当研究グループで得られた知見や開発した技術の例をご紹介します。
木材からのセルロースナノファイバー製造の基本原理
- 内容
- ナノセルロースは、基本的に全ての植物系原料から製造することができます。植物内で生合成されたセルロース分子は、直ちに規則正しく自己集合して、セルロースミクロフィブリルと呼ばれる幅3nm程度の超微細繊維を形成します。このミクロフィブリルがナノセルロースの基本です。TEMPO触媒酸化法で製造されるナノセルロース(シングルセルロースナノファイバー)が約3nmとなるのはこのためです。木材の主要成分中、セルロースは結晶性を示しますが、このセルロース分子が規則正しく集合したミクロフィブリルが結晶構造の本体です。
木材組織では、ミクロフィブリルがヘミセルロースやリグニンを接着剤のようにして、主に水素結合や分子間力により集合・積層して細胞壁を形成しています。そのため、基本的には、細胞壁構造をほぐせばナノセルロースが製造できます。しかし、木材は、古くから建材としても利用されているように、強靱であり、容易にはほぐされない構造を持っています。植物細胞壁は、外側から細胞間層、一次壁、二次壁で構成されており、二次壁が最も厚く、さらに大きく3層(S1,S2,S3)に分かれています。二次壁の各層では、ミクロフィブリルが規則正しく並んでいますが、各層での配向方向が異なっています。S1層は、内側の積層構造を縛り付けた、桶や樽のタガ類似の作用をしており、これら構造やヘミセルロース等の接着作用が木材の強靱さの発現にも寄与しています。 - 参考文献等
- 遠藤貴士、シンセシオロジー、2(4) 、310-320 (2009).など
- 説明図
追記事項
セルロース材料グループ