CONTENTS > メンブレンインキュベーションコンソーシアムの取り組み

特集

 産総研東北センターでは、産学官連携の促進と強化により循環型社会に対応した産業の創出を目指す「グリーンプロセスプログラム」を平成15年4月にスタートさせました。平成16年4月に発足した「メンブレンインキュベーションコンソーシアム」(MIC)は既に活動中の「超臨界インキュベーションコンソーシアム」とともに、本プログラムの両軸をなす研究会組織として位置付けられます(図1)。
図1

  MICは、産総研東北センターのメンブレン化学研究ラボならびに東北大学等の研究機関(シーズ会員)と広範な業種の企業(ニーズ会員)、東北経済産業局等の国の機関や地方公共団体の組織(特別会員)を結集し、会員相互の技術シーズとニーズのマッチングを図り、膜利用化学技術を循環型社会に対応した産業技術として醸成、利用していこうとする研究会です。

  MIC設立の目的は、各研究機関の持つ 1)貴金属系膜技術、2)ナノ空間制御膜技術、3)無機有機複合膜技術、4)金属微細加工技術などのメンブレン(膜)関連技術シーズと、参加企業の多様な技術ニーズを具体的に結びつける有効な場を提供することです(図2)。
図2

  平成16年4月21日に、MICの発足総会(写真1)ならびに第1回研修セミナーをパネルディスカッション形式で開催し(写真2)、産総研、大学等の研究機関からなるシーズ会員 37名、民間企業36社のニーズ会員 44名、特別会員10名の会員の参加によりスタートしました。MICでは、これら産学官の組織と会員の連携のもと、研修セミナー事業、プロジェクト化研究支援事業、ならびに人材育成支援事業を活動の柱としております。
写真1 MIC設立総会
写真1 MIC設立総会

  6月23日には、東北センターOSL棟において、第2回研修セミナーを開催しました。主に「水素、分離膜」をキーワードとし、産学官の会員から、7件の話題提供を頂きました。将来期待される水素社会への技術的対応に向け、その製造と分離技術の研究・開発には高い関心が持たれ、産学官の会員から71名の参加を得ました。水素分離膜としてのパラジウム合金膜やアモルファス合金膜開発の新しい展開、メタンの水蒸気改質による水素製造プロセスへのメンブレンリアクターの適用、ガスの精密分離用の新規多孔体など、実際のプロセス技術を交えた密度濃い内容の紹介がなされました。この分野の最新の研究開発動向について俯瞰し、理解する上で本研修セミナーは大いに役に立ち、分離膜、反応膜の開発課題がより明確になったと思われます。

  研修セミナーを通じて、情報の収集と共有ならびに会員相互の理解と親交が深まり、研究開発における実質的な協力関係が築かれていくことが望まれます。8月25日に開催した、第3回研修セミナーでは、「無機多孔質膜の産業展開」をメインテーマとし、ナノサイズの空間を制御したゼオライト膜、セラミックス膜の開発と、これらを用いた精密分離や新規な膜反応への応用について7件の話題提供がありました。

  7月21日現在の会員数は、ニーズ会員が43社 115名、シーズ会員19機関46名、特別会員3機関21名の合計182名に達しています。 
写真2 第1回研修セミナーにおけるパネルディスカッション
写真2 第1回研修セミナーにおけるパネルディスカッション

(メンブレン化学研究ラボ 鈴木 敏重 記)