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ナノ材料設計研究グループ

ナノ材料設計研究グループは、産総研で培ってきた豊富な経験とノウハウを基盤に、CNTを含むナノカーボンを用いたプロセス技術・加工技術・複合化技術をさらに深化させています。
また、DX(マルチモーダルAIなどの高度AI技術)や自動・自律実験などの先端技術を取り入れ、新たな材料・プロセスの開発にも意欲的に取り組んでいます。
私たちは、大学や企業、他の研究機関との連携を通じて互いの強みや知見を結集し、革新的材料の創製や複合材料などの高度化に加え、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーの推進につながる用途・プロセスの研究開発を進めています。
こうした取り組みにより、多様な社会課題の解決と持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。

グループ長ひとこと


松本 尚之 材料機能創発研究チーム長
様々な製品を構成する複合材料について混合するだけの時代は終わりを迎えつつあります。
私たちのチームの『マテリアル×DX×研究力×多角的連携』を活かして、ナノカーボンをはじめとした新たな先端(複合)材料・プロセスの創製とその社会実装を一緒に実現し、未来を切り拓きませんか?

研究テーマ一覧(主担当)

(1)マルチモーダルAIを活用した材料・プロセス開発の高度化 (室賀、木村、金子、峯廻、松本)
(2)自律自動実験を活用した材料開発の高速化 (室賀、木村、金子)
(3)ナノカーボン材料を活用した新たな用途開発 (木村、清水、松本)
(4)異分野融合による革新的材料・プロセス開発 (清水、松本)

研究テーマ紹介

(1)マルチモーダルAIを活用した材料・プロセス開発の高度化 (室賀・木村・金子・峯廻・松本)
従来のAI技術では対応が難しかった複雑系を対象に、異なる種類のデータを統合して予測・探索を行うマルチモーダルAI技術の開発に取り組んでいます。さらに、こうした技術を幅広い応用分野に水平展開することで、機能性材料や産業用部材、プロセス設計など、製品レベルの複雑システムにおける開発期間の短縮やコスト削減を目指しています。 また、持続可能な社会の実現に資するさまざまな社会課題の解決にも貢献しています。たとえば、カーボンニュートラルの推進に向けては、モビリティの軽量化を支える繊維強化樹脂などの複合材料の開発にも取り組んでいます。これらの活動を通じて、マルチモーダルAI技術の社会実装を促進し、産業界へのさらなる波及効果の拡大を図っています。
(プレスリリース・論文発表):
産総研:人工知能により材料の構造画像を生成し、物性を予測する技術を開発
産総研:複数のAIを活用し、複雑な材料データからさまざまな機能を予測する技術を開発

(参考論文):
Advanced Science, 10, 24, 2302508 (2023).
Applied Spectroscopy, 79, 1, 104-113 (2025).
Konica Minolta Technol. Rep., 22, 3 (2025).




(2)自律自動実験を活用した材料開発の高度化 (室賀・木村・金子)
サイバー空間とフィジカル空間を融合させた新たなAI駆動型研究開発を実現するため、実験自動化やロボティクス、AI技術を統合した自律自動実験の研究開発を推進しています。これまでに、自律自動制御の活用によってプロセス条件の高精度・効率的な最適化を実現するとともに、従来は人手作業によって再現性が低く、手間のかかっていた実験工程の自動化にも成功しています。さらに、人の介在を必要としないClosed-loop型の自律実験や、AIと人が協調して探索を進めるHuman-in-the-loop型の実験手法の構築と応用展開にも取り組んでいます。
(参考文献):
Materials Horizons, 12, 623-629 (2025).


(3)ナノカーボン材料を活用した新たな用途開発 (木村・清水・松本)
従来の単純な混合にとどまらず、CNTをはじめとするナノカーボン材料の分散状態や空間的配置、配向状態、マトリクスとの相互作用などを制御し、高機能な複合材料を創出することで新たな用途を切り拓いています。具体例として、紡糸・延伸・加熱処理といった加工プロセスをマルチスケールで最適化し、高強度かつ高電気伝導性を兼ね備えたナノカーボン複合繊維を開発しています。また、大学との共同研究により、CNT膜への金属ナノ粒子担持や表面改質を実施し、電極触媒やセンサーへの応用可能性を探求するとともに、新規用途の拡大を図っています。さらに、CNTを担持したカラムを用いたCNTとの親和性評価手法の開発など、多角的なアプローチで研究を進めています。
(プレスリリース・論文発表):
産総研:産総研:長寿命・高耐熱・高耐圧Oリングを開発、販売開始へ
産総研:熱や衝撃に強い多層カーボンナノチューブ樹脂複合材料を開発
産総研:丈夫で柔軟なCNTシリコーンゴム複合材料を開発

(参考文献):
Nanomaterials 14, 824 (2024)
“Explainable Multimodal Machine Learning for Revealing Structure-Property Relationships in Carbon Nanotube Fibers”, arXiv:2502.07400 (2025).




(4)異分野融合による革新的材料・プロセス開発 (清水・松本)
従来のCNT用途開発技術と異なる分野の知見を結び付けることで、従来にはない機能や特性を備えた材料や新たな製造プロセスを生み出しています。たとえば、CNTの合成技術と複合化技術を融合し、フィラーに直接CNTを合成した複合フィラーを開発することで、高い熱伝導性と母材と同等の力学特性を兼ね備えた先端複合材料の創出に成功しています。また、ナノ多孔性材料に同スケールのナノ材料を複合化することで、断熱性などナノ多孔性由来の特性を損なわずに、耐熱性などの新たな機能を付与する研究にも取り組んでいます。こうした異分野融合の取り組みを通じて、さらなる材料革新とプロセス開発を推進しています。
  
  CNTをシリコーン系多孔体(左)へ均質に複合化した例(右)
少量のCNT添加により、多孔体の特性を損なわずに耐熱性向上に成功。

(参考文献):
J. Sol-Gel Sci. Technol. 106, 663 (2023).
Nanomaterials 14, 528 (2024).


チームの構成メンバー

所属・役職・氏名 専門分野 業績
研究グループ長
松本尚之
無機材料科学
主任研究員
清水太陽 
多孔質材料
主任研究員
室賀駿
マテリアルズ・インフォマティクス、プロセス・インフォマティクス、機械学習、深層学習、高分子材料、複合材料、ナノ材料、成形加工、分光、イメージング バナー画像(220X68)
研究員
木村大輔
繊維科学 バナー画像(220X68)
研究員
金子紗弓  
データ駆動科学  バナー画像(220X68) 
研究チーム付(兼務)
峯廻洋美
 

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