライトチューブ膜の測定・解析、またPLS-1やCDS-1を使った化学反応への応用などもラボ内の他グループと密接に行っています。このような具合で少人数ですが、当ラボの材料研究の活性化に結びつくよう日々努めています。(池田拓史 記)
(列左より) 乾、池田、川合、水上ラボ長
(列左より) 乾、池田、川合、水上ラボ長