フェムトリアクター応用例
@金属ナノ粒子のサイズ制御技術
金ナノ粒子の合成
液中エレクトロスプレーによる正−負液滴衝突型フェムトリアクターを金ナノ粒子合成に適用した例を紹介します。図に示すように、有機相と水相の二相分離系を用い、有機相に正・負のエレクトロスプレーノズルを設置し、各ノズルから塩化金酸水溶液と還元剤水溶液をエレクトロスプレーすると、正−負液滴の静電的相互作用により両水溶液が混合し、混合後に生成した金ナノ粒子は、分散剤水溶液相に回収され、コロイド安定化されます。
この方法で合成した金ナノ粒子は平均径3.3 nmで、粒径分布も極めて狭くなっています。
銀ナノ粒子のサイズ制御(日華化学株式会社との共同研究)
界面反応場型フェムトリアクターを銀ナノ粒子合成に適用した例を紹介します。図に示すように、有機相と水相の二相分離系を用い、有機相から水相界面に向かって硝酸銀水溶液をエレクトロスプレーし、界面で銀イオンと還元剤を反応させて生成した銀ナノ粒子を水相でコロイド安定化します。核生成と結晶成長過程を制御することにより精密な粒径分布制御が可能になりました。
A有機化学反応制御への応用: 不安定化学種の合成、高分子化合物の分子量制御
不安定化学種(シロキサン)の合成
反応性の高い不安定な化学種を高収率で得ることは、従来のバルク合成法では難しい。例えば、図のシロキサン3量体はシリコーン原料として付加価値が高い化合物ですが、3量体は反応性が高いため、4量体に変化してしまいます。
液中エレクトロスプレーによる正−負液滴衝突型フェムトリアクターにより、原料のジメチルジクロロシランと水を極微小液滴内で混合すると、極微小液滴内で図に示すような加水分解反応が起こり、生成した3量体は極微小液滴を取り囲んでいる有機溶媒相に抽出分離されます。これにより3量体を選択的に合成することが可能となりました。
Y. Ido, H. Kobara, K. Tominaga*, A. Wakisaka, Industrial & Engineering Chemistry Research, 56, 4847-4882 (20-17)
高分子化合物の分子量制御
極微小体積を反応場とすることにより、モノマーと重合開始剤や触媒を一瞬で混合すること、及び極微小液滴の温度を一定に制御することが可能になるため、それぞれの極微小液滴内でおこる高分子重合反応を同一条件で制御することができます。これによって、分子量分布の狭い高分子化合物の合成制御が可能になります。
B導電加工用銀ナノ粒子分散液の量産化技術
金ナノ粒子のサイズ制御技術について応用例@で紹介しました。この界面反応場型フェムトリアクターは最も反応収率が高いため、ノズル本数を増やしたスケールアップ試験を行っています。濃厚な硝酸銀溶液をエレクトロスプレーで供給可能なため、ノズル100本程度のコンパクトな装置で年間300kg以上の銀ナノ粒子(固形分)の合成が可能になります。