マテリアルDX研究センターの研究テーマ例
マテリアルDX研究センターで推進する研究テーマからいくつかの例を紹介します。
AIアシスト型高速ピークフィッティング

材料データの有効利用を効率的かつ高速に実施するため、データ駆動型手法を用いた高効率スペクトル解析手法の高度化に取り組んでいます。これまで熟練者の手作業によって行われてきた煩雑なスペクトル解析作業を自動化することで、自動実験やリモートセンシングを可能とする基盤技術の確立を目指しています。
ハイスループット計算による物性データ創出

高性能永久磁石材料の探索のため、第一原理計算を用いて新規材料の物性値を予測しています。既存の1-5系や2-14-1系を母材料として、様々な元素を添加することにより、磁化と磁気異方性定数が高い組成を探索しています。さらに、機械学習を用いた予測モデルを構築するために、幅広い組成の材料群に対して得られた計算結果をデータとして蓄積しています。
MPH法マルチフィジクスシミュレーション

計算点を物質の動きに合わせて動かしてシミュレーションを行う“粒子法”の1つであるMPH(Moving Particle Hydrodynamics)法の開発を行っています。解析力学的理論と陰的アルゴリズムにより保証された高度な安定性を達成したことにより、多様な材料を対象とした、自由表面・大変形シミュレーションを実現しています。非圧縮性、非ニュートン性、表面張力など、様々な物理を考慮したマルチフィジクス流動シミュレーションが可能です。
有限要素法による複雑形状モデルの流体解析

任意分割に優れた三角形・四面体を用いた有限要素法による複雑形状モデルの流体解析の開発を行っています。空間方向に安定化を考慮した直交基底気泡関数要素による有限要素法、時間方向に陰解法を採用し、領域分割法に基づいた分散メモリ型並列計算が可能な、フェーズフィールド法(PFM)による気液二相流れ、多孔質構造を考慮したマルチスケール反応性流体、最適制御理論による流体問題の形状最適化(データ同化)などの研究を進めています。
電気化学デバイスシミュレーション技術の開発

固体―液体や固体―固体界面から構成される電気化学デバイスのシミュレーション技術開発を行なっています。量子化学や第一原理計算と分子動力学法を組み合わせ、電気化学系における熱力学量計算や、電圧印加状態での電子、エネルギー移動、反応予測を実現するとともに、これらミクロレベルのシミュレーションデータを利用した階層化による理、不均一触媒反応や、電極・電解液の劣化・分解プロセスのシミュレーションを目指しています。
量子化学計算手法の高度化

データ駆動型材料開発に必要な、分子レベルでの組成・構造と機能との相関を高い精度で予測しデータ化するための、電子状態計算手法の高度化に取り組んでいます。量子化学計算を表面や複雑な巨大分子系に適用するための、フラグメント分子軌道(FMO)法や、分子相互作用解析等の周辺技術の開発・整備、重元素系の計算に必須となる相対論的電子状態計算手法の研究開発も行っています。また、量子コンピュータを活用した電子状態計算の大規模化、加速に向けた手法開発も進めています。
量子化学や分子動力学、データ科学的手法を連携させた複雑反応機構解明

機能ナノ材料や触媒等の複雑反応機構を分子レベルで理解し、材料機能予測だけでなく反応機構の解明やプロセスの最適化に繋げるため、量子化学計算や分子動力学の適用研究を行っています。また、シミュレーションの加速や、大量の分子シミュレーションデータ解析を目的としたデータ科学的手法の活用にも取り組んでいます。