太陽光発電は、太陽電池を利用して、日光を直接的に電力に変換します。発電そのものには燃料が不要で、運転中は温室効果ガスを排出しません。原料採鉱・精製から廃棄に至るまでのライフサイクル中の排出量を含めても、非常に少ない排出量で電力を供給することができます(図1)。
太陽光発電の場合、1kW時あたりの温室効果ガス排出量(排出原単位)はCO2に換算して 17~48g-CO2/kWhと見積もられます(寿命30年の場合;出典はこちらのまとめをごらんください)。これに対して、現在の日本の電力の排出原単位は、図2のようになっています。太陽光発電の排出原単位はこれらより格段に低く、しかも火力発電を効率良く削減できます。出力が変動するため、火力発電を完全に代替することはできませんが、発電した分だけ化石燃料の消費量を減らすことができます。その削減効果は、平均で約0.66kg-CO2/kWhと考えられます。設備量50GWpあたり、日本の事業用電力を1割近く低排出化できます。
太陽光発電を暫く使い続けるうちに、ライフサイクル中の排出量は相殺されます。この「温室効果ガス排出量で見て元が取れるまでの期間」をCO2ペイバックタイム(二酸化炭素ペイバックタイム:CO2PT)と呼び、これが短いほど温暖化抑制効果が高いことになります。これは上記の排出量と削減効果から、下記のように逆算できます。
CO2PT = 想定寿命 * 電力量あたり排出量 / 電力量あたり削減量 = 30 * (17~48) / 660 = 0.77 ~ 2.2 (年)
つまり、1~2年ほどの発電でライフサイクル中の排出量を相殺できます。CO2ペイバックタイムを差し引いた残りの年数(寿命が30年なら、28年間程度)は、全く温室効果ガスの排出を伴わない電力を供給していると見なせます(図3)。太陽光発電は、その他の面でも環境に優しく、より安全な発電方式です。主にガラス、金属や半導体などで構成され、その設備の大部分がリサイクル可能です。建物の屋根や壁にとりつけられるので、専用の土地を用意しなくても設置できます。冷却水の設備が不要で、放射性物質を取り扱う必要もありません。さらに、火力発電によって排出されるSOxやNOx、重金属などによる環境汚染も減らすことができます。
温暖化ガスの排出とは別に、純粋にエネルギー源としての性能を示す場合、「エネルギーペイバックタイム(EPT)」や「エネルギー収支比(EPR)」と呼ばれる指標が用いられます。これらは枯渇性エネルギー源においてよく用いられる指標ですが、太陽光発電はこうしたEPTやEPRでみても既に化石燃料による火力発電の性能を超えつつあります。これはほかの多くの再生可能エネルギーについても同様のことが言えます。さらに太陽光発電は発電用の燃料が要らず、設備も比較的容易に解体・リサイクルできるため、持続的な利用が可能です。EPTやEPRで比べるまでもなく、この点で既に枯渇性燃料より優れている、という見方もできます。しかもその性能は、まだまだ伸びる余地があります。
このように、太陽光発電は温暖化対策手段としてもエネルギー源としても、既に実用的な性能を有しています。
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