地形の調査
地震による地殻変動により,海岸の地形が大きく変化することがあります.2024年能登半島地震では,外浦で大規模な海岸の隆起が起きて多くの漁港が干上がってしまいました.海溝型地震でもこのような地殻変動は確認されており,
典型的な例が相模トラフ沿いで発生する関東地震です.千葉県館山市の見物海岸では,大正関東地震と元禄関東地震で隆起した離水地形(海岸段丘)を見ることができます.右の図は,地上LiDARによって海岸段丘の詳細な地形データの
取得を行っている様子と,得られた地形データの鳥観図です.


大きな津波が発生すると,その侵食によって海岸に特殊な地形が残されます.津波によって砂浜の砂が削られると,砂浜のところどころに溝のような地形ができます.この溝は,津波の後に回復する海浜によって閉塞され,特徴的な 湖沼(scour pond)となります(左下の模式図).産総研では,北海道や東北地方において過去の津波によるscour pondを研究してきました.北海道では,ドローンによる航空測量を行い(右下の模式図),浜堤に並んだscour pondを明らかにしました.


津波堆積物の調査
以下のリンク先をご覧ください(いずれも津波浸水履歴図 Web公開ページ内へのリンク)
「津波と津波堆積物」
「地層の調査と分析ー野外調査ー」
「地層の調査と分析ー室内分析ー」
緊急調査
大きな津波や洪水が発生した際には現地を訪れ,その被害状況,浸水深,堆積物の状況を調べます.また,試料を持ち帰り,地層中のイベント堆積物を扱うのと同様に粒度分析や微化石分析などを行います.そうした作業によって, イベント堆積物の比較対象(モダンアナログ)を手に入れ,地層の解釈に役立てることを試みます.これまで,2004年スマトラ島沖地震(インドネシア,タイ,ミャンマー),2015年に発生した鬼怒川の洪水(常総市,平成27年9月 関東・東北豪雨),2011年東北地方太平洋沖地震,2024年能登半島地震などに対応してきました.
よって形成された砂質津波堆積物
澤井祐紀 撮影
みられた越流による浸食構造
澤井祐紀 撮影
よって大きく隆起した海岸
宍倉ほか(2025 活断層・古地震研究)より