産総研 東北 Newsletter

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玉虫塗×粘土膜技術=「用の美」

 仙台みやげの工芸品「玉虫塗」は、従来の漆塗りの下地の上に銀の層、さらにその上に透明感のある漆を塗り重ねてあり、漆の奥で銀が光る華やかな塗り物だ。この塗りの技法は輸出を目的に開発されたもので、昭和初期に仙台に創立された国立「工藝指導所」の成果のひとつである。現在は宮城県の伝統工芸品に指定されている。
  玉虫塗試作品
工藝指導所の玉虫塗試作品
「おしろい入れ(右)とパフ入れ」
産総研 東北センター 所蔵
 上の写真は現存する開発当時の試作品だが、蓋は色あせ光沢も鈍い。底面は鏡面のようなつやがあるので、当初は蓋も玉虫色に輝いていたのだろうと想像できる。玉虫塗表面のつやが消えた原因は紫外線と考えられる。また、漆器は使っていると表面に細かい傷がつきやすく、持っているけれど手入れが難しそうと飾っているだけの家庭も多いことだろう。しかし物不足を体験した震災後、観るだけではもったいない、使える玉虫塗を作ろうという機運が高まった。
 工藝指導所の流れを汲む現在の 産総研 東北センターの先進機能材料チームでは「粘土」で膜や新素材を作る研究が行われている。粘土膜は熱に強い・ガスを通しにくい・燃えにくいなどの特長を持つ。そこに、玉虫塗の製作会社「東北工芸製作所」がサンプルを持ち込み、傷が付きにくく熱にも紫外線にも強くしかも美しい玉虫塗にしようという共同研究が始まったのである。実現すれば、日常使いできる食器や自動車の内装など用途は幅広い。課題は、機能性を上げても職人の仕上げた塗りの美しさを損なわないことだ。   粘土膜塗布サンプル
粘土膜塗布サンプル
玉虫塗
ひっかき試験の結果を確認する
東北工芸製作所 社長(左手前)と
店長(右端)と先進機能材料チーム員
 

 現在、ひっかき試験や紫外線暴露試験等で強度が確認され、仕上がりの美しさについても社長のOKが出ている。商品化の日も近い。
開発から80年を経たいま、伝統工芸の製作者と先端科学の研究者が知恵を持ち寄り工芸品を生まれ変わらせようとしている。食器洗い機に入れても日に当たっても輝きを失わない普段使いの玉虫塗を目指し、研究が続けられている。

玉虫塗の新しい挑戦は2013年 9月18日、NHK仙台のニュース番組「てれまさむね」伊達な☆仕事人「“観る”から“使う”伝統へ」で紹介されました。

真の伝統を生かすということは忠実に模倣することではない。
伝統の永遠の法則に従って新しく創造することである。―シャルロット・ペリアン


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