DNAデータの回帰分析における逆推定の不確かさ評価法

 

1)                 評価法1

Run 13毎に回帰分析(独立変数Quantity, 従属変数Ct)を行い、それらから得られた3本の検量線(回帰直線、ただし、この回帰式のはこの場合もとの標本データの独立変数の常用対数とします)を使って2個の未知試料の個()の読み値()の平均値(Ct)から未知試料の最確値(Quantity、この値は回帰直線を使って算出されるの値(常用対数値)をもとの独立変数と同じ単位系になるよう変換したものです)とその不確かさを逆推定()します。

 

すなわち、

 

 

から、最確値の重み付き平均とし、また標準不確かさは、検量線の逆推定によって得られた毎の標準不確かさから求められる重みを使って定義される内部誤差の式

 

               

 

と外部誤差の式

 

 

から

 

               

 

のようにして算出します。このときはいわゆる一元配置分散分析における級間分散の推定値になるが、のときはとします。また、は級内分散の総平均値の推定値となっています。

ただし、検量線の逆推定のみによる標準不確かさ

 

 

です。

 

 

1)                 評価法2

評価法1)とほとんど同じではあるが、検量線の逆推定による不確かさ

 

 

とします。こちらの方が純然たる読み値の不確かさのみ考慮することになるので一般に不確かさが小さくなります。ただし、読み値の標本数()が小さいときには母分散の推定の精度が悪くなることに注意する必要があります。できれば多数回の別の測定で予め読み値の母分散の推定値を求めておくのがよいと思われます。

 

これらの不確かさ評価法1と2の検量線の逆推定による不確かさを求めるエクセルVBAマクロファイルは以下からダウンロード可能です。

 

reg_DNA_1_Run1.xls (./DNA/DNA_1/reg_DNA_1_Run1.xls

DNA_1_summary.xls (./DNA/DNA_1/DNA_1_summary.xls

DNA_summary.xls  (./DNA/DNA_summary.xls

DNA_summary2.xls  (./DNA/DNA_summary2.xls

 

reg_DNA2.xls (./DNA/reg_DNA2.xls)<reg_DNA_1_Run1.xlsの改訂版>

 

 

(参考1)重み付き平均とその標準不確かさ

組の個(上述の例では個に相当します)の観測データ()の平均値を、母分散を、またその標準不確かさをとしたときのデータの重み(weight

 

               

 

と定義すれば、個のデータの重み付き平均

 

               

 

となります。

 

また、重み付き平均の標準不確かさ(内部誤差)は誤差伝搬則より

 

               

 

となります。この期待値は

 

   

 

です。ただし、組の個の観測データ()の総数

 

               

 

に相当します。

 

一方、重み付き平均の標準不確かさは級()間のばらつきなので

 

               

 

などの残差を用いて

 

               

 

のようにして求めることができます。この期待値は級間変動の母分散をとすれば

 

               

 

となります(吉澤康和,「新しい誤差論」,共立出版,初版第6刷,p. 138 (2000))。

 

したがって、である場合の重み付き平均の合成標準不確かさは

 

               

 

となります。

 

 

(参考2)標準不確かさ信頼水準の拡張不確かさ

標準不確かさをもつデータ信頼水準の拡張不確かさ

 

 

となります。ここで、分布のスチューデントのと呼ばれる値で、その値は信頼区間の危険率と回帰直線の自由度によって決められるものです。たとえば、標本数がの場合は

 

               

 

となります。また、自由度がでは

 

               

 

であり、自由度がでは

 

               

 

となり、分布は正規分布と同じ分布になります。

 

自由度がよくわからないような場合には、信頼水準の拡張不確かさを求めるには包含係数として通常を採択し

 

               

 

とします。