触媒の研究には長い歴史があります。すでに、元素のなかで触媒の働きをするものとしないものが おおよそ分かっていて、さらに、単独では働きませんが、触媒を補助して強める働きをする物質(助触媒)も知られています。触媒にならないと思われていた元素が、近年になって優れた触媒であることが発見されて常識が覆った例もありますが、現在の触媒研究は、より効率よく反応をすすめるために、触媒作用を持つ元素やそれを補助する元素の「組み合わせを探すこと」になります。例えば、A+B→Cという反応をすすめたいのに、現実には、A+B→C+D+Eという反応が起こり、目的物Cが少しと不要な物質DやEができてしまうという場合、生産効率が悪いだけでなく、Cだけを取り出してDやEを捨てるのに余分なエネルギーが必要となってしまいます。目的物Cだけが選択的に生成されるような触媒を開発する必要ができてくるのです。 |
以前から固体触媒開発の研究をしてきましたが、いま、取り組んでいるのは木質バイオマス由来原料の有効利用です。触媒反応チームは、産総研 中国センターにある「バイオマスリファイナリー研究センター」などと共同でバイオマスリファイナリー技術の開発を行っています。間伐材などの利用されていない資源を使い、高温高圧処理や触媒反応によって石油由来のものよりも優れた樹脂原料をつくろうという考えです。
木材は「セルロース」を「ヘミセルロース」が結び「リグニン」がその隙間を埋める鉄筋コンクリートのような構造をしています。製紙工場で紙の原料としてセルロースを取り出すときは、薬品を大量に入れ煮溶かしますが、高温高圧の水を使うと不純物を加えず構造を壊さずに分離することができます。さらに、触媒反応によって「リグニン」と「セルロース」の6つの炭素Cの環をもつ構造を壊すことなく、扱いやすい合成樹脂(プラスチック)の原料にするのが目標です。 |