研究チーム紹介
超臨界流体研究センター有機反応チーム
メンブレン化学研究ラボ粘土膜グループ

(白井誠之 記)

(蛯名武雄 記)

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 現在の化学工業プロセスは化石資源に大きく依存しています。この限りある資源をできる限り有効に、そして環境に負荷を与えない、効率的なグリーンなプロセス開発が望まれています。超臨界流体研究センター有機反応チームでは、有害な有機溶媒の代わりに、無毒で安全性の高い水と二酸化炭素を利用し、かつエネルギー消費を大幅に低減する有機合成化学プロセスの研究開発を行っています。
 水を用いる有機反応では,“超臨界状態にある(温度374℃以上,圧力22.1MPa以上)水の触媒作用”を利用した新規な有機化合物合成研究を行っています。また,超臨界水により高分子化合物をモノマーへ分解する“ケミカルリサイクル研究”も行っています。更に東北大学大学院環境科学研究科と共同で超臨界水を利用したバイオマス利用研究も行っています。 二酸化炭素を利用する有機反応では、“超臨界状態にある(温度31℃以上,圧力7.4MPa以上)二酸化炭素を溶媒として用い”固体触媒との組み合わせによる多相系反応システム開発と、“二酸化炭素を基質として用いる”固定化反応研究を行っています。

 有機反応チームではそれぞれのメンバーが複数の反応を掛け持ちしています。バックグラウンドが理学、工学、薬学と多岐にわたっていることも手伝い、自由な発想の元、常勤・非常勤という区別なく、気軽にディスカッションできる雰囲気で研究を進めています。メンバーの平均年齢が30歳前半ということも明るく元気な雰囲気を作っていると思いますが、何よりもメンバー全員が研究が大好きであることが特長です。有機反応チームでは“超臨界流体を利用した有機合成化学の実用化”を目指して研究を進めたいと思います。

粘土は太古より人類との付き合いが深い材料です。旧石器時代から土器が作られ始め、もっとも古い文字は、紀元前四百年頃にメソポタミアでシュメール人によって、粘土板に記されました。その後粘土の利用は多方面に広がり、膨潤性粘土は1000の用途を持つ材料と呼ばれています。しかしながら粘土それ自身を膜として実用化した例はありませんでした。
 私たちは、最近粘土を膜として成型する技術を開発しました。膜の感触は半透明の腰の弱い柔らかい紙といったところです。膜は厚さ1nmの薄い板状の粘土結晶からできています。この粘土結晶は膜の中で同じ向きに緻密に重なっており、支持体なしで取り扱うことができます。さらに無機化合物であることから耐熱性や耐薬品性にも優れています。私たちは何千年の粘土と人類の歴史においてこれまで存在しなかったこの粘土膜の可能性に注目しました。特に高温条件下でのガスバリア性に優れていることが明らかになっています。
 また粘土は種々の化学種との親和性が高いことから、これを用いたナノ複合材料の開発を行っています。ナノ複合材料は支持体成分(ホスト)と機能性成分(ゲスト)からなっており、「分散相の大きさが1〜100nmの領域にある複合物」と規定されています。例えば粘土のような無機化合物を有機修飾することによって、ある種の有機化合物が吸着しやすい有機-無機複合多孔体を合成しています。このようなタイプの多孔体は、各種有機物吸着材や分離材、マイクロカプセルなどの広範囲な分野での応用が期待できます。

 さらに生体触媒である酵素をホスト材料の微小空間内に配列させたナノ複合体を合成しています。具体的にはヘモグロビン様活性(酸素、一酸化炭素の吸脱着)又はカタラーゼ活性(過酸化水素の分解)のような酵素反応を、生体外で化学プロセスとして取り扱えるナノ複合体の開発を行っています。
 一方これらの材料を膜やペレット状に成型し、取り扱いやすくする試みも行っています。メンブレン化学研究ラボは、素材開発、部材開発、プロセス開発、さらにはマイクロリアクター開発までの一連の研究を行うユニークな研究ユニットであり、この環境を生かして実用性を高めたナノ複合材料の開発を行っています。私たちの開発した材料が製品に生かされ、逆に消費者としてサービスを受ける立場になる日が来ることが夢です
(後列左より)白井、佐藤(修)、峯、日吉、川波
(前列左より)佐藤(恭)、石川、三浦
(列左より)鈴木、蛯名、石井、伊藤
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