顧問 斎藤 正三郎
斎藤顧問
CONTENTS > 新しい時代における研究者への期待

 永年大学に在職したものから見た、産総研と大学の違い、あるいは研究のあり方、そして研究者間の交流のあり方について、日ごろ感じていることを述べてみたい。
 産総研は、工業技術院時代の国研および地域センターが統合・設立されて以来、吉川理事長の提唱する「第2種基礎研究を軸とする本格研究」という考え方のもとに、従来の基礎研究に止まることなく、研究成果を産業技術に貢献させるべく、速やかに実用化研究まで展開することが求められている。東北センターも、この産総研の「本格研究」という方向に適合させるために、昨年から本年4月にかけて二つの『インキュベーションコンソーシアム』を設立、産学官連携強化による実用化研究促進のための共同研究組織体制を構築し、“組織的研究経営”に向けて、精力的な活動を積み重ねていることは周知のとおりである。
 大学と産総研との違いの一つに研究推進の仕組みが挙げられる。産総研では研究者個人が個々の研究の企画かつ実施者でもあり、その研究成果は研究者の力量に負うところが大きい。その結果、ややもすると研究推進過程において、近視眼的な研究に陥ったり、対象がかなり狭い範囲のものになってしまっているということもおこりがちである。新体制における研究者には従来にも増して、広範な知識・経験、深い洞察力が求められるところであり、また、自分の研究課題が時代の要請に適応しているかどうかの不断の検証が必要であり、「本格研究」としてふさわしくないという方向に進んでいると判断さる場合には、自らの決断で課題を大幅に転換する勇気も必要である。
 この観点からも、「本格研究」推進のためには、産学官連携はもとより、広範な各研究分野の組織連携・知見集約による、“組織的研究経営”が不可欠と考える。
 東北センターは『超臨界』と『メンブレン』の二つの異なる研究分野の研究者が集結しており、より積極的に研究者間の交流、意見交換の場が構築されることが期待される。また、現在東北センターには総員148名が所属しており、そのうち、33名が組織運営に従事している。研究者は、このような事務方の支援のもとに研究に専心できる環境にあることも忘れないでほしい。
 東北センターに結集する研究者個々人が、17年度のNC化を目指すこの機に、産総研の使命、東北センターの役割に関し、東北ナショナルセンターの旗の下に新たな認識を持って、研究分野の垣根を越え、研究者間の密なる交流促進により、知恵を結集して、さらに大きな成果をあげていくことを期待したい。
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