Theme個別研究課題

高品位・高生産性製造のためのデータ駆動型レーザー加工

  • データ駆動型レーザー加工によるガラス表面へのナノ周期構造形成実証(産総研プレスリリース2025年3月24日より)
  • ナノ周期構造のリアルタイムモニタリング原理とプロセスデータベース(DB)
研究のキーワード

ガラス、表面ナノ周期構造、安定形成、データ駆動、リアルタイムモニタリング、プロセスデータベース

研究の目的

レーザー加工は、非接触で材料を除去・積層・改質できる製造技術として、脆性材料や硬軟材料まで多様な材料の加工や、複雑形状への適用が可能な製造技術として注目されています。最近では、レーザーの著しいハイパワー化や高速ビーム走査技術も後押しし、産業導入が加速しています。特に、短パルスレーザー微細加工は、熱影響を抑えることができるため、高品位な微細加工技術として注目されていますが、一方でレーザーパルス強度、パルス幅、パルス繰り返し、ビーム走査速度・パスなど複雑に相関するマルチパラメータを最適化する必要があり、そのプロセス開発期間短縮や省力化が産業実装の鍵を握っています。そこで我々は、これまで現場技術者による試行錯誤や熟練者が五感を駆使して実現してきたプロセス最適化を新しい形で実現し、レーザー加工を高品位化・高生産性製造技術として産業実装すべく、データ駆動型レーザー加工技術を開発しています。

研究の成果

ガラスの表面へナノ周期構造を形成することで、低反射表面などの効果を付与することができ、高機能なディスプレイや光学機器などへの応用が期待されています。近年、フェムト秒レーザーパルスを用いてガラス表面をナノ加工する技術や、形成されたナノ周期構造をリアルタイムにモニタリングする技術が開発されました。しかし、ガラス表面へのナノ加工はガラスの表面状態やレーザーの照射条件に大きく依存するため、クラックなど欠損のないナノ周期構造を安定に形成することは難しいという技術課題がありました。
そこで我々は、データ駆動型レーザー加工を、ガラス表面への高品位ナノ加工に適用することを試みました。データ駆動型レーザー加工技術は、インプロセスのリアルタイムモニタリング、AI高速最適化、そして最適パラメータを実空間で実現するアクティブ制御レーザー加工を基盤にしています。ガラス表面へのナノ加工をリアルタイムにモニタリングする技術を新たに開発し、このモニタリングデータとガラス表面に形成される構造を紐づけたプロセスデータベースを構築しました。その結果、ガラス表面へのナノ加工をリアルタイムにモニタリングしたデータをもとに、フェムト秒レーザーパルスの強度を高速にフィードバック制御できるデータ駆動型レーザー加工システムを構築でき、ガラス表面へのナノ加工の欠損率を30分の1に低減しました。この成果は、光の反射・吸収・透過量などが制御された高い機能を、必要な部分に位置選択的に付与した光学部品製造へ貢献します。

問い合わせ先

レーザー加工フロンティア研究グループ
奈良崎 愛子