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セルロース材料グループでは、「作る」「知る」「使う」のサイクルで研究開発を進めています。


〒739−0046 広島県東広島市鏡山3-11-32
国立研究開発法人 産業技術総合研究所
中国センター 機能化学研究部門

セルロース材料グループ

技術のポイントPRIVACY POLICY

当研究グループの研究開発の過程で得られた技術のポイントを紹介します。

ナノセルロースとWPC(木材プラスチック複合材料)

内容
ナノセルロースは高強度・高弾性という特徴から,現在,樹脂補強素材への利用が進められています。実用化のためには,さらに研究開発が必要とされています。しかし,ナノセルロースよりもずっとサイズの大きな木粉(数百μm)を用いた樹脂複合材料は30年近く前から実用化されています。この,木粉と樹脂(オレフィン)との複合材料は木材プラスチック複合材料(WPC)[木材に樹脂を含侵させた材料と区別するために,「混練型WPC」とも呼ばれることもある]と呼ばれています。このよなWPCは木材のような質感が有りながら,押出成形等により自由な形状に成形できることから,屋外のデッキ材や内装材として階段の手すり,柵などに用いられており,国内市場は4万トン/年あるそうです。木材製品のように見えるため,気がつかない方も多くおられます。
 WPCに関する技術開発は企業を中心に発達しており,一般的にはWPCの強度物性は用いた樹脂よりも高いです。特に,弾性率は数倍になります。性能の良いWPCを製造するためには,原料木粉の選定と水分量調整,木粉と樹脂との複合化に適した混練方法(せん断力を有効に利用),木粉の凝集抑制と樹脂マトリックスへの均一分散とともに添加剤の選択が重要です。
 木材(セルロース)とオレフィン樹脂(ポリプロピレン等)は化学的・物理的性質が異なるため,単純に混ぜても良い性能のWPCは製造できません。両者の界面を適切に接着させる必要があります。WPC製造時に用いられる添加剤としては,マレイン酸をグラフト化したオレフィン樹脂(酸変性樹脂)がよく用いられます。このような添加剤は,相容化剤とも呼ばれます。樹脂分野で用いる,いわゆる界面活性剤です。
 相容化剤の働きは,グラフト化したマレイン酸基(使用時は無水化する)とセルロース等が持つ水酸基との間のエステル結合形成とオレフィン主鎖がマトリックス樹脂のオレフィンと混合することで,木粉とマトリックス樹脂の界面を接着します。一般的なWPCでは,相容化剤の添加量は数%で十分です。図に,相容化剤の反応機構のモデルを示しています。
メカニズム模式図
MAPPとセルロースの反応メカニズム模式図
メカニズムの解明
 マレイン酸基がセルロースと化学的にエステル結合を形成するメカニズムは30年前から提唱されてきましたが、結合の量が極めて少なく、これまでに直接的に検出・同定した例はありませんでした。
 しかし、試料の前処理条件を工夫し、さらに、特別なNMR測定手法を用いることとで、エステル結合の形成をNMRシグナルとして直接的に確認することができました。
参考文献
Saori Niwa, Yasuko Saito, Mizuki Ito, Shinji Ogoe, Hirokazu Ito, Yuta Sunaga, Kenji Aoki, Takashi Endo, Yoshikuni Teramoto, Polymer, 125, 161-171 (2017), “Direct spectroscopic detection of binding formation by kneading of biomass filler and acid-modified resin”
解説
 我々のグループでは,20年前からWPCに関連した研究開発を進めてきた経験があり,現在のナノセルロース複合材料開発でもWPCで得られた技術や知見,ノウハウを活用して進めています。ナノセルロースの樹脂複合化においても,凝集抑制,均一分散,界面制御,は重要なポイントです。
 当研究グループにおける複合化技術の開発では、ミクロンサイズの木粉からナノサイズのナノセルロースまで,上手く利活用するための基盤技術の開発やノウハウの蓄積を進めています。
参考サイト
 WPCは実用化されて市場もそこそこ大きいのですが,大学や公的機関での取り組みは,あまり多くありません。WPCについて,さらにお知りになりたい方は,次のWebが参考になります。
◎公益社団法人日本木材加工技術協会木材・プラスチック複合材部会(外部リンク

追記事項

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