気体流量標準研究グループは、気体流量、気体流速の標準設定・供給、脈動気体流量測定技術の開発を行っています。各標準は、範囲によって設定方法が異なります。
気体流量は、小流量では空気以外の各種ガス流量の供給が可能である。中流量は空気流量に限られます。
気体流速は、0.05〜1.5 m/sを微風速、1.3m/s〜40 m/sを気体中流速として分けられます。
気体小流量標準は秤量タンクシステムで設定され、質量流量の定義kg/sを忠実に実現したものです。すなわち、臨界ノズルを流れた気体を容器内に吸入し、吸入前後の容器の質量差を秤量計で測定し、吸入時間で割ることにより流量を求めることができます。本研究グループでは、秤量30
kg、分解能0.1 mgの機械式精密秤量計、並びに、秤量10 kg、分解能0.01 mgの電子式コンパレータを整備しています。
中流量標準は定積槽システムで設定されています。すなわち、音速ノズルを流れた気体を容積が一定の容器(定積槽)に吸入し、吸入前後の槽内温度圧力の差から気体の状
態方程式を用いて吸入された気体の質量を計算し、これを吸入時間で割ることにより流量を求めます。この計算に必要な定積槽の容積は、事前に、槽内に高純度気体を吸い
込ませてその吸い込み前後の気体ボンベの質量差を秤量計で測定し、状態方程式から逆算して求めます。すなわち、定積槽は、容積を比例係数、圧力と温度の比を読み値とした秤量計の一種とも言えます。定積槽システムは、大きな可動部分を持たないため、流量の大きい範囲にも適用できます。本研究室にある定積槽は、長さ6
m、直径2 mで容 積は11 m3です。
◆(写真上)計測制御部
自律した計測用計算機群が任意の別の計算機により制御されています。言語やOS、アプリケーションに依存しない高速テレキャリブレーション対応です。測定方法は、制御用計算機の操作者が全く自由に設計できます。
◆(写真下)閉ループ式校正設備
一般に、非常に遅い風速を作ろうとすると流れは不安定になり、校正が難しくなります。そこで微風速の校正設備には風速計を静止気体中で運動させる走行台車を使用します。この方式では、空気を完全に停止させる必要があるので、自然対流の影響を避けるために地下トンネル内(地上からの深さ8 m、年間の温度変化は20℃を中心に±2℃以内)に設備を置き、十分な測定時間をかけて校正を行います。微風速計を載せた台車はワイヤロープで牽引され、その移動速度はレーザー干渉計で測定されます。本装置による校正範囲は0.05 m/s 〜 1.5 m/sです。
◆(写真)走行台車
気体中流速の校正設備は、まずレーザードップラー流速計(LDVまたはLDA)校正装置を一次標準としています。LDVは、空気中の微粒子の速度を風速とみなして測定する流速計で、その校正には微粒子の代わりに回転円盤の外周に取り付けたワイヤの速度で校正します。次に、一般の風速計については、このLDVを用いて定期的に値付けされる風洞により校正を行っています。この風洞の試験部は一辺400
mm正方形断面のゲッチンゲン型で、壁面に超音波風速計を備えています。LDV校正装置も風洞も校正範囲は1.3〜40 m/sです。
◆(写真上)LDV校正装置
◆(写真下)空洞の試験部
(LDVによる定期的な校正の様子)