材料・化学領域
Materials DX Research Center

マテリアルDX研究センター紹介

マテリアルDX研究センターについて

材料機能を予測する計算シミュレーションの能力は着実に進展しており、実験研究を凌駕する有用性を示す例も 現れ始めています。本研究センターではそのような順方向の材料機能予測性能を更に高める為の計算シミュレーション 技術を開発します。 同時に、逆方向の予測、即ち機能から逆にそれを実現する為に必要な構造・組成を予測する事に 関しても、多くの順問題の解データの解析に機械学習・深層学習などの人工知能研究で用いられている数理・情報技術を 活用する事により取り組み、材料のコンピュテーショナルデザインを実現する為の研究スキームを構築します。 そのような研究開発活動を通じてデータが主導する新たな材料開発パラダイムの構築を目指します。 当センターでは、地球温暖化問題、環境エネルギー問題、人口問題、食料・水資源の問題、医療問題など、 人が生きて行くのに克服すべき多くの問題を解くための鍵となるような材料がすばやく開発されるような、 しなやかな未来を実現するために最も重要である人工知能と物質・材料を結ぶ部分の研究開発を担って行きたい と考えております。

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研究センター長あいさつ

マテリアルDX研究センター長の写真
研究センター長 三宅 隆

材料開発にAIを活用するマテリアルズ・インフォマティクスが2010年代に急速に進展しました。その後、データ駆動手法の適用範囲は物質探索・材料設計にとどまらず、製造・プロセスにも拡大しました。現在、デジタル技術により材料開発を変革する「マテリアルDX」が大きな注目を集めています。

産総研では、量子化学/第一原理計算、分子動力学法、粗視化モデル、流体/連続体有限要素法など、原子・分子からマクロ構造までを俯瞰するマルチスケールシミュレーション技術を継続的に開発・高度化してきました。当センターでは、計算シミュレーションとAIや量子コンピューティングを融合させた材料・プロセス設計のための基盤技術を開発し、そのプラットフォーム化を推進します。また、高度AIや自動・自律実験等の所内のアクティビティを糾合し、産総研のマテリアルDX研究を牽引します。

得られた研究成果は、「データ駆動型材料設計技術利用推進コンソーシアム」を通じて産業界への普及を計っています。同コンソーシアムで利用可能な材料設計プラットフォームには材料データ秘匿計算技術を実装し、「データを共有しないが共用する」組織関連携の場を提供します。

組織

マテリアルDX研究センターは、下記に示しますユニット幹部、6チームで構成しています。

マテリアルDX研究センター メンバー

研究センター長 三宅 隆
副研究センター長 森田 裕史
総括研究主幹 川田 正晃、中西 毅、中村 恒夫
招聘研究員 浅井 美博、川西 祐司、時崎 高志、宮崎 剛英

研究チーム

  • 第一原理材料設計研究チーム
    研究チーム長:福島 鉄也、新屋 ひかり(主任研究員)、橋本 保(主任研究員)、山崎 馨(主任研究員)、清水 康司(研究員)
    奥村 晴紀(産総研特別研究員)、北 玲男(産総研特別研究員)、平松 諒也(産総研特別研究員)
  • 量子化学計算研究チーム
    研究チーム長:中村 恒夫(兼務)、井上 頌基(主任研究員)、栢沼 愛(主任研究員)、中農 浩史(主任研究員)、Fedorov Dmitri(主任研究員)、加藤 洋生(研究員)
    増田 光一郎(主務:触媒化学研究部門)
  • 分子シミュレーション研究チーム
    研究チーム長:森田 裕史(兼務)、石田 豊和(主任研究員)、高橋 和義(主任研究員)、中村 壮伸(主任研究員)、森下 徹也(主任研究員)、遠藤 克浩(研究員)
  • 材料プロセスシミュレーション研究チーム
    研究チーム長:松本 純一、崔 隆基(主任研究員)、西尾 憲吾(主任研究員)、赤﨑 健太郎(研究員)
    近藤 雅裕(主務:経営企画本部企画部企画室)
  • 材料情報技術研究チーム
    研究チーム長:澤田 有弘、川田 正晃(兼務)、池上 努(主任研究員)、土田 英二(主任研究員)、黒田 文彬(研究員)
    佐々木 直哉(招聘研究員)、深澤 太郎(主務:材料・化学領域研究企画室)、花岡 悟一郎(主務:サイバーフィジカルセキュリティ研究部門)
  • 材料物性相関解析研究チーム
    研究チーム長:中西 毅(兼務)、松村 太郎次郎(研究員)
    谷部 功将(産総研特別研究員)
    三浦 俊明(主務:材料・化学領域研究企画室)、畠 賢治(主務:ナノカーボン材料研究部門)、室賀 駿(主務:ナノカーボン材料研究部門)、木村 大輔(主務:ナノカーボン材料研究部門)、 神德 啓邦(主務:ナノカーボン材料研究部門)、藤井 達也(主務:CCUS実装研究センター)、古嶋 亮一(主務:マルチマテリアル研究部門)、小川 博嗣(主務:レジリエントインフラ実装研究センター)、 加藤 雄一(主務:企画本部)、宮岸 真(主務:健康医工学研究部門)、椿 真史(主務:人工知能研究センター)、峯 真也(主務:化学プロセス研究部門)、 細貝 拓也(主務:分析計測標準研究部門)、中道 優介(主務:機能化学研究部門)、申 ウソク(主務:マルチマテリアル研究部門)、Futaba Don(主務:ナノカーボン材料研究部門)、 島本 太介(主務:マルチマテリアル研究部門)、井上 貴也(主務:研究戦略本部エンジニアリング部)

主な取り組み

計算材料設計技術

データ競争力を強化する、マルチスケールシミュレーション技術の開発
第一原理計算、量子化学、分子動力学法、連続体シミュレーション等の計算科学的手法や、AI、量子計算を活用した材料設計の基盤技術を高度化し、良質なマテリアルデータを創出・活用します。

計算材料設計技術
マルチスケールシミュレーション

材料データ秘匿計算

材料データを共有しないが共用する技術の開発
秘匿計算は、データの秘密情報を守りながらデータに対する演算を可能にする技術です。秘匿計算を用いると、データの中身を開示せずとも、そのデータを用いた解析計算が可能となります。これが「データを共有しないが共用する」新しい研究データ連携パラダイムで、今後の研究開発連携を進めるうえでカギとなる基盤技術です。
当センターでは、産総研内の情報セキュリティ専門家と密に連携しながら、材料データ秘匿計算の社会実装を進めています。
従来の研究開発連携においては、個々の研究情報について開示または非開示の2択を前提に共同研究等を実施してきましたが、秘匿計算技術の展開により、組織Aと組織Bは互いに生データを提供しあうことなく、相互のデータ利用が可能になり、より広範でより精度の高いデータ解析ができるようになります。この技術により、従来協業する組織との連携をより深化させるだけでなく、今まで不可能であった競業する組織との連携が可能となります。また、データ公開に対する新たな選択肢を提供することにより、オープンイノベーション推進に貢献します。 当センターは、この材料データ秘匿計算連携技術を、データ駆動型材料開発や材料データ研究DXの未来を切り開く礎として発展させてまいります。

材料データ秘匿計算
材料データ秘匿連携基盤

高度AI

複数のAIを活用し、複雑な材料から様々な機能を予測する技術

量子計算技術

マテリアル分野のユースケースの創出
量子計算では、量子重ね合わせや量子もつれ状態といった量子力学に特有の現象を利用した並列計算処理を行います。従来の計算機(古典計算機)では計算時間が膨大で解くことのできなかった問題が、量子計算機では現実的計算時間で解ける可能性がある一方で、そのユースケースは十分とはいえません。量子計算には大きく分けて量子アニーリング方式と量子ゲート方式という2つの方式があります。前者は組み合わせ最適化問題のソルバーで、厳密には量子計算ではありませんが、イジングマシンと呼ばれる古典計算機で量子アニーリングを模倣した計算機が開発されており、大規模な最適化問題に利用されています。一方、後者のゲート方式は、現状では、計算に利用できるqubitの数や誤り訂正などの課題がありますが、汎用計算機であるため、ユースケース開拓による波及効果が大きくなります。
当センターでは、量子アニーリングとゲート式計算機それぞれについて、材料化学分野でのユースケース創出を目指しています。量子アニーリングでは、組み合わせ最適化問題ソルバーとしての特性を活かし、マテリアルズ・インフォマティクスやプロセス・インフォマティクスへの適用を中心に、ゲート式では、分子や材料の電子状態計算といった量子系のシミュレーションだけでなく、計算力学等への適用でCAE(Computer-Aided Engineering)の応用も視野に、量子アルゴリズムによるシミュレーションの加速と量子―古典計算機連携によるアプリケーション開発を進めています。

量子計算技術          
イジングマシンによるアニーリング

量子計算技術
量子ゲート式計算での量子回路

具体的な研究テーマ

具体的な研究テーマ例については別ページで紹介しています。

最終更新日:2025年8月18日

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